『スパイダーマン:ホームカミング』感想とイラスト 親愛なる隣人への道

映画『スパイダーマン:ホームカミング』のイラスト

「ついに!」というか「またか…」って感じで我々の前へと帰ってきたスパイダーマン。しかし彼はまだ本当の彼ではない。この『ホームカミング』を経てようやく、本来あるべき「親愛なる隣人」へと帰還を果たすのです!

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作品データ

『スパイダーマン:ホームカミング』
Spider-Man: Homecoming

  • 2017年/アメリカ/133分
  • 監督:ジョン・ワッツ
  • 脚本:ジョナサン・ゴールドスタイン/ジョン・フランシス・デイリー/ジョン・ワッツ/クリストファー・フォード/クリス・マッケナ/エリック・ソマーズ
  • 撮影:サルヴァトーレ・トチノ
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 出演:トム・ホランド/マイケル・キートン/ジェイコブ・バタロン/ローラ・ハリアー/ゼンデイヤ/マリサ・トメイ/ロバート・ダウニー・Jr

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

スパイダーマンとして街をパトロールする15歳の少年ピーター・パーカー。早くアベンジャーズの正式な一員として認められたい彼の青春と戦いを描いた再リブート版『スパイダーマン』第1弾です。監督は『クラウン』『COP CAR/コップ・カー』のジョン・ワッツ。

「彼」を心待ちに

マーベル・シネマティック・ユニバースに組み込まれて再度の復活を果たした『スパイダーマン』。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』によってサプライズ顔見せは済ませておりましたが、今回が満を持しての単独作品ということもあり、心待ちにしていたファンの方々も多いことでしょう。

かくいうボクもサム・ライミ版、マーク・ウェブ版ともちろんすべて観ておりまして、自信をもってサム・ライミ版の第2作だけは良かったと言えるぐらいにはスパイディのことを気にかけており、今回の再リブートも心待ちにしていたようなしたことはなかったような。

勘のいい読者にはすでにバレバレでしょうが、わたくし、スパイダーマンなるコスプレ小僧に心奪われたことは汚れた人生のなかでただの一度もございません。『スパイダーマン』が打ち切られようがリブートされようが知ったこっちゃありません。ぶっちゃけ興味ねーです。

興味があったのは、『COP CAR/コップ・カー』であまりに濃密な時間を紡ぎ出したジョン・ワッツが、『スパイダーマン』というブロックバスター映画をどう料理したのか?そういう意味では心待ちにしていたと言えなくもない『スパイダーマン:ホームカミング』。それではさっそく感想のほうをば。

新生ピーター・パーカー

ヒーローたちの大活躍によってひり出された汚物の処理という仕事を、これまたヒーローの勝手によって奪われた男、エイドリアン・トゥームスの大人の事情による堕落への一歩に続いて映し出されるのは、アベンジャーズに憧れる15歳の少年ピーターの無邪気な幼児性。

アイアンマンことトニー・スタークにスカウトされ、“シビル・ウォー”へと参戦することになった彼の有頂天自撮り映像は、大人の世界、事情とは隔絶したガキンチョヒーローごっこの延長線であり、つまりは冒頭から明確に大人と子供の世界の境界線が引かれているということ。

すでにこの時点で新鋭ジョン・ワッツをこの『ホームカミング』へと起用した意図がうかがえますが、その実力は等身大のお子ちゃまヒーローであるピーターの日常学園青春描写によってさらに明確になります。これは歴代『スパイダーマン』映画のなかでも随一でしょう。

先ごろ『パワーレンジャー』でも引用されていたジョン・ヒューズ的スクールカーストを下敷きに、下層であるナード(Nerd)に属するピーターの日の当たらない底辺描写と格差、そんななかで躁鬱的に承認欲求を上下させている彼のいびつでリアルな心の揺れ。

それらを怒涛のテンポとユーモアで見せていくジョン・ワッツの演出は若干の性急さを感じさせるものの、それは同時に見事な若気の至りをも表現しておりましたし、ピーター役を演じるトム・ホランドの嫌味がない等身大のティーンエイジャー像も抜群のハマり役。

トビー・マグワイア(27歳)、アンドリュー・ガーフィールド(29歳)に対するトム・ホランド(21歳)の強みもあるでしょうが、それ以上に彼の童顔、低身長、高音高速お喋りが、愛嬌たっぷりで危なっかしい新たなピーター・パーカー像を生み出しておったのですよね。

学校では日陰者のナードに射し込んだ、ヒーローとしての承認チャンスに浮かれ暴走する無鉄砲な十代の行動と責任。ナード視点によるユーモラスで哀愁漂う青春映画と、力と責任のヒーロー誕生譚とを融合させたこの映画にジョン・ワッツを起用したのは必然でありましょう。

