『スネーク・アイズ』感想とイラスト ラストは無常に流されたい

映画『スネーク・アイズ』ニコラス・ケイジのイラスト(似顔絵)

「Snake Eyes(蛇の両目)」とはカジノ用語でゾロ目の1が出ることで、そこから「親の総取り」、転じて「一巻の終わり」を意味する。それではこの映画における勝者とは誰なのか?ひとつだけ言えることは、この映画を布石としてデ・パルマは都落ちをしました。

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作品データ

『スネーク・アイズ』
Snake Eyes

  • 1998年/アメリカ/99分
  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 脚本:デヴィッド・コープ
  • 撮影:スティーヴン・H・ブラム
  • 音楽:坂本龍一
  • 出演:ニコラス・ケイジ/ゲイリー・シニーズ/カーラ・グギノ/ジョン・ハード

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

ボクシングのヘビー級タイトルマッチの試合中に起きた国防長官暗殺事件。現場に居合わせた汚職刑事が事件の裏側に隠された陰謀へと挑む、『ミッドナイトクロス』以来となるデ・パルマ久々の政治サスペンスです。

ラストは無常に流されたい

『ミッション:インポッシブル』の大成功によってふたたび息を吹き返したブライアン・デ・パルマ。その息の根を止める布石ともなったのがこの『スネーク・アイズ』。最終的にとどめを刺したのは『ミッション・トゥ・マーズ』ですが、きっかけはこの作品での大惨敗。

まあハリウッドで仕事ができなくなったことを是とするか否とするかは意見の分かれるところでしょうが、干されてしまったのは紛れもない事実。批評・興行ともに散々な結果に終わった本作の敗北は、デ・パルマを表舞台から遠ざける一因となってしまいました。

しかしこの『スネーク・アイズ』はそこまで叩かれるほどの失敗作なのだろうか?『ミッション:インポッシブル』で久々に手にした成功によって、確かに浮かれ踊ってやりすぎてしまったきらいはあります。お得意の映像テクニック出血大サービスが確かにうざいです。

冒頭における13分間の疑似長回しという暴挙から始まり、フレーム・イン・フレーム、スプリット・スクリーン、スローモーション、一人称視点、真俯瞰、壁抜け、シルエット、鏡のトリックと、やりたい放題好き放題自分大好きのオナニー三昧。

この過剰な自己愛、映画愛がしごくまっとうな一般客、そして真面目な批評家の不評を買ったのも理解できます。でも考えてもみてください。この映画にその過剰な自己中演出が存在していなかったらどうなっていたかを。

ムチャクチャな暗殺劇。モロバレ推理劇。よく見る陰謀話。偶然による事件解決。過剰なサスペンス演出と強引さ、そして映像テクニックの雨あられがあったからこそ、こんなしょうもない脚本でもそれなりに観られるサスペンス映画へと仕上がっていたのです!

けなしているようでこれでも精一杯に褒めてますよ!ダメな脚本も含めてこの映画が、いや、デ・パルマが好きなのです!それに過剰な映像テクニックのみならず、この映画にはデ・パルマ映画の本質である「負け犬」要素がしっかりと刻まれておるのです。

初登場シーンからもう超絶にうざいニコラス・ケイジ演じるリック・サントーロ。彼のやりすぎ演技が不快に痛快なハマり役ですが、このクズ人間の虚勢と矜持、葛藤と敗北が、やりすぎも含めて良いのです。人間のクズだけどいい奴っているでしょ?そんな感じ。

そんな彼の敗北のドラマ。汚職にまみれたクズ刑事が、唯一信頼していたといってもいい、心のどこかでは憧れていた、誇りに思っていた親友のために奮闘し、見事なまでに手のひら返しで裏切られる。そんな悲しい、痛々しい、やりきれない敗北のドラマ。

しかも自分の手では何ひとつ解決しない。何も達成しない。カタルシス皆無の負け犬映画。ニコラス・ケイジによるやりすぎハイテンション、やりすぎ悶絶、やりすぎズタボロ演技が絶妙にハマっており、いつも以上にデ・パルマの負け犬魂が強調されていたと思います。

初稿の段階ではハリケーンの影響で大洪水が起き、ケイジもシニーズも、事件も陰謀も想いも全部呑み込んで、「はいおしまい」だったらしいのですけど、このラストが実現していたらさらなる負け犬映画、無常映画として評価は変わっていたかもしれません(逆の可能性もおおいにあり)。

そういう意味では公開版のラストは蛇足です。ただ一部で「意味不明」だと言われている“赤い宝石”のカットは良かったですね。これによって永遠に灯台の灯りへと群がる有象無象の皮肉が強調され、この映画全体を貫く「どうしようもない感じ」が際立っておりました。

