『ワンダーウーマン』感想とイラスト 正義は人を怒らせる

映画『ワンダーウーマン』ガル・ガドットのイラスト(似顔絵)

世界を、未来を救い、ついでにDCエクステンデッド・ユニバースまで救った救世主ワンダーウーマン。彼女が何を救い、何を救わなかったのか。是々非々が判断の肝とは言え、ああ~なんかモヤモヤするわ~。

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作品データ

『ワンダーウーマン』
Wonder Woman

  • 2017年/アメリカ/141分
  • 監督:パティ・ジェンキンス
  • 脚本:アラン・ハインバーグ
  • 撮影:マシュー・ジェンセン
  • 音楽:ルパード・グレグソン=ウィリアムズ
  • 出演:ガル・ガドット/クリス・パイン/コニー・ニールセン/ロビン・ライト/ダニー・ヒューストン/デヴィッド・シューリス

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

第一次世界大戦下を舞台に、女性だけが暮らす島で育ったアマゾン族の王女ダイアナ(ワンダーウーマン)が、世界を救うために戦場を駆けめぐる姿を描いたスーパーヒーロー映画です。監督は『モンスター』で高い評価を受けた女性監督パティ・ジェンキンス。

とりあえず結論から

『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』に続くDCエクステンデッド・ユニバース第4弾にして、当シリーズ初と言ってもいい批評・興行ともに高い数字を叩き出した救世主『ワンダーウーマン』。

ここ日本では「女は一人じゃ眠れない」なんて女性から搾取してブクブクに肥え太っている大先生による名曲(興味ないから聴いてない)の後押しもあり、おおむね好評どころか絶賛されている本作ですが、真の主題歌はシーアの『To Be Human』ですのでお忘れなく。

DCエクステンデッド・ユニバースを首の皮一枚で救った『ワンダーウーマン』。まことに喜ばしい。喜ばしい大成功ですが、ボクはてんで乗れなかったの。前2作のような目糞鼻糞大失態が存在していないだけの凡庸な内容で、ほどほどすぎて逆に印象に残らない。

それではいつものようにみんなが絶賛している作品を空気も読まずに酷評しちゃいますので、「気分がわりい!」って方はどうぞここらでお引き取りを。わたくし人を喜ばせることにはまったく自信がありませんが、怒らせる才能は豊潤であると自負しておりますよって。

ファッキンテンポ

女性だけで構成されたアマゾン族が隠れて暮らす島、セミスキラ。そこで生まれ育った王女ダイアナは最強の戦士を目指し、日々厳しい訓練に明け暮れていた。そんなある日、外の世界から迷い込んできたアメリカ人兵士、スティーブ・トレバーと運命的に出会う。

連合国軍のスパイとしてドイツへと潜入していたスティーブから恐ろしい新型兵器の話を聞いたダイアナは、その背後に戦いの神アレスの存在を確信。戦争を終わらせ、未来を守るため、スティーブとともに島を旅立ち、前線へと身を投じるダイアナだったが……。

外界と隔絶された世界で純粋培養された絶対正義が、初めて触れる外の世界の現実に戸惑い、怒り、失望し、それでも愛と信念をもって覚醒する姿を、暗く重く複雑になりすぎない適度に陽性な塩梅で描いたちゃんとしたエンタメ作で、観やすいっちゃあ観やすいです。

無知を笑うといった嫌味な感じではなく、むしろダイアナの価値観に従った言動によって我々の世界の矛盾を浮き彫りにするカルチャーギャップネタも、笑いだけではない、『ワンダーウーマン』という作品の根底に流れる問題意識がかいま見れます。

観やすいし、テーマもあるし、何よりガル・ガドットがカッコいいのだけど、はっきり言って映画としては面白くない。観やすいとは新味に欠けることの裏返しだし、テーマはちゃんと機能していたとは言いがたいし、ガル・ガドットはカッコよく浮世離れしすぎ。

そして最大の問題だと言えるのがすべての良い部分を停滞させてしまうテンポの悪さ。これによって物語の流れは寸断され、笑いの効果は半減し、戦いの高揚感、疾走感は失速してしまっているのです。正直なところクライマックスは完全に睡魔との格闘でありました。

