『ゴースト・ハンターズ』感想とイラスト 無駄を愛するスカシ芸

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映画『ゴースト・ハンターズ』カート・ラッセルのイラスト(似顔絵)

チャイナタウンの地下迷宮を舞台にかつてない大冒険が繰り広げられる、ファンタジーアドベンチャーカンフー魔術ホラーコメディ『ゴースト・ハンターズ』!ごった煮的ないいとこ取り映画はそのいい部分をあえて捨て去った「そういう映画」批評映画だったのだ!

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作品情報

ゴースト・ハンターズ

  • 原題:Big Trouble in Little China
  • 製作:1986年/アメリカ/99分
  • 監督:ジョン・カーペンター
  • 脚本:ゲイリー・ゴールドマン/デヴィッド・Z・ワインスタイン
  • 撮影:ディーン・カンディ
  • 音楽:ジョン・カーペンター/アラン・ハワース
  • 出演:カート・ラッセル/キム・キャトラル/デニス・ダン/ジェームズ・ホン/ヴィクター・ウォン/スージー・パイ

参考 ゴーストハンターズ – Wikipedia

解説

チャイナタウンを舞台に、ともに愛する女性を謎のカンフー魔術組織によってさらわれたふたりの男が、太古から生き長らえる伝説の妖怪ロー・パンへと立ち向かう姿を描いたアドベンチャーコメディです。

監督は『遊星からの物体X』『ゼイリブ』のジョン・カーペンターで、本作では劇伴だけでは飽き足らずついに主題歌まで手を出しております。主演は『ニューヨーク1997』『エスケープ・フロム・L.A.』でもカーペンターとタッグを組んだ盟友カート・ラッセル。

共演には『ゴーストライター』のキム・キャトラル、『パラダイム』のデニス・ダン、『ブレードランナー』のジェームズ・ホン、『トレマーズ』のヴィクター・ウォンなど。

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感想と評価/ネタバレ多少

昨年末から続いているジョン・カーペンター監督作レビュー企画第4弾は、カーペンターにしては珍しいコメディ路線へと振りきれた珍作『ゴースト・ハンターズ』。予算2500万ドルをかけながらその半分も回収できなかった失敗作というのが一般的評価でしょうか?

かく言うボクもあまり好きではない、というか嫌いな映画でした。若き日のボクにとって唯一嫌いなカーペンター監督作。今回のレビューを書くにあたってBlu-ray盤を購入し、およそ20年ぶりぐらいに鑑賞してみたのですが、あれれれ?これって意外と面白くないかい?

「そういう映画」と思うなよ

サンフランシスコのチャイナタウン。トラック運転手のジャックは、親友であるワンの恋人ミャオが中国からやって来るということで、空港まで同行することに。しかし到着したミャオは突如として現れたチンピラ集団“死の貴族”によって誘拐されてしまう。

さらわれたミャオを救い出すため、チャイナタウンに隠された地下迷宮へと乗り込むことになったジャックとワンだったが、そんな彼らの前に中国の伝説の怪人ロー・パンが立ちはだかるのであった……ってのが簡単なあらすじ。

1980年代の主流とも言えるアドベンチャー、SFX、カンフーといった客を呼べる出し物を揃えながら、そのすべてを無駄に浪費し、ドブに捨て、「そういう映画」を期待した客をぽか~んとさせた珍作『ゴースト・ハンターズ』。もちろんボクも「そういう映画」を期待して開いた口がふさがらなくなった客のひとり。

しかし今ならわかります。この『ゴースト・ハンターズ』という映画は「そういう映画」を期待した客をあざ笑い、コケにし、「ほかをあたれよバ~カ」とケツを出す、「そういう映画」批評映画だったということが。カーペンターにはハナから「そういう映画」を撮る気などなかったのだ。

ゆえに「そういう映画」の王道を外しまくる邪道ばかりが続くのですよね。ある一瞬を除いてまったく活躍をしない主人公。無駄に入り組んでいるわりには目的地不明な物語。人格がコロコロ変わるヒロイン。特に意味があるとは思えないカンフー大乱闘。見得を切ることだけに必死で一向に戦わない嵐の3人組。

挙句の果てにはラスボスであるロー・パンの最期のあっけなさよ。徹頭徹尾「そういう映画」の面白さをあえて外し、ズラし、あらぬ方向へと必要以上にクルクル回転しながら飛び去っていく脱力系ヘンテコ映画。それが『ゴースト・ハンターズ』なのです。

Big Trouble in Little China (1/5) Movie CLIP – The Three Storms (1986) HD

娯楽映画の道はひとつにあらず

そういう邪道的あえて外し芸を楽しめるのか否か?若き日のボクは「映画とはかくあるべし」という固定観念に縛られた石頭であり、本作の型にハマらないゆるゆるふにゃふにゃ漏れ放題のぐだぐだ加減に理解を示すことができなかったのですね。しかし今は違います。

