『センチュリアン』感想とイラスト 黄昏警察官日記

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映画『センチュリアン』ジョージ・C・スコットのイラスト(似顔絵)

『ダーティハリー』に『ダイ・ハード』、おまけに『リーサル・ウェポン』かい?あいつら主役にゃわかるめえ。俺の矜持を!俺の生き甲斐を!俺の黄昏を!そんな警察官日記。たまには主役を張らせてくれよ。

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作品情報

センチュリアン

  • 原題:The New Centurions
  • 製作:1972年/アメリカ/103分
  • 監督:リチャード・フライシャー
  • 原作:ジョセフ・ウォンボー
  • 脚本:スターリング・シリファント
  • 撮影:ラルフ・ウールジー
  • 音楽:クインシー・ジョーンズ
  • 出演:ジョージ・C・スコット/ステイシー・キーチ/ジェーン・アレクサンダー/スコット・ウィルソン/ロザリンド・キャッシュ

参考 センチュリアン (映画) – Wikipedia

予告編動画

The New Centurions (1972) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]

解説

ロス市警を舞台に、地味で、危険で、報われない制服警官たちの日常をひたすらリアリスティックに描いた警察群像劇です。原作は当時現職警察官であったジョセフ・ウォンボーのベストセラー小説。「センチュリアン」とは古代ローマ軍の百人隊(ケントゥリオ)のこと。

参考 ケントゥリオ – Wikipedia

監督は『見えない恐怖』『10番街の殺人』の職人リチャード・フライシャー。脚本を『夜の大捜査線』『ダーティハリー3』のスターリング・シリファントが務め、音楽は『質屋』『冷血』のジャズミュージシャンにして名プロデューサー、クインシー・ジョーンズが担当。

主演は『或る殺人』のジョージ・C・スコットと『ロング・ライダーズ』のステイシー・キーチ。共演には『ブルベイカー』のジェーン・アレクサンダー、『傷だらけの挽歌』のスコット・ウィルソン、『地球最後の男 オメガマン』のロザリンド・キャッシュなど。

あらすじ

警察学校を卒業したばかりの新米警官ロイ・フェーラー。彼が配属されたのはL.A.でも有数の犯罪多発地域で、コンビを組むことになったのは勤続23年のベテラン警官アンディ・キルビンスキー。彼らの仕事はこの街を昼夜問わずひたすらパトロールすることにあった。

キルビンスキーの豊富な経験を吸収しながら、徐々に警官という仕事の魅力に取り憑かれていくロイだったが、それをきっかけとして妻ドロシーとのあいだには亀裂が生じ、勤務中の事件によって重傷を負い、尊敬する相棒キルビンスキーの引退の日がやって来るのだった……。

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感想と評価/ネタバレ多少

株式会社ディスクロードさんが企画されている埋もれた名作をひたすら発掘していく神企画「復刻シネマライブラリー」。ボクもたびたびお世話になっており、当ブログでも『10番街の殺人』『見えない恐怖』 『真夜中のパーティー』 『ブラック・エース』『抵抗』などを紹介してきました。

ただしボケッと鼻糞ほじってるとすぐ品切れになるので、見つけたときにはすかさずポチっておくのがマストでしょう。ボクも『プリンス・オブ・シティ』『クルージング』『ラストラン/殺しの一匹狼』『ロリ・マドンナ戦争』を買い逃したことを悔やみに悔やんで夜もぐっすり爆睡です。

しかしこれまたありがたいのが廉価版になって再復刻してくれるスペシャルプライス企画。今回ご紹介させていただくのは、そんな神企画によって安価に手に入れることができたリチャード・フライシャー監督の『センチュリアン』。これも長年観たかったんですよねぇ~。

警察官日記

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ジャケットだけならハードなポリスアクションを期待しますが、こいつは完全なるジャケット詐欺ですので皆さま騙されないように。ジョージ・C・スコットが不敵に銃をぶっ放すような痛快劇ではありません。とにかく地味で激シブな隠れた逸品なのでございます。

謎めいた殺人事件や凶悪犯罪に立ち向かう主役クラスの物語ではなく、その周りで交通整理や報告をするだけの脇役下っ端制服警官にあえて焦点を当て、彼らのお仕事である街のパトロールをひたすらリアリスティックに切り取った地味に地味すぎるお仕事映画なのです。

その過程では強盗犯の追跡や、銃撃戦、カーチェイスなどのポリスアクションの花形も登場しますが、これとて痛快さとは無縁ないやぁ~な緊張感とタイミングと最悪な結末があるだけで、いわゆるポリスアクションなど絶対にやる気がないリチャード・フライシャーの矜持が感じられます。

「現実の警察とは、人生とは、生活とはそういうもんじゃねーんだよ」ってこってす。フライシャーがこの作品で目指したのは、下っ端制服警官の矜持と、生き甲斐、恐怖、狂気、そして無常を、安易な共感や同情を排してひたすらリアルに切り取ること。言うなればただの「警察官日記」。

彼らが相手にするのは酔っ払いや売春婦やチンピラで、扱う事件はコソ泥や夫婦喧嘩やスピード違反。しかしそれは我々の暗い日常へと無防備に接近することでもあり、時には精神的、肉体的な危険も孕み、その危険が警官としてのやり甲斐という名の狂気を産むことも。

ブラックな労働環境をやり甲斐と感じてしまう負の連鎖とも似ていますね。大変だけど、しんどいけど、怖いけど、自分がやらなければ。仲間のために、みんなのために、誰かのために。そんなやり甲斐は徐々に自分を壊し、家庭を壊し、あっけないリアルさで最悪の結末を迎えるものです。

それもこれもあれも人生

そんな無常な人生をまさに日々の日記のような淡々さで、痛快さのかけらもなく、ひたすらリアルで残酷に切り取ってみせたのが本作『センチュリアン』なのです。その真骨頂は退職後に古巣を訪ねたジョージ・C・スコットの視線と、黄昏と、電話と、銃が示すとおり。

彼の心の内は誰にもうかがい知れないが、その内部を侵食していたであろう圧倒的な虚無感は痛いほど伝わってくる。やり甲斐は生き甲斐も産むが、そこには圧倒的な喪失感と虚無感も同時に存在する。魅力的だった男の孤独を乾いた非情さで残酷に突き放すまさにフライシャーの真骨頂です。

これ以降の展開にはややとってつけた感が拭えず、「やだフラグ立てすぎよ」ってなもんですが、ジョージ・C・スコットとステイシー・キーチ、ふたりの主人公の類似と違いとそれでも変わらない結末を描いた非情性は、人生そのものの無常さを示したまさに泣きっ面に蜂。

「どないせーっちゅうねん!」って話ですが、それもこれもあれも人生。みな無常な人生。それをある意味で体現していたのが、最初から最後までずーっと目が死んでたステイシー・キーチなんじゃないかな。ボクはあの狂気を孕んだ死んだような目がもう好きで好きで……。

個人的評価:6/10点

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