『イレイザーヘッド』感想とイラスト ネタバレ全開徹底解説

映画『イレイザーヘッド』のイラスト

わたくしスパイクロッドを構成するうえで欠かすことのできない最重要映画、満を持しての登場!てなわけでネタバレです。徹底解説です。正解かどうかは知らんがな!

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目次

『イレイザーヘッド』感想とイラスト ネタバレ全開徹底解説

  1. 作品データ
  2. 解説
  3. あらすじ
  4. 感想と評価/ネタバレ有
  5. リンチを見れば映画もわかる
  6. リンチ100パーセント
  7. 悪夢の会食
  8. この世はストレスふきだまり
  9. 怪物スパイク
  10. 逃避と妄想
  11. 天国への扉
  12. で、結局なんだったの?

作品データ

『イレイザーヘッド』
Eraserhead

1977年/アメリカ/89分
監督・脚本:デヴィッド・リンチ
撮影:フレデリック・エルムス/ハーバート・カードウェル
音楽:ピーター・アイヴス
出演:ジョン・ナンス/シャーロット・スチュワート/ジュディス・アンナ・ロバーツ/ローレル・ニア

解説

消しゴム頭がノイズと奇形の赤ん坊と性的妄想に脳ミソやられて天国を夢見る歴史的SFカルトスリラーです。

製作・監督・脚本・編集・美術・特殊効果とひとりでほとんどの仕事を担当したのは『マルホランド・ドライブ』のデヴィッド・リンチ。主演は『ロスト・ハイウェイ』までのリンチ作品にほぼ出演していた盟友のジョン・ナンス。

共演は『トレマーズ』のシャーロット・スチュワート。音楽というか劇中歌の『In Heaven』を作曲したのはピーター・アイヴス。リンチの娘でありのちに映画監督となったジェニファー・チャンバース・リンチも端役で出演しております。

あらすじ

時代も場所もわからないどこかの工業地帯。そこに住む巨大な消しゴム頭をした印刷工のヘンリー(ジョン・ナンス)は、以前の恋人メアリー(シャーロット・スチュワート)から妊娠したことを告げられ、思いがけず結婚へと至る。

しかし生まれてきた赤ん坊は奇形で、絶えず甲高い声でピーピーと泣きわめき、ノイローゼになったメアリーは実家へと帰ってしまう。不気味な赤ん坊とふたりっきりで残されてしまったヘンリー。やがて彼もおかしな幻覚を見るようになり……。

感想と評価/ネタバレ有

デヴィッド・リンチの衝撃的デビュー作、満を持しての登場。何をもって満を持するとするかは意見の分かれるところでしょうけど、個人的には満が持しちゃった感は確かにある。あるような気がする。なんせこの映画はボクの生みの親。

何を隠そうそうしよう、わたくしスパイクロッドの名前と容姿のモデルとなったのがこの『イレイザーヘッド』。この映画に登場する奇形の赤ん坊スパイクくんこそがボクの拝啓、ご先祖様。あなたがいたからボクがいます。合掌。

というわけで、デヴィッド・リンチの衝撃的デビュー作、満を持しての登場。大事なことなので2回言いましたよ。なんせ満を持しての登場ですので、今回は無謀にもネタバレ全開による徹底解説に挑戦します。正解かどうかは知りませんがな!

リンチを見れば映画もわかる

荒廃した工業地帯に暮らす消しゴム頭のヘンリー。元恋人の妊娠。奇形の赤ん坊。ノイズ。出ていく嫁。艶めかしい隣人の女。ラジエーターのふたコブ女。踏みつぶされる物体。吹っ飛ぶ頭。切り刻まれる赤ん坊。白熱。抱擁。そしてThe End。

簡単に要約してしまうとこんな映画であります。鼻クソほじりながら観ててもまったくなんのこっちゃわからない。不条理な悪夢的イメージに耽溺する映画なのでそれでも良いといえば良いが、わかったほうがなお面白い。はず。

