前編は確かに燃えていた。メラメラメラメラ燃えていた。あの喧騒はいずこへ?ここにあるのはただの燃えカス。げに悲しきは祭りのあとの静けさよ……。
作品情報
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド
- 英題:Attack on Titan II: End of the World
- 製作:2015年/日本/87分/PG12
- 監督:樋口真嗣
- 脚本:渡辺雄介/町山智浩
- 撮影:江原祥二
- 音楽:鷺巣詩郎
- 出演:三浦春馬/水原希子/長谷川博巳/國村隼/本郷奏多
予告編動画
解説
燃えに燃えていた実写映画版『進撃の巨人』の後編にして完結編です。
「前田有一の超映画批評」での酷評。樋口監督のブチギレFacebook発言。お友達による晒し。炎上。一般客による酷評の嵐。プロデューサーのブチギレ暴言。さらなる炎上。さらなる酷評。撃沈。という素敵に楽しい騒動はもう皆さんご存知のとおり。
前編に引き続き主題歌を担当したのはSEKAI NO OWARIで、曲は『SOS』。
主題歌/SEKAI NO OWARI『SOS』
あらすじ
100年ぶりに現れた人喰い巨人の猛威の前になすすべもなかった人類。そこに突如として出現した巨人化ができる人間エレン(三浦春馬)。彼の活躍によりなんとか巨人たちを撃退したものの、エレンの存在は人類の味方なのか?はたまた敵なのか?
危険分子として処分される寸前だったエレンを、どこからともなく現れた鎧の巨人が連れ去ってしまう!エレンの運命は?鎧の巨人の正体とは?そして人類の未来はどうなってしまうのか!?
感想と評価/ネタバレ有
例のバカ騒ぎを堪能させていただいた落とし前として観た前編。原作もアニメも観ていない自分としては、巷の酷評どおりの問題点は確かに山積していたものの、巨大ゾンビ特撮映画としては意外と悪くなかったというのが正直な評価でした。
この前編での落とし前を後編によっていかにつけるのか?期待と不安を胸に珍しく初日に鑑賞してまいりましたが、なんとも「無益」な1時間半でありましたね。「苦痛」と言い換えてもよいかな?
ちょいと思いのたけを全部ぶちまけてしまいたいので、前編と同じく後編の感想もネタバレ全開で好き勝手に書かせていただきたいと思います。今度は我々観客の出番ですよ!皆さん!
まず前編の感想から読みたいという方はこちらを
言葉に頼るな!
もうこの映画の何が苦痛だって、登場人物が自分の思想信条感情御託をのべつまくなしわめき立てている点ですよね。恥ずかしいったらありゃしない。しかもその主張は血肉のない泥人形で、1ミリたりとも心に響いてきやしません。
聞けば聞くほど心のなかががらんどうになっていく、危うく気を失いそうになる呪いの言葉の数々に抗うすべをボクは持ち合わせておらず、この映画の鑑賞後に正気を保っていたかどうかは定かではありません。
使い古された文明悪論を朗々と演説するクバル氏。漫画を漫画として漫画らしく実写化したようなアルミン君の胸打ち友情宣言。ソウダのおっさんが発した丸わかりの断末魔の一言。シキシマ兄さんのもったいぶった説明口調。「俺がいなきゃ…」「私がいなきゃ…」と車に乗り込むジャンとミカサ。etc.
もうこの時点でボクの心はズタズタですよ。
それがどうした!
そして「これがトドメだ!」とばかりに繰り出されたのが、ついさっきまで仲よくボーイズラブしていたはずのエレンとシキシマ兄さんによる、感情主張汚物垂れ流しながらの壮絶なるどつき合いであります。
ついさっきまで真っ白けの部屋で『The End of the World』聴きながらちちくりあっていたはずなのに、ちょっと目を離した隙にこのありさま!目的は同じだけど手段が異なるってことなんですけど、なんて極端なんだお前たち!兄弟だろ!
とまあサラッと核心的ネタバレをしてみましたが、つまりはそういうことなわけです。劇中で明確にはされておりませんが、実はエレンとシキシマは兄弟だったのだ!
