『ゼロ・グラビティ』感想とイラスト ありがとう地球

映画『ゼロ・グラビティ』のイラスト

「映像は凄いけどドラマがない」だって?あんたバカ言っちゃいけないよ。どこ見てんの?ちゃんとあるじゃない。号泣するほど胸熱のすんばらしいドラマがさ!

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目次

『ゼロ・グラビティ』感想とイラスト ありがとう地球

  1. 作品データ
  2. 予告編動画
  3. 解説
  4. あらすじ
  5. 感想と評価/ネタバレ有
  6. 驚愕の超絶長回し
  7. つながる、つかむ、離す
  8. 生命の物語
  9. 奇跡を信じる男
  10. ありがとう地球

作品データ

『ゼロ・グラビティ』
Gravity

2013年/アメリカ/91分
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/ホナス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:スティーヴン・プライス
出演:サンドラ・ブロック/ジョージ・クルーニー

予告編動画

解説

「マルディグラの毛むくじゃらの男の話」のオチが気になって夜も眠れなくなるSFサスペンスです。

監督はこの映画でアカデミー監督賞を受賞した『トゥモロー・ワールド』のアルフォンソ・キュアロン。主演は『スピード』のサンドラ・ブロック。共演に『トゥモローランド』のジョージ・クルーニー。基本このふたりだけです。

撮影監督はキュアロンの映画をすべて担当している盟友エマニュエル・ルベツキ。翌年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とあわせて、2年連続のアカデミー撮影賞受賞という快挙を成し遂げております。

あらすじ

地上600キロメートルの上空。医療技師のライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、初めてのスペースミッションに参加していた。ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)のサポートを受けながら、船外活動にあたる彼女。

そんな彼女らにヒューストンから緊急連絡が入る。ロシアが自国の衛星を爆破したことが原因で大量のデブリ(宇宙ゴミ)が発生し、猛烈なスピードでこちらへと向かってきているということだった。

ライアンらは作業を中断して退避しようとするが間に合わず、膨大な数のデブリに襲われる。大破するスペースシャトル。漆黒の宇宙空間へと放り出されるふたり。最初からこのミッションには嫌な予感がしていたのだ……。

感想と評価/ネタバレ有

火星にたったひとりで取り残されてジャガイモを育てるゴリラーマンの映画『オデッセイ』。この作品を観ていて思い出したのはこの『ゼロ・グラビティ』。劇場で鑑賞して以来観直していなかった事実にハタと気づき、タンスの奥からBlu-rayを引っ張り出してみた次第。

Blu-rayを購入していながら今まで観ていなかった理由は、やはり自宅鑑賞では劇場のあの興奮を味わえないのでは?という懸念からだったのですけど、いやはやまったくの無問題でありました。やはり問答無用の傑作。

それではいまさらの映画でありますので、今回はネタバレ全開でくだらない感想を書いてみたいと思います。少々長くなると思いますがしばしお付き合いください。

驚愕の超絶長回し

開巻早々、いきなり繰り出される我々の度肝を抜く驚愕の超絶長回し。これを撮影したのがエマニュエル・ルベツキ。『バードマン』における2時間の疑似長回しも凄かったが、こと「長回し」というスペクタクルに関してはこちらのほうが数段上。

宇宙というパースを表現しづらい空間において、見事に映画として絶対不可欠な情報量を凝縮してみせた遠近感。それにおいて重要な役割を担っているのが、スペースシャトルの周りをグルグル回転しているマット・コワルスキーの存在。

はるか彼方に見える母なる地球。スペースシャトル。船外作業をしているクルー。その周りを時に前に、時に後ろに回りながらパースの情報量を補っているマット。一見すると意味がないように見えて、実は重要な役どころなのです。

もちろん3Dで観るのがベストではありますけど、2D自宅鑑賞でもこのパースの表現には静かに心奪われます。音も、気圧も、酸素も存在しない宇宙空間を、見事なパースを作り出しながらゆるやかなカメラワークで舐め回していく縦横無尽。

そんな縦横無尽に押し寄せてくるデブリの大群。不吉な音楽が流れ出し、カメラの動きが速まり、そして無音で轟く衝撃。そう、無音なのです。この恐怖。ゆるやかな弛緩から一気呵成の緊張。これぞキュアロンが描く長回しの真骨頂。

漆黒の宇宙空間へと回転しながら放り出され、やがてただの点と化していく主人公のライアン・ストーン。この恐怖。ここまでの所要時間はおよそ13分。技術的なことは素人のボクにはわかりませんが、この13分間の長回しだけで涙が出る!

つながる、つかむ、離す

グルグル回転しながら暗黒の世界へと堕ちていくライアン。ここにあるのは無力感と絶望。この世界で人は存在できないという現実。迫りくる死の恐怖。死へと離れていく過程で、なんとか彼女の命をつなぎとめてくれたのがマットの手。

ここで見せるライアンの主人公にあるまじき他力本願。死への恐怖は理解できるものの、あまりに弱々しすぎるのではないだろうか?思い返せば映画冒頭から彼女だけが終始テンションが低かった。要するに生命力の低さ。

マットにつながれてただ引っ張られるだけのライアン。ロープにつながれて他者の庇護下にある彼女の姿からは、人間としての未成熟さが感じられる。その理由はこのときに交わされたふたりの会話で確認することができる。

最愛の娘を失って、生きる意味、目的、力を失った女性。それがこの映画の主人公ライアン・ストーンの真実の姿であります。生きる力を失った女性が、生命が存在できない宇宙空間に放り出される。そこで彼女は何を見るのか?

