『仮面/ペルソナ』感想とイラスト モンタージュに隠された秘密

映画『仮面/ペルソナ』のイラスト

実は「私」は「あなた」だったのだ!と言ったら「あなた」は驚くだろうか?そして「私」を受け入れてくれるだろうか?そんなに怖がらないで、痛くしないから……。

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目次

『仮面/ペルソナ』感想とイラスト モンタージュに隠された秘密

  1. 作品データ
  2. 解説
    1. あらすじ
  3. 感想と評価/ネタバレ有
    1. いきなり怒涛の先制パンチ
    2. 不可解な物語?
    3. 極私的なネタバレ解釈
    4. 後世に与えた影響
    5. スヴェン・ニクヴィスト!

作品データ

『仮面/ペルソナ』
Persona

  • 1966年/スウェーデン/82分
  • 監督・脚本:イングマール・ベルイマン
  • 撮影:スヴェン・ニクヴィスト
  • 音楽:ラーショ・ヨハン・ワーレ
  • 出演:ビビ・アンデショーン/リヴ・ウルマン/マルガレータ・クルーク

解説

『ファイト・クラブ』どころではない露骨な暴れん棒サブリミナルに一瞬我が目を疑う心理ドラマです。

監督は『第七の封印』のイングマール・ベルイマン。主演はベルイマン作品の常連であるビビ・アンデショーンと、ベルイマンがノルウェーの劇団で見いだした『秋のソナタ』のリヴ・ウルマン。撮影監督は盟友スヴェン・ニクヴィストであります。

あらすじ

舞台稽古中に原因不明の失語症を発症した女優エリザベート(リヴ・ウルマン)。彼女の世話を担当することになった若い看護婦のアルマ(ビビ・アンデショーン)とともに、理事長が所有する海辺の別荘で療養生活を送ることに。

エリザベートの症状はいっこうに改善を見せないが、献身的に世話を焼いてくれるアルマとの関係は良好だった。しかしその関係もいつしか執着へと変わり、ひとつの手紙をきっかけに決定的な破綻を迎えることとなる……。

感想と評価/ネタバレ有

長らく鑑賞困難となっていたベルイマンの傑作『仮面/ペルソナ』。このたびキングレコードからHDリマスター版が再発され、それと同時にTSUTAYA発掘良品でも導入されたことにより、貧乏なボクでもようやく気軽に観られる環境が整いました。

とはいうものの、ボクがこれまでに観たベルイマン映画はたったの2本。『処女の泉』と『第七の封印』。『第七の封印』は噂にたがわぬ傑作だと歓喜したものの、はるか昔に観たきりの『処女の泉』にはチンプンカンプン。

はてさて今回の『仮面/ペルソナ』はどちらへと転ぶのやら?これはボクの映画鑑識眼が問われているのかな?というわけで、さっそくおっかなびっくりの感想をば。

いきなり怒涛の先制パンチ

一抹の不安を抱えながら観ることとなった本作。しかしそんな不安はオープニングにおける怒涛のモンタージュ攻勢によっていっきに吹っ飛びました!

回転する映写機。モロ出し男性自身。サイレント映画。手話(?)。クモ。解体されるヒツジ。磔刑。死んでいるようで死んでいない人々。少年。彼が愛おしそうに触れようとしている巨大な女性の顔。なんですかこれは!?

ビタイチ意味はわからぬが、このとてつもない恐怖と美と興奮のモンタージュ地獄にボクの脳髄は極度の痙攣を起こしてしまった!いきなり悶絶!絶頂!早すぎる!早すぎる傑作の予感!このテンションが最後まで持続するのか?

不可解な物語?

強烈な先制パンチを見舞ったあとは、一転して地味な描写が続きます。言葉を失った女優と、言葉を吐き出し続ける看護婦。彼女たちふたりだけのあいだで展開される非常にミニマルな物語です。

沈黙し続ける女と喋り続ける女。よく似ているのか?まったく正反対なのか?ふたりの女の心が交錯し、共鳴し、反目し、やがてひとつに溶け合っていく。

ふたりなのかひとりなのか?どちらが実在してどちらが妄想なのか?確かに複雑でいかようにも深読みできる物語ではありますが、これの答えは意外と簡単なのではないでしょうか?

極私的なネタバレ解釈

不躾なネタバレで頭の悪いボクの解釈を述べさせていただきますと、これは要するに複雑な罪の意識にさいなまれている女優のひとり芝居だということです。

つまり自身の罪と欲望を赤裸々に語る看護婦のアルマとは、女優としてのペルソナを被るエリザベートの抑圧された内面であり、内面と外面がぶつかり、理解し合い、やがてひとつに統合されるまでを描いた映画。ではなかろうかと。

これが無知なボクなりに頭をひねった末の結論であります。でもこう考えるのが最も辻褄が合うような気がするのですよね。そういう意味ではあまり難解な映画だという印象はもちませんでした。タイトルですでに暗示されておりますしね。

これがわかると冒頭のモンタージュの意味も少しだけ理解できます。主人公は女優(映画)であり、母(クモ)であり、抑圧された性衝動(肉の棒)を抱え、それを罪(磔刑)と認識し、偽りの仮面をかぶった虚像の人生(死んでいるようで死んでいない人々)を送り、息子(少年)とは絶対的な隔たりがある。

とまあヘタクソな解説を書いてみましたが、皆さんどうぞ信用しないように。あくまで頭の悪いボクの勝手な解釈でありますから。だいたい解体されるヒツジ、焼身自殺をするベトナムの僧侶、ゲットーの少年の意味などはいまだにビタイチわかっておりませんので。

後世に与えた影響

というわけで、怒涛のモンタージュ地獄に傑作の予感をヒシヒシと感じたものの、アルマのとりとめのないお喋りにやや辟易してしまった部分もあり、最終的な評価はいまいち伸びず。意外とわかりやすい物語も要因のひとつですが、これは類似の後続作品を観すぎていたせいかもしれません。

ロバート・アルトマンの『三人の女』。デヴィッド・フィンチャーの『ファイト・クラブ』。デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』。フランソワ・オゾンの『スイミング・プール』。ダーレン・アロノフスキーの『ブラック・スワン』。ドゥニ・ヴィルヌーヴの『複製された男』。etc.

この作品に影響を受けたと思われる作品が多数あり、似たような映画をすでに観てしまっていることによって、逆にオリジナルの印象が薄れてしまった。確かに順序は逆ですが、これまでは容易に観ることができなかったんだから仕方がない!と強弁しておきましょう。

スヴェン・ニクヴィスト!

まあ期待したほどの傑作ではなかったのは残念ですが、それでも十分に凄い映画だとは思いますよ。特に散々書いてきた冒頭のモンタージュ地獄を含む独創的な映像世界は必見です!

盟友スヴェン・ニクヴィストによって撮影されためくるめく魔術的映像美の数々。とりわけリヴ・ウルマンとビビ・アンデショーンの顔がモンタージュされるふたりの対峙シーンには、「いや別に似てないだろう」と思っていただけに驚愕!

やっぱり「私」は「あなた」で「あなた」は「私」だったのか!

個人的評価:7/10点

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