『クリスティーン』感想とイラスト 人と車の愛の水中花

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映画『クリスティーン』のイラスト

イジメられっ子の青年と出会うべくして出会った運命の女、クリスティーン(1958年型赤のプリムス・フューリー)。人と車の恋愛なんて異常でキモくて狂ってるって?これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛♡

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作品情報

クリスティーン

  • 原題:Christine
  • 製作:1983年/アメリカ/110分
  • 監督:ジョン・カーペンター
  • 原作:スティーヴン・キング
  • 脚本:ビル・フィリップス
  • 撮影:ドナルド・M・モーガン
  • 音楽:ジョン・カーペンター/アラン・ハワース
  • 出演:キース・ゴードン/ジョン・ストックウェル/アレクサンドラ・ポール/ロバート・プロスキー/ハリー・ディーン・スタントン

参考 クリスティーン (映画) – Wikipedia

予告編動画

Christine (1983) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers

解説

呪われた1958年型赤のプリムス・フューリーを手に入れた青年が、徐々に車の持つ魔力へと惹き込まれてゆき、彼を、そして車を傷つける者に対して壮絶な復讐を繰り返すというホラー映画です。原作はスティーヴン・キングによる同名長編小説。

監督は『遊星からの物体X』のジョン・カーペンター。彼に模したキャラクターが登場する『宇宙家族カールビンソン』で、「1週間で打ち切られた『クリスティーン』」と散々ネタにされておりましたが、実際は2週間だった模様(たいした違いはないって?)。

主演は『殺しのドレス』のキース・ゴードンで、多感な時期にデ・パルマ、カーペンターの演出に触れた弊害かのちに監督へと転身。共演には『爆笑!?恋のABC体験』のジョン・ストックウェル(こいつものちに監督へと転身)、『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』のロバート・プロスキー、『レポマン』のハリー・ディーン・スタントンなど。

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感想と評価/ネタバレ有

ジョン・カーペンター全作レビューへ向けての第8弾。今回ご紹介するのは真っ赤なプリムスが意思をもって人を襲う轢き殺し映画『クリスティーン』であります。この映画の存在を初めて