『愛のそよ風』イラスト付きレビュー

映画『愛のそよ風』のイラスト

いい年こいたじじいと、乳だけはたわわに実った小娘との禁じられた恋愛。イーストウッドが初めて主演を張らなかった監督作として知られる本作。なぜ張らなかったのだろう?本音はやりたかったくせに。この映画の撮影中、ケイ・レンツに入れ込んでたくせに。

スポンサーリンク

作品データ

『愛のそよ風』
Breezy

  • 1973年/アメリカ/108分
  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 脚本:ジョー・ヘイムズ
  • 撮影:フランク・スタンリー
  • 音楽:ミシェル・ルグラン
  • 出演:ウィリアム・ホールデン/ケイ・レンツ/マージ・デュセイ/ロジャー・C・カーメル

感想と評価/ネタバレ有

ほのぼのイーストウッド

偶然出会った孤独な中年男とヒッピー少女との恋愛を描いた年の差ラブストーリーです。クリント・イーストウッドの監督第3作目で、自身が主演していない初めての作品であり、それが原因なのかなんなのか、彼の監督作で唯一の日本未公開作でもあります。

『恐怖のメロディ』『荒野のストレンジャー』(劇中で主人公ふたりがこの映画を観に行くというやらしい演出あり)に続くイーストウッドの監督第3作目。敬愛している彼の監督作で唯一の未見でしたので、そろそろコンプリートしておこうとレンタル鑑賞してみました。

『恐怖のメロディ』の脚本家であるジョー・ヘイムズがイーストウッド主演を想定して書いた脚本らしいのですけど、ロリコンと揶揄されるのを危惧したのかなんなのか、自分が演じるには若すぎるとかなんとか理由をつけて、先輩のウィリアム・ホールデンへと振った次第。

しかしダブーに触れる内容、そしてドル箱スターであるイーストウッド不在により、かなり製作費を削られた模様。まあそれによって自由に撮影ができたと思うのですけど、その結果完成したのは「ほのぼのイーストウッド」と形容してもいい意外なものでありました。

物語は孤独を愛するというか、孤独を気取っている中年男のもとに、ギター片手にヒッチハイク生活をしている天真爛漫なヒッピー少女が転がり込んできて、この娘のペースに巻き込まれた中年男がやがて恋におちる姿を描いた年の差恋愛もの。

劇中では40代という設定の主人公フランクだが、演じるのは当時55歳のウィリアム・ホールデン。要するに初老のおじさまと、設定も実年齢もティーンエイジャーのブリージー(ケイ・レンツ)が恋におちるというかなり危ない内容で、イーストウッドの闇が感じられます。

しかし先にも書きましたとおり、設定は危ないのだけど画面から受ける印象はあくまで「ほのぼの」であり、この「危険」と「安全」のアンビバレンツがなんとも魅力的な映画なのであります。実は相当シニカルな毒を孕んでいるのだけど見た目はほのぼのしちゃう。

痩せっぽちの少女のくせに実はかなりの巨乳を無造作にさらけ出すブリージーが眼前にありながら、それをさも当然なこととしてスルーしてしまうフランクの余裕綽々に、ほのぼのの裏側に潜む毒と闇が見え隠れしているようなしていないような。

「ええ!もう!?」と下心見え見えな我々の下半身をたしなめる、イーストウッドの大人のたしなみ。彼女の天真爛漫に振り回されながらも温かく見守る、これまた大人なフランクの姿とも重なりますな。でもこのほのぼのは巧妙な伏線。毒の、いや変態の隠蔽でもあるのです。

ブリージーはともかく、フランクには恋愛感情はないんだよ、これは疑似父娘ものなのだよと擬態しておいてからの深くエロい闇。世代間格差を面白おかしくほのぼのと描きながら、彼女によって新たな扉を開かれた中年男が見せる戸惑いと純情、そして恋。

そんなふたりが初めて結ばれたシーンの闇の深さには本当にドキリとさせられてしまいます。暗闇から男の体へと伸びる少女の柔らかい手の不気味な官能性。闇を知り尽くし、闇を見続ける男の面目躍如。彼の初期作品における最高の闇演出だと言ってもよいでしょう。

不自由に生きることを自分に強いてきた中年男が、自由に生きる少女との出会いを通して少しだけしがらみから解放される。世代間の対立と融和。これはのちの『ミリオンダラー・ベイビー』、そして傑作『グラン・トリノ』の雛形になったのかもしれません。

20歳以上の年の差を超えた、親子ほどの年齢差があるカップル。タブーへと踏み込んだ恋愛の現実と夢。「1年くらいはもつかな」「1年?そんなに一緒にいられたら素敵!」というラストの会話に込められた現実と夢の、なんとまあシニカルなことでしょうか。

イーストウッドの闇と毒をほのぼの路線で包み隠した、彼のフィルモグラフィでも異色の作品。まあこれが災いして興行的には惨敗を喫したのですけど、彼のファンなら一度は観ておくべき隠れた佳作だと思いますよ。

ところでこの映画、てっきり未見だとばかり思っていたのですけど、おそらくはるか昔にテレビで観たことありますね。小学生の頃かな?イーストウッド主演ではないので、彼の映画という認識はもちろんなかったのですけど。

イーストウッドが初めて主演しなかった監督作として知られる本作ですが、実はこそっと出演していたのはご愛嬌。しかもバレバレ。おそらく誰もが「あれ?」と気づくことでしょう。わざとらしいコソコソ演技がかわいらしい胸キュンイーストウッドなのです。

個人的評価:6/10点

関連映画の感想

トップへ戻る