『東京流れ者』感想とイラスト ぶっちぎりカルトムービー!

映画『東京流れ者』渡哲也のイラスト(似顔絵)

あの『ラ・ラ・ランド』が影響を受けたという日活任侠映画『東京流れ者』。簡素で抽象化された異次元空間で繰り広げられる歌とドタバタと殺し合いのなんと映画的幸福感にあふれたことか!これに比べれば『ラ・ラ・ランド』なんぞ○¥△✕@%□$◇!(自主規制済)

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作品データ

『東京流れ者』

  • 1966年/日本/83分
  • 監督:鈴木清順
  • 原作・脚本:川内康範
  • 撮影:峰重義
  • 音楽:鏑木創
  • 出演:渡哲也/松原智恵子/二谷英明/川地民夫/北竜二/江角英明

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

組を解散した親分の意思に従い、ヤクザ稼業から足を洗ってまっとうに生きようと願った男の逃れられない宿命を描いた、渡哲也主演による日活任侠映画です。監督は先日93歳で残念ながら亡くなられた、『けんかえれじい』『殺しの烙印』の鈴木清順。

あまりに早すぎたエンタメ怪作

観よう観よう、いつか観ようと思いながら、結局ひとつも観ないうちに亡くなられてしまった鈴木清順監督。追悼と悔恨の想いを込めて、現在大ヒット中の『ラ・ラ・ランド』がこっそりオマージュを捧げていたという『東京流れ者』をレンタルしてまいりました。

物語は組の解散を決めた親分の意をくんで自身も堅気になろうとした男が、対立組織との抗争によって東京を追われ、行く先々でも命を狙われ、最後には信頼していた組長にも裏切られたことを知って東京へと舞い戻ってくるという、ゴリゴリの世知辛い任侠もの。

脚本は「おふくろさん」騒動で若い人にも知られる『月光仮面』の耳毛ダンディ川内康範。しかしこの完成フィルムを観て川内康範氏の耳毛は怒りで逆立ったのではなかろうか?物語の筋なんてそっちのけの、もうやりたい放題し放題のぶっちぎりカルトムービーでしたから!

義理と人情に生きる古いタイプの男がヤクザの現実に裏切られるという話は、耳毛先生には悪いがとってもありきたりで面白くない。でもこの映画はそんなとってもありきたりな話を清順ワールドという異空間に放り込むことにより、謎の異次元映画へと昇華させておるのです!

冒頭のモノクロ映像、パース、長回し、シンメトリー、グラサン超接写、意味不明なモンタージュ、モノクロに浮かぶオレンジ色のオモチャ、「頼むから俺を怒らせないでくれ」とつぶやく不死鳥の哲、そしてカラーに変わって流れてくる主題歌と、異質すぎていきなり悶絶!

なるほどこれが鈴木清順の映画か。日活のプログラムピクチャーのなかであがってくる適当な脚本を、清順なりの娯楽意識によってなんとか面白くしてやろうとちぎって殴って蹴っ飛ばしたあげく、時代を飛び越えた新世紀娯楽映画へとへんげした早すぎるエンタメ怪作。

おそらく日活が目論んだのは、渡が歌う『東京流れ者』をフィーチャーした歌謡ハードボイルド映画だと思うのですけど、出来上がった代物は前衛アートB級歌謡ドタバタハードボイルドミュージカルコメディと言ってもいい奇形児で、日活首脳陣は唖然としたことでしょうね。

鈴木清順初体験となるボクも唖然といたしました。意図的な違和感を狙ったとしか思えない編集に。斬新すぎる構図に。現実離れした異次元セットに。悪役たちの面構えに。アートな色彩感覚に。やたらと歌う渡に。唐突な展開に。ドタバタに。唖然として狂喜いたしました。

それでいて虚無的な非情さも漂っており、漫画雑誌をケラケラ笑い読みしながら実は敵対組織と通じていた女、睦子(浜川智子)の死にざまを真俯瞰で四角く切り取った構図には鳥肌が立ちましたね。ムカつく女の死に対する歓喜と恐怖。赤から白へと変換する背景処理も鮮烈。

この『東京流れ者』という映画は、前衛アートなハードボイルド調の東京編、雪景色を舞台とした任侠パロディの新潟編、そしてドタバタ喜劇を盛り込んだ九州編の3パートから成立しておるのですけど、どのパートもそれぞれの味わいがあって本当に盛りだくさん。

新潟編の抗争を尻目に雪景色で『東京流れ者』を気持ち良さげに歌い、猛烈な自己アピールの末に「俺の射程距離は10メートル以内だ」と解説しながら大立ち回りを演じる不死鳥の哲の雄姿には、任侠映画を小バカにしたような痺れるアホカッコよさがありましたよね。

白の中に浮かび上がる赤提灯と赤いポストという、意味がありそでなさそなビジュアル的お遊びも無駄に眼福ですし、けっして颯爽としていない渡のブサイクな歩き方がなんともいえない不安感を醸成し、歌いながら唐突に登場する二谷英明に「あんた誰?」と恐怖を覚える。

あからさまなタイアップCMが突如として劇中で敢行される、“ライト工業のチャームレディ”と梅谷のオジキ愛用の“ライトパンチ”のゴリ押しにも、思わず所望してしまうダイソン顔負けの謎の吸引力がありましたよね。っていうか「ライトパンチって何?」って話ですけど。

九州編におけるアメリカンなドタバタ劇を通過したのち、信頼していた親分から裏切られたことを知った哲が怒りに燃え、東京へと舞い戻って展開するシュールレアリスムの極致ともいえる前衛アートなラストの銃撃戦の衝撃は、語彙の少ないボクの言語能力ではもはや解説不能。

観て震えろ!泣け!わめけ!ションベンちびれ!なんてことしか言えないね。ただでさえ阿呆な頭をさらに白痴化させる衝撃的傑作『東京流れ者』。唯一このラストシーンで語れることがあるとすれば、抱擁する哲と千春に背を向けるピアニストの敬一であろうか。

「お前ちーちゃんのことが好きだったんだなぁ」ってなんかほっこりもっこりしちゃった。しかしそんなみんなから愛されるこの映画のヒロイン、ちーちゃんこと千春(松原智恵子)のセリフって、基本「哲也さん」しかないのね。「哲也さん」をさまざまに言い換えるだけ。

あげくに「流れ者には女はいらねぇ」と捨てられるなんともぞんざいな扱いのちーちゃん。そんな冷たい仕打ちも含めてこの映画は抜群に面白い!あまりに面白すぎて鑑賞直後におもいっきしバイアスのかかったつぶやきを垂れ流してしまったのだが、あえてもういちど言おう。

『ラ・ラ・ランド』の百万倍面白いから絶対にみんな観てくれよな!

個人的評価:9/10点

独特な色彩感覚映画の感想はこちら

短い映画好きにおすすめ

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コメント

  1. 匿名 より:

    「野獣の青春」も是非!

    • スパイクロッド より:

      匿名さん、コメントならびにおすすめありがとうございます!

      実は現在『けんかえれじい』と『殺しの烙印』もストックしておりまして、近々鑑賞してまた感想を書くつもりでおります。『野獣の青春』はいわゆる「清順美学」が開花した記念すべき作品ということで、非常に興味がありますね。先の2本を消化したらぜひとも鑑賞してみたいと思います!

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