『灼熱の魂』感想とイラスト それでもあなたを愛してる…

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映画『灼熱の魂』のイラスト

ひとつの国家で繰り広げられた宗教的、思想的対立による壮絶なる殺し合い。十字架を胸に、女子供を虐殺するのが俺らの正義。やられたらやり返す。そんな泥沼のなかでも、母は息子を想い続けるのです……。

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作品データ

『灼熱の魂』
Incendies

  • 2010年/カナダ、フランス/131分/PG12
  • 監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
  • 原作:ワジディ・ムアワッド
  • 撮影:アンドレ・トュルパン
  • 音楽:グレゴワール・エッツェル
  • 出演:ルブナ・アザバル/メリッサ・デゾルモー=プーラン/マキシム・ゴーデット/レミー・ジラール/アブデル・ガフール・エラージズ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ無

突然亡くなった母親の遺言に従い、これまで存在すら知らなかった父と兄を捜す旅へと出た双子の姉弟がたどり着く、驚愕の真相を描いたヒューマン・ミステリー。監督は『メッセージ』と『ブレードランナー 2049』がひたすら待ち遠しいドゥニ・ヴィルヌーヴです。

ネタバレできない傑作!

日本での公開はもう6年も前になるのですね。しかしいくら年月が過ぎようとも、この映画の感想をネタバレ込みで書くことには大きな抵抗があり、旧作ではありますがネタバレなしでこの素晴らしい映画の感想をなんとか綴ってみたいと思います。

『メッセージ』公開前にヴィルヌーヴの作品をすべておさらいしておこうと、久々にこの『灼熱の魂』も再見してみたのですけど、初見と変わらぬ衝撃と重さにボクのガラスの腰は大きな悲鳴をあげておりました。「頼むからもう勘弁してくれ」と。

物語は突然亡くなった母の奇妙な遺言に従い、存在すら知らなかった父と兄を捜して母の故郷である中東へとやって来た双子の姉弟が、母の人生の軌跡を追いながら血塗られた歴史とひとつの家族にまつわる因果を暴き出していくというもので、もう超絶ヘビーです。

この映画の原作はレバノン出身の劇作家ワシディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げるたましい』なのですが、このことから、劇中では明確にされていない母ナワルの故郷とはレバノンだと思われます。泥沼のレバノン内戦勃発前後を背景としたひとりの女性の人生の軌跡。

映画冒頭、遠景から室内へとゆるやかに移動してくるカメラワークのバックで流れるのは、けだるいトム・ヨークの歌声が物悲しいレディオヘッドの『You and Whose Army?』。ここで映し出される少年の鋭い眼光と選曲のハマり具合には戦慄を覚えます。

少年の眼光は残酷すぎる運命を呪い、トム・ヨークの歌声は他者によってゆがめられた歴史を告発し、双子の姉弟がたどる母の人生は差別、宗教、対立、殺し合い、復讐の連鎖、そして大きな家族の愛を浮かび上がらせる。

非情な現実を、残酷すぎる運命を呪いながらも、想い焦がれた愛の大きさ、深さに涙せずにはおれません。確かに墓場まで持っていくべき話かもしれませんが、黙って持っていけない怨嗟と愛というアンビバレンスがここには存在するのです。ああ~本当におもてぇーよ。

超絶ヘビーな腰にくる物語を、過去と現代、母と娘を巧みに交錯させながら、ミステリー仕立てで重厚に描き出したヴィルヌーヴの手際はとにかく老獪です。出来すぎた話、うますぎる演出がこの映画の欠点とも言えますが、それぐらいしか欠点が出てこない映画だということ。

何かと複雑なレバノンという国の歴史的背景を知っていないと、多少置いてけぼりを喰らうところも欠点と言えば欠点かな?あとは双子の姉弟にも何かしら人生の問題を設定していたほうが、この物語により説得力を与えられたかもしれませんね。さらに長くなりそうですけど。

ああ~本当はあれもこれも描きたいことが山ほどあるのですけど、ネタバレしては元も子もないのでほとんど書けません。でもね、本当にとんでもない物語で、凄い映画なんですよ!ついに母の遺言の真実に姉弟が気づいたときの、まさに息を呑む瞬間の見せ方なんて凄いんです!

歴史の非情さに、運命の残酷さに呑み込まれたひとつの家族にまつわる衝撃的な愛と恨みと赦しの物語。あなたにどれだけ会いたかったか。あなたのことをどれだけ想い続けたか。忘れられない想い。消せない痛み。壊れた心。許しがたい憎悪。それでもあなたを愛している。

腰痛もちを殺しにかかる超絶ヘビーな愛と憎悪と赦しの映画『灼熱の魂』。ネタバレはしないと固く誓いましたので、もうこれ以上は何も書きますまい。この映画を観た人ならば理解してもらえるはずですし、まだ観ていない人にはなんとしても観てもらいたい。

人が人を愛し、呪い、憎悪と怒りを膨らませ、復讐の連鎖を引き起こし、そしていかに人が人を赦すか、その重たい真実と想いの深さを絶対にその目に焼きつけてほしい。いかにして呪われた鎖を断ち切るか?この映画はそのヒントを我々に与え、託しておるのです……。

個人的評価:8/10点

ネタバレ厳禁映画の感想はこちら

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コメント

  1. ミス・マープル より:

    はい、これは本当にネタバレ厳禁、そしてあまりにも非情な事実を描いていました。
    連鎖し続ける報復の歴史は、沈黙でしか断ち切れないのでしょうか。
    すごく心に残る映画でしたが、2回見る気が起きないんです。あまりに辛い。

    • スパイクロッド より:

      ミス・マープルさん、コメントありがとうございます!

      もう6年も前の作品ですので、初めはネタバレ込みの長文感想を書こうと思って再見してみたのですけど、観終わったときには「やっぱりネタバレしちゃいかん映画だな」と思い直して今回の感想と相成りました。おっしゃるとおり非情で、残酷で、重たいなかに微かな光を探すといった感じの映画ですので、なかなか何度も観ようとは思えないのですよね。ボクも初見から6年ぶりに観ました。そして今度もその重たい現実に打ちのめされてしまいました。しかし忘れられない、またいつか観るであろう傑作だと思います。

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