スリルなきアクション

終始テンポが悪くて乗れそうで乗れない『ワンダーウーマン』。それは肝心要のアクション演出にも言えることで、スローモーションの多用はザック・スナイダーの影響だと思われるのですが、これがまたタイミング、リズム、テンポがとにかくいまいちなのですよね。

だいたいパティ・ジェンキンスのスローモーションにはザックほどの自己陶酔感がなく、いまの時代に陶酔していないスローモーションなんてダサいだけです。ダサいと言えば、あのコスチュームで戦場を駆け回る姿もボクにとってはなんともいえないダサさがありました。

地獄の戦場をあの露出の高いコスチュームで疾走する違和感にこそ神々しさを感じるという向きもあるでしょうが、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』ほどの突き抜けた待ってました感を得られないのは、やはり時代設定の中途半端さにあるかと思います。

ダイアナの身体的頑強さの基準がいまいちよくわからないのも、肉体アクションにおけるスリリングさの欠如を招いており、無双ヒロインによる天下無敵の破壊行為にしか見えないのですよね。彼女が耐えうる基準というものをもうちょっと明確に提示してほしかったもんです。

対人間のアクションはスリル不在のがらんどうで、クライマックスの戦神アレスとの対決は双方ともに完全なる能力のハイパーインフレを起こしており、遠い世界のお話と化してもう好きにやってって感じ。ホント後半はわたくし睡魔との格闘で大変でしたの。

末端にも光を

おとぎの国から抜け出てきた絶対正義の無双プリンセスに黙って付き合うほどボクは人間できておりませんので、ついにその姿を現した戦神アレスとの問答に関しても「それは散々観てきたよ~」って話でまあ眠いのなんの。

アレスの正体にしたところで、あのお方が登場した時点でなんとなくの予測はついておりましたのでサプライズ感ゼロでしたし、その圧倒的小物感にはやはりいかんともしがたいものが。どうせならアレスなんて最初からいなかったってほうがテーマ的には際立ったと思いますね。

戦争の傷痕、差別というテーマをもっと掘り下げるのであれば、決死の突入作戦のメンバーであるサミーア、チャーリー、酋長の3人に加えて、敵役の女マッドサイエンティスト、ドクター・ポイズンをちゃんと活用するべきでした。これは本当にもったいない。

特に撃てない狙撃手であるユエン・ブレムナー演じるチャーリーと、悲しいトラウマとゆがんだコンプレックスを抱えているらしいエレナ・アナヤ演じるドクター・ポイズンのキャラ設定はいくらでも面白くなる要素があっただけに、ここをないがしろにしたのは本当に大失点。

こういう末端の人生を切り捨てて、愛だの未来だの平和だの語られたところでボクのような人生負け犬にはビタイチ響いてきやしません。ホント勝手にやっとれって話で、いよいよ口汚い罵詈雑言が排出されそうな気配ですので、怒られる前にここらでやめとくのが賢明かな?

シオニズムとフェミニズム

と言っておきながら、しつこく重箱の隅をつっつき続けるのがボクが人を怒らせるゆえんでありまして、最後の最後にもうひとつだけ。

どこぞのポンコツジャーナリストが書いていた『ワンダーウーマン』の暗黒面。いわく、イスラエル出身で兵役経験もある主演のガル・ガドットが、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃を支持していたことをもって、本作の中立性を非難していた例のポンコツ記事。

これに対する回答はしごく簡単で、演者の思想信条と映画の中身は別物である。終わり。となるのですが、若干ややこしいというかモヤモヤしているのが、この『ワンダーウーマン』をもってガル・ガドットをフェミニズムのアイコンとして称賛してしまっている点であります。

シオニストである彼女とフェミニズムのアイコンとしての彼女は両立するのか?という問題でして、そこには目をつぶってフェミニズム的側面だけ拍手喝采しようってのはやっぱりちょっと違うと思うのですよね。そこがダメならこっちもダメだろってボクなんかは思うのです。

ですので、シオニストである彼女と映画の中身を混同するような野暮なことはいたしませんけど、同時にこの『ワンダーウーマン』を偉大なるフェミニズム映画だとして称賛することもボクはできかねます。だいたい、そんなにたいしたフェミニズム映画でもありませんしね。

唯一称賛できる点があるとすれば、フェミズム的文脈における理想的なる男性像を見事に演じきったクリス・パインの最高さでしょうか。ここまで罵詈雑言を並べ立ててきたこの感想でありますが、クリス・パイン演じるスティーブ・トレバーだけは最高だったと断言できます。