この難解な映画を紐解くキーは監督のデヴィッド・リンチ自身。ここさえ押さえてしまえば実はそれほど難しくもない。と、思う。リンチに見えていた世界、彼の脳内の映像化と考えれば理解は早いかも?それではさっそくヘタクソな解説をば。

リンチ100パーセント

まずは当時のリンチの実生活を簡略に。フィラデルフィアでアートを学ぶ学生だったリンチは、21歳のときに恋人が妊娠。これを機に映画を撮り始め、奨学金を得てロサンゼルスへと移り、4年の歳月をかけてこの『イレイザーヘッド』を完成させる。

予期せぬ恋人の妊娠。若くして結婚。子供。家族。そしてフィラデルフィア。当時の彼を取り巻く環境がそっくりそのままこの『イレイザーヘッド』へと投影されております。ただし一般的な現実という視点ではなく、あくまでリンチの脳内視点で。

つまりこれはデヴィッド・リンチという男の純度100パーセントによる脳内妄想映画。しからば映画冒頭で映し出されるヘンリー(リンチ)の頭部と惑星は、彼の内的宇宙を端的に表したものとなる。闇が強調されたモノクロ映像によって。

クレーターだらけの惑星。半壊した小屋。皮膚病の男。すべてが醜く不気味に歪んでいる。皮膚病の男が何かのレバーをガシャンコすると、ビロビロした奇怪な物体が射出される。これはおそらく未成熟な胎児。もしくは精子。

悪夢の会食

皮膚病男のガシャンコ「スペルマン!行っきまーす!」によって、「私、デキちゃったかも♥」と昔の恋人から衝撃の告白を受けるヘンリーの「俺、終わった」感。この衝撃の事実を不意打ちで告げられた、嫁家族とのあまりにシュールすぎる会食。

突然の発作で「フゴフゴ」言い出す未来の嫁。置物のようなお婆ちゃん。夕食のチキンからあふれ出るどす黒いドロドロ。それを見て歓喜のレロレロをする母親。質問後に完全フリーズする父親。そんな悪夢のような会食後に告げられる妊娠。

おそらく現実はこうではなかっただろう。フゴフゴもドロドロもレロレロもなかったはず。しかし当時のリンチの目にはこう映っていたのかもしれない。大人ではない21歳の若者に突きつけられた現実。まるで怪物のような嫁とその家族。

金も職も現時点では輝かしい未来も約束されていない若者の身に降りかかった過度のストレス。そう。この映画の主人公ヘンリー(リンチ)は、冒頭から時に意味不明、時に直接的なストレスの猛威にさらされてすでにダウン寸前なのです。

この世はストレスふきだまり

初登場シーンから憂鬱で、不安げで、おどおどしているヘンリー。過度のストレスにじっと耐えているフン詰まり顔。父親になる不安。家族をもつ恐怖。それと同時に、彼が今現在立っている環境そのものがストレスの原因でもある。

リンチが若き日を過ごしたフィラデルフィア。友愛の1950年代から一転、すさんだ暗黒時代へと突入した1960年代後半。そこで彼が感じた「音」がこの映画の中で再現されております。映画の全編で流れ続ける工場の騒音のような不快なノイズ。

退廃した街の景色もSF的で、ノイズとともにこの世のものではない不安感と閉塞感、つまりは悪夢的なヴィジョンにがんじがらめ。そんなストレスの猛威にフン詰まり顔なヘンリーをさらに襲う、ピーピー泣きわめく奇形の赤ん坊の圧倒的自己主張。

奇形ゆえにその存在は異質な恐怖を伴って描写されておりますが、奇形の赤ん坊ことスパイクはただ泣いて、吐いて、笑っただけ。つまりは普通の赤ちゃんと一緒。しかし子供を、父になることを望んでいなかったヘンリーにはそうは映らなかった。

彼の日常へと唐突に入り込んできた理解不能な異物。怪物。そのストレスは嫁のメアリーとて同じことだったのか、彼女は子供を置いて実家へと帰ってしまう。リンチの妻ペギーが、劣悪な環境に耐えかねて彼のもとを去ったように。

