『トッド・ソロンズの子犬物語』感想とイラスト 人生の滋養強壮

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映画『トッド・ソロンズの子犬物語』ダニー・デヴィートのイラスト(似顔絵)

『トッド・ソロンズの子犬物語』。なんて身も心もほっこりしそうなタイトルなんでしょう。しかしご注意ください。タイトルに騙されて鑑賞した愛犬家の方々には最後に致死量の毒物が仕込まれている、ダメ人間限定の滋養強壮映画でありますから。

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作品データ

『トッド・ソロンズの子犬物語』
Wiener-Dog

  • 2016年/アメリカ/88分
  • 監督・脚本:トッド・ソロンズ
  • 撮影:エドワード・ラックマン
  • 音楽:ネイサン・ラーソン/ジェームズ・ラヴィーノ
  • 出演:キートン・ナイジェル・クック/ジュリー・デルピー/グレタ・ガーウィグ/キーラン・カルキン/ダニー・デヴィート/エレン・バースティン

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

さまざまな事情から全米中を転々とするダックスフント(Wiener-Dog)と、彼女の飼い主となる人間たちのとにかくさえない人生を描いたブラックコメディです。監督は『ハピネス』や『ストーリーテリング』の奇才というか変態トッド・ソロンズ。

ほっこり邦題に騙されるな!

『ダークホース ~リア獣エイブの恋~』以来5年ぶりとなるトッド・ソロンズの新作。笑うに笑えないどん詰まり人生を描かせたら右に出る者がいない孤高の変態として、その名をどん詰まり人生愛好家の皆々に刻みつけていたあの男がついに帰ってまいりました。

『トッド・ソロンズの子犬物語』という何やらほっこりしそうな邦題を引っ提げて。しかしこのほっこり邦題に騙されてはいけません。トッド・ソロンズとは詰まりに詰まったフン詰まり人生を描くことしか眼中にないド変態でありまして、もちろんこの作品も容赦がありません。

4つのエピソードからなるオムニバス作品とも言える本作は、飼い主から飼い主へと渡り歩いてゆく一匹のダックスフントの旅を通して、「本当に人生というのはどうにもならん!」という厳しい現実を人にも犬にも突きつけてきており、観ているこっちの顔面もフン詰まりになるのは必至なのであります。

いきなり下痢三昧

最初の飼い主となるのは小児ガンをわずらう少年レミ。彼の遊び相手としてこの家へともらわれてきたダックスフントはすぐレミと仲良しになりますが、彼女の弱点はお腹がゆるかったこと。レミからもらったグラノーラバーのせいでゆるゆるのゲリピー地獄へと陥るのです。

フン詰まりかと思ったらまさかの下痢三昧。やっぱりこのトッド・ソロンズという監督は一筋縄でも二筋縄でもいきません。ドビュッシーの『月の光』に乗せて長々と路肩のウンコを映し続ける映像なんて彼にしかできないキ○ガイの所業。美しい旋律と路上の汚物でプラマイゼロってか?要するにウンコとは日常であり、日常とはウンコであると?

すでに何を言っているのか自分でもよくわかりませんが、それはおそらく大人になる前に死ぬであろうレミの人生、そして彼の静かに狂った家庭環境を見れば一目瞭然。ジュリー・デルピー演じる母親の心がない雑な発言の数々には、笑顔で狂った毒々しさが渦巻いております。

われ生きとったんか!

ところかまわず下痢三昧の犬なんてうちの子の教育によろしくないということで、安楽死させられることとなった哀れなダックスフント。しかし心優しい獣医の助手に救われて、ドゥーディ(幼児言葉で「うんち」の意)という新たな名前を得て、彼女の家で飼われることに。

そしてトッド・ソロンズファンにはうれしいサプライズだったのが、なんと彼女が『ウェルカム・ドールハウス』のドーン・ウィナーだったということ!『おわらない物語 アビバの場合』の冒頭で彼女は死んだことになっておりましたので、「ドーンわれ生きとったんか!」状態。

そんな彼女の元気にさえない姿を拝めただけで感無量でしたが、小学生時代に彼女をイジメていたあのブランドン(キーラン・カルキン)まで登場し、ほんのわずかな救いが、ドーンの人生に微かな光明が差したかのような描写には、ソロンズらしからぬ希望が感じられてほっこりしてしまいました。

まあそんななかでも人の死、そしてさも当然のようにダウン症のキャラクターを登場させてくるあたりは彼の真骨頂でもありますけど、死と隣り合わせであるはずの誕生をバッサリと切り捨てた現実には言葉を失いましたね。こんな衝撃まで人生の一部として描くのかあんたは!