自分より優秀で、強くて、偉大な女性の前で我々男はどう振る舞うべきなのか。「僕は今日を救う。君は世界を救え!」と語った彼のやさしさと強さを見るにつけ、ダメな男汁全開の己に恥じ入り、穴があったら入れてみたい、なんて袋叩きにあったところで今回のくだらない感想を終わりとさせていただきます。

個人的評価:3/10点

真のフェミニズム映画の感想はこちら

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コメント

  1. マーフィ より:

    こんにちは。
    私も高い前評判になんか妙に期待して観に行ってしまってちょいがっかりでした。

    とりあえず「アレスおんのかい!」って思いました。清濁混じった存在であるっぽいチャーリーたち三人組とドクター・ポイズンを活かせないのは、アレスがいるって話でまとめるならある意味必然だったのかなと思います。アレス倒した後にドイツ軍がマジで改心してたっぽい描写にも困惑しました。
    どうもこの映画は能天気ド天然でこうなったというより、あえて『悪の親玉は存在していて本当の事態はそんなに複雑ではない』という物語を積極的に選んだ印象があって、ある意味では興味深い気もしました。この映画が大いに受けている理由をそこに見るのはうがった見方ですかね?

    あとマジファッキンテンポでしたね。

    • スパイクロッド より:

      マーフィさん、コメントありがとうございます!

      まあちゃんとしたラスボスがいないと映画が締められないという問題はあるでしょうが、結局アレスが裏で糸を引いていたとしてしまうとテーマがぼやけちゃうんですよね。いちおうは複雑な世界の現実を描こうと苦心しておりましたので、最終的に物事を単純化して責任転嫁を図っていたとは思いたくないのですが、結果的にそうなってしまっているのは微妙なところですよね。あのラストにおけるドイツ兵の描き方なんかはまさにそうですよね。大事によって小事が吹き飛んだとも取れますが、それまでは単純な悪、敵として描いていたことを考えると「う~ん……」って感じです。こういうツッコミどころが、ガル・ガドットの出自や思想信条と絡めて批判されているゆえんでもあるかと思います。

  2. えるぼーロケッティア より:

    どうもです。
    僕は好き寄りです(笑)

    ただスパイクロッドさんのご指摘する点もよくわかります。
    中盤の見せ場のアクションまで長いですし(アクションシーンは好きです)、あれだけ上映時間がありながらスナイパーやその他の仲間たち、ドクターポイズンなど人間側で美味しい要素をもったキャラ達が大して描き込みできてないんですよね。酋長に関してはスティーブをみて「彼らに侵略された」というのが精いっぱいだったのかなと思います。

    アレスが神の力を行使して争いの種を与え選択させるくだりも、いくら選択肢を与えただけだと言い張ってもあれだと本当にアレスが操っているように見えてしまいますよね。

    アクションは好きと言いましたが、アレス戦はダメダメです。
    これはハッキリとダメです。
    お互いの攻撃を順番に打ち合うターン制になっていてテンポが悪いし、中盤のようなキレキレの肉弾戦もなく、単なるビームの打ち合いが殆どになっていたのは残念です。
    こういった超人戦闘の魅せ方はBvSでのワンダーウーマンの方がずっといいと思います。

    それでも好きなのは、世界は母が読み聞かせてくれたおとぎ話のように単純で、悪の親玉を倒せばID4の宇宙人よろしく悪は一層され世界は平和になると信じていたダイアナが
    、スティーブとの出会いをきっかけに世界は思ったよりも複雑で、人間は業が深い生き物なのだと知り、それでも向き合い救おうと決意するという部分に惹かれたのだと思います。
    やろうとしてることがわかるから、それがあまり上手く演出できていないとわかっていても嫌いになれない、そんな感じです。

    • スパイクロッド より:

      えるぼーロケッティアさん、コメントありがとうございます!