ライアンが、そしてマットが繰り返す何かをつかむ、離すという行為がそれを的確に表しております。つかむこと、離すことが生と死に直結している。必死に何かをつかもうとする手。離した先にあるのは死。ふたりの別離のシーンにはまさにそれが凝縮されております。

どうやら科学的にこれは正しくないらしいのですけど、ドラマ的にはこれで正解なのです。必死にマットの命をつなぎとめようとするライアンの手。彼女の命のためにそれを自ら離すマットの手。ここでも再度の涙ですが、このシーンにはそれ以上の意味合いがあります。

このマットの行為によって、文字どおり命をつなぎとめたライアンが得たであろう、生きるための力の萌芽。ここを転換点として彼女は生まれ変わり始めるのです。

生命の物語

静かに遠ざかりながら、ライアンのことを励まし続けるマット。「絶対に生還しろ」と。その言葉に導かれるように、なんとかISS(国際宇宙ステーション)のハッチへとたどり着くライアン。ハッチをしっかりとつかみ、中へともぐり込む。

エアを充満させ、窮屈な宇宙服を脱ぎ捨て、無重力のなかでたゆたう彼女。50歳とは思えないサンドラ・ブロックの引き締まった美しい肉体。おそらく大多数の方が気づいたことでしょうけど、ここでの彼女のショットはまさに胎児そのものです。

生きながらに死んでいたとも言える彼女が、新たに生まれ変わった瞬間。つまりこの映画の根底にあるのは生命のドラマ。そういう意味では、無数のデブリが象徴するのは精子。生命が存在できない宇宙で描かれる生命の誕生のドラマ。

暗黒の宇宙空間における絶体絶命のサバイバルというスリリングさも素晴らしいのですが、この映画の醍醐味はそれだけではありません。公開時「映像は凄いがドラマがない」と一部で酷評されておりましたけど、そんなことはないのです。

ひとりの女性が生きる力を取り戻していくドラマ。そして生命誕生の瞬間を描いたドラマ。ここには素晴らしいふたつのドラマが歴然と存在しているのです!

奇跡を信じる男

ソユーズへと乗り込み、中国の宇宙ステーション「天宮」を目指そうとするライアン。しかしまさかの燃料切れ。いちどは生きる力を取り戻したものの、万策尽きて静かに死を決意する彼女。そこに突如として現れた死んだと思っていたはずのマット。

なんという奇想天外!いやまあこれは結局ライアンが低酸素状態で見た幻覚だったわけですけど、これを単なる幻として片づけてよいものなのでしょうか?いや、よいはずがありません!これは奇跡!まさに奇跡なのです!

生きることを諦めかけていた彼女のもとに舞い降りた奇跡。居心地のいい母胎の中に逃避するのではなく、外の世界を見ろ。大地を踏みしめろ。自分の人生を生きろ。地球に還れ!絶対に!

ここで3度目の涙。リアルさを売りにした映画における奇跡の描写。アルフォンソ・キュアロンのもうひとつの傑作SF映画『トゥモロー・ワールド』でも絶望における奇跡の描写がありましたが、彼は奇跡を信じている男なのです。

これがこの映画を傑作たらしめた非常に重要な瞬間だとボクは思っております。あまりにリアルな絶望のなかで光り輝く一瞬の奇跡。これを信じているアルフォンソ・キュアロンという監督を、ボクも絶対的に信じております!

ありがとう地球

ここからライアンが地球へと帰還するまでの見事な展開。科学的にはいろいろと突っ込みどころもあるようですけど、これはドキュメンタリーではなくあくまで映画なわけですから、多少のことには目をつぶりましょうよ。面白いんだから!

「もう逃げない」と決めたライアンの生きるための最後の闘い。もうこのへんからはボクは泣きどおしですね。ここでも生きるために何かを必死につかむという描写がリフレインされています。

そしてここでも迫りくる無数のデブリ。つまり精子。ライアンが乗り込んだ脱出ポッドが子宮に見えるのも偶然ではない。「誰のせいでもない。結果がどうあれ、これは最高の旅よ。準備オーケー!」。

このセリフはそのものズバリ、生まれること。生きること。そして人生の素晴らしさを謳ったものです。脱出ポッドが湖に落ちるのも偶然ではない。限りなく生まれたままの姿に近い格好で、羊水の中から外の世界へと出てくるライアン。

これは生命の誕生の瞬間であり、ライアンという女性が生まれ変わった瞬間でもある。大地を噛みしめ、感謝し、重力を体全体で感じながら、生まれたての小鹿のようにヨタヨタと、しかし力強く立ち上がり、歩き出す彼女。

やはり素晴らしい映画だ!唯一の欠点は邦題かな?『ゼロ・グラビティ』ではテーマが伝わらない。この作品のタイトルは『Gravity』。つまり重力。生命の誕生、生存に必要不可欠な重力。要するに、ありがとう母なる地球!

個人的評価:9/10点

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『ゼロ・グラビティ』感想とイラスト ありがとう地球
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コメント

  1. ミス・マープル より:

    「オデッセイ」と比べるとかなり雰囲気の違う映画でしたね。
    サンドラ・ブロックの演技力にすべてがかかっていました。
    ラストに少しずつ歩き始める姿が再生を描いていました。
    とはいえわたしも劇場で見た後、それっきりなので、今度見直してみようと思います。

  2. スパイクロッド より:

    ミス・マープルさんコメントありがとうございます!
    『オデッセイ』は絶体絶命の状況でもひたすら明るかったですからね。あれはあれで悪くないとは思いますけど、ボクはやっぱりこっちですね。サンドラ・ブロックが人として生きる力を取り戻していく過程にひたすら感動でした。自宅鑑賞でもあの興奮と感動は十二分に味わえますので、マープルさんもぜひ観直してみてください。また新たな発見があると思いますよ。

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