『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』感想とイラスト 面倒臭いリアリズム

映画『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』フランソワ・ルテリエのイラスト(感想)
ナチス・ドイツに捕らえられたひとりの男。彼は静かに、無表情で、淡々と脱獄への準備を日々重ねていく。そんな反復行為が浮かび上がらすのは抵抗、抵抗への面倒臭いリアリズム!

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作品情報

『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』
Un condamné à mort s’est échappé/A Man Escaped

  • 1956年/フランス/100分
  • 監督・脚本:ロベール・ブレッソン
  • 原作:アンドレ・ドゥヴィニ
  • 撮影:レオンス=アンリ・ビュレル
  • 出演:フランソワ・ルテリエ/シャルル・ル・クランシュ/モーリス・ベアブロック/ローラン・モノー

参考 A Man Escaped (1956) – IMDb

解説

ドイツ占領下のリヨン。ナチス・ドイツによって収監されたレジスタンスの闘士が、脱獄のために重ねていく地道な努力を淡々とつづったサスペンスドラマです。第10回カンヌ国際映画祭の監督賞受賞作。

監督は『スリ(掏摸)』『ラルジャン』のロベール・ブレッソン。自身の作品を映画ではなく「シネマトグラフ」と称し、プロの俳優の芝居がかった演技を嫌ったリアリストで、本作の出演者たちもほぼ素人同然とのこと。

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感想と評価/ネタバレ有

自分の作品を「映画」とは呼ばずに「シネマトグラフ」と総称していた何かと面倒臭そうなフランス人、ロベール・ブレッソンの映画を今回初めて観てみました。「ああ~なんか面倒臭い映画だったらやだなぁ…」と思っていたのですが、これが意外にも普通に面白かった。

とことんまで無駄をそぎ落とした究極の脱獄劇とでも呼べそうな内容で、その恐怖と緊張感は凡百のハリウッド映画とは一線を画す、静かなるリアリズムの勝利と言えるでしょう。

限定された面白さ

1943年、ドイツ占領下のフランスはリヨンを舞台に、ナチス・ドイツによって収監されたレジスタンス闘士の脱獄劇を描いているのですが、この映画が面白いのはその視点が主人公のフォンテーヌただひとりに絞られているということ。カメラは彼の周囲からいっさい動かない。

彼の見たものと、彼の周りで起こる出来事しかカメラはとらえない。セリフも必要最低限で、最もよく聞こえてくるのは抑揚に乏しいフォンテーヌのモノローグ。淡々とした一人称視点による脱獄独白記のリアリズム。この感覚は『サウルの息子』に近いものがありますよね。

つまりは限定された視界によってほかの感覚が刺激され、見えない状況、聞こえてくる音、断片的な情報によって一級のサスペンスが醸成されているというわけです。フォンテーヌの過去や罪状、経歴を明かさないのもそのためで、すべては限定的であるからこそ開けてくる。

抵抗(レジスタンス)

それでは開けた先に何があるのか?それは邦題を見れば一目瞭然。「抵抗」すなわち「レジスタンス」です。終始一貫して静かに闘い続けた男の姿がリアリズムの名のもとにつづられておったわけです。何と闘い、抵抗し続けていたのかって?んなもん映画を観れば一目瞭然。

これはみんな大好きで大嫌いな総統さま率いるナチス・ドイツへのレジスタンス活動を最初から最後まで貫いた映画です。その非道さをあえて描かずとも、主人公の心情をことさら語らずとも、ただ奴らの檻のなかから脱出する行動を描くことによってすべてを語った映画。

劇中では投獄からの脱出という抵抗しか描かれておりませんが、主人公フォンテーヌは奴らに捕まる前から、そして脱獄したあとも抵抗し、闘い続けておるはずです。あえて語らない、映されない抵抗をもイメージさせる静かなる闘争としての脱獄劇、痺れます。

面倒臭いリアリズム

そんな痺れる脱獄囚フォンテーヌを演じたフランソワ・ルテリエの、虚無的な無表情の奥底に宿る熱い魂も魅力的です。豪傑でも英雄でもアウトローでもない、ただのやる気がなさそうな優男の抵抗への信念。彼の強さは血の付いたシャツと破れた靴下が物語っております。

彼がこの先も闘い続けるための行動と心理と葛藤と決断。それを役者の演技やセリフによって表現させない究極のリアリズム演出は、なんでもかんでも丁寧に説明してくれるハリウッド映画とは本質的に異なっており、派手さを好む人にはひたすら退屈な映画かもしれません。

しかし、無表情による地味な作業の反復がやがて生み出す抵抗としてのリアリズムを嗅ぎ取った方々には、この上なく痺れる反抗映画として脳裏に刻まれることでしょう。そして浮かび上がってくるのがフォンテーヌの、フランソワ・ルテリエの無表情に宿る力強さ。

いい顔した役者だなぁと思って調べてみたら、これ以外に出演作はなく、本職の役者さんではない模様。っていうか本作の出演者はどうやら全員が素人で、それは芝居がかったプロの役者の嘘臭さを嫌うロベール・ブレッソンの面倒臭いポリシーだったようです。

ああ~やっぱり面倒臭い人だったんだブレッソン~とは思ったものの、それによるリアリズムは確かな事実。時として人には面倒臭さも必要なのかもしれません。ところでくだんのフランソワ・ルテリエ氏、allcinemaのフィルモグラフィにはもう1作だけ登録されておりました。

『さよならエマニエル夫人』監督/脚本………ってお前何者だっ!?

個人的評価:7/10点

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