「ええ!ホントに!?っていうかそれがどうした!」というのがボクの正直な感想。前編で投げかけた謎と伏線を、なんの工夫もサプライズもなく終始ご丁寧に説明解説してくれておるのですけど、そのすべてが「それがどうした!」なんですよこれ。
草彅パパによる妙な投薬が理由だったエレン巨人化の謎。登場した瞬間シキシマ兄さんだとわかる鎧の巨人。生物兵器の成れの果てだった巨人たち。その恐怖を利用して自分たちに都合のいい箱庭を造り出した現政権。実は反乱分子のリーダーだったシキシマ兄さん。実は超大型巨人の正体だったクバル。
すべて「それがどうした!」であります。
何ひとつ解決しない物語
すべてが予想の範囲内。すべてが中学生の妄想。すべてが使い古された陳腐で幼稚な与太話。もうちょっと見せ方に工夫があったらギリギリ踏みとどまれたかもしれませんが、このどうでもいい真相をただ順繰りに開示していくだけという大説明大会。
この世界の真実を知っており、それを維持、もしくは破壊しようとしているクバルとシキシマにはまだ明確な行動原理が存在するものの、問題なのはこれに対峙した主人公たちの立ち位置ですよね。
終始この状況にどんぶらこっこと流されておるだけであります。そんな主体性を失った主人公たちが取れる行動はただひとつ。初志貫徹!ポッカリ開いた壁の穴をふさぐ!もうこれしか道は残されておりません。
しかしそれはなんらの本質的解決も導き出さない選択であり、必然的に映画としてのカタルシスは何ひとつ生まれないのであります。要するにこの映画、な~んにも解決していないのであります。
最悪な終わり方
すったもんだの大掛かりな学芸会が終了した結果の産物は、これまた初志貫徹。ミカサとよりを戻したエレンが念願だった壁の外へとピクニックに出かける。ただこれだけであります。
しかもその光景はかの『猿の惑星』!さらなる蛇足のオチとして『メイズ・ランナー』までぶら下がっている始末。前編の感想で設定がカブっているのを気の毒だと擁護してやったのに、まさかオチまで同じとは!前言撤回!お前ら全員地獄行きだ!
安定という天国から自由という名の地獄へと赴く男女ふたり。なんだよ結局アダムとイブかよ。っていうかよく知らないんですけどいわゆるセカイ系?っていうかホントどうでもいいから!とりあえずお前ら全員地獄行き!二度と帰って来るな!
町山智浩氏の今後
はたしてこの惨敗を町山智浩氏はどのように受け止めているのであろうか?樋口真嗣の惨敗はいまに始まったことではない恒例行事でありますけど、町山氏のこの敗北はそうとうな痛手ではないだろうか?
まさに自分が批判し続けてきたダメな邦画の典型ともいえる映画制作にかかわってしまった。この失敗をどのように受け止め、これから自分が進むべき道を見定めていくのであろうか?
「樋口が全部悪い!」と言ってしまうのは簡単である。おそらくはそれが真実であろう。映画の失敗の全責任は監督が背負うべきものである。ただ町山氏はただの脚本家ではない。この手のダメ邦画を糾弾し続けてきた映画評論家なのである。
今回その片棒を担ぐという失態を演じた責任はやはり問われてしかるべきではないだろうか?これ幸いと彼を叩くのではなく、今後の糧としてこの失敗をどう活かすかという点において。
町山の書いた脚本は素晴らしかったが樋口の演出が最悪だった。または脚本も演出も最悪だった。その真相を我々観客は知る由もありません。ただ、この映画が最悪だったという事実は変えようがないものであります。
その最悪な失敗はいったいどこから生まれ出たのか?町山氏には本来の評論家としての視点でそれを分析していただき、ぜひとも今後の糧としていっていただきたい。大きなお世話かもしれませんが。
それを踏まえた結果、次なるリターンマッチに臨むもよし、映画制作からは足を洗うもよし。どちらにしても今後の町山智浩の活動にプラスに働くことは必至でしょう。
そのためにも、ぜひとも自身の手によるこの『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の批評をボクは読んでみたい!それが長大な言い訳になっていたとしても。自身がかかわった映画の批評を書くのは難しいというのであれば、謎の覆面映画評論家として登場するってのはどうでしょう?バレバレでしょうけどね。
個人的評価:1/10点
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはプライム・ビデオ、Netflix(2020年5月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
コメント
こんにちは。
興味のない作品の記事には一切コメントしない主義なんですけど、スパイクロッドさんの記事を読むと、なんだか興味がわいてきて観たくなっちゃうんですよねぇ。
で、結論として「観た方がいいよ」なのか「観なくていいよ」どっちなんですか?
ケフコタカハシさん、いつもコメントありがとうございます!
ボクの駄文を読んでそういう気持ちをいだいていただけるとは、
まさにこういうブログをやっていてよかったな~としみじみ思います。
で、この『進撃の巨人』実写版を観たほうがよいのか?観なくてよいのか?
に対する回答ですけど、それはもうそちらで判断していただくしかない!
としか言いようがありませんかね。
実は初めは「こんなクソ映画、皆さん金払って観る必要ないですよ!」
とまでストレートに書こうかと思っていたのですけど、
自分にそんな権限はないということにハタと気づき、
ギリギリで思いとどまった次第であります。
結局、映画の良し悪しなんて個人の主観にゆだねられる部分が大きいので、
やはり自分の目で観て確かめていただく以外ないわけですよね。
ですので、おもしろいと思えば素直に他人にもおすすめしますけど、
おもしろくなかったからといって観ないことをすすめるような真似はしません。
観る観ないの判断はぜひともご自分でしていただきたい。
その結果の責任はボクのほうでは持ちかねますけど(笑)