『デッドプール』感想とイラスト 第四の壁を超えてみな

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映画『デッドプール』のイラスト
第四の壁を軽やかに超えてみせるクソ無責任ヒーロー降臨。ヒーローを、映画をメタ化したその先に広がる世界とは?確かに面白いけど良い子は真似しちゃダメだよ!

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作品情報

『デッドプール』
Deadpool

  • 2016年/アメリカ/108分/R15+
  • 監督:ティム・ミラー
  • 脚本:レット・リース/ポール・ワーニック
  • 撮影:ケン・セング
  • 音楽:トム・ホルケンボルフ
  • 出演:ライアン・レイノルズ/モリーナ・バッカリン/エド・スクライン/T・J・ミラー

参考 デッドプール (映画) – Wikipedia

予告編動画

解説

クソ無責任ヒーローが下ネタ全開で第四の壁を突破しながら、愛する彼女ともういちど〇✕△するために頑張っちゃう異色スーパーヒーロー映画です。

監督は主にCGやVFXの分野でキャリアを積んできたティム・ミラー。苦節20年にして念願の長編監督デビューです。主演は『グリーン・ランタン』のライアン・レイノルズ。緑のトラウマから赤への解放を望んだのでしょう。

共演はテレビドラマ出身のモリーナ・バッカリン、『トランスポーター イグニション』のエド・スクライン、『ベイマックス』のT・J・ミラーなど。音楽は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のジャンキー・XLことトム・ホルケンボルフ!

あらすじ

タクシーを捕まえて目的地を目指す全身真っ赤なコスチュームの男。彼の名は“デッドプール(死の賭け)”。その目的は自分を陥れた宿敵への復讐にあった。ハイウェイで復讐の時を待つ彼がその由来を我々に語りかけてくる……。

時をさかのぼること2年前。特殊部隊の傭兵から足を洗い、自分より悪い奴らを懲らしめて日銭を稼ぐウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)。そんな彼が娼婦のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と出会い、本当の愛を知ることとなる。

しかし結婚を決意した矢先、ウェイドが全身末期癌に侵されていたことが判明。失意のウェイドに近寄る怪しい組織。癌が治るという彼らの甘い誘いに乗ったウェイドを待っていたのは、普通の人間をミュータント化させる悪魔の人体実験だった!

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感想と評価/ネタバレ無

『X-MEN』シリーズのスピンオフ企画。自己中全開の無責任ヒーローがヒーロー映画における下ネタと残酷描写の限界へと挑む。その結果、レイティングはなんとマーベル史上初のR15+(全米では17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要なR指定)。

お行儀のいいヒーロー映画には洟もひっかけないゲス男も、これには思わず鼻フック。というわけで、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』も観てないし、デッドプールというキャラクターも知らぬ存ぜぬではあるが、珍しく公開初日に観てまいりましたよ。

デッドプールってどんな奴?

ところでデッドプールってどんなヒーローなの?Wikiさんを覗き見してみたところ、元傭兵で高い戦闘技術を有し、末期癌で死にかけていたところ変態どもの勧誘を受け、ウルヴァリンのヒーリング・ファクターを注射されて不死身になったとのこと。

ただしその副作用でお顔は腐ったアボカド状に。ついでに頭もおかしくなったのか、のべつまくなし喋り倒し、時には平気で第四の壁も突破してくる自由ぶり。おまけに自分のためにしか働かない。要するに相当型破りなアンチヒーローというわけ。

お喋りヒーローの代表格といえばスパイダーマンですが、白いネバネバを発射しまくっている童貞ヒーローとは格が違う、デップーの下ネタ放送禁止用語マニアックネタ連発のお喋りは完全に18禁の世界です。んなわけで当然のR指定というわけ。

参考 デッドプール – Wikipedia

メタ的ヒーロー映画宣言

そんな型破りな無責任ヒーローを主役に据えたR指定映画とはいったいどんなものなのか?とりあえずタイトルデザインとオープニングアクションは問答無用に必見です!止まった時間でカメラがグルグル回りながら、状況とクレジットを見せていく。

悲惨で笑えるその状況もさることながら、クレジットの文言がふざけまくっていて秀逸なのです。役者やスタッフの名前ではなく、監督=「Overpaid Tool(ギャラの高い能無し)」とか、主演=「God’s Perfect Idiot(神が作った完璧なるバカ)」とか。

オープニングの時点でこれはただのヒーロー映画ではない、自分たちのことすら笑いのネタとしてコケにするぞ!というメタ的映画宣言。ヒーローという壁を、映画という壁を、お約束を突き破ってみせるぞ!という決意表明のオープニング。正直やられましたね。

ファンタスティックバイオレンス

そしてそのあとに続くハイウェイを舞台としたデップーのキレッキレなオープニングアクション!タイトルデザインの正体であった、狭い車中を巧みに演出した混雑交通事故アクションから、しなやかな身のこなしによる残弾確認二丁拳銃。

ここで見せつけるR指定の面目躍如、残虐極悪バイオレンス描写の数々。壁に叩きつけられたカエルのようになる人間。3連続貫通で脳漿吹っ飛ばされる人間。銃を刀に持ち替えて、チョンチョンチョンパと切り刻まれる人間。ファンタスティック!

銃で撃たれた人間がどうなるのか?刀で切られた人間がどうなるのか?を、ご丁寧に魅せつけてくれるファンタスティックなアクションの数々。スローモーションの多用も心地がいい。オープニングからいきなり変態の至福タイムではございませんか。

しかもこのファンタスティックバイオレンスの最中も、俺ちゃんことデップーは無駄に喋くり三昧。せわしないったらありゃしません。んでもって平気で第四の壁まで突破してくる始末。メタだねメタ。ヒーロー映画というジャンルのメタ化だね。

第四の壁

デップー最大の能力は、不死身の肉体ではなくこの第四の壁突破力にあるのではなかろうか?これにより嘘っぱちなヒーロー世界と観客の現実との垣根を曖昧にし、「ただの映画」というカテゴリーを無効化してしまう。

これはさまざまな映画ネタによっても展開されていきます。大コケした俺ちゃん(ライアン・レイノルズ)主演の緑のヒーロー映画を、『96時間』をディスり、『127時間』の盛大なネタバレをやらかし、世界観を共有する『X-MEN』をいじり倒す。

とりわけコロッサスとネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(凄い名前!)に捕まり、「プロフェッサーXのもとに連れて行く」と言われたときのデップーの返し、「マカヴォイかスチュワートかどっち?」には肛門わしづかみにされた!

現実ややこしい『X-MEN』シリーズの配役問題、時系列問題を的確に指摘しながら、観客の爆笑とともに「あれ?これっていったいなんなんだろう?」という異化効果も引き起こす。挙句の果てには予算がないのまで愚痴る始末。

この映画を観た『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガンが、「確かに面白いけど真似しちゃダメ!」と言っていたのも当然です。面白いし批評的なんだけど、やっぱりこれって禁じ手なのよね。良い子は絶対に真似しちゃダメだぞ!

無粋な不満点

ヒーロー映画でありながら下ネタ満載、暴力描写爆発、第四の壁突破と、禁じ手だらけの『デッドプール』ではありますが、反面、物語はいたってシンプル。ひとりの男が愛した女を命がけで取り戻す。ただこれだけなのです。

要するに純愛物語。やりまくりだけど純愛映画。この単純さが長所であり短所でもある。複雑化したヒーロー映画に対するアンチテーゼともとれますが、物足りなさを感じるのも事実。時系列をサンドウィッチしたのもボク的にはマイナス評価。

あとデップーが予算の少なさを愚痴る場面がありましたが、この手の映画としては意外とアクション描写が地味なのですよね。結局オープニングの俺ちゃん初登場大暴れアクションこそがすべてであり、最後まであれを超えることはできませんでした。

一部で「『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』超え!」と評価されている選曲センスも、ヒップホップが苦手なボクにはいまいちハマらず。ワム(ジョージ・マイケル)の『Careless Whisper』には笑ったけどね。あ、「ワム!」でした「ワム!」。

俺ちゃんはある朝突然に

いわゆるヒーロー映画の枠を意識的に飛び出した、かなり型破りなアンチヒーロー映画でありましたけど、その破天荒さの飛距離はあんがい短いかも。『キック・アス』という偉大な先例の飛距離には残念ながら到達しておりませんでしたね。

あと気になったのは、予告編よりもなんか字幕が大人しくなっていたかも?当方まったく英語は喋れませんが、ところどころで「あれ?」と思うところがありました。吹き替え版のほうが下品だと好評なので、もういちどそちらで観直すのも手ですね。

最後にマーベル映画の定番、エンドクレジット中、または終わりのオマケ映像があるのかどうかですが、もちろんこの『デッドプール』にもありますよ。ぜひともお見逃しなく最後までご鑑賞していってください。笑えますから。

元ネタを知らなくても笑えるオマケではありますが、きちんと予習をしたいのならジョン・ヒューズ監督の『フェリスはある朝突然に』を観るべし。『デッドプール』以前に第四の壁を突破した偉大なる青春映画でありますから。

個人的評価:7/10点

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コメント

  1. えるぼーロケッティア より:

    今回のデップーのコス、何気に実写X-MEN史上初の原作に忠実な仕上がりというか
    逃げない作りのコスだと思いました。
    X-MENのコスって何か原作再限度低くて逃げた作りという印象があったので。
    映画自体は非常に楽しめました。
    ただグリーンランタンイジってX-MENZEROのデップーはいじらんのかい!という
    個人的な不満が残りますw
    アクションも確かに冒頭のにくらべると終盤は少々地味でしたね。
    デップーの動き自体はかっこよかったのですが。
    配役でいえば地味にコロッサスも別人になってましたね。

  2. スパイクロッド より:

    えるぼーロケッティアさんコメントありがとうございます!
    ボクはアメコミにはまったくもって詳しくないので、残念ながら忠実かどうかはわかりません。でも好きなコスチュームではありました。スマートでしたね。そのスマートさを活かした華麗なアクションが素晴らしかったと思います。あとちょびっとですが『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のデップーのこともいじってましたよ。フランシスに拷問されてるときに、「その口縫うぞ」と言われておりました。それだけはやめて~って話ですね(笑)。