『マジカル・ガール』感想とイラスト 余白を味わういけずな映画

映画『マジカル・ガール』のイラスト

『魔法少女ユキコ』は悲劇の引き金。2+2=4は変えられない。なくしたピースは戻らない。なぜ?何?どうして?これは物語の余白を楽しむ映画。余白を埋めるのはあなたの仕事なのです。

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目次

『マジカル・ガール』感想とイラスト 余白を味わういけずな映画

  1. 作品データ
  2. 予告編動画
  3. 解説
  4. あらすじ
  5. 感想と評価/ネタバレ多少
  6. 埋まらない余白
  7. 映画的マジカル
  8. ふたりの魔女と守護天使
  9. いけずを受け入れたまえ

作品データ

『マジカル・ガール』
Magical Girl

2014年/スペイン/127分/PG12
監督・脚本:カルロス・ベルムト
撮影:サンティアゴ・ラカイ
出演:バルバラ・レニー/ルイス・ベルメホ/ホセ・サクリスタン/ルシア・ポリャン

予告編動画

解説

映画とは、物語とは余白を楽しむもの、永遠に完成しないジグソーパズルだと言わんばかりのスペイン製ネオ・ノワールです。

監督はこれが長編デビュー作となる漫画家出身という異色のキャリアをもつカルロス・ベルムト。日本のアニメや漫画が大好きというオタク野郎であります。出演者は『フリア よみがえり少女』のバルバラ・レニーなど。

あらすじ

白血病で余命いくばくもない12歳の少女アリシア(ルシア・ポリャン)。彼女の夢は大好きな日本製アニメ『魔法少女ユキコ』のコスチュームを着て踊ること。しかし父親のルイス(ルイス・ベルメホ)は失業中で、どこにもそんなお金はなかった。

思い余ったルイスはついに宝石強盗を計画するが、決行直前に心に深い闇を抱えた人妻バルバラ(バルバラ・レニー)と出会う。彼女と出会ったことによってルイスの人生は大きく転がり始める。

バルバラ、そして刑期を終えて出所したばかりの元数学教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)、娘のアリシア。ルイスの行動をきっかけに問題を抱えた男女の運命が複雑に交錯し、逃れられない結末へと動き出すのであった……。

感想と評価/ネタバレ多少

日本のサブカルチャーからの影響が色濃い本作。しかし自分はアニメへの知識がひたすら浅く、監督が影響を公言している『魔法少女まどか☆マギカ』なんて知っているのはタイトルだけ。魔法少女といえば『クリィミーマミ』だろ?なんて世代です。

ほかにも現在は演歌歌手として活動している長山洋子のアイドル時代のデビュー曲、『春はSA-RA SA-RA』が劇中曲として使用されていたり、江戸川乱歩の長編探偵小説『黒蜥蜴』へのオマージュなど、何かと日本と縁の深い本作。

しかし、日本のアニメからの影響、ポップな『マジカル・ガール』なんてタイトル、ルシア・ポリャンちゃんの愛らしさに騙されてはいけませんぞ。軽い気持ちで鑑賞しようものなら間違いなく泣きを見るヘビー級のノワール映画ですからな。

埋まらない余白

白血病に侵された薄幸の美少女。娘の夢を叶えてやりたいが先立つものがない無職のダメ親父。そんな親子の心温まる感動物語。なんてわけがない超ヘビー級のノワール映画。しかもひたすら意地が悪い。何が悪いってこの映画、徹底的に不親切なの。

入り組んだ時系列。明かされない過去。見せない衝撃。戦慄的場面で突然流れ出す『春はSA-RA SA-RA』。笑っていいのやら悪いのやら?ってこないだの『ロブスター』でも同じこと書いたような気が?しかし今度はさすがに笑えない。

痛すぎる運命の歯車。逃れられない現実。不変の2+2=4。なんじゃそりゃ?お前らには教えてあげないよ~だ。バーカ!バーカ!なんて感じの意地悪さ。見つからない最後のピース。埋まらない余白。ムカつく人はムカつくでしょうな。

あえて見せない、描かないことによって、映画としての、物語としての深さが知れない底なし沼を偽装しておるのですよね。教えてあげないことによって浅いのか深いのかわからなくなる。そういう映画はお嫌いですか?ボクは大好きです。

映画的マジカル

偽装と書きましたが、この場合、実際の深さ浅さは関係ないのですよね。余白を意識させた時点ですでに勝利は我が手中。付いてこれない者は振り落とす覚悟だが、喰いついてきた獲物は絶対に逃がさない。わしゃお魚か?

