「友情、努力、勝利」。正直サブいだろうなぁとは思っておりましたが、いやはや、やっぱりサブかったです。熱いのに寒い。でも演出はオサレだよ。サカナクションのおかげかな?サカナクションのおかげだな!
作品情報
バクマン。
- 2015年/日本/120分
- 監督・脚本:大根仁
- 原作:大場つぐみ/小畑健
- 撮影:宮本亘
- 音楽:サカナクション
- 出演:佐藤健/神木隆之介/小松菜奈/染谷将太/桐谷健太/新井浩文/皆川猿時/宮藤官九郎/山田孝之/リリー・フランキー
予告編動画
解説
エンディングは曲もアイデアも最高なので、これを観るために2時間を費やしても損はないよという熱血青春ドラマです。原作は単行本の累計発行部数が1300万部を突破しているという、大場つぐみと小畑健のコンビによる同名大ヒット漫画。
監督・脚本は『SCOOP!』の大根仁。主演は『るろうに剣心』の佐藤健と、『桐島、部活やめるってよ』の神木隆之介。その他の共演者は小松菜奈、染谷将太、山田孝之、リリー・フランキー、宮藤官九郎など。
音楽と主題歌をロックバンドのサカナクションが担当しております。
あらすじ
将来の夢もなく、漫然とした高校生活を送る真城最高(佐藤健)。ある日クラスメイトの高木秋人(神木隆之介)にこっそり描きためていたスケッチ集を覗かれ、その画力の高さから自分と一緒に漫画家を目指さないかと誘われる。
最初は頑なにそれを拒否していた最高だったが、想いを寄せるクラスメイトの亜豆美保(小松菜奈)とある約束を交わしたことから、秋人とともに日本一売れている漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の頂点を目指すことになるのだったが……。
感想と評価/ネタバレ無
実はまったく漫画を読まないボクは、原作もそのアニメ化作品にも一度も触れたことがありません。完全に真っ白けの状態です。
ではなぜこの作品をわざわざ観に行ったりしたのか?これは後述いたしますが、自分の忘れてしまいたい過去との折り合いとでも申しましょうか、この映画を観ることによって現在の自分がどう感じるのか?それを確かめてみたくなったのですよね。
サブい、オサレ、けっこう適当
『週刊少年ジャンプ』に掲げられている3つのスローガン。「友情、努力、勝利」。自分にはほぼ関係のない薄ら寒い言葉の並びですが、それをまさに地で行っているのがこの映画であります。
ゆえに熱血、そしてクサい、ついでにサブい。だからダメな映画というわけではなく、だからこそ観る価値があるとは思いますし、そういういい大人にはしんどい描写を相殺してくれるオシャレさがあったのもまた事実。
基本的な物語はサプライズのない単なる一本道で、前述したスローガンをただただ実践していくだけであります。特に最高の重要な動機となる彼女とのくだりはかなりの時代錯誤で、正直観ているのがしんどかったですね。
みんな原作なりアニメを観ている前提なのか、キャラクターの設定が総じて掘り下げ不足なのも気になります。そっちの脳内で補完しといてくれってことなの?
漫画を描く世界を覗き見る
てなわけで、物語、ドラマのありきたり感は否めんのですが、漫画業界の真実と裏側を描いた内幕ものとしては非常に面白く、とりわけジャンプ編集部の連載会議のリアリティは「なんじゃこりゃ!」です。
見たことないけど確かにこんな感じなんだろうと思わされる説得力がありましたよね。持ち込みシーンもまたしかり。漫画業界の現実を描いた業界裏話としての覗き趣味は十分に満たされていたと思います。
漫画業界の裏側のみならず、漫画制作の裏側へと迫った演出も必見ポイントです。っていうかボクの評価ポイントは極論するとここだけと言っても過言ではないかも。漫画を創造する、描くということをいかに視覚的に表現するか?
そこにこだわり抜いた演出のセンス、オシャレさがこの映画の肝なのですよね。まあ最後のまさに少年漫画的なバトル描写は正直どうかと思ったのですけど、それ以外はホントにオシャレで必見ですよ!
音を聴く映画
とりわけ鮮烈だったのが音響の力!Gペンの「ガリガリ!」「ギチギチ!」「シャッ!シャッ!」と唸り軋む音。遠い昔に毎日のように聞いていたあの音。忘れたくても忘れられないあの音。この素晴らしい音響効果は正直鳥肌ものでしたよ。
そしてサカナクションによる劇伴。名前を知っているだけで彼らの音楽をまともに聴いたことはなかったのですけど、映像と音楽のシンクロ率が半端ない!彼らを起用した監督のセンスにも拍手です!
