『SING/シング』感想とイラスト 落ちるとこまで落ちてみな!

映画『SING/シング』ジョニーのイラスト

どん底まで落ちた動物たちは、歌の力で這い上がる。落ちたらあとは上がるだけ。問題なのはいかに落ちるか。どこまで落ちるか。

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目次

『SING/シング』感想とイラスト 落ちるとこまで落ちてみな!

  1. 作品データ
    1. 予告編動画
  2. 解説
    1. 主題歌/スティーヴィー・ワンダー feat. アリアナ・グランデ『Faith』
    2. あらすじ
  3. 感想と評価/ネタバレ有
    1. 上がるためにはもっと落ちろ
    2. 意外と無難な選曲センス
    3. 歌はいいぞ!
    4. ゴリ押しが過ぎる!

作品データ

『SING/シング』
Sing

  • 2016年/アメリカ/108分
  • 監督・脚本:ガース・ジェニングス
  • 音楽:ジョビィ・タルボット
  • 声の出演:マシュー・マコノヒー/リース・ウィザースプーン/セス・マクファーレン/スカーレット・ヨハンソン/タロン・エガートン/トリー・ケリー/ニック・クロール/ジョン・C・ライリー
  • 日本語吹き替え版:内村光良/坂本真綾/山寺宏一/長澤まさみ/大橋卓也/MISIA/斎藤司/宮野真守

予告編動画

解説

動物だけが暮らす世界を舞台に、人生の鬱屈を歌によって解消、解放、爆発させるカタルシスを描いた、イルミネーション・エンターテインメント製作による3Dアニメーションです。

監督と脚本は『銀河ヒッチハイク・ガイド』のガース・ジェニングス。声の出演は『キラー・スナイパー』のマシュー・マコノヒーをはじめとし、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、タロン・エガートンなどの豪華キャスト。

主題歌はスティーヴィー・ワンダーとアリアナ・グランデが歌う『Faith』。劇中でも60曲を超えるヒットソングが多種多様な動物たちによって歌われる音楽映画であります。

主題歌/スティーヴィー・ワンダー feat. アリアナ・グランデ『Faith』

あらすじ

高度に進化した動物たちが人間同様に暮らす異世界。コアラのバスター・ムーンはつぶれかけの劇場の支配人で、起死回生を狙って歌のコンテストを開催することに。しかし手違いによって2桁多い10万ドルの優勝賞金が掲載されてしまい、膨大な数の応募者が殺到する事態に。

予選を通過したのは、平凡な主婦でブタのロジータ、高飛車なネズミのマイク、パンク少女でヤマアラシのアッシュ、ギャング家業から足を洗いたいゴリラのジョニー、内気で人前で歌うことのできないゾウのミーナなど。

それぞれが自分の人生に何かしらの鬱屈を抱え、歌によってそれを変えられるのではないかと希望をいだいた夢のコンテストだったが、賞金10万ドルが嘘であったことが判明して事態は大変なことに……。

感想と評価/ネタバレ有

『怪盗グルー』シリーズや『ペット』で知られるイルミネーション・エンターテインメントが送る歌と踊りの人生賛歌。これまでこの会社の映画は一本も観たことがなかったのですけど、予告編がけっこう良さげでヘタクソな鼻歌を口ずさみながらヘコヘコ出かけてまいりました。

歌まで日本語に吹き替えるという意味が頭の固いボクには理解できませんでしたので、もちろん字幕版での鑑賞であります。字幕版を観に来たはずなのに、笑福亭鶴瓶による吹き替えで他作をゴリ押しされる珍事にはお腹が痛くなりましたが、それではさっそく本編の感想をば。

上がるためにはもっと落ちろ

舞台は『ズートピア』のような擬人化された動物たちが人間同様に暮らす世界。しかし『ズートピア』ほどその世界観は作り込まれておらず、単なる擬人化にとどまっておるのは安心と安定の表れでしょう。つまりはオフェンスではなくディフェンスの映画だということ。

難しい話は抜きにして、人間みたいな動物たちが小さな悩みや不満を歌にぶつけるわかりやすいサクセスストーリー。それぞれが抱える人生の問題を歌を歌うという行為のみによって一点突破を図る展開は、わかりやすくて広く受け入れられる反面、説得力に欠けるのが難点か。

まああくまで子供を対象とした作品のようなので、おっさん目線で物語の深みがどうたらこうたらと御託を並べるのもおケツがむず痒い話なのですが、「どん底まで落ちたらあとは上がるだけ」とのたまうのであれば、やはりそのどん底描写に手を抜いては意味がありません。

底の底まで落ちたバスターが一子相伝の体を張った洗車業を披露するくだりには、「ええ!?お前に劇場をもたすために30年働いた親父さんの仕事ってそういうことだったの!」という股間が「キュン♥」となるせつない哀愁がありましたが、全体的には甘っちょろいのですよね。

一発逆転の興奮をアゲアゲにするためには、もっと彼らのどん底描写を徹底して描くべきでした。コメディリリーフのみに終わったグンターの日常なんてその格好の材料だったと思うのですけどね。あのハイテンションの裏では壮絶な低空飛行の現実を生きていたとか。

ここがどうしても甘っちょろいので、彼らの成功にカタルシスが、問題の解決に説得力が生まれてこないのです。歌の魅力は認めるだけに突っ込み不足がどうにも残念でした。

意外と無難な選曲センス

突っ込み不足の凡庸なストーリーを補うのは歌の力であり、その魅力は前述しましたとおり認めます。ビートルズの『Golden Slumbers』から始まり、ゾンビーズ、レディー・ガガ、ヴァン・ヘイレン、クレイジー・タウン、サム・スミスなど、新旧織り交ぜての総勢60曲以上!

