『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』感想とイラスト もちろん世界は残酷です

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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』のイラスト

燃えている。メラメラメラメラ燃えている。おや?自分でガソリンを投入したのか?さらに燃えているなぁ。暖かそうだからちょっと寄らしてもらおう。マッチ片手に寄らしてもらおう。

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作品情報

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

  • 英題:Attack on Titan
  • 製作:2015年/日本/98分/PG12
  • 監督:樋口真嗣
  • 脚本:渡辺雄介/町山智浩
  • 撮影:江原祥二
  • 音楽:鷺巣詩郎
  • 出演:三浦春馬/水原希子/本郷奏多/長谷川博巳/ピエール瀧/國村隼

参考 進撃の巨人 – Wikipedia

予告編動画

解説

どうしようもないボンクラたちが巨人に食べられちゃうSFパニックアクションです。原作は諫山創の同名大ヒット漫画で、これはその実写映画版。しかも前後編の前編なのよ。

監督は『日本沈没』で自分も一緒に海の底へと沈みかけた樋口真嗣。映画評論家の町山智浩が、絶対に組んではいけない『ガッチャマン』渡辺雄介と共同で脚本を担当しております。何ゆえ?

主演は若手俳優随一のダイコンと評判の三浦春馬。共演に無駄に口のデカい水原希子。神木隆之介のそっくりさん本郷奏多。親の七光り三浦貴大。三菱地所タレント桜庭ななみ。京香に携帯壊された長谷川博巳。その原因と噂される魔性の石原さとみ。『凶悪』殺人鬼ピエール瀧。『哭声/コクソン』ふんどし國村隼など。

主題歌/SEKAI NO OWARI『ANTI-HERO』

あらすじ

突如として現れた謎の巨人によって人類の大半が喰われてしまい、滅亡の危機へと瀕した世界。生き残った人間たちは巨人の侵入を防ぐ巨大な壁を建造し、100年の安定のなかで弛緩した生活を送っていた。

しかしその安定も、想定外の超大型巨人の出現によって打ち破られ、世界はふたたび残酷な阿鼻叫喚の地獄へと変貌する。あの悲劇を辛うじて生き延びた少年エレンは武装調査団に所属し、壁の修復を、巨人打倒を目指して行動を開始するのだったが……。

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感想と評価/ネタバレ有

「観る観る」と言いながらなかなか観に行けなかった『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』。昨晩のレイトショーにより遅ればせながら観てまいりましたよ。

原作ファンと特撮ファンとのあいだで賛否両論まっぷたつに分かれ、制作者がSNS上で炎上し、原作者が釈明コメントを発表するという、観る気もないのにこの手のバカ騒ぎが大好きな野次馬連に格好のネタを提供してしまっていた本作。

かくいう自分もその騒動に生来の野次馬精神を刺激され、「あら皆さん楽しそう♡」なんて騒動を娯楽として消費していたバカのひとりなわけであります。お恥ずかしい。これで観なければただのバカとして終わってしまうので、それなりに楽しませていただいた落とし前はきっちりとつけなければなりません。

というわけで、ちゃんと自腹を切って観てきましたよ『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』。ずいぶんと遅れてしまいましたけどね。

炎上の理由

まず「巨大な壁の内側で生活する人間たち」というビジュアルは、一足先に公開されてしまった『メイズ・ランナー』のせいで二番煎じ的印象を与え、ちょっと気の毒でしたね。ボクは原作もアニメも観ておりませんので、あくまでこういうビジュアルの先行作品は『メイズ・ランナー』のほうなわけです。

そういう基本設定は原作を踏襲しておるのですが、原作ファンの怒りを買ったのは大胆なキャラ設定の変更にあったようです。

もととなるキャラクターやその関係性を把握していない自分からしたら、何をそんなに怒っているのか根本を知りえないのですけど、この映画のキャラクターたちがボンクラの集まりだというのは確固たる事実であります。

仕事もロクに続かないニートの主人公。遊び呆けている警備隊。命令の意味も理解できない素人の集まりな武装調査団。巨人に囲まれている状況でも性欲を抑えられないバカップルなどなど。

理性あるちゃんとした大人がただのひとりも出てこない、見事なまでのボンクラ集団なわけですけど、この裏にあるのは100年の安定という弛緩であり、意図的なボンクラ描写、もしくは伏線と考えられないこともなく、確かに最悪の連中だとは思いますが、それをもって駄作だと断定してしまうのはいかがなものでしょうか?

駆逐されるべきはドラマ運びにあり

このボンクラ描写よりも批判されてしかるべきは、あまりにチープでクサくてダサい、リアリティのかけらも存在しないドラマ描写にこそあるとボクは思います。

状況、感情、意味をご丁寧にすべてセリフで語ってくれる親切心。その状況でのありえない言動と展開。やりたいことは理解できるのだけどあまりにあからさまなリンゴのくだりなど。漫画が原作だから漫画チックでもかまわないというのは、悪しき日本映画の伝統でこれこそ駆逐されてしかるべきです。

これにはキャラクターのボンクラ描写も大きく関係しておるのですが、とりわけ映画オリジナルキャラが酷いですわな。その筆頭が長谷川博巳演じるシキシマですけど、彼が登場して何か言葉を発するたびに映画のリアリティが瓦解してしまうのはなんとかならんかったのか?

