『L.A.大捜査線/狼たちの街』感想とイラスト 狂人たちの世界

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映画『L.A.大捜査線/狼たちの街』ウィリアム・L・ピーターセンのイラスト(似顔絵)

殺された相棒の復讐を胸に、憎っくき通貨偽造団をこの手でとっ捕まえるため、女を騙し、証拠を盗み、ついには犯罪にまで手を染める男の狂気はどこまでも広がっていく……。

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目次

『L.A.大捜査線/狼たちの街』感想とイラスト 狂人たちの世界

  1. イラスト
  2. 作品データ
    1. 予告編動画
  3. 感想と評価/ネタバレ多少
    1. とりあえず結論から
    2. マンへの接近と違い
    3. 狂人たちの饗宴
    4. 我々の世界

作品データ

『L.A.大捜査線/狼たちの街』
To Live and Die in L.A.

  • 1985年/アメリカ/116分
  • 監督:ウィリアム・フリードキン
  • 原作:ジェラルド・ペティヴィッチ
  • 脚本:ウィリアム・フリードキン/ジェラルド・ペティヴィッチ
  • 撮影:ロビー・ミューラー
  • 音楽:ワン・チャン
  • 出演:ウィリアム・L・ピーターセン/ウィレム・デフォー/ジョン・パンコウ/ダーラン・フリューゲル/デブラ・フューアー/ジョン・タトゥーロ

参考 To Live and Die in L.A. (1985) – IMDb

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

偽札が横行しているロサンゼルスを舞台に、相棒を殺されたシークレットサービスが復讐のために執念の捜査へと暴走していく姿を描いたクライムアクションです。監督は『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』の重鎮ウィリアム・フリードキン。

とりあえず結論から

満を持して臨んだ『恐怖の報酬』のリメイクが批評・興行ともに惨敗に終わり、長らく低迷期にあったフリードキンが一瞬の狂い咲きを見せたかのような、1980年代の隠れた傑作クライムアクションです。実は今回初鑑賞なのですが、噂にたがわぬ怪作でしたね。

リアリズムの極致を行った『フレンチ・コネクション』のさらに先を狙ったような内容で、ひとりの男の狂った執念の行き着く先を、フリードキンらしい乾いたリアリズムと1980年代的な過剰性によって描き出した、なんともぶっ飛んだ内容には腰を抜かしました。

マンへの接近と違い

シークレットサービスのリチャード・チャンス。L.A.で暗躍する通貨偽造団を追うチャンスだったが、長年の相棒であるジミーが捜査中に彼らによって惨殺されてしまう。復讐を誓ったチャンスは新たな相棒ブコヴィッチとともに執念の捜査を開始する。

偽造団のボス、エリック・マスターズの居場所を突き止めるため、なりふり構わぬ強引な捜査を続けるチャンスはやがて暴走してゆき、その狂気はFBIをも巻き込んだ予想外の事態へと発展していくのだった……。

映画冒頭、いきなり流れてくる懐かし1980年代シンセポップに面喰らいます。歌っているのは1980年代中頃に何曲かのヒットを飛ばしたイギリス出身のポップグループ、ワン・チャン。この映画のために彼らが書き下ろした曲であり、劇伴も彼らが制作しております。

そして切り取られる夜のL.A.。テンポのいい編集。スタイリッシュな映像美。なんとも1980年代的というか、マイケル・マン的というか。同時期に公開されたマンの『刑事グラハム/凍りついた欲望』の主演もピーターセンだったことを考えると、その類似性は無視できません。

しかしマンの映画のようでいてマンの映画と決定的に異なるのは、やはりフリードキンは徹底して狂気を描き続けた監督だということ。ここにマンの映画特有の美学や、男気や、純愛はかけらも存在していません。あるのは徹底した乾いた狂気。狂気の伝染と蔓延です。

狂人たちの饗宴

冒頭で主人公チャンスと相棒ジミーの関係性を示すはずのシーンからして狂っております。体に巻きつけた爆弾によって盛大に肉片を撒き散らすテロリストと、おそらくはその肉片シャワーを浴びたであろうジミー。人体大爆発顔面シャワーといういきなりの狂った大サービス。

