『神様メール』感想とイラスト そんな神なら捨てちゃえば?

映画『神様メール』のイラスト

クズで怠惰で暴力的なリアル神様像。諸悪の根源は男である。っていうかこの神様はどっかで見たことあるぞ。そうか!『ありふれた事件』のクズ野郎じゃねーか!

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目次

『神様メール』感想とイラスト そんな神なら捨てちゃえば?

  1. 作品データ
  2. 予告編動画
  3. 解説
  4. あらすじ
  5. 感想と評価/ネタバレ無
  6. カラフルシニカルポップセンス
  7. 危険すぎるブラックジョーク
  8. 不自由からの解放
  9. 宗教的、ジェンダー的危険性
  10. 本年度のベスト級!

作品データ

『神様メール』
Le Tout Nouveau Testament/The Brand New Testament

2015年/ベルギー、フランス、ルクセンブルク/115分/PG12
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
脚本:トマ・グンジグ/ジャコ・ヴァン・ドルマル
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
音楽:アン・ピエールレ
出演:ピリ・グロワーヌ/ブノワ・ポールヴールド/ヨランド・モロー/カトリーヌ・ドヌーヴ

予告編動画

解説

ゲスなシリアルキラーが今度はクズの神様となって映画界に降臨するというSFブラックコメディです。

監督は『トト・ザ・ヒーロー』のジャコ・ヴァン・ドルマル。主演は『サンドラの週末』の天才子役ピリ・グロワーヌと、『ありふれた事件』のブノワ・ポールヴールド。共演には『反撥』の大ベテラン、カトリーヌ・ドヌーヴなど。

あらすじ

世界を創造した偉大なる神様(ブノワ・ポールヴールド)は、実はブリュッセルのアパートで家族と暮らしていた。神様は旧式のパソコンで世界を操り、人間たちの生活を気まぐれにひっかき回しては退屈しのぎをする毎日。

神様の娘である10歳のエア(ピリ・グロワーヌ)はそんな父親に反発し、父のパソコンを使って人間たちに余命を知らせるメールを送ってしまう。突然、自分たちが死ぬ日を予告された人間世界は大混乱。

そんな大混乱の人間界へと初めて降り立ったエアは、兄であるJC(イエス・キリスト)の助言に従い、奇跡を起こすために6人の使徒を探すことに。一方この事態に気づいた神様は激怒。エアを追って人間界へとやって来るのだったが……。

感想と評価/ネタバレ無

ジャコ・ヴァン・ドルマル。およそ25年の映画監督キャリアで発表した作品はこの『神様メール』を合わせてたったの4本。仕事しないにも程がある。しかしその数少ない作品すべてが世界で高く評価されている、新作が期待される監督のひとり。

かくいうボクも前作の『ミスター・ノーバディ』はハマらなかったが、『トト・ザ・ヒーロー』と『八日目』は愛してやまない2作。そんなドルマル待望の新作。観ないわけにはいかんでしょう。というわけで『神様メール』の感想です。

カラフルシニカルポップセンス

世界を創造した神様はブリュッセルのアパートで暮らしながら、嫁と子供にDVを働き、自ら作り出した人間をもてあそんでは悦に浸っているというとんでもないクズ野郎。という奇抜でブラックな設定がまず目をひきまくります。

そんなクズファーザーに反抗した娘っ子が、支配されている我々人間に対して送ったメール、「余命宣告」によって世界は大混乱。物語はこの父親と娘との対立を軸に、運命に支配された人間たちの解放を突破口として展開していきます。

神様によって運命を掌握された人間たちの望まざる現実。そしてそのしがらみから我々を解き放つ夢のようなもうひとつの現実。過酷な現実と甘美な夢をテーマとしてきたドルマルらしい内容ですが、正と負の両面でさらなる進化を遂げたという印象。

よりブラックに。さらに甘美に。それでいてポップに。そしてこれを視覚野から観客の脳髄を刺激する超絶技巧もまさに神の領域へ。現実から軽やかにファンタジーへと飛翔してみせるドルマルの真骨頂。んでもってあいかわらず音楽センスが抜群!

ドルマル映画の定番ともいえるシャルル・トレネの『La mer』を筆頭に、ラモーやサーンスのクラシック勢、日本でも馴染み深いアダモの『Tombe la neige』、そしてベルギー出身の女性歌手アン・ピエールレによる主題歌の『Jours Peinards』は必聴!