インターミッション

とんでもない衝撃とまさかのほっこりによって脳ミソが混乱していた間隙を縫い、これまたありえないタイミングで繰り出されたのがインターミッション(休憩)。上映時間たった88分の映画でインターミッションをかましてくるセンス!もう何考えてるのかわかりましぇん!

黄昏終末期

ドーンの人生にわずかに差した光明とこのインターミッションを観るかぎり、ソロンズもついに前向きな人生を歩み出したのかな?と思ったものの、そんなものはバカの幻想、錯覚であったことを思い知らされる後半の容赦ない2つのエピソードには悶絶、まさに悶絶!

前半の2エピソードが幼少期、そして青年期の生きづらさを描いたものだとしたら、後半はまさに人生の後半、中年期と老年期の詰まりに詰まって完全にフン詰まっちゃったにっちもさっちもいかない黄昏終末期を描いており、40歳を手前にして何者にもなっていないボクの胸をえぐりにえぐってきます。

ダニー・デヴィート演じる過去に一本だけ当てた脚本家兼映画学校の講師シュメルツと、エレン・バースティン演じる孫に金をせびられる末期ガンの老婆ナナ。ともにこんなはずではなかったふたりの人生の、いまさらどうにもならない後悔とあきらめと悪あがき。

ふたりと対照的に描かれる若者たちとの埋めがたい断絶も、リアルで底意地が悪くてたまりません。なんせナナの孫娘が連れてきた彼氏の名前はファンタジーですからね!ファンタジー!おまけに妹の名前はドリームなんだとか。アメリカにもキラキラネームってあったのですね。

しかし時代遅れの中年や老人を小バカにしている彼らとて、人生における無数の「if」で結局は選択を誤り、ほとんどの人間がシュメルツやナナと同じフン詰まり余生を送ることになるのですけどね。それが人生というものであり、現実というものであり、ボクらなのであります。

愛犬家は注意!

てなわけで、詰まるところ「思うようにならないこの世をすねた厭世映画なの?」と思うかもしれませんが、実はちょっと違います。人生とは常に残酷で、思うようにならなくて、挫折と後悔の果てに、大量のバカと阿呆とたわけを生み出す無間地獄。

そんなさえない人間によるさえない人生を無差別に描き出すソロンズの視線は、フラットであると同時にある意味では大きな慈愛にもあふれております。人の人生とは等しく愚かでどうしようもないクソではあるが、そんなダメなボクらを無条件に肯定してくれている感じ。

俺もダメだかお前もダメだ。しかしそれが人生だ。だからまあダメなりに生きろよ。と。これをネガティブととらえるかポジティブととらえるかは個人差があるでしょうが、ボクにとってのトッド・ソロンズ映画とは明日を生きるための糧を与えてくれる人生応援映画なのです。

たいしていいこともないけどそれが人生だ、現実だ、だから明日もダメなりに頑張って生きていこう!と、元気になっちゃうボク的スタミナドリンク映画なのです。しかし肝臓の弱い方はご注意を。ボクにとっては滋養強壮であっても、ほかの方にとっては毒物以外の何ものでもない場合がありますから。

とりわけ今作は愛犬家の皆々さまにはそうとうな地雷案件かと思われます。ソロンズの容赦ないどん詰まり人生描写はもちろん犬にだって平等に適用されるのです。それも人生。よくある現実。いたって日常。犬なんて生きてようが死んでようが結局は人間の慰みもの……。

個人的評価:7/10点

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