無駄が無駄ではなく無駄であるからこそ無駄に楽しい事実を知った、脳ミソ半分溶け出した大人の男としての余裕が出てきたしゃくしゃくダンディズム。なに言ってんのか自分でもよくわかりませんが、つまりは無数に並んだ羅漢像の中央で「せいっ!あいや!ほぁあ~」とか言ってんのが最高に無駄で楽しいということ。

まあホントただそれだけの映画なので、正直途中で飽きてきちゃうのが玉に瑕ではありますが、映画としての意味をあえて放棄して無駄へと振りきれたカーペンターのアウトサイダー根性は、いわゆる娯楽映画というものを見直す良い教材となるかもしれません(なるか?)。

特にカート・ラッセル演じる主人公ジャックの造形なんて典型的ヒーロー像へのアンチテーゼとして秀逸ですよね。っていうかこれはもうヒーローではなくヒロインだろう。一見マッチョなヒーローと見せかけて実はドジでお茶目な映画に花を添える足手まといヒロイン。

その役立たずっぷりもけっして嫌味なものではなく、とにかく愛らしくてある意味で魅力的なのはやはり好漢カート・ラッセルの為せる業。あのダサいタンクトップを着こなせるのも彼ぐらいのもの。実は反射神経だけは抜群だったという適当さもたまりません。

クライマックスもホント適当で嵐の3人組の退場劇なんてただの悪ふざけです。気合だけは本物の魔術ビーム合戦も、真っ赤な口紅も、羅漢像ドミノ倒しも、何から何まであえて意味を持たせない「そういう映画」のふりをしたカーペンター流の脱力娯楽映画。

極めつけはエンディングで聴こえてくるけっして上手いとは言えないカーペンターが自ら歌った主題歌。最後の最後までふざけてます。人のお金で遊んでます。でもすんごい楽しそう!生粋のアウトサイダーによる型にハマらない娯楽映画の批評的再構築。

上手くも凄くも面白くもないかもしれない。でも、娯楽映画の王道なんて誰が決めたんでしょう?道は人それぞれ。時には道を逸脱したほうが人生の面白味が増す場合もある。そんな横道志向の方にはおすすめな怪作なのですが、人生まっすぐ歩きたいって人はどうぞそのまま寄り道せずに進んでいってくださいな。

John Carpenter's Coup de Villes Music Video

個人的評価:5/10点

DVD&Blu-ray

ゴースト・ハンターズ Blu-ray
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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短い映画好きにおすすめ

コメント

  1. ブッチ より:

    カーペンターシリーズありがとうございます!ボクもスパイクロッドさんに全く同意見です。
    この映画、実は「意外と」面白いんですよね。普通の娯楽映画の物差しでは全くダメダメな映画なんですけど、これだけ金かけといて、そんな物差しを全く無視した度胸というか、反骨というか、適当というか…。初見では、すかし、外し、遊びに唖然とし、許せなかったのですが、大人になるとこの適当さを許す余裕が出てきたのか、妙に面白く感じるんですよね。そういう意味では真の大人の映画かもしれません(立派な大人ではないかもしれませんが)。
    一方、おどろおどろしいロー・パンや、ワイドスクリーンを存分に活かした嵐の3人組の見得とか、特殊効果とか、いつもながら部分的には気合が入ってるのもカーペンターらしいです。
    ブルーレイの特典でカーペンターとカート・ラッセルの音声解説が入ってますが、これは面白かったです。ノリノリで、二人の仲の良さが伝わって嬉しくなります。途中、映画から全く脱線して、画面と全く関係ない話で盛り上がるという適当な仕事ぶりも微笑ましい限りです。
    ここまでカーペンターシリーズで来たので、いよいよ満を持して「ニューヨーク1997」をお待ちしております!あるいは、カーペンターとしてはまとも過ぎて異色な「クリスティーン」や「スターマン」の感想も読んでみたい気もします。

    • ブッチさん、コメントありがとうございます!

      映画に純粋な面白さや、意味を求める若い頃には響かない映画かもしれませんが、年を食うといい感じにこのスカシ芸がじわじわ効いてくるまさにスルメ映画でしたね(笑)。けっこう大きなバジェットでこれをやっちゃうカーペンターは確信犯でしょうが、もうこの頃には大手スタジオのもとで映画を作ることに意義を見いだせなくなっていたのかもしれませんね。これ以降はそことはもう縁を切って、低予算でも作りたい映画しか作らなくなりましたから。そこから『パラダイム』や『ゼイリブ』、そして『マウス・オブ・マッドネス』が生まれたんですから凄い話ですけどね。

      カーペンターもクローネンバーグやデ・パルマと同じく全作レビューしたい監督のひとりですので、地道にこれからもレビューは続けていくつもりです。『ニューヨーク1997』は力が入りますが、『エスケープ・フロム・L.A.』もBlu-ray化してくれたらセットでやりやすいんだけどなぁ。あ、実は『スターマン』は未見ですのでかなりやりたいです!また近いうちに何かひとつ書くでしょうから、どうぞしばしのお待ちを。