怪物スパイク

ヘンリーの新たなストレスのもととなる奇形の赤ん坊、スパイク(正式名称ではなく撮影時の呼び名)。町山智浩氏によると、このスパイクのモデルはロマン・ポランスキーの傑作性的妄想映画、『反撥』に出てくるウサギの丸焼きだとのこと。

しっかしこのスパイクくんの造形の奇怪さは小便ちびり倒すね!さすがはボクのご先祖様。御先祖様万々歳!本物としか思えないほどリアルなスパイクはいったいどうやって作られたのか?リンチはこの真相に関して徹底して明言を避けております。

ウシかヒツジの胎児だとの説もあるスパイク。魚のような頭部。体には包帯が巻かれており、手足らしきものは見当たらない。与えた食事はプッププ吐き出し、夜通しピーピー泣きわめく。若い男女の身を襲った突然の圧倒的他者。つまりは怪物。

逃避と妄想

意思の疎通ができない圧倒的他者、怪物スパイクとのふたりっきりの生活が始まったヘンリー。病気にかかったとおぼしきスパイクの姿たるや絶叫ものの恐怖。そんな恐怖の怪物の面倒にかかりきりで、外出すらままならない。ストレス。

そんな彼の前にラジエーターから現れた、両の頬がコブのように膨らんだ“ラジエーター・レディ”。市松模様のステージで珍妙なステップを踊り、明るく微笑み、天井から落ちてきた精子のお化け、もしくは胎児をうれしそうにブチュと踏みつぶす彼女。

子どもなんか欲しくない!家族なんかいらない!という男の逃避願望が見せた幻覚。そして闇からぬるりと現れる艶めかしい隣人。彼女との愛欲に溺れる性的妄想。現実逃避と性的妄想。これは前述した『反撥』と共通するテーマであります。

「天国ではすべてがうまく行く。天国には悩みなんかない」そう歌ってヘンリーを天国へと、いや地獄へといざなうラジエーター・レディ。追いつめられたヘンリーの頭部はスパイクへとすげ替わり、スパイクの硬質な絶叫が場を支配していく。

天国への扉

転がったヘンリーの頭部で製造される無数の消しゴム付き鉛筆。試し書き、そして試し消しをした製造責任者は「合格です」と答える。何に合格したのだろう?書かれた文字、歴史をもう消しても問題はないということか?消し飛ぶ準備はすでに万端?

それでも踏ん切りがつかない父親のヘンリーをあざ笑うスパイク。いや、ただ笑っただけか?でもヘンリーには、リンチの耳にはそう聞こえない。いわゆる現実というものに順応できない、裏切られ続けた妄想男の最終決断。

「こいつさえいなければ!」ハサミでスパイクの包帯をジョキジョキ切り開いていくヘンリー。恐怖でわななくスパイク。この動きと声のなんたるリアルなこと!開かれたスパイクの体は臓物むき出し。手足などという余計なモノは存在しない。

怯えたヘンリーは臓物をハサミで一刺し!断末魔のスパイク描写はもはや筆舌に尽くしがたい!未見の方はぜひご覧になってその脳ミソにトラウマを植えつけていただきたい。闇に明滅する巨大なスパイクの頭部。天国への扉はいま開かれた!

瓦解していくヘンリーの内的宇宙。白熱していく画面。ラジエーター・レディとまばゆい光の中で抱擁を交わすヘンリー。そしてThe End……。

で、結局なんだったの?

後半は何やらあらすじの羅列のようになってしまってちょっと反省。で、結局この映画は何を描いていたのか?長々と解説してきましたが、簡単に要約してしまいますと、大人になりきれない男の現実逃避と性的妄想の果ての自殺と相成ります。

そしてその根底にあるのはデヴィッド・リンチ自身の実生活。若くして父親となったリンチ自身の不安と逃避と妄想が投影されている。甘美な夢へと逃げ込んだ映画の結末と実生活とは異なりますが、一歩間違えばこうなっていたかもしれない。

その当時の状況と心境を、リンチの内的現実として描いたのがこの映画というわけです。つまりは純度100パーセントのリンチ映画。これ以降も妄想の怪物として大活躍をしていくリンチですが、ここまで自己を赤裸々に投影させた映画はありません。