そんなジミーも定年間近で張り切りすぎちゃったせいで、偽造団の反撃に遭いまさかの顔面ショットガンによって早々と退場。いわゆる従来のポリスアクションではありえないぶっ飛んだ人体破壊描写の雨あられ。登場人物より狂っている監督フリードキンの本領発揮です。

狂っているのは残酷描写だけではなく、都市の切り取り方、余計な説明を排しすぎて置いてきぼりを喰らいそうになる編集、肝となる人物描写でも全開のぶっちぎり。そんな本作で最も異彩を放っていたのは、若き日のウィレム・デフォー演じる偽造団のボス、エリックでしょう。

超越的な狂気の高みへと到達したかのような彼のたたずまいはひたすら怪しくセクシーで、ワン・チャン作曲による性急なリズムに乗って映し出される彼の仕事風景(要するに偽札制作)は、ストイックなまでに完璧を求める芸術家の密着ドキュメンタリー。

そうして制作した自身のアート作品をフリチンで燃やす姿にも股間がうずきますな。そんな神のごとき狂人の前ではやや分が悪いものの、主人公チャンスの狂いっぷりも負けてはおりません。エリックが静の狂気ならチャンスは動の狂気。けっして止まることを知りません。

バンジージャンプが趣味な時点ですでにあっち側に片足を突っ込んでおるのですが、情報のために女を脅し、抱きたくなったらすぐ挿入、おとり捜査のための金がなければ犯罪者から奪えばいいという思考回路など、目的のためには手段を選ばないナイスガイなのです。

そんなチャンスの止まらない暴走はやがてFBIをも巻き込み、『フレンチ・コネクション』に匹敵する壮絶カーチェイスがフィルム上に現出するのですが、そんな事態に至ってもチャンスはまったくひるみません。俺はどんな手段を使ってもあいつをあげるんだ!

我々の世界

チャンスの底なしの執念と狂気はどこから湧いてくるのか?相棒であり親友であったジミーの敵討ちという表面上の動機は存在しますが、これに表面的な意味しかないのは一目瞭然。彼の心中にはもはや仁義も、情も、正義も存在していません。あるのは底なしの狂気だけ。

その狂気によってついにエリックの前へとたどり着いたチャンス。ここからの怒涛の展開はちょっとネタバレできない壮絶さで、未見の方はぜひその目で確かめていただきたい。およそありえない展開で、自分はいったいいま何を観ているのかわからなくなりますから。

狂気と狂気がぶつかり合った先に生まれるものは、やはり狂気でしかない。いや、はなからすべてが狂っていたのかもしれない。自信の傑作『フレンチ・コネクション』のさらに先を描いた世界。狂気が伝染し、蔓延し、やがてすべてがゆるやかに壊れていく我々の世界……。

個人的評価:8/10点

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コメント

  1. 4時限定 より:

    はじめまして、スパイクロッドさん。

    これ、後から原作を読んで驚きました。

    原作では、冒頭であっさり殺されちゃうジミー・ハートが主人公なんですよね。
    主人公である定年間近の老練なジミー・ハートの捜査と別件で並行するサイドストーリーとして、功名心から捜査を逸脱して破滅してゆくリチャード・チャンスをジミーの”コインの裏側”として否定的に描いていました。

    感想としては、真っ当な刑事ものというか、あまり新鮮味のないありがちな捜査小説だったような記憶があります。

    そんな凡庸な原作を、主人公を変更することで、スパイクロッドさんのいう善悪のない”狂人たちの饗宴”にしてしまうのがフリードキンらしいですね。

    正直初見のときは、なんじゃこれ!と思いましたが、今では大好きです。

    • スパイクロッド より:

      4時限定さん、コメントありがとうございます!

      ボクは原作は未読ですが、そんなことになっていたのですね!原作者のジェラルド・ペティヴィッチが映画版の脚本にもかかわっていることから考えると、このアイデアの出元はやはりフリードキンなのでしょうね。「お前の原作はクソつまんねえから変える!俺の言うとおりに書き直せ!」とショットガンぶっ放ちながら脅したのでしょう(笑)。そんな狂人監督が自分のやりたいように改変した映画。原作から映画化への過程、そして映画内においても主人公の変更を行っているあたり、かなり確信犯的にも思えますね。

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