『ホワイト・バレット』感想とイラスト クララが立った!

映画『ホワイト・バレット』ウォレス・チョンのイラスト(似顔絵)

いよいよ自身の完成させたスタイルを叩いて揺らして壊し出したジョニー・トー。もはやボク程度のファンではいったい何を目指しているのか皆目見当がつきません。ジョニー・トーよどこへ行く?

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作品データ

『ホワイト・バレット』
三人行/Three

  • 2016年/香港/88分
  • 監督:ジョニー・トー
  • 脚本:ヤウ・ナイホイ/ラウ・ホーリョン/マク・ティンシュー
  • 撮影:チェン・シウキョン
  • 音楽:サヴィエル・ジャモー
  • 出演:ヴィッキー・チャオ/ルイス・クー/ウォレス・チョン

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

香港の救急病院を舞台に、頭部に銃弾を受けた容疑者、彼から情報を聞き出そうとする刑事、治療にあたる女医による人生をかけた三つ巴の心理戦を描いたサスペンス・アクションです。監督は『ザ・ミッション 非情の掟』『エグザイル/絆』のジョニー・トー。

けむまき群像劇

上映館数が少なすぎて観に行けなかったジョニー・トーの新作『ホワイト・バレット』。レンタルDVDにてようやく鑑賞です。恐ろしいスピードで監督作を量産しているトーさんは必然的に当たり外れが大きくなるのですけど、今回はどうやら外れを引いてしまったようですね。

今作の舞台となるのは病院。香港ノワールで病院といえばやはり『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』。あのような素敵で最高にアホらしい血みどろ殺戮劇が展開されるのかと期待に股間を膨らましておったのですけど、意外や意外、展開されるのはちんまりした心理サスペンス。

頭部に銃弾を受けて病院へと担ぎ込まれてきた強盗団のひとりチョン(ウォレス・チョン)。しかし彼は手術を拒否し、担当医のトン(ヴィッキー・チャオ)を困惑させる。チョンから仲間の情報を聞き出そうとするチャン刑事(ルイス・クー)もけむに巻かれる始末。

脳みそに銃弾がめり込んでるのに元気いっぱいなチョンの雄姿にまず腰を抜かしますが、無駄に学がありそうな彼の引用ゼリフの乱発は含蓄がありそうでなさそうな、つまりは何を言っているのかよくわからない始末であり、女医と刑事同様に観客もけむに巻かれるのです。

そんなチョンの嫌がらせに付き合いながら、完璧主義の女医、クールで厳格な刑事というふたりの化けの皮がはがされていくわけですが、その背後では狂った患者やふざけた刑事や自殺願望があるとしか思えない強盗団も暗躍しており、なんかもうてんやわんやのカオス状態。

惨劇が笑劇に変わるとき

病院を舞台としたアルトマンばりの群像劇とも思えますが、膨大な伏線や小ネタや含蓄や狂気をばら撒いた変化しすぎの変化球はすでに意味不明で、『エグザイル/絆』によって頂点を極めた自身のスタイルを破壊しにかかるトーさんのおふざけもここに極まれりって感じです。

このままお約束の銃撃戦もないまま妙な着地点へと落ち着くのかなぁ?そういや珍しくラム・シューはご飯お預けだね。「さーせん!さーせん!ホンマさーせん!」は化けの皮がはがれすぎで痛々しいなぁ。なんて物思いにふけっていたら満を持して始まる銃撃殺戮ショー。

その場に居合わせた医者、看護婦、患者、見舞客も有無を言わせず強制参加させた、自由自在に時間とカメラを操りながら超長回しによって映し出される警察と強盗団の銃撃戦は、迫力や緊張感などという次元は飛び越えて、もはや芸術的なまでにシュールなコントのようです。

凄いだろ?カッコいいだろ?というよりかは完全に笑かしにかかっています。敵も味方も一般人も飛びます、コケます、死にます。要はいかにこのふざけた惨劇へと物語を収斂させるかという映画だったわけですが、目的地へと到達したところでやはり何がしたいのかわりません。

トーさんの悪ふざけ

どさくさ紛れの「クララが立った!」なんてホントに質の悪い冗談です。同じくクライマックスの落下危機シークエンスも。この映画がすべて質の悪い冗談だったという事実は、ラストで誰ひとりとして救いそうで救わない舌出しちゃぶ台返しに如実に表れておるかと。

今回のカオスなてんやわんやを通して、人間としての角が取れて立派な医者に成長したと思ったトンはまたもや手術を失敗。それによってチョンは植物状態。それを知らないチャンは部下にチョンを銃で脅すよう指示したことを上司に自白し、責任を取って警察を辞職。

なんなのこの無常観?何かの教訓話めいてもおりますが、それが何についての教訓なのか悟らせないホントに最後まで悪ふざけの過ぎる作品で、ひとりだけ終始ご機嫌だったロー・ホイパンの歌声でエンドロールに突入する空恐ろしさも、詰まるところ何が何やらわかりません。

個人的評価:4/10点

巨匠の悪ふざけ映画の感想はこちら

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コメント

  1. ぽん より:

    いつも楽しく映画評論を読ませて貰っております、よければ『レクイエムフォードリーム』を評論してもらいたいです、初めて見た時演出と内容でかなり衝撃的だったのでスパイクロッド先生の評価を先生の文章と絵で読みたいのです。

    • スパイクロッド より:

      ぽんさん、コメントありがとうございます!

      リクエスト承りました!『レクイエム・フォー・ドリーム』はボクも衝撃を受けた忘れられない映画でありまして、いつかこのブログでも扱ってみたいと思っていたところです。いつまでに更新するとお約束することはできませんが、必ずや近いうちに再見して感想とイラストを描く所存ですので、どうぞ気長に待ってやってください。それから先生はやめてください(笑)。そんな呼ばれ方をしたのは人生初ですので、こっ恥ずかしいです(笑)。呼び捨てでいいですよ、呼び捨てで(笑)。

      • ぽん より:

        えっ呼ばれるの始めてなんですか!笑
        返信ありがとうございます!僕があの映画を見たのは割と最近なんですがドス黒い内容の割に演出がとても良かったりして自分で消化出来ず人の感想も聞きたくなる映画だなぁと思ったからです、評論楽しみにしております、
        待ってる間はほかのスパイクロッド評論をみながら楽しく待とうと思います笑

        • スパイクロッド より:

          ぽんさん、再度のコメントありがとうございます!

          地獄の社畜生活によって心身ともに疲弊しておりまして、最近はほとんど映画を観られてないのですけど、なんとか来月中には『レクイエム・フォー・ドリーム』の感想とイラストを仕上げたいと思っておりますので、今しばらく、今しばらくお待ちくださいです!

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