危険すぎるブラックジョーク

過酷な現実と甘美な夢。それを超絶技巧の映像美と抜群の音楽センスによって目と耳を蹂躙しまくるドルマル映画。オモチャ箱をひっくり返したような楽しさと陽気さがある反面、耐えがたいほどの孤独と非情な現実を描いているのもこの監督のミソ。

しかもそれをシニカルなブラックコメディとして描いておりますので、受けつけない人は受けつけんでしょうね。ただしボクと同じく世をすねた厭世家の方々にはドツボにハマること請け合いです。っていうか爆笑です!

神を、家族を、そして死を笑いのネタとした、オフビートの裏側に隠されたどす黒い悪意に戦慄し、同時に爆笑してしまうことは必至であります。やはりブラックジョークとはここまで危ない橋を渡ってこそ意味がある。ついてこれない奴は振り落とせ!

不自由からの解放

クズな神様の気まぐれによって運命を掌握されてしまった人間たち。奴の暇つぶしによって設定されてしまった日常あるあるの数々。このネタなんかはまだまだかわいいもんで、やはり6人の使徒たちの望まざる鬱屈した人生こそふるいの真骨頂。

シュールでのほほんと目くらまししておりますけど、その実態はかなりの超絶ブラック!とりわけ6人目の使徒である余命54日の少年、ウィリーのあまりに過酷すぎる現実のなんと悲惨なことか!こいつは致死量の毒入りケーキだ!

人に定められた究極の運命。それは「死」。これを世界中に暴露したエアの判断は正しかったのです。これによって神の呪縛から解き放たれた人間たちは、良し悪しは別として、勝手気ままな自分の人生を自由に謳歌し出します。

それをさらに後押しするエアが起こす小さな奇跡。運命に、宗教に、神に、家族に、死に縛られてきた不自由な人間が手に入れた自由。自由な人間ならばゴリラと同衾するのも自由だ!男が妊娠しても自由だ!ってやっぱかなり危ない毒入りケーキだ!

宗教的、ジェンダー的危険性

しかしこの映画における真の危険性は、文化の異なる我々日本人にはあまりリアルに響いてこないかもしれない。そこまでリアルにえぐられていないからこそ、これをシニカルなブラックジョークの範疇で消費できているのかもしれない。

この『神様メール』の原題は『Le Tout Nouveau Testament』。意味は劇中にも登場している「新・新約聖書」。つまりは新約聖書を書き換えるということ。これだけでもかなり宗教的に危ない橋を渡っていることがわかる。

封建的で攻撃的な父親が「旧約聖書」で、兄のJC(イエス・キリスト)が「新約聖書」、そして娘のエアが「新・新約聖書」という構図をなしていて、現在のキリスト教における矛盾を正すというわけ。新たな価値観、世界を創造するというわけ。

監督のジャコ・ヴァン・ドルマルは「私は無神論者だが神の存在は否定しない」というコメントを残しておりますが、正直かなりやばいギリギリのラインの綱渡りをしている印象ですな。日本はまだしも、アメリカの一部では公開できるのかいな?

ついでに申しますと、ジェンダーな部分でもかなり踏み込んでおります。6人の使徒の人生でもそれは象徴的に描かれておりますが、やはりその最たるものは神様でしょうな。この映画の最大危険ポイントはここにこそあるかもしれません。

本年度のベスト級!

超絶技巧の映像美と、秀逸な音楽センス、オフビート感覚によって目くらまししながら、神、宗教、家族、性別という既成の価値観をぶち壊しにかかった、見た目はカラフルだけど致死量の毒物満載な危険きわまりないこの『神様メール』。

かなり好き嫌いの分かれそうな内容ではありますが、ボク的には本年度のベスト級に楽しめました。『イット・フォローズ』『ロブスター』『マジカル・ガール』『ボーダーライン』『ズートピア』と壮絶なデッドヒートを繰り広げている真っ最中。

観たばかりの新鮮さで頭ひとつ抜けちゃってるかな?ってぐらいお気に入りです。未見の方に配慮して極力ネタバレは控えてこの感想をしたためてみたつもりですので、まだ観ていなくて興味のある方はぜひとも劇場に。

最後に、この映画でクズの神様を演じたブノワ・ポールヴールドを皆さん忘れずに。彼のさらなる怪演を見てみたいという方は、ぜひとも自ら監督も務めた『ありふれた事件』をご覧あれ。さらなるクズっぷり、ゲスっぷりで、心が洗われますぞ!

個人的評価:8/10点

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