ただやっぱわかりにくいかな?別にたいした謎なんてないんですけどね。人の世は常に悪事がはびこり、それは必ずしもすべて明るみに出ることはなく、人知れず闇へと消え、忘れられ、そしてまた繰り返される。ああ~やっぱデ・パルマって負け犬の鑑のような人だわ。

個人的評価:6/10点

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傑作負け犬映画の感想はこちら

デ・パルマ好きにおすすめ

コメント

  1. ハリー より:

    こんばんは
    うーん、確かにグダグダ感が凄い映画でしたね。推理劇としても半端、ポリティカルサスペンスとしても甘々…。
    しかし脚本が良かったら、「バンテージポイント」みたいな作品になれたのかな?とも思いますね。

    • spikerod より:

      ハリーさん、コメントありがとうございます!

      グダグダでユルユルのボロボロですけど、ボクはこの映画嫌いになれないのですよね。特に『ミッション:インポッシブル』である意味では我を抑えたあとだけに、このやりすぎなまでのくどい演出がデ・パルマニアにはたまらんかったのですよね。「お!帰って来たな!」って感じで。ですので、この映画を許せれるかどうかは、ひとえにデ・パルマへの「愛」で変わってくるかと思います。

  2. マーフィ より:

    先日録画していたものをようやく観れました。
    ショボい食材をものすごい量の調味料と油で味付けしたみたいな映画でした。
    ニコラス・ケイジのズタボロっぷりはもうギャグスレスレですね。でも、そこがよかった。編集室で親友に詰められるシーンなんか、みじめったらしくて、かわいそうで…。

    演出地獄は後の『マイノリティリポート』や古典の『めまい』と同じように、あえてそうすることで「カメラ」や「映像」、「目にしているもの」を観客に意識させる意図もあったのでしょうが、それにしても脚本の雑さとのバランスが悪すぎるといった感じですかね。『JFK』とかも意識してたのかな?とか、決して誉められないんだろうけど、なんか色々話したくなる力のある映画でした。

    でも、まあ、うまい料理だった?って聞かれたら、うまくはない。そんな味。

    • spikerod より:

      マーフィさん、コメントありがとうございます!

      信じていた親友のシニーズから手のひら返しでガンガンに詰められるケイジの惨めな姿は、本当に哀れな負け犬っぷりで大好きです。グギノとの階段での会話で、あまりのショックにもう笑うしかないって感じのどうしようもなさもたまらない。こういうところがデ・パルマを、この映画を嫌いになれないゆえん。

      穴だらけの脚本と過剰な演出地獄とのアンバランスさは、確かに妙な味付けで旨いのかまずいのか判断つきかねますが、ヒッチコックみたいに上手くない、なんともいえない突っ込みどころの多さがまたデ・パルマの味なのです。ヒッチコックは関節技がとにかく上手い寝業師ですが、デ・パルマはそれに憧れてるのになぜか飛び関節ばっかりしちゃうトリックスターみたいなもの。そこがまたかわいいですよ~。

  3. らびッと より:

    そういえば僕の1番好きなデ・パルマ作品でしたね。
    何よりこの頃のニコラス・ケイジは乗りに乗っていましたし、デ・パルマお得意のカット割りや衣装、閉鎖空間でのサスペンス、坂本龍一の音楽など僕が好きな要素が詰まってるんですよね。
    作品の時間も1時間39分と観やすいのもいいです。
    そういえば、そろそろブライアン・デ・パルマの新作観たいですね。
    「Lights Out」というアクションスリラーを監督するという記事を読んだのですがそれ以降なかなか情報が入ってこないので。

    • スパイクロッド より:

      らびッとさん、コメントありがとうございます!

      一般客にもデ・パルマ・ファンにも評判の悪い本作ですが、この『スネーク・アイズ』がいちばん好きだとはさすがらびッとさん!お目が高い!おっしゃるとおりちょうどよい上映時間のなかで、デ・パルマの味を詰め込んだなかなかの作品でして、なぜこんなに嫌われているのかボクにも理解できません。ニコラス・ケイジのノリノリ演技も楽しいですしね(笑)。

      デ・パルマの新作ですが、確かにまったく情報が入ってこないのですよね。『ミッション・トゥ・マーズ』の失敗によりハリウッドを追われたデ・パルマですので、資金面ではけっこう苦労していると思われるのですけど、まだまだ引退する年でもないので、あと4、5作は映画を撮ってほしいもんです。前作の『パッション』ではまだまだ老け込んでいないところを見せつけてくれておりましたからね!

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