大いなる力と責任

つまりこれは『COP CAR/コップ・カー』と同じ少年期の通過儀礼のお話。鬱屈した学園生活と、その裏返しであるヒーローとしての承認欲求の果てに、軽率な行動の結果、そして大人の現実を突きつけられて選択を迫られる、「大いなる力には大いなる責任が伴う」映画。

大胆にもスパイダーマン誕生譚(クモと伯父さん)をハショっておきながら、新たなかたちでその誕生話を模索した映画だったというわけですね。ただのコスプレ小僧が真のスパイダーマンとして「親愛なる隣人」になるまでを、数々の空回り、失敗の積み重ねの上に描いた映画。

ゆえに物語中盤までのピーターは、自らの承認欲求のために事件を渇望している完全なるお子ちゃまなのですよね。そんな無邪気にヒーローを夢見る彼のもとに現れた待望の事件、ヴィランが、ヒーローによって得た仕事をヒーローによって奪われた男だったというのも皮肉です。

子供のヒーローごっこが、大人の現実によって大きな選択、もしくは犠牲、喪失を迫られる瞬間。この『ホームカミング』がなんともやるせないのは、スパイダーマンとしての活動とピーター・パーカーとしての実生活がきれいに反比例している点なんですよね。

スパイダーマンとしての活動が好調であればピーターとしての実生活は低調で、スパイダーマンとしての任を剥奪された途端にプライベートは奇跡のうなぎのぼり。そして学園生活の絶頂で突きつけられる予想だにしなかった究極の二者択一。

この非情な現実に対峙したピーターの動揺、葛藤、そして決断を、セリフに頼らない演技と映像で『タクシードライバー』にオマージュを捧げながら演出してみせたジョン・ワッツの手腕は、『COP CAR/コップ・カー』がフロックではなかった証明として十分だと思います。

「なぜ『タクシードライバー』なのか?」については、ゆがんだ承認欲求の果てはトラヴィスだと考えると合点がいくかもしれません。そうならないための警告を、選択を、決断を迫るシーンでこういう演出をかましてきたジョン・ワッツ。やはり只者ではありません。

その手のマニアは必見!

それではこの『スパイダーマン:ホームカミング』は期待の新鋭が見事に完成させた傑作だったのでしょうか?自らのカラーを残しながら、初めてのブロックバスター映画でよくやったとは思いますが、残念ながら諸手をあげて称賛はできないというのが現実ですね。

学園青春ドラマの延長線上にヒーローとしての責任と決断を描いた基本路線、トニー・スターク制作による新スーツの膨大なガジェット、ナードバディムービーとしての微笑ましさ、青少年のまっすぐな快活さを的確に表現したラモーンズの『Blitzkrieg Bop』は絶賛です。

ただの人として、父として、ボスとして悪へと堕ちざるをえなかったマイケル・キートンの存在感、トニー・スタークの不器用な父性、そしてマリサ・トメイ演じるメイおばさん、もといメイお姉さまの真正ヒロインとしての熟した色香にも同様の絶賛が送られてしかるべきかと。

ほかのMCU作品に対するスケールの小ささにしても、これはピーターの成長と決断を彼の手が届く範囲で描いた作品なので必然だと言えますし、性急すぎる展開や、例のサプライズのバレ具合、ネッドを除く同級生キャラの魅力のなさも、失点と言えるほどの失点ではありません。

では何が問題でこの作品は傑作にならなかったのかと申しましたら、肝心要のアクション演出が決定的にヘタクソだったという一点に尽きるかと思います。とりわけ夜のシーンの見にくさはどうにかならんかったのか?高さを意識した舞台設定は効果的だっただけに残念です。

浮かれて高みを目指す人間が己を知り、地に足をつけるまでの映画として、上昇と落下、強行着陸を描いていたのはテーマと密接にリンクした選択として正解だっただけに、肝心のアクションが見づらいうえに迫力不足ときては元も子もありません。非常に残念です。

ただまあ初めてのブロックバスター映画でここまでやれたら御の字なのですけどね。ジョン・ワッツに対する期待が大きかっただけに最後はやや辛口の表現が並びましたが、凡作だらけのシリーズのなかでは『スパイダーマン2』と並ぶ良作と言って差し支えないでしょう。

ラストのメイおばさん、もといメイお姉さまの「何やってんの!?」寸止めエンドも気が利いておりましたしね。どうやら天然熟女っぽい彼女のことだから、いい感じに誤解してくれてこのピンチも容易に切り抜けられそうな予感がします。なんてかわいい天然熟女だ♥

まだまだお子ちゃまのピーターには彼女とひとつ屋根の下で暮らせる幸運を自覚する機会はないでしょうが、その手のマニアにとってはこんな幸福、愉悦、興奮はないのであります。というわけで、その手のマニアの方々には文句なしにおすすめできますよ!その手のマニアには!

個人的評価:6/10点

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