『ズートピア』感想とイラスト バランスと信頼、そして多様性

映画『ズートピア』のイラスト

ゲスな男はディズニーに鼻毛程度の価値しか見いださない。そんな偏見と差別に満ち満ちたゲス野郎のハートを深くえぐり出した『ズートピア』。ジュディ、ニック、こんなゲス男を許してくれますか?

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目次

『ズートピア』感想とイラスト バランスと信頼、そして多様性

  1. 作品データ
  2. 予告編動画
  3. 解説
  4. 主題歌/シャキーラ『Try Everything』
  5. あらすじ
  6. 感想と評価/ネタバレ多少
  7. ディズニー映画からの逸脱
  8. ズートピアの理想と現実
  9. 歪んだ正義の執行者
  10. 大事なのはバランス
  11. ディズニー初の傑作!(個人的に)

作品データ

『ズートピア』
Zootopia

2016年/アメリカ/108分
監督:バイロン・ハワード/リッチ・ムーア
脚本:ジャレッド・ブッシュ/フィル・ジョンストン
音楽:マイケル・ジアッチーノ
声の出演:ジニファー・グッドウィン/ジェイソン・べイトマン/イドリス・エルバ/J・K・シモンズ/ジェニー・スレイト/シャキーラ
日本語吹き替え版:上戸彩/森川智之/三宅健太/玄田哲章/竹内順子/Ami

予告編動画

解説

「なりたいモノになる」には世間の偏見と現実の残酷さと対峙しなければならないという3Dアニメーション映画です。

監督は『ボルト』のバイロン・ハワードと『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーア。声の出演はジニファー・グッドウィンとジェイソン・べイトマン。脇に『パシフィック・リム』のイドリス・エルバ、『セッション』のJ・K・シモンズが控えます。

主題歌を担当するのはラテンポップシンガーのシャキーラで『Try Everything』。日本語吹き替え版ではDream Amiがカバー。日本版の声優は上戸彩、森川智之、三宅健太、玄田哲章など。

主題歌/シャキーラ『Try Everything』

あらすじ

高度に進化した動物たちが暮らす世界。草食動物と肉食動物が共存し、誰もが夢をかなえられる楽園“ズートピア”に、ウサギ史上初の警察官に採用されたジュディ(ジニファー・グッドウィン/上戸彩)が赴任してくる。

「よりよい世界を作るため」という幼い頃からの夢の実現に意欲を燃やしていたジュディだったが、彼女に与えられた仕事は駐車違反の取り締まりだった。そんなときに出会ったのがキツネで詐欺師のニック(ジェイソン・べイトマン/森川智之)。

おりしもズートピアでは肉食動物ばかりを狙った連続誘拐事件が発生していた。48時間という期限を区切られたうえで、ようやく捜査への参加を認められたジュディは、ニックに協力を求めて事件の真相をつかもうとするのだったが……。

感想と評価/ネタバレ多少

「『アナ雪』を超える傑作!」として各方面で絶賛されていた本作。「『アナ雪』程度を超える作品なら掃いて捨てるほどあるので、世の中は傑作だらけなのだなぁ」と、ありのままに鼻毛を抜きながら世間の寛容さをありのままに受け入れたボク。

申し訳ありません。ありのままのボクはどうしようもないゲス野郎でして、ディズニーも『アナ雪』にも鼻毛程度の価値しか見いだしていない最低男なのであります。そんな最低ゲス野郎が『ズートピア』をどう観たか?それではさっそく感想をば。

ディズニー映画からの逸脱

いやぁもう最高っ!動物たちがめちゃかわいいし、ちょー泣けるし、笑えるし、マジで面白いからみんな観てね!ホントおすすめだから!ウエーーーイ!

なんて、本来のキャラを逸脱したただの激賞で終わってもよいのですけど、はたしてこの作品ってそんなウエーーーイと終わらしてよいたぐいの内容なのでしょうか?ボクにはディズニーという枠をかなり挑戦的に逸脱した問題作だと思えましたね。

だからこそディズニー嫌いのボクでも楽しめた。明るく楽しい、誰もが楽しめる陽気な娯楽作などではなく、明るさと楽しさの裏側に暗い闇を隠した社会派エンターテインメント。正直かなり怖くて痛い内容でしたね。それではさっそくその理由をば。

ズートピアの理想と現実

草食動物と肉食動物が安全に共生する世界。弱肉強食の呪縛から解き放たれた理想郷。誰もがなりたいものになれる。夢がかなう場所。それが建前としての「ズートピア」。しかし現実はそう甘くない。ありていに言ってしまえば人間社会の縮図。

ウサギに生まれた者はウサギの人生を、キツネはキツネの人生を歩むしかない。言うなれば血の呪縛。そこから逸脱しようとした者には厳しい偏見という名の制裁が下される。「ウサギのくせに」「キツネだから」これが現実。ズートピアの現実。

誰もそのことに疑問をいだいてはいない。あたりまえの現実。ウサギはニンジンを育て、キツネは人を騙し、ビーバーは工事をし、シロクマはマフィアになる。その現実を打ち破ろうとすることは、世間の偏見と差別に真っ向勝負を挑むということ。

大きな理想と希望、夢を抱えてズートピアへとやって来たウサギのジュディは、まずこの厳しい現実と対峙することになります。彼女の武器はまっすぐな、ひたすらまっすぐな正義感と、自分自身への信頼感。疑いようのない絶対正義。

