『ベイビー・ドライバー』感想とイラスト 人生のサウンドトラック

Please Shere!

映画『ベイビー・ドライバー』アンセル・エルゴートのイラスト(似顔絵)

我々の人生に寄り添い続ける音楽を、その記憶を、力を、躍動を、映像と音楽と人生が一体化したひとつの塊として胸元をえぐってくるエンタメ快作『ベイビー・ドライバー』。これは未来へのステップアップであり、ある意味では過去との惜別でもあるのだろうか?

スポンサーリンク

作品データ

『ベイビー・ドライバー』
Baby Driver

  • 2017年/イギリス、アメリカ/113分
  • 監督・脚本:エドガー・ライト
  • 撮影:ビル・ポープ
  • 音楽:スティーヴン・プライス
  • 出演:アンセル・エルゴート/リリー・ジェームズ/ケヴィン・スペイシー/ジョン・ハム/ジェイミー・フォックス/エイザ・ゴンザレス

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

幼い頃の交通事故による後遺症で耳鳴りに悩まされ、終始iPodで音楽を聴き続ける凄腕のゲッタウェイドライバー(逃がし屋)の愛と戦いと成長を描いたクライム系カーアクション映画です。監督は『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のエドガー・ライト。

アクションミュージカルの誕生

映画冒頭の銀行襲撃シーン、それに続く警察との壮絶なカーチェイスシーンのバックでフルコーラス流されるジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『Bellbottoms』。これがこの映画のすべてを物語っているのは、上の動画を観ていただいたら一目瞭然。

映像のための音楽でも、音楽のための映像でもない、映像と音楽が高次元で融合した新たな映画、アクションミュージカル誕生の瞬間。携帯音楽プレーヤーの普及により、我々の人生と音楽がより密にシンクロし出した事実を的確に表現した最初の映画かもしれません。

ただコーヒーを買いに行くだけの道のりを軽快に彩り、恋を加速させ、勇気と決心、不安、そして少しの狂気、何より忘れられない記憶に、我々の人生に寄り添い続ける音楽。それを映像の付け合わせとしてではなく、映像と、人生との一体化によって描き出したのがこの映画。

音楽の趣味、記憶というのは個人的なものであり、その曲に対する思い入れの深さによって効果はまちまちでしょうが、心と体のアクションと見事に呼応した今作の演出はそれらを打ち破る推進力を備えており、この一点のみでこの映画の成功は約束されたも同然だと言えます。

喪失と獲得、そして成長

物語はゲッタウェイドライバーものの先例で、この『ベイビー・ドライバー』にも大きな影響を与えているウォルター・ヒルの『ザ・ドライバー』、ニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』と同じくいたってシンプル。

プロフェッショナルな裏社会のクールさを描いた『ザ・ドライバー』、負け犬の哀愁をスタイリッシュバイオレンスで描いた『ドライヴ』とこの『ベイビー・ドライバー』が異なるのは、先例のクールでバイオレントな大人の世界に子供を放り込んだということ。

主人公のベイビーは幼い頃の交通事故によって両親を失い、自分自身も後遺症による耳鳴りに悩まされている青年。それを抑えるために終始iPodで音楽を聴き続け、それによって集中力と神経を研ぎ澄まし、驚異的なドライビングテクニックを手に入れたという設定。

ひょんなことから暗黒街の大物ドクにその腕を買われたベイビーは、彼に作った莫大な借金を返済するためなかば強制的に組織の仕事、強盗の逃がし屋を務めさせられていたのだが、ウェイトレスのデボラとの出会いにより、裏稼業から足を洗う決意をするというのがこの映画の簡単なあらすじです。

散々観てきたこの手のクライムムービーの定番ですが、前述しましたとおり面白いのは主人公が子供だということ。ここで言う「子供」とは肉体的な「子供」ではなく精神的な「子供」。ゆえに彼がベイビーと呼ばれている(本名ではない)のも非常に示唆的なのですよね。

幼い頃の交通事故によって大事なものを喪失したトラウマから、外界と自分との間に障壁を設け、自分の世界に閉じこもっている子供。その象徴が音楽であり、車であり、サングラスなのですよね。そんな子供をクライムムービーの暗黒世界に放り込むという見事な化学反応。

ベイビーが半強制的に従事させられている逃がし屋家業は、彼を忘れられない記憶へと縛りつけ、閉じ込めておく装置のようにも思えます。ある意味では大人の庇護によって子供でいることを義務づけられた空間。しかし子供はいつか大人になるもの。

そのきっかけはドラマチックな映画の必然として「恋」となるわけですが、この恋によって自分を守ってきた、大切なものであるはずの音楽と車をいったん喪失し、そしてまた新たなかたちで取り戻すという、喪失と獲得、そして成長を描いた着地点にも感心します。

それを最も端的に表していたのが、少年時代の大切な記憶、思い出である音楽を微かに耳で、そして体で聴き取るシーンでしょう。ベイビーの喪失と獲得、そして人生の再スタートを描いたこの映画屈指の名シーンだと思います。

おっさんパラダイス

極端に汚れきった大人の世界と対峙する子供という構図は、先だって公開された『スパイダーマン:ホームカミング』とも相通じるものがありますが、あちらのトム・ホランドに負けず劣らずのかわいさを振りまくアンセル・エルゴートの魅力も忘れてはなりません。

190センチ越えの長身にベビーフェイス、長い手足を活かした躍動感、何より状況と無関係を装うおとぼけポーカーフェイスがめちゃキュートです♥そんな彼に大人の現実を直視させる、きったね~男汁全開なおっさんどもの存在もその筋(?)の方にはたまらんものがあるかと。