もうね、あまりにバカバカしくて吹き出しちゃうのですよ。いっそのこと変な仮面でも被らせて、行き着くとこまで行っちゃたらよかったのに。役割としては完全なるサタンなわけですし。

原作とは別物と考えるべき

ただし、主人公の安寧と焦燥、喪失、絶望、そして飛翔を描いたドラマの根幹は悪くないと思います。その描写の仕方に問題はあったとしてもです。

これはおそらく少年の通過儀礼の物語でありまして、それゆえのボンクラ、童貞、中二病なのであります。ボンクラ童貞中二病男がこの残酷な世界と対峙する。それゆえのキャラクター設定変更。実写映画化のための苦肉の策ともとれますけど、これはこれで正解だったのではないでしょうか?

肝心の映像演出は?

ここまでは批判の多かったキャラクター、物語について個人的な感想を述べさせていただきましたけど、ここからは肝心要の映像面、演出についての私見を語らせていただきます。自分は原作ならびにアニメのファンでもなければ、特撮ファンでもないので、あくまでイチ映画ファンとしての感想であります。

まず巨人の描写に関してですが、特撮とCGとを融合させた冒頭の超大型巨人、そして巨人化した主人公のビジュアルには合格点が与えられるものの、ザコ巨人たちのあまりに人間的すぎるビジュアルには好悪ありますわな。

見ようによってはただのデカい普通の人間に見えてしまうところが、気持ち悪くもあり嘘くさくもある。普通の人間が小さな人間を捕食しているようにも見えるグロテスクな禁忌感と、それゆえに生じてしまう嘘っぽいお笑い的な感覚。

自分にとってはどちらの比重が大きかったかといえばそれは後者であり、確かに気持ち悪い不快感はもよおすものの、それ以上にギャグとしての失笑感のほうが先に立ち、冒頭のカニバリズム祭りに歓喜したかといったらさにあらず。単なるデカいゾンビ映画だなぁと思った次第。

主人公、跳ぶ!

そして、立体機動装置という巨人に対抗するための技術の描写ですが、これを『スパイダーマン』などのハリウッド大作と比較して見てしまうのは酷な話で、日本映画のレベルから見たら十分に合格点を与えられるものだったのではないでしょうか?

ギミックとして非常に面白い装置だと思いますしね。でもこれは原作の功績なのかな?原作ファンの方がその描写に不満をもたれるのは致し方ないところですよね。漫画やアニメほど実写の自由は利きませんから。

とりわけボクが気に入ったのは、この立体起動装置によって「跳ぶ」という行為をドラマの起点として使用していたシーン。安定のなかで守られていた価値観を捨て去り、危険を承知で残酷な不条理へと跳躍する。これには素直に燃えましたね!このための主人公ボンクラ設定だったわけです。

しかもこのあとの展開がさらに凄かった!

勝てる見込みのない地獄へと跳び出した主人公を襲う、歓喜と興奮と残酷。ここで獅子奮迅の活躍を見せるかと思いきや、あっさり足を喰いちぎられ、絶望のなかでのた打ち回る主人公という驚愕の展開。ここで主人公が死ぬわけはないと予測はできても、まさかここまで過酷な運命を用意していたとは!

ここからの展開に関してはまったく文句はありません。「興奮!」の一言です!

怪獣プロレス特撮魂!

友のために命を賭した行動に出る主人公。絶望と迫りくる死の恐怖。怒り。覚醒。そして繰り広げられる巨人同士の血沸き肉踊るプロレスバトル!

ドラマ演出の野暮ったさによって我々を辟易させ、忍耐という名の試練を味わわせたここまでの時間は長~い長いネタ振りであり、ついに満を持して樋口真嗣の特撮魂が覚醒したのであります!

ここからエンドロールまではまさに彼の特撮愛がなせるわざであり、特撮ファンではない自分でも燃えちぎってしまいましたよ!

とりあえずの結論

というわけで、巷の酷評どおり問題点は盛りだくさんのけっこうな地雷映画ではありましたけど、ボク的には思ったより悪くはなかった。原作をまったく知らないという無知蒙昧ぶりと、酷評の嵐による低いハードル設定が功を奏したのかもしれません。

上映時間98分というサクッとした短さもよかったですね。これで2時間あったらまた違った感想になったかと思います。たぶん我慢しきれなかったことでしょう。

観る前は「とりあえず落とし前として前編だけは観ておこう」という気持ちだったのですけど、現在は後編も観る気まんまんであります。提示しただけでまったく回収していない伏線も気になるところですしね。

絶賛上映中の映画ではありますが、かなり突っ込んで感想を書きたかったので今回はネタバレ全開となってしまったことは反省材料です。ネタバレに気づかずに最後まで読んじゃった方はゴメンなさいね。

続編である『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』は9月19日公開予定とのことですので、皆さん観ずに文句を垂れるのではなく、ちゃんと金払って観てからクソミソに文句を垂れてやりましょう。

もしかしたら皆さんが指摘した問題点を見事に回収してしまう大傑作かもしれませぬぞ!

個人的評価:5/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはU-NEXT、プライム・ビデオ、Netflix(2020年3月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

大傑作かもしれぬ後編の感想はこちら

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