歪んだ正義の執行者

世間の差別と偏見に正義をもって真っ向勝負を挑んだジュディ。その姿は望まぬ仕事である駐車違反の取り締まりでややいびつに描かれております。自分の能力を世間に認めさせるため、絶対正義をもって忠実に切符を切りまくるジュディ。

ここで描かれる彼女の姿は、現実を顧みない、空気を読まない、世間知らずの歪んだ正義の執行者でしかありません。要するにめちゃくちゃ感じ悪い。これがこの作品のミソ。肝。自分の正義を、理想を、夢を信じて疑わない者の無自覚な邪悪さ。

自身の夢の実現のためになりふり構わぬ姿も同じ。「よりよい世界を作るため」なら何をしても許されるのか?差別される側が陥りやすい歪んだ正義感がここにはある。つまるところ、この時点でのジュディは事件の黒幕とそう大差はないのである。

大事なのはバランス

そんな彼女の歪み、いびつさがピークに達したのが、事件が解決したと思って開かれた記者会見での一幕。ここでの彼女は浮足立ち、背伸びをし、空気を読まず、根拠のない正義感から最悪の風評被害を広めてしまいます。正義の名のもとに。

それによって何が起こるのか?誰を傷つけるのか?何を失うのか?そんなこと思いもよらずに。ここで残酷なまでに提示されているのが、差別される側の弱者もまた誰かを差別しているという重く悲しい現実。これをまさかディズニーが描くとは。

強者にも、弱者にも、誰の心にも根深く潜んでいる偏見と差別。これにとらわれずに生きていくのはとっても難しいことです。誰もが気づかぬうちに他人を差別し、根拠もなく偏見の目で見、無自覚に誰かを傷つけている。時に大切な人すらも。

これを打破するひとつのヒントとしてこの作品が示していたのが、バランス感覚と多様性への理解。まっすぐな正義に貫かれていたジュディはこれを欠いていた。それを補ってくれたのがニックとの出会い。彼との出会いが彼女を変えたのです。

大きく正のほうへと振り切れすぎていたジュディが、詐欺師のニックとの出会いによってほどよい邪を吸収し、見聞を広めた。最後には騙しのテクニックを使って事件を解決するほどに。偏りはいびつと歪みしか生まない。大事なのはバランスと寛容さ。

それはニックとて同じであり、彼もまたジュディとの出会いによって忘れていた正義の心を取り戻したのです。保身と諦念から偏見を受け入れ、ある種の達観を貫いていたニックの心に正義の火をともしたのもまた、ジュディとの出会いがあったから。

偏見と差別は誰の心にも潜むもの。植えつけられたイメージを打破するのはけっして容易ではない。だからこそ偏りのないバランス感覚が大事であり、あわせて信頼する、信頼されるための努力が必要になってくる。ジュディとニックのようにね。

ディズニー初の傑作!(個人的に)

『スポットライト 世紀のスクープ』に続き、いつになく真面目な文章に終始してしまいましたが、それだけ胸に深く突き刺さったということ。ボクもまた人を差別し、偏見の目で見てしまう人間だから。自戒、または自責の念をえぐられたのです。

しかしそういう小難しいテーマは脇に置いといたとして、非常に優れた娯楽作品であることも間違いありません。リアルな世界観と動物たちの擬人化。テンポのいい展開。パロディ精神。積み上げられた伏線とその見事な回収。セリフの妙。

とりわけ爆笑ポイントとしては、ナマケモノのフラッシュ、ドン・コルレオーネ、ヌーディストクラブの3点を絶賛させていただきます。特にヌーディストクラブの一糸まとわぬご開陳ぶりには括目いたしました。ディズニーも成長したもんだわ。

というわけで、普通に観ても非常によく出来た娯楽アニメーションだったとは思いますが、やはり楽しさと明るさの裏側に鎮座する闇の深さをどうか忘れないでいただきたい。これがあったからこそこの作品は傑作になった。そう、傑作なのですよ!

個人的評価:8/10点

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『ズートピア』感想とイラスト バランスと信頼、そして多様性
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コメント

  1. ケフコタカハシ より:

    こんにちは。
    私も昨日のレディスデーに観てきました。
    キツネのニックがなかなかカッコ良かったです。
    でもニック・ワイルドってジェイソン・ステイサム主演「ワイルドカード」の主人公と同じ名前なんですよね。
    偶然なのかしら。
    以下「マジカル・ガール」のところにコメントしたかったんですけど、こちらならできそうなので。
    「マジカル・ガール」の後に「ロブスター」が上映されていたのですが「マジカル・ガール」を観たら、ドドっと疲れてしまって。
    とにかく早く帰りたくて、結局「ロブスター」が観られなかったんですわ。
    恐るべし「マジカル・ガール」の破壊力。
    観たい作品が観られないってのは、テンション下がりますよね〜。

  2. スパイクロッド より:

    ケフコタカハシさんコメントありがとうございます!
    主人公のジュディについては記事中でも書いたとおり、「やな感じだなぁ」という気持ちで観ていたのですけど、ニックの達観した処世術と内に秘めたる熱さとやさしさには惚れてしまいました。常々こういう男になりたいと思いながらなれない、ならない自分の弱さをぶん殴ってやりたい今日この頃です。
    『マジカル・ガール』を観たあとに続けて『ロブスター』。あまりに濃すぎて胃もたれ必至ですね。連続鑑賞しなくて正解だったと思いますよ。分けて観たほうがいいです、絶対。それだけ双方とも破壊力が絶大だということです。

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