『コックファイター』感想とイラスト ロックな男の愛の告白

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映画『コックファイター』ウォーレン・オーツのイラスト(似顔絵)
闘う男は黙して語らないもんさ。それが女にモテる秘訣だぜ、あんた。見ただろ俺の婚約者。これから最高の「愛の告白」ってやつを拝ませてやるよ。

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作品情報

『コックファイター』
Cockfighter

  • 1974年/アメリカ/83分
  • 監督:モンテ・ヘルマン
  • 脚本:チャールズ・ウィルフォード
  • 撮影:ネストール・アルメンドロス
  • 音楽:マイケル・フランクス
  • 出演:ウォーレン・オーツ/ハリー・ディーン・スタントン/リチャード・B・シャル/パトリシア・ピアシー

参考 Cockfighter (1974) – IMDb

予告編動画

解説

闘鶏にすべてをかける男が最後に「愛の告白」をする異色ロードムービーです。

監督は『断絶』のモンテ・ヘルマン。製作は低予算映画の帝王ロジャー・コーマン。『断絶』の興行的惨敗によりハリウッドから干されていたヘルマンを起用し、闘鶏という斬新なテーマによって大儲けを企んでいたようです。

主演は『デリンジャー』のウォーレン・オーツ。共演に『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントン。撮影監督を担当したのはロメールやトリュフォーとのコンビで知られるネストール・アルメンドロスで、なんとこれがアメリカ初進出作。

あらすじ

闘鶏トレーナーとしての生活にすべてをかける男フランク(ウォーレン・オーツ)。しかし、宿敵ジャック(ハリー・ディーン・スタントン)との対決に敗れてメダルを失い、ふたたびチャンピオンに返り咲くまで口を利かないという誓いを立てる。

恋人エリザベス(パトリシア・ピアシー)から愛想を尽かされながらも、最強の鶏“白い稲妻”を手に入れて連戦連勝。ついにやって来た全国大会の日。フランクはチャンピオンメダルを、そして恋人の愛を取り戻すことができるのであろうか!?

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感想と評価/ネタバレ有

闘鶏を題材にした『Cockfighter』という意味深なタイトルで大儲けを企んでいたロジャー・コーマン。結果から申しますと、映画は見るも無残な大コケ!姑息に手を加えても大コケ!そして封印!日本でも劇場公開されることはありませんでした。

彼の映画で赤字になったのは自らメガホンを取った『侵入者(1962)』と、この『コックファイター』だけ。なぜこんな結果になってしまったのでしょうか?

大コケの理由

理由は簡単。とにかくひたすら地味ですわな。一言も喋らない主人公が、牧歌的な音楽をバックに田舎をさすらい、鶏の突っつき合いを眺めている。超絶地味ですわ。

闘鶏シーンも闘牛のようにショーアップされているわけではなく、ひたすら鶏同士の蹴り合いと突っつき合いが展開されるだけですので、この上なく地味。しかもアンダーグラウンド感が半端ないので、嫌悪感をいだかれる方も多数おられるでしょう。

それではこの映画は面白くないゴミクズ映画なのでしょうか?そんなことはありません。ほかの方は知りませんが、少なくともボクにとっては非常に面白かった!

ロックンロール映画

別に障害があるわけではなく、単に自分の意地から口を利かなくなった中年男が、ジェスチャーのみで他人と接触し、小脇に鶏を抱え、アメリカの田舎をどさ回りながら、ひたすら鶏の育成と闘いに人生を捧げる姿。

バックに流れる音楽は牧歌的なカントリーテイスト(音楽を担当したのはブレイク前のマイケル・フランクス)であるが、この映画はまぎれもなくロックンロール映画である!映画の内容はゆるゆるだが生きざまがロックなのです!

己の信念にひたすら忠実に、愚直なまでに、ただただ勝利を求めて闘い続ける男。他人がどう思おうが知ったこっちゃない。これが俺の人生だ!これが俺の求めている世界だ!これをロックと呼ばずしてなんと言おうか!

ロックな「愛の告白」

そんなゆるゆるのくせにロックな主人公フランクを演じるのがウォーレン・オーツ。同年公開の主演作『ガルシアの首』と比較しても、この映画での彼の演技は際立っております。

喋らないことによって雄弁に物語ってみせる。そういう演技なのですよね。きつい言葉を投げかけられたときのなんともいえない表情。帽子で太腿を大袈裟に叩いての爆笑表現。黙々と仕事をする姿。ただたたずむ姿。そしてあの超絶かわいい笑顔!

そんなゆるゆるでありながらロックを体現する男フランクは、最後の最後までロックです。自分に対して軽蔑の視線と決別の言葉を投げかける婚約者に対し、大事な大事な鶏の首をば引きちぎってプレゼント。なんという鮮烈なる「愛の告白」!

チャンピオン返り咲きを知らせに来た相棒に「何を話してた?」と聞かれ、「愛の告白さ」と快活に笑って答えるフランク。彼がこの映画中リアルタイムで初めて喋った瞬間である。フランク!あんたやっぱロックだよ!