しかしあのGペンの音のリアルさは描いたことのある人間でないとわからないでしょうね。渾身の力と魂を込めてGペンと原稿用紙を格闘させるあの音。あの音がこの映画のすべてではなかろうか?漫画家の魂とGペンと原稿用紙が共鳴して奏でられるあの音。
自分もはるか昔、毎日のように聞いていた音です。もう皆さんおわかりでしょうが、恥ずかしながら自分、若かりし頃に漫画と呼ばれるものを描いていた時期がありました。
自省の句
といってもプロとしてデビューをしていたわけではなく、いわゆる担当付き、この映画における前半の段階でケツを割った半端者なわけであります。忘れたくても忘れられない赤面ものの20代。
漫画嫌いでほとんど読まなかったくせに、自分には何かを創造する力、才能があると勘違いし、たまたま賞を受賞したことによりさらにのぼせあがり、増長し、人の意見を聞かず、頭ガチガチにして突っ走ったあげくの壮絶なる爆死。
「漫画は読者に読んでもらって初めて漫画になる」「好きに描きたいのなら同人誌で描け」「プロとしてやる以上はお客さんに向けて描かないとダメ」。今ならこの言葉の意味を理解できるものの、当時はまったくこれを無視しておったのですね。
娯楽と呼ぶには程遠い単なる排泄行為。自分では高尚で、芸術的で、挑戦的だと思っていたのかもしれませんが、他人から見たらただのウンコの塊。そらもう臭くてたまらなかったでしょうね。あんなものでプロとして飯が食っていけると勘違いしていたのですから、若き日の自分の姿とはいえこらもう始末に負えませんわ。
この場を借りてお詫びしておきます。当時の友人、そして当時の担当の方々、本当に申し訳ありませんでした!他人のウンコを「どうだ!凄いだろ!」と見せられていたわけですから、精神的苦痛で慰謝料請求されたとしても文句は言えません。
この映画の主人公たちにあって自分になかったもの。それは漫画に対する熱量、才能、努力は言うに及ばず、やはり読み手に楽しんでもらう、喜んでもらうという、最低限のプロ意識だったのでしょうね。
自分は結局、自分のためにしか漫画を描いていなかったのです。漫画であれ映画であれ音楽であれ、それでお金を頂戴する以上はお客さまのことをまず第一に考えなければならない。ウンコ垂れ流している場合ではないっちゅうこってすわ。
結局、観る価値はあるのか?
その点この映画にはきちんとそれが揃っておりましたね。あいかわらず偏屈な自分としては正直好きな映画ではないものの、観客を楽しませるための創意工夫が随所に感じられる、非常に意欲的でまっとうな娯楽作だったと思います。
根性ひん曲がっておるので不満はありまくりなのですけど、1800円払って観る価値は十二分にあったと思いますよ。褒めてんのか貶してんのかよくわからん文章ですけど、いちおうこれでも褒めてるつもりなんです。
なんか映画の感想というよりかは、自分の思い出話のほうに字数を割いてしまいましたが、この点はどうか恥を忍んでご容赦願いたい。これまた単なる排泄行為ですが、過去の反省と現在の自分のために、いっぺんきちんと吐き出してみたかったもので。
でも観る前はいったいどうなることかと思いましたが、途中から素直に彼らを応援している自分がいたことには一安心です。自分もちょっとは心のゆとりができてきたのでしょうかね?「羨ましい」という気持ちがわいたのも事実です。
エンディングは必見!必聴!
最後に、この映画のエンディングの凝りようとアイデアは非常に画期的で、漫画好き、特に『ジャンプ』好きにはたまらんものがあると思いますよ。まあ天邪鬼な自分は執拗な『ジャンプ』推しが少々鬱陶しかったのも事実なのですけどね。
劇伴、ならびにこのエンディング曲を担当したサカナクションによる主題歌も珠玉の出来でして、これはぜひとも皆さんに聴いてほしいので動画を貼り付けておきますね。1980年代のテクノポップを彷彿とさせるレトロな味わいがたまりませぬ!
個人的評価:5/10点
主題歌/サカナクション『新宝島』
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『バクマン。』が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはU-NEXT、プライム・ビデオ、Hulu、Netflix(2020年6月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
コメント
こんにちは。
コッソリ漫画家を目指してた、という人はひょっとするとすご〜く沢山いるんじゃないか、とふと思った私。ま、かくいう私のその一人ですけどね。
紙の上を走るペンの音とか、なんだかすごくリアルでドキドキしちゃいましたわ。
それにしても山田孝之の使い方が贅沢ですよねぇ。
彼はこの役に相当悩んだらしい、というのも納得です。
ケフコタカハシさん、コメントありがとうございます!
今回の記事は自分の恥ずかしい過去の思い出話になってしまって、
反省と後悔しきりであります。
山田孝之の使い方は確かに贅沢でしたけど、
ハマり具合も最高でしたね!っていうか上手い!
この人がダントツでやはり上手かった!
めちゃくちゃ自然な演技でしたからね。
実は初めは彼をイラストに描こうと思っていたのですけど、
あんまりうまくいかなくて断念してしまいました。
彼のイラストはまた次の機会に!