目の前の余白というエサに食いついてしまったボクらお魚さんは、欠けたピースを探して右往左往。余白を何とか埋めて見せようと四苦八苦。しかしそんな釣った魚どもにエサはもうやらんと、わずかなヒントすらチラ見せしてくれないいけずな監督。

エサを求めて口をパクパクさせている瀕死のお魚を尻目に、物語は予測不能なご都合主義ともいえる怒涛の展開を見せていきます。『魔法少女ユキコ』をきっかけに複雑に絡み合っていく人間が犯す罪。なんて意地悪な運命の歯車。

それらを見せていくやたらとカット数の少ないフィックス。派手さはない。派手さはないのだが、巧みな編集とクールすぎる画面構成。意味のわからない、何げない、あえて見せないカットの連続。これぞ映画のマジカル。まさに『マジカル・ガール』。

ふたりの魔女と守護天使

っていうか『マジカル・ガール』って誰を指してるんだろう?答えはふたり。薄幸の美少女アリシアと、嘘つきファム・ファタールのバルバラ。「バルバラ」って名前だけですでに魔女だという先入観。なるほど。魔法少女ではなく魔女映画だったか。

魔女に魅入られ、彼女たちを守るために罪を犯すふたりの男。2+2=4。無邪気な小悪魔と、妖艶な魔女。そしてふたりの守護天使。自分の娘の魔法にかかってしまったルイスは理解できるが、なぜダミアンはバルバラの守護天使になったのか?

答えは意味深なオープニングに隠されている。最初は意味がわからなかったが、それを理解したときの衝撃。そしてラストで立場が逆転した状態で繰り返される勝利とも、赦しとも、魔法ともつかないこれまたいけずな終わり方。

理に生きていた堅物の数学教師ダミアンは、あのとき妖艶な小悪魔の不条理な魔法にかかってしまったのでしょうね。そう、恋という名の魔法に。そして彼女の守護天使となった。そして今度も彼女を守り、赦し、解放したのであろうか?

最後までいけずなのでよくわかりませんが、バルバラのために一肌脱ぐことを決意したダミアンの身支度は激シブです。スペインの情熱的歌曲『炎の少女』をバックにビシッとスーツを着込むダミアンの勇姿には、笑えるほど泣けてきます。

いけずを受け入れたまえ

主要キャラ4人のあいだですれ違う想いの一方通行も、なんともやりきれない痛みを残します。アリシアの真の願いを思うとなおさらやりきれない。なぜこれに気づかないのか?本当に大事なことはすぐそばにあるのに、それを見逃してしまう非情な現実。

これは必然なのか?必然なんだろうね、監督のなかでは。ホンマにいけずな監督やわ。登場人物の誰にも想いを託さず、適度な距離をもってひたすら定点観測をしている。ハネケに似ているといえば似ているかな?この突き放した感覚。

結局のところオープニングのマジックがすべてなのかな?何か大事なものを渡そうとして渡さない。そういう映画なんですよこれ。いけずでしょう。でもそこが好き。そんないけずなあなたが好き。そういういけずを体現しているのがバルバラなのかも?

そんないけずな彼女の怪しさに、闇に、嘘に、弱さに心臓を鷲づかみにされてしまったダミアン。もう離れられない。忘れられない。彼女を忘れるためのピースはすでに失われてしまった。ここまで来たら一蓮托生!地獄の底まで付き合うぜ!

ボクもダミアンと一緒なのかな?欠けたピース、埋まらない余白に心を奪われてしまった。ボクと同じいけずな余白が大好物な方にはおすすめできますが、何事もはっきりさせないと気がすまない人にはちょっと不向きかも?なんせいけずですから。

個人的評価:8/10点

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