きっと忘れられない映画

基本ゆるゆるでありながら、闘鶏シーンだけはアンダーグラウンドないかがわしさが充満しており、ペキンパーばりのスローモーションや血の描写も生々しく、ダメな人はダメでしょう。

ですので万人におすすめはしませんが、好きな人は絶対にハマります!鶏たちの命をかけた暴力の美学(?)とともに、ゆるゆるロックな男の美学にも心洗われることでしょう。事実ボクはゴシゴシ洗われてしまいました!

こんな映画は絶対にヒットしないでしょう。名作として称賛されることもありません。でも誰かの心に永遠に残る映画。それがこの「コックファイター」なのです!

個人的評価:7/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『コックファイター』が観られる動画配信サービスはU-NEXT、、プライム・ビデオ。おすすめは定額見放題のU-NEXT(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

短い映画好きにおすすめ

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スパイクロッド

映画を観たらとりあえず感想とイラストを書く(描く)人畜無害な釘バット。ちなみにイラストはぺんてるの筆ペン一本によるアナログ描き。

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コメント

  1. こんにちは。
    遅ればせながら、あけおめことよろです。
    トリ好きにはたまらなく興味をそそられる作品ですな。
    楽天レンタルに普通にBlu-rayがありましたよ。

  2. スパイクロッド より:

    ケフコタカハシさん明けましておめでとうございます。こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。
    さてこの『コックファイター』についてですが、鳥好きであるなら逆におすすめすることはできません。なぜかって?闘鶏ですよ闘鶏!鶏同士が殺し合っているのをいい年こいたおっさんどもがあまりにリアルな真顔で眺めている。アンダーグラウンド感が半端ねーです!トリカラが大好きなボクも3日間鶏断ちをしたぐらいです。悪いことは言いません。鳥が好きなら観ないほうが賢明です!

  3. えるぼーロケッティア より:

    はじめまして。
    随分前にツタヤの発掘良品で見たこの誰も見向きもしないであろう映画を調べていたらこのサイトに出会いました。
    僕はこの映画の牧歌的な雰囲気も好きですし、女は俺の仕事に口だしするな!と言いたげな主人公の職人気質な奇行にもうつる振る舞いも大変面白かったです。
    ロッキーもそうですが女性には理解し難い映画だろうなとも思いました。

  4. スパイクロッド より:

    えるぼーロケッティアさん初めまして。コメントありがとうございます!
    確かに誰も見向きもしない映画かもしれませんが、だからといって埋もれさせてよい駄作ではけっしてないので、ホントにTSUTAYA発掘良品には感謝感謝です。おっしゃるとおりこういう偏屈なこだわりや生きざまというものは、どちらかといえば男性特有のものなので、この映画の婚約者同様、女性の方の理解を得るのは難しいでしょうね。ゆえに絶対ヒットしない映画。でも面白い!それでいい!

  5. こんにちは。
    観てみましたよ、この作品。私は嫌いじゃないです。
    お手数でなければトラックバックをお願いします。
    やっぱりうちから先だとできないようなので。
    それと今「悪童日記」の感想を書いてるんですが、こちらの記事を参考にしようと思ったら、見当たらないんですけど・・。

  6. スパイクロッド より:

    ケフコタカハシさんコメントありがとうございます!
    おお!観てしまいましたか!しかも嫌いじゃないとは!いや~わかってくれる人はわかってくれる映画なのであります。さっそくTB送らさせていただきます!
    『悪童日記』はいい映画でしたね。ですが残念ながらこちらのブログには記事がありません。あれを書いたのは旧ブログのほうでした。しかも昨年の暮れに勢い余ってブログごと削除してしまいました!ご報告が遅れて申し訳ありません。またいつか観たときにはこちらでも感想を書かせていただきますので。

  7. おーい生茶 より:

    こちらの映画は予想外の内容でした。
    鑑賞前はアタック・オブ・ザ・キラートマトのような珍品かな?と想像していました。

    アングラ世界の見せ方は緻密に作り込んであるのがわかります。
    賭場だから有事に備えてお金を別に隠す老人には笑いました。
    しかし、闘鶏シーンは直視できません。
    動物が愚かな人間に逆襲する話にしないと後味が悪すぎます。
    作り手が闘鶏を肯定していないのはわかりますが。
    暴力的な映像表現は難しいですね。

    • おーい生茶さん、コメントありがとうございます!

      本作の監督であるモンテ・ヘルマンは闘鶏の残酷さを直視できなくて、闘鶏シーンの撮影時には姿をくらましていたらしいですからね(笑)。アレを撮ったのはもしかしたらプロデューサーのロジャー・コーマンなのかもしれません。監督の闘鶏に対する忌避感と、プロデューサーの残酷描写イケイケドンドンが絶妙なアンバランスを生んでいるのやもしれませんね。