『アイアムアヒーロー』感想とイラスト DQN!ZQN!頭撃つ!

映画『アイアムアヒーロー』のイラスト

平凡な日常ではヒーローになれない我らダメ男。そんな我らが待ち望むカオスの到来。やっとつかんだこのチャンス。律儀で、誠実に、法令順守の精神でヘタレなヒーローになってみせるぜ!

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目次

『アイアムアヒーロー』感想とイラスト DQN!ZQN!頭撃つ!

  1. 作品データ
  2. 予告編動画
  3. 解説
  4. あらすじ
  5. 感想と評価/ネタバレ多少
  6. 映画とは関係ない思い出話
  7. 日常が非日常に浸食される瞬間
  8. 乙女心が爆発するグロ祭り
  9. 革新と停滞
  10. ダメ男がヒーローになるとき

作品データ

『アイアムアヒーロー』

2016年/日本/127分/R15+
監督:佐藤信介
原作:花沢健吾
脚本:野木亜紀子
撮影:神谷誠
音楽:ニマ・ファクララ
出演:大泉洋/有村架純/長澤まさみ/吉沢悠

予告編動画

解説

DQNとZQNの脳天ぶち抜くまなざしは「ごきげんだぜっ!」ってなもんの日本製パニック・ホラー映画です。原作は花沢健吾の同名ゾンビ漫画。

監督は『GANTZ』や『図書館戦争』シリーズの佐藤信介。主演は『アフタースクール』の大泉洋。共演に『映画 ビリギャル』の有村架純、『海街diary』の長澤まさみ、『道 ~白磁の人~』の吉沢悠など。

あらすじ

35歳にして漫画家アシスタント、同棲中の彼女とは破局寸前の鈴木英雄(大泉洋)。人生の負け犬街道驀進中の英雄の人生。そんな彼の平凡だけど絶望的な日常は、ある日を境にして激変することとなる。

いつもどおり徹夜仕事を終え、喧嘩中だった彼女の待つ自宅へと帰ってきた英雄。しかしそこで彼が見たものは、異形の怪物と化した恋人の姿であった!危うく殺されそうになりながらも、なんとかその場を脱出する英雄。

しかし街中にも、ZQN(ゾキュン)と呼ばれる謎のウィルスに感染した怪物たちによる地獄絵図が展開されていた!平凡な日常から非日常へと突然放り出された英雄の、情けなくも必死の生き残りをかけた極限サバイバルの幕が開けるのであった!

感想と評価/ネタバレ多少

ただいま本棚を確認したところ、めぼしい漫画本は『つげ義春全集』全8巻ぐらいしかないほど漫画を読まないボク。よって、この映画の原作である花沢健吾氏の『アイアムアヒーロー』もまったくもって、なにひとつ、完全無欠の未読であります。

んなわけで特に興味もなかったわけですけど、悪い噂しか聞こえてこない日本映画のなかで、珍しくこの映画だけはいい評判ばかりが耳に入り、しかもその好評がかなりボクの乙女心をくすぐる内容とあって、遅ればせながらホイホイ観てまいりました。

というわけで、原作を見事に1ページすら読んでいないただの映画好きによる『アイアムアヒーロー』評、さっそくいってみましょうか。

映画とは関係ない思い出話

主人公は人生詰んでしまったのにそのことに気づいていない、いや気づかないふりをしている哀れな中年漫画家アシスタント。彼の目も当てられないぐらいどん詰まりの日常描写。しかし笑えない。笑えないどころか身につまされてもう泣きそう。

なぜかというと、およそ10年ほど前の自分の姿を見ているようだから。漫画を読まないくせに漫画を描いて、せっかく拾ってくださった担当さんの言うことも聞かず、ひたすら自分の描きたいことだけを描き続けて時間を無駄にしていた20代後半。

そんな暗黒の記憶が脳裏をかすめ、プレミアムシートでひとりちっちゃくなっていた四捨五入したら40歳。『バクマン。』のときも我が身が痛かったのだけど、たまに観る邦画はなんでこんなんばっかなんだ?身につまされて痛いじゃないか!

日常が非日常に浸食される瞬間

我がだけが痛いボクの思い出話は関係ないので置いといて、『アイアムアヒーロー』の感想でしたな。忘れておりました。失敬、失敬。ボクの暗黒記憶を呼び覚ます主人公のどん詰まり日常描写。ここから緩やかに、地続きで移行していく非日常世界。

ここの転換点が非常に曖昧で面白かったですね。日常のような非日常。非日常のような日常。実は世界の様相はすでに様変わりしてしまったというのに、そのことにまったく気づかない平和ボケ。このへんの描写はかなりリアルでしたな。

上空を覆う軍用機。街中を闊歩するZQN。それでも道をのんきに歩いてる平和ボケ。隣で人が喰われているのにスマホで撮影している平和ボケ。ああ~自分もこうだろうなぁって思ってしまった。これが突然の危機に直面したときのリアルな日本人の姿。

日常が突然、非日常によって喰い破られたというのに、そのことに気づかず、自分が立っている場所をまだ日常なのだと思っているうすらボケ。緩やかに移行したと思ったのは、状況ではなく我々の認識の問題だったのですね。いやはや現実的だわ。

乙女心が爆発するグロ祭り

どん詰まった日常を一転ひっくり返してカオスへと持ち込んだZQNなるパンデミック。日常をゾンビが喰い破る。数えきれないほど観てきた設定ではありますが、「よくぞ日本映画でここまでやった!」と絶賛して差し支えないかと。

非日常への転換点となる、主人公の恋人「てっこ」が見せつける『エクソシスト』的アクロバティック。生前の記憶に縛られ、何事かをブツブツつぶやきながら食欲旺盛になるZQNの方々。彼らが演出してみせるカオスへのいざない。

予告編ではあえて見せなかったグロへの大跳躍。口コミによる拡散を狙った珍しくいい仕事をした宣伝。それに乙女心を刺激されてホイホイ釣られてしまった、グロが三度の飯より大好物な人生詰んでしまっているボク。大勝利ですな。

ちょっと滑稽でかわいくもあるがとにかくお腹をすかしたZQNちゃんたちが人肉にかぶりつく。グロがグロとしてグロらしく盛大な花火をぶち上げる感動的な瞬間であります。これに乙女心を刺激されない乙女はいないはず!ZQNよ!俺も乙女だ!

革新と停滞

素晴らしい特殊造形と、思いきったグロ描写。乙女心をくすぐるカオスな祭りの開催によって日本映画の狭い枠を飛び出した『アイアムアヒーロー』。惜しむらくは物語とドラマが旧来の日本映画の枠内に収まってしまっていたということ。

特に英雄と比呂美との道行きがなんともねぇ。あえてグロとの乖離を狙ったのかもしれないけど、これにはおじさんまったく乙女心を刺激されませんでしたよ。説明放棄で「なんとなくわかるだろ?」って感じで突き進む物語もまたしかり。

巨大ショッピングモールに立てこもるという設定も、お約束を踏襲しすぎていてひねりがなかった。『28日後…』程度なら「あ、『ゾンビ』へのオマージュね。リスペクトね」と微笑ましくニヤリとなるのだけど、こちらはちょっとまんますぎましたな。

ダメ男がヒーローになるとき

ZQNとのサバイバルと並行して後半の主題ともなるDQNとの戦い。そこでヒーローとしての覚醒をようやっと果たす主人公の英雄。ここにも文句はありますが、やはりあのヘッドショットの雨あられを見せつけられてしまうと、なんも言えねぇ。

リアルな日常ではすでに詰んでしまっている平凡な男が、カオスな終末が訪れたことによって英雄(ヒーロー)として輝ける瞬間が訪れる。我々ダメ男にとっての願望としてのカオス到来。ここで輝かずにいつ輝くというのだ!

撃てない日本で、引き金を引けないダメ男が、法と倫理と秩序をようやっとかなぐり捨てて、カオスの渦のなかで撃って撃って撃ちまくる。あくまで理性を保ちながら。ダメだから、ヘタレだからこその理性。我々の英雄ついに起つ!

現実的日常では英雄になれない我々のようなダメ男が、カオスな非日常のなかで唯一理性を保ったヒーローとして覚醒した瞬間。男らしくない男らしさとはつまりこういうことさ。安心を与えるカッコよさ。それが結実したヘッドショット祭り。

ここで終わりでいいのか?という不満は確かにあります。続編への色気も感じます。でも、ダメでヘタレな男が、ダメでヘタレなまんまでヒーローとして輝いたヘッドショット祭り。我々ダメ男に夢と希望を与えたグロテスクにボカァ感動しましたよ!

個人的評価:6/10点

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コメント

  1. いごっそう612 より:

    スパイクロッドさんがどんな絵を書くか気になってましたが、いいっすね~(*´з`)
    いつも楽しく読ましてもらっています(*‘∀‘)

  2. えるぼーロケッティア より:

    僕はこの映画はパンフも買うほど好きになってしまいました。
    邦画でパンフ買うなんて小さい頃にみたアニメ映画除いたら初めて。
    スパイクロッドさんの言うとおり日常が緩やかに崩れていく感じはそんなにゾンビ物を見てきたわけではないですが、とても新鮮に感じました。
    勿論スパイクロッドさんのご指摘も納得ですが
    タクシーの大クラッシュや群集がいっせいに逃げてくる様など邦画でこんなシーンがみれるなんて!という喜びでいっぱいでした。
    なにより主人公の英雄が「英雄とかいてひでおです」とえいゆうという読みを強調して自己紹介していたのに対してのラストの改めての自己紹介には、ヒーロー物好きとしてはとてもグッときてしまいました。

  3. スパイクロッド より:

    いごっそう612さんコメントありがとうございます!
    いつもどのシーンを描こうか悩むのですけど、やはり一仕事終えた男の背中を描かずにはおれませんでした。男らしくなれない男の男らしさが爆裂した素晴らしいシーンでしたからね!

  4. スパイクロッド より:

    えるぼーロケッティアさんコメントありがとうございます!
    日常が緩やかに非日常に浸食されていく過程。それを長回しで撮影した心意気が実に素晴らしかったですね!容赦のないグロ描写とあわせて、これまでにない日本映画を撮ろうというスタッフの意気込みが伝わってきました。正直まさかここまでやってくるとは思っておりませんでしたから!
    英雄くんの名前のくだりは非常によかったですよね。男らしいヒーローに憧れていながらそうはなれない男。しかし彼には最初から違った意味でのヒーローとしての要素がすでに備わっていた。安心できるカッコよさ。いわゆる男らしさなどなくてもヒーローにはなれるのです。ただの英雄くんとして。

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