日本からはきゃりーぱみゅぱみゅが参戦しており、あまりに曲数が多くて知らない曲も出てくるでしょうが、広く浅くカバーしておりますので、何かしら引っかかる曲が誰でも登場してくるはず。つまりはここでもオフェンスではなくディフェンスに徹しているということ。

歌の魅力、パワーは認めますが、その選曲センスにはキラリと光るものがなく、ストーリー同様にどこか無難な印象が残ります。ボクはロック派ですので、ポップス寄りの選曲が肌に合わなかったというのも一因ですが、それにしても冒険しなさすぎではないでしょうか?

歌はいいぞ!

ただまあ満を持してのクライマックス、これまではぶった切り編集による寸止めプレイによってイカせてはくれなかった名曲たちを、ついにそれぞれが渾身のパフォーマンスによって魅せる、聴かせるラストのショーの素晴らしさにはエンタメ的興奮がありました。

25匹もの子供と仕事に疲れた夫の面倒に追われ、平凡な主婦としての自分に物足りない想いを抱えていたブタのロジータが、ひとりの女性としての内なる魅力を覚醒させて歌い上げる、テイラー・スウィフトの『Shake It Off』。

ギャングのボスである父親の庇護から離れ、ひとりの男としてついに立ち上がったゴリラのジョニーが力強く演奏し、歌い上げるのはエルトン・ジョンの『I’m still standing』。

実力はあっても認められない、存在を認識されない鬱屈を抱えていた自信過剰で傲慢なネズミのマイクが、自分の実力を世界中に見せつけようと、トラブルをも味方につけて最高のパフォーマンスを披露するのがフランク・シナトラの名曲『My Way』。

マウント野郎の彼氏に対して自らの独立宣言を力いっぱい叩きつけるのは、パンク少女でヤマアラシのアッシュ。このショー唯一のオリジナル曲ですが、もはやパンクではなくなっているというのはいかがなものか。

トリを務めるのは内気すぎて人前で歌うことができなかったゾウのミーナで、歌うのは主題歌も務めたスティーヴィー・ワンダーの『Don’t You Worry ‘bout a Thing』。今回唯一の本物のシンガーであるトリー・ケリーの圧倒的な歌の力は文字どおり破壊力満点です!

歌の魅力と力を再認識させてくれるエンタメ精神満載のアゲアゲクライマックスでしたが、前述しましたとおり、一発逆転に対するどん底の布石が中途半端ですので、「歌が凄い!」以上のカタルシスが生まれてこなかったのが重ねて残念でなりません。

ゴリ押しが過ぎる!

凡庸なストーリー、無難な選曲、それでもそれなりに楽しめてしまうのはひとえに歌の力なのでしょうが、それに寄りかかった守りの映画という印象はぬぐえません。最近のディズニーが見せている攻めの姿勢と比較すると、やはり大きな減点材料ではありますね。

冒頭の笑福亭鶴瓶によるゴリ押し珍事にお腹が痛くなったと書きましたが、ラストの「続編製作すでに決定!」「吹替版も観てくれ!」というゴリ押し宣伝にも寝込みそうになりました。こういうことすればするほど観たくなくなっちゃう奴もいるのだよ。

だいたいてっきりエンディングでかかるものだと思っていた、エアロスミス feat. エミネムの『Dream On / Sing For the Moment』がないってどゆこと?くだらんゴリ押し宣伝はいらんからこれかけんかい!っちゅう話ですわ。

個人的評価:5/10点

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コメント

  1. ヒメカブト より:

    日本語吹き替え版、まさか歌まで吹き替えるとは僕も思いませんでした…..笑
    なにしてんの?
    いや、なにしてんの?
    いやいやいやバカなの?
    曲の価値吹っ飛ばしてどうすんの?
    ってさすがに思いましたね笑
    死んでも字幕版観に行きます。

    • スパイクロッド より:

      ヒメカブトさん、コメントありがとうございます!

      こんなことするのは日本ぐらいでしょうね(笑)。でもこれが興行的にはプラスに働くのではないでしょうか?好きな人は絶対に字幕と吹替の両方を観に行きますもんね。別に洋楽に興味のない人も引き込めますし。面白い!もう一回観たい!と思ってくれたら、もうひとつの公開版を観に来てくれるわけですから。一粒で二度おいしいというわけですね(笑)。

  2. 匿名 より:

    個人的には日本語訳されてて良かったです。正直洋楽だと歌詞の意味わからんし歌詞が前にでてそっちに集中してしまい絵をみるのが辛くなるので。ララランドはそれで乗り切れなかったのであまり楽しめなかった。

    • スパイクロッド より:

      匿名さん、コメントありがとうございます!

      確かに字幕に目が行って肝心の画に没入できないというのが字幕版の欠点でもありますよね。本当は英語が理解できればすべての問題は解決するのですけど、そのへん日本人には敷居が高いですな。特にこういう歌を主題とした映画は難しいと思います。ボクの感覚的には歌まで日本語に吹き替えてしまったら、それはもう別物になってしまうと思うのですけど、観やすさを考えるとそちらを選択される方も多いのですよね……。

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