暗黒街の大物ドクを正体のつかめない飄々さで演じるケヴィン・スペイシー。何をしでかすか予測不能な狂気を発散しているジェイミー・フォックス。男性ホルモンの毛深さが尋常ではなくセクシーなジョン・ハム。いずれ劣らぬ濃厚なおっさん汁による悩殺天国。

彼らのうちの誰が最終的な悪役となるのか?こちらの安易な予測を軽やかに裏切ってみせる意外な展開も必見ポイントならびに爆笑ポイントであり、やはりガキにケジメを叩き込むのは俺たち汚れきった大人の男の仕事。因果応報ってのはつまりこういうことよ。

天国と地獄

てなわけで、映像と音楽が高次元で融合したアクションミュージカル世界で、毛深いおっさんどもとチュルチュルの坊やがしのぎを削り、因果応報の果てに喪失と獲得、そして新たな人生の門出が祝福されるという痛快エンターテインメント快作『ベイビー・ドライバー』。

公開初日からボクのタイムラインでは激賞の嵐であり、ここまでの感想を読むかぎりボクの評価も右へならえかと思われるかもしれませんが、実際には言うほどハマらなかったのが現実であります。確かによく出来たエンタメ快作で面白かったけど、それ以上ではない。

より広い層へとアピールするべく舵を切ったエドガー・ライトの挑戦は高いレベルで成功していると思うのですけど、そのぶんボンクラの心に響き、永遠に残り続ける「愛すべき俺たちの映画」という感覚は減退してしまった。なんて言うか、喜ばしいんだけど悲しい映画。

それに先例として挙げた『ザ・ドライバー』や『ドライヴ』と比較してしまうと、やはりボクはあのクールでバイオレンスで後戻り不可能な暗黒世界のほうに強く惹かれてしまう。汚れた世界から正しき者が帰還する映画より、とことんまで突き進む破滅の美学に惹かれてしまう。

まあそういう先例との意図的な距離、違いを模索した結果なのかもしれませんけどね。ところで『ザ・ドライバー』の監督であるウォルター・ヒルとエドガー・ライトには親交があるらしく、実は今作にこっそりウォルター・ヒルがカメオ出演している事実をあとで知りました。

声だけの出演なのですが、なんかほっこりするオマージュエピソードでいいですよね。意外とカメオ出演が多い本作、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーに、『Bellbottoms』を提供したジョン・スペンサーも堂々と出ておりますので、ファンの方はどうぞ刮目を。

ちなみにボクが刮目して飛び上がったのは、あるシーンで『ファントム・オブ・パラダイス』のスワンことポール・ウィリアムズが出演していたこと!「お前生きとったんか!」と言っては失礼ですが、その小さな雄姿に『ファントム』ファンとして狂喜乱舞してしまいました!

The Hell Of it/この世は地獄さ!

『ベイビー・ドライバー』プレイリスト

最後に、30曲にも及ぶ『ベイビー・ドライバー』のプレイリストを参考までに掲載しておきます。個人的なおすすめは、映像とのシンクロ率ではBob & Earlの『Harlem Shuffle』とThe Button Down Brassの『Tequila』。

単純に好きな曲で言えばダムドの『Neat Neat Neat』、T・レックスの『Debora』、ブラーの『Intermission』、そしてこの『ベイビー・ドライバー』のクライマックスを狂気で彩るクイーンの『Brighton Rock』などのUKロック勢でしょうか。

エドガー・ライトは『ショーン・オブ・ザ・デッド』でもクイーンの『Don’t Stop Me Now』を印象的というか非常に愛らしいバカバカしさで使用しておりましたので、これはもう単純にファンなのでしょうね。

『ベイビー・ドライバー』プレイリスト

  1. Bellbottoms – Jon Spencer Blues Explosion
  2. Harlem Shuffle – Bob & Earl
  3. Egyptian Reggae – Jonathan Richman & The Modern Lovers
  4. Smokey Joe’s La La – Googie Rene
  5. Let’s Go Away for Awhile – The Beach Boys
  6. B-A-B-Y – Carla Thomas
  7. Kashmere – Kashmere Stage Band
  8. Unsquare Dance – Dave Brubeck
  9. Neat Neat Neat – The Damned
  10. Easy (Single Version) – The Commodores
  11. Debora – T. Rex
  12. Debra – Beck
  13. Bongolia – Incredible Bongo Band
  14. Baby Let Me Take You (In My Arms) – The Detroit Emeralds
  15. Early in the Morning – Alexis Korner
  16. The Edge – David McCallum
  17. Nowhere to Run – Martha and the Vandellas
  18. Tequila – The Button Down Brass
  19. When Something Is Wrong with My Baby – Sam & Dave
  20. Every Little Bit Hurts – Brenda Holloway
  21. Intermission – Blur
  22. Hocus Pocus – Focus
  23. Radar Love – Golden Earring
  24. Never, Never Gonna Give Ya Up – Barry White
  25. Know How – Young MC
  26. Brighton Rock – Queen
  27. Easy – Sky Ferreira
  28. Baby Driver – Simon & Garfunkel
  29. Was He Slow? – Kid Koala
  30. Chase Me – Danger Mouse featuring Run the Jewels and Big Boi

個人的評価:6/10点

人生サントラ映画の感想はこちら

音楽映画好きにおすすめ

Please Shere!

Follow Me!

この記事をお届けした
映画を観たからイラスト描いたの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク
トップへ戻る