      そういう意味ではこの映画の真の主役はやはりクリス・パイン演じるスティーブなのかもしれませんね。この世界の複雑さを理解し、その矛盾や欺瞞と葛藤しながら、それでも自分のできうる範囲で何かを成し遂げたいと思う男。まず最初に彼と出会ったのはダイアナにとっては幸運でしたね。彼との出会いによって人を知り、人を愛し、人を救う術を見いだしたのですから。逆にダイアナとの出会いによってスティーブも突き動かされたのでしょう。それがあの超絶泣けるセリフへとつながっているのだと思います。えるぼーロケッティアさんと同じくそれを理解しているからこそ、逆にボクは不満が募って仕方がなかったのですが(笑)。

  3. (눈_눈) より:

    好みじゃないけど綺麗なお姉さんだなあってだけのアメコミ映画でした。
    個人的にはこの手の漫画映画はコミックみたいに時間かけらんないんだから、2時間におさまるようにテキパキエンタメしててほしいっす。
    フェミがどーたらとかなんて、語るにはフェミ分足りなさすぎてどーでもいいやって感じだし。LGBTに踏み込み足らなんだ新生ゴーストバスターズしかり。
    いっそそんな無駄で瑣末なこと盛り込むくらいなら一点突破でカッチョいーアクションをやってくれたら嬉しいのにぃ。

    • スパイクロッド より:

      (눈_눈)さん、コメントありがとうございます!

      昨今のヒーロー映画はもはや単純な勧善懲悪の名のもとにカッチョいいアクションを展開するという方向へは向かえないのでしょうね。なんとも正義を描くのが難しい時代になったもんです。そんな時代に登場した直情型ヒーロー(ヒロイン)のワンダーウーマンでしたが、彼女のストレートさはおとぎ話の世界として現実へと引き戻されたわけですし。今の時代は正義を描くというより正義を疑うという視点でしかヒーローを語ることはできないのかもしれませんね。おっしゃるとおりたまにはスカッとするだけのひたすらカッチョいいヒーロー映画も観てみたいもんです。

  4. 匿名 より:

    いつも見事なイラストと面白く分かりやすいレビューをありがとうございます。
    時には膝を叩いて賛同したり、時にはいやそれは違うだろとツッコんだりしながらも楽しく読ませていただいているのですが、
    今回初めてコメントさせていただきます。
    というのも、私も筆者様と同様今回の世評に非常に強い違和感を感じている側のためです。
    テーマの掘り下げは中途半端だし、ザックの2作品に比べれば見やすくはなっているとはいえアクションもそこまでではないし、フェミニズムヒーローというほど革新的なヒロイン像でもないのになあというのが作品自体の印象です。
    まあ、前3作が駄作だった反動で凡作でも傑作に思えてしまうのかとも思いますし、
    それだけなら自分の感覚が世間とズレているだけということで納得出来るのですが、
    ほとんど誰も触れていないが絶対に看過出来ない点が一つあります。
    この作品のメインの舞台が第一次世界大戦であることです。
    毒ガス含め戦争のあり方を大きく変えたのがWWⅠであることは確かですが、その20数年後にこそ本当のこの世の地獄が現出し、人類は自分達を滅亡させることの出来る兵器を発明するわけです。
    しかも、その発端はまさにWWⅠ終結後のイギリスを初めとする連合国の振る舞いにあるわけで、それを素通りして、WWⅡの間ダイアナは何をしていたのかに全く触れないというのはとんでもない欺瞞に思えてしまいました。
    舞台が架空の戦争や中世頃のはるか昔の戦争ならこんなことも感じなかったのでしょうが、歴史上実際にある戦争を扱いながらこの描き方はどうなんだと・・・
    私の着目ポイントがおかしいのでしょうかね。
    長文失礼いたしました。
    筆者様はどう感じられましたか?

    • スパイクロッド より:

      匿名さん、コメントありがとうございます!

      ボクはそれほど歴史に詳しい人間ではないので、これについてあーだこーだと語れる能力は持ち合わせておりませんが、やはり意図的に回避したと取られても仕方がないでしょうね。原作やドラマ版におけるワンダーウーマンの敵は明確にナチス・ドイツのようですから。単純な対ナチス、対ヒトラーを回避したかったのか?敵は人間ではなくその背後で暗躍する悪だとしたかったのか?イスラエル人である主演のガル・ガドットに配慮をしたのか?真相はわかりませんが、匿名さんの疑問はもっともだと思います。ワンダーウーマンが人類最大の暴挙に対して沈黙していた理由。それがのちのシリーズで語られるのか否か。この結果いかんではやはり欺瞞だと思われても仕方のないことだとボクも思います。

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