デヴィッド・リンチという変態のヴィジョンが純度100パーセントで再現された衝撃的デビュー作。わたくしスパイクロッドの元ネタとなった悪夢の申し子映画。満を持して、満を持してのネタバレ徹底解説。疲れてしまったのでこれにて終了。

個人的評価:10/10点

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コメント

  1. ダムダム人 より:

    〝この赤ん坊がエレファントマンのルーツなのか?(テレビCMより)〟
    やったぁ!!!
    この日をまっていました!!!
    この作品との出会いはテレビCMでしたが、この時は観に行きませんでした。
    たぶん、エレファントマンのヒットに乗じての公開だと思いますが、
    観客の9割は「ドンビキ」だったと思います。
    その後(今から30年くらい前)に買ったビデオ雑誌での紹介で
    なんとなく見たい気分になりましたが、その当時は輸入版のみ。
    (この当時ってどうやって輸入版を入手していたのかしら??)
    それから時は流れ1986年に池袋の名画座(シネマロサかセレサ)でみました。
    (同時上映は「ファンタスティックプラネット」)
    その前日から熱が有って体調があまりよくなかったのでですが
    それをおして行きました。
    衝撃的でした。この手の作品にはあまりなれていなかったので…
    なお、このときの発熱の原因は「水疱瘡」でしたwww
    (スパイクほどではなかったですが、多少発疹がでました)
    この作品を見るたびに子供の時、読んだお話を思い出します。
    それはと或る町の発明家の青年の話で、はじめは近所の人たちの
    困りごとを解決する簡単な発明をしていたのですが
    ある日、人の悩みを「砂」に変える装置を開発して、それを売り出したら
    すごくヒットするのですが、だんだん精神が病んでしまい、
    最後にその発明を自分に使ったら大量の砂が出てくるという話でした。
    この作品の最後で、ヘンリーの周りに漂う白い粉をみるたびに、そのことを思い出します。
    あと、この作品は「新婚さん」や「妊婦」さんは見てはいけないと思います…

  2. スパイクロッド より:

    ダムダム人さんコメントありがとうございます!
    お待ちくださっておりましたか?ありがとうございます。満を持して記事にした甲斐があったというもんです。しかしこの『イレイザーヘッド』との同時上映があの『ファンタスティック・プラネット』とは!どちらもトラウマ級の名作!実はこないだ久々に『ファンタスティック・プラネット』も再見したばかりでして、近いうちに記事しようと虎視眈々と狙っておるところであります。そのときはまた遊びに来てやってください。
    『イレイザーヘッド』から連想したという発明家の話、調べてみたら乙骨淑子(おっこつよしこ)という児童文学作家の『すなの中に消えたタンネさん』のようですね。ボクはこの作品は知りませんでしたが、ちょっと気になるので読んでみようかと思います。

  3. ダムダム人 より:

    お調べになった童話に間違いないです!!!
    さすがよくお調べになられましたね!
    こういう機械を現代人につけたら全員砂に埋もれてしまう気がします。
    子供向けの小説で、ほかにも「フランクリン遠征」を
    モデルにしたと思われる作品が読みたいのですが
    これも電網検索でもまったくヒットしません。
    これを呼んだのは学研が年に一回発売していた雑誌に掲載されていたものでした。
    確か「北極への白い道」と言う様なタイトルでした。
    あと覚えているのは船長の名前が「デロング」と言う様な名前でした。

  4. スパイクロッド より:

    ダムダム人さんコメントありがとうございます!
    児童文学にもとても意味深い深遠な作品がありますからね。まあ苦悩も自分の肉体の一部として、砂になぞ変えてしまわずに抱えて生きていくのがベストだと思います。悩み苦しむこともまた人生の娯楽のひとつですから。お探しの小説ですが、確かにそれらしきものはヒットしませんね。こういうのって喉の奥に刺さった魚の小骨のようにイライラしてしまいます。これもまた人生のあるあるとして抱えて生きていきましょう(笑)。

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