『キング・アーサー』(2017)感想とイラスト ヤンキー、王になる

映画『キング・アーサー』チャーリー・ハナムのイラスト(似顔絵)

奪われた「聖剣無双」。表層として奪われたのであれば中身として取り戻せばいい。誰がなんと言おうと「お前は聖剣無双だ!」と思わせたらいい。取り戻せないとしたらお前の中身が軽すぎるせいだよ。

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作品データ

『キング・アーサー』
King Arthur: Legend of the Sword

  • 2017年/イギリス、オーストラリア、アメリカ/126分
  • 監督:ガイ・リッチー
  • 脚本:ジョビー・ハロルド/ガイ・リッチー/ライオネル・ウィグラム
  • 撮影:ジョン・マシソン
  • 音楽:ダニエル・ペンバートン
  • 出演:チャーリー・ハナム/ジュード・ロウ/アストリッド・ベルジュ=フリスベ/ジャイモン・フンスー/エイダン・ギレン/エリック・バナ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

スラム育ちのヤンキーが、聖剣エクスカリバーを引き抜いたことにより王家の血を継ぐ自身の出自を知り、父のかたき暴君ヴォーティガンを倒すべく決起する姿を描いたソードアクション大作です。監督は『コードネーム U.N.C.L.E.』のガイ・リッチー。

そしてただの○○が残る

有名な「アーサー王伝説」をモチーフにした本作、もともとは『キング・アーサー 聖剣無双』なる邦題で公開予定でしたが、大人の事情によりただの『キング・アーサー』として公開される運びに。すでに同タイトルの過去作があるだけになんともややこしくなってしまいました。

「邦題なんてなんでもいいよ」という脳ミソゆるゆるのボクからしたら、邦題の最も大きな役割は他作品との区別化にありまして、そういう意味では今回の変更は最悪であります。少しでも区別化を図るためにせめて中黒をなくして「キングアーサー」としてほしかった。

最近でも『ドリーム 私たちのアポロ計画』がただの『ドリーム』へと変更される騒動がありましたが、結果残るのは最悪の邦題なのですよね。最初にしくじったのは配給会社ですが、邦題にこだわりのないボクからすると「そこまで目くじら立てることか?」とも思います。

ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』のような素晴らしく無関係な邦題を甘受する広い心をもったほうが、人生楽しくなりそうな気がするのですけどね。

阿呆としての飛距離

話が『キング・アーサー』からそれてしまったので、映画の話に戻りましょう。「アーサー王伝説」を元ネタとした映画はブアマンの『エクスカリバー』と、何かとややこしくなったフークア版の『キング・アーサー』しか観たことがないファンタジー音痴のボク。

好きな人からしたら、「あれがおかしい」「ここが納得いかん」とあれこれ文句も噴出するかもしれませんが、「アーサー王伝説」自体が史実と創作をごちゃ混ぜにした二次創作物なわけですから、そんなに青筋立てて怒っても仕方がありません。もともと嘘八百なわけですから。

嘘八百な元ネタをさらに嘘八百で粉飾した映画。史実を大胆なまでに改変して阿呆へと振りきれた『グレートウォール』なる怪作が今年登場しましたが、あれよりもさらに自由度は高いはずなのに、いまいち阿呆としての飛距離がこの『キング・アーサー』は短いのですよね。

軽いくせに真面目

目の前で両親を殺され、孤児としてスラム街で育ったアーサー。王の血を受け継ぐ者しか手にできない聖剣エクスカリバーを引き抜き、自分の出自を知った彼は、父のかたきであり自分の叔父でもある暴君ヴォーティガンを倒すべく、仲間とともに立ち上がるのだったが……。

この映画最大の元ネタ改変ポイントは「スラムのガキが王になる」であり、労働者階級が国を乗っ取るという妄想にはなかなか痛快なものがありますが、結局これを超える阿呆としての妄想の飛躍がないのが痛いところなのですよね。ヤンキーが王になって終わり。

