『ハングリー・ハーツ』感想とイラスト 愛さえなきゃうまくゆくのに

映画『ハングリー・ハーツ』アルバ・ロルヴァケルのイラスト(似顔絵)

強烈な便臭漂う密室トイレで運命的な出会いを果たしたジュードとミナ。幸せだった彼らの生活に暗雲が垂れ込めるのは「愛」の存在ゆえなのか?ああ~愛さえなければ……。

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作品データ

『ハングリー・ハーツ』
Hungry Hearts

  • 2014年/イタリア/109分
  • 監督・脚本:サヴェリオ・コスタンツォ
  • 撮影:ファビオ・チャンケッティ
  • 音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
  • 出演:アダム・ドライヴァー/アルバ・ロルヴァケル/ロバータ・マクスウェル

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

ニューヨークの中華料理店で運命的に出会ったジュードとミナ。ミナの妊娠をきっかけに結婚したふたりだったが、子供を守ろうと神経質になった彼女の行動は徐々に常軌を逸していくという、第71回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞と女優賞に輝いたサスペンス・ドラマです。

愛さえなければ…

どうも、年度末から続く地獄の社畜生活でロクに映画を観ていないボクですよ。恐ろしいことに2週間もの映画禁欲生活を続けていたとあって、そろそろ禁断症状から発狂する寸前でありました。上司を嬲り殺しにしたい欲求を抑えるためにも、ここらで一本観なければ。

そこで選んだのが『ハングリー・ハーツ』。ヒューマントラストシネマ渋谷だけでひっそりと公開された作品で、大阪在住のボクには観たくても観られなかったのです。ようやくレンタル解禁されたとあって、発狂寸前の頭をクールダウンするためにも借りてまいりました。

映画禁欲生活が2週間も続いた影響もあるでしょうが、この『ハングリー・ハーツ』の幕開けにはなんともいえない映画を観る喜びがあふれておりました。中華料理店の建てつけが悪いトイレで運命的な出会いを果たす男女。密室空間を満たす最強のウンコ臭による恋の始まり。

「何よこの殺人ウンコ臭!殺す気!?」「さーせん!さーせん!なんか朝からビチグソで、まじさーせん!」というウンコから始まる恋の予感を、密室による長回しで映し出した映画的多幸感にはあふれる便通と興奮を抑えられません。映画とウンコって本当にいいもんですね。

ウンコにまつわる運命の出会いを果たした男女は、エンジニアのジュードとイタリア大使館勤めのミナ。強い粘つきとともに結びつきも感じたふたりは、すぐさまねんごろな仲になるものの、そこで持ち上がったのがミナの転勤問題。もうお前なしじゃウンコできねえってのに!

しかし運よく(悪く?)ミナの妊娠が発覚。ふたりは晴れてデキちゃった婚へとふんばり、今となっては壮絶にダサい『フラッシュダンス』の主題歌『Flashdance… What a Feeling』をバックに盛大な結婚式を挙げるのです。なんかもうこのセンスがいちいち笑えます。

しかしお腹の子供が大きくなるにつれ、徐々にミナは神経質になっていき、待望の男の子が生まれてからは完全にスイッチが入り、「外には出さん!乳も出さん!医者は悪魔だ!」との独自の育児方針をゴリ押しし、夫のジュードはそんな妻と息子を案じて右往左往するのです。

外部との接触を遮断し、完全菜食主義を貫くことにより、母子ともどもガリガリに痩せ細っていく姿を目の当たりにしながら、なんとかしたくてもなんともできないジュードの葛藤。この映画の厄介なところは、すべての根底には対象に対する紛れもない愛が存在するから。

事の是非はどうあれミナは息子を純粋なまでに愛しているし、ジュードも息子を愛し、同時にミナのことも心から愛しているから判断がにぶるし、この物語に最終的な決着をつけるジュードの母も、息子と孫の将来を本当に案じていたからこそ決意の行動に出るのです。

この『ハングリー・ハーツ』という映画は、目に見えてショッキングなシーンが展開されるというサスペンスではありません。もっといや~な、愛する者が狂気へと陥る姿をどうすることもできずにただひたすら眺めるような、ジリジリヒリヒリ肛門が痛くなる映画なのです。

広角レンズを用いた家族のゆがみの象徴化や、都市における孤独感の描写、被写体への極端な接近も本当にいや~な感じで、笑いから入って徐々に真綿で首を絞めあげてくる不穏演出もあわせて、このサヴェリオ・コスタンツォという監督は相当な性格ブスだと推測できます。

最後まで子供が名無しなのもなんか凄く嫌ですよね。この子は単なる道具立てにしか過ぎず、結局は夫婦の主導権争いだったのではないかと思えてきます。思えばこの子が誕生するきっかけからしてそういう気配が漂っておりました。離したくないからこその裏切り。

転勤が決まったミナを自分のもとへと引き戻すため、拒否する彼女を無視して盛大にどびゅびゅぴゅっと中出しするジュードのエゴイズム。思えばこのときからふたりの主導権争いは始まっていたのだ。詰まることろ、彼女は結婚はおろか子供すらこの時点では欲していなかった!

愛するがゆえのエゴイズムによって彼女の人生を狂わせたのはジュード自身だったのです。その後のミナの変容は、ジュードの裏切りに対する報復とも言えるでしょう。そしてこの夫婦の主導権争いに割って入り、最終的な決着をつけるのがジュードの母親。

明確には語られていないものの、この母親もなんらかの狂気に憑かれているのはその風貌からして明白です。なんか知らんけど異様に怖い。ミナが結婚後に執拗に見た夢。シカを撃ち殺して闇へと消えるハンター。このハンターこそが彼女の正体であり、シカはミナ自身だった。

ジュードの愛によって人生を狂わされ、彼を愛する母親によって人生を終わらされる運命にあったミナ。誰かを愛した結果によって生まれる悲劇。ここに愛などという概念が存在しなければこんな悲劇は起こらなかったと思うと、その罪深さに込み上げる便意が抑えられません。

ヴェネツィアで男優賞と女優賞のW受賞を果たしたアダム・ドライヴァーとアルバ・ロルヴァケルの演技は確かに凄いのですが、ボクが推したいのはジュードの母親を演じたロバータ・マクスウェルの狂気。彼女の謎の違和感も「実は最も狂ってたで賞」に該当すると思います。

発狂しそうな映画禁欲生活からようやく脱し、久々に観た映画はジリジリと肛門括約筋を攻めてくる静かなる発狂映画だったという夢のようなシンクロニシティ。いや~映画って、そしてウンコって、本当にいいものですね。

個人的評価:7/10点

夫婦間主導権争い映画の感想はこちら

実は怖い&衝撃の結末映画好きにおすすめ

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