『プロフェシー/恐怖の予言』感想とイラスト 駄作だなんて誰が言った!?

映画『プロフェシー/恐怖の予言』のイラスト

フランケンハイマーを暗黒の20年へと導いた呪われた作品として悪名高いこの映画。さぞかし酷いのだろうと思ったら何をおっしゃる。めちゃくちゃ面白い傑作ではありませぬか!

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作品データ

『プロフェシー/恐怖の予言』
Prophecy

  • 1979年/アメリカ/102分
  • 監督:ジョン・フランケンハイマー
  • 脚本:デヴィッド・セルツァー
  • 撮影:ハリー・ストラドリング・Jr
  • 音楽:レナード・ローゼンマン
  • 出演:タリア・シャイア/ロバート・フォックスワース/アーマンド・アサンテ/ヴィクトリア・ラチモ/リチャード・ダイサート

感想と評価/ネタバレ有

メイン州の山岳地帯を舞台に、製紙工場が垂れ流したメチル水銀によって奇形化、狂暴化したモンスターの恐怖を描いた社会派パニック・ホラーです。監督は『影なき狙撃者』『ブラック・サンデー』の骨太サスペンス&アクションの巨匠ジョン・フランケンハイマー。

駄作?それとも傑作?

フランケンハイマー凋落のきっかけになったとフルボッコにされたいわくつきの珍作。ずっと観たかったのですけど、ようやくソフト化されたのにいつまでたってもレンタルには来ませんでしたので、勢い余ってこんな珍作のDVDを購入してしまいました。

っていうかこれってホントに珍作?巨匠街道まっしぐらだったフランケンハイマーの地位を大暴落させた失敗作としての烙印を押されておりますが、お前らの目は節穴か!めちゃくちゃおもしれーじゃねーか!これのどこが珍作駄作失敗作だ!傑作じゃねーか!

寒風吹きすさぶ闇夜に浮かぶ無数のヘッドライト。獣の息遣い。風に揺れる木々。この森には何かがいる。何かが起こる。そんな予兆、予言をひたすら過剰に大仰に煽り立てるレナード・ローゼンマンによるスコアがまた良い、緊張感バリバリのオープニングで始まる本作。

冒頭から闇、疾走、咆哮、悲鳴がなんとも清々しい。何モノかによって無残にも喰い殺された人と犬のリアルな死体が川に浮かぶ光景を、荘厳なオーケストラの音色とともに見せていくアンビバレンツがとっても牧歌的。つまりはいきなりボクの大好物が並んでいるということ。

ここから貧困と差別、夫婦間の意識の相違、大企業の環境破壊をダラダラと告発していく展開がひたすら退屈だという向きもありますが、大筋ではその意見に同意するものの、なんのなんの、我々バカを退屈させないための仕掛けは多数用意されておったではありませんか。

大企業と環境保護派のインディアンとの対立が、チェーンソーVS斧という異種格闘技戦へと発展する緊張感。製紙工場から垂れ流されたメチル水銀の影響によって狂暴化、さらには高速化したアライグマとの血で血を洗う炎の殺し合い。最高ではありませんか。

とりわけ最高だったのは、大企業が川へと垂れ流した悪意のかたまり(メチル水銀)によって奇形化したグリズリーに襲われる善良なキャンプ一家。ついにその姿を我々の前に現したモンスターの怒りの鉄拳を喰らい、寝袋のまま岩へと叩きつけられて爆死する哀れな少年。

寝袋から顔だけ出してひょこひょこジャンプしているところを、怒りの超高速ラリアットを喰らって盛大な羽毛の花火をあげて爆死する少年の哀れさよ。彼らはただ森にキャンプをしに来ただけなのに。連帯責任。人間に対する慈悲のかけらもないフランケンハイマーによる断罪。

工場の排水汚染によって川が、森が、生き物が奇形化し、その原因を作り出した人間へと牙をむく。フランケンハイマーらしい社会派のテーマをもとに、SFモンスター・パニック要素を恥ずかしげもなく投入し、ひたすら人間を罰し続けるフランケンハイマーの狂気。

実は妊娠中だった主人公の奥さん(エイドリアンことタリア・シャイア)も、メチル水銀によって汚染されたサケを食べていたという、なんともいえない生理的嫌悪と不安感もたまりません。そしてこの不安はモンスターへの共感、憐れみをも生み出すのです。

「自分も、自分の子供もこんな姿になるのかもしれない…」。罠にかかった子グマ(奇形)をまるで我が子のように抱えて逃げる彼女の姿からは、そういう意識が感じとれ、同時に我々にも彼女と同じモンスターに対する共感、憐れみの感情がわき起こるのです。

しかしそんな同情を一顧だにしない自然の我々に対する怒り。こっちの気持ちを完全に無視して、タリア・シャイアの首をガブリとしてくる奇形子グマの容赦ない反撃。彼らと我々はわかり合えないのだ。許してもらえないのだ。我々を根絶やしにするまで追いかけてくるのだ!

奇形グマの着ぐるみ造形をどうこう言う人もおりますが、あの半分溶けかかったクリーチャーとしての姿は悲壮感たっぷりで、子グマとあわせてたまらないものがあります。我々が生み出したモンスター。怒りと悲しみと恐怖をまとった人工的クリーチャー。

濃い霧のなか、シルエットで長老にかぶりついてぶん回すあの雄姿は忘れられません。「死んだかな?」と思わせてからの最後の暴れっぷりも、この手のホラー映画のお約束としていい感じでした。付け加えると、結局何も解決なんぞしていないというラストの咆哮も。

『ゴジラ対ヘドラ』を『グリズリー』的に翻案した社会派失敗作として多くの方に嫌われている本作。重ねて言いますがボクは大好きですよ。特に劇中でも言及されておりますが、「水俣病」を経験した我々日本人こそこの映画は観るべきなのです。

おそらく水銀汚染によって奇形化、狂暴化という内容が差別を助長するとして、長らくソフト化されてこなかったと思うのですけど、あの忌まわしい公害事件を経験した我々だからこそ、この映画が告発している人間の驕り、不正、怒り、不安、恐怖を共有できるはずなのです。

ですので、未見の方はぜひともこの『プロフェシー/恐怖の予言』を観てほしい!確かに少々出来損ないの部分もありますが、巨匠が撮ったB級モンスター・パニックとしても非常に貴重な教材ですから。これが駄作だなんてあたしゃ認めませんよ!こいつは問答無用の傑作だ!

個人的評価:8/10点

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