どうせならもっとヤンキーらしい横のつながりを広げた、平民、ゴロツキ、犯罪者、キ○ガイどもの力の結集によるきったね~王座奪還を見せてほしかったです。変に真面目で、こぢんまりと、きれいに収まりすぎなのですよね。カンフー道場がちょっとグッと来たぐらい。

それは画的にも言えることで、いわゆる「聖剣無双」シーンも派手なエフェクトかけて敵をなぎ倒していくだけで、『グレートウォール』の“鶴軍”における遊び心満載な阿呆らしい跳躍はここにはありません。あるのはガイ・リッチーの悪い癖である軽薄さ。

物語も、ドラマも、映像も、編集も、すべて軽すぎるのですよね。重量感があったのは冒頭の巨大ゾウさんぐらいのもんですわ。軽いくせに変に真面目というのもいただけません。どうせ軽いんならその軽さを徹底するべきで、阿呆の跳躍力ならぬ浮遊力を見せてほしかったなぁ。

愛ゆえの空回り

アーサーがスラムで成長するくだりや、魔物が巣喰う山での修行シーンなどを超絶ハイスピードな編集と音楽で見せていく省略の演出は、阿呆な軽さと楽しさがあって良かっただけに、肝心なところで変に真面目にまとまっているのがどうにも解せません。

悪役であるジュード・ロウ演じるヴォーティガンのキャラクターなんかもその典型で、アーサー処刑シーンでの陶酔したヴィランぶりは笑えただけに、暴君ぶりが伝わってこない小物感と悪になりきれない悲哀はなんなのでしょう?特に生贄のくだりはいただけません。

彼は力を得るために城の地下に棲む魔物と契約を結び、最愛の妻と娘を生贄として捧げるのですが、彼がどれだけこの妻と娘を愛していたかの描写が皆無なだけに、ジュード・ロウが陶酔感たっぷりの哀愁演技を披露したところでビタイチ心に響いてこんのですよね。

これではただのひとりよがりです。やたらと多いお色直しとあわせて、ガイ・リッチーがジュード・ロウのことを大好きなのは伝わってきますが、これでは愛情の空回りです。好きなら表層だけではなくてもうちょっと中身まで描いてやれよって話ですよね。

まさかの6部作構想

表層の生贄によってさらなる力を得たはずなのに、アーサーの父ユーサー暗殺時のビジュアルとほとんど変化がないのもガッカリで、必然的にラストバトルも盛り上がりません。どうせなら巨大化するまで阿呆に振りきれていたら、同じ阿呆は手を叩いて喜んだというのに。

ペラッペラに薄くて軽いくせに、変なところだけ真面目で阿呆としての飛距離に欠ける『キング・アーサー』。ガイ・リッチーの良い面と悪い面、っていうか悪い面のほうが今回は目立ってしまった凡作でありましたね。「聖剣無双」の冠を取り上げられたのも致し方ありません。

個人的な見どころは『パシフィック・リム』など好青年役が多かったチャーリー・ハナムが、意外とチンピラヤンキー役がさまになっていた点。特に鍛え抜かれた彼の肉体美はマコちゃん同様に必見ですので、ファンの方はこっそり扉の陰からガン見してあげてください。

っていうかいま調べてみてびっくりしたのですが、この映画って全6部作構想の1作目だったのですね。なんと無謀な。なんと阿呆な。この企画が継続されるかどうかは風前の灯火だと思われますので、これを機にガイ・リッチーさんには気合を入れ直してもらいましょう。

おまけ/ベッカム出演シーン

『コードネーム U.N.C.L.E.』に続き、またもや元サッカー選手のデヴィッド・ベッカムがこっそり出演していたらしいので、その出演シーンをこっそり貼りつけておきます。

「なんか無駄にクローズアップされた雑魚キャラだなぁ」と思っていたら、あなた懐かしのベッカムさんだったのね。前回に引き続き気づいてあげられなくてゴメンね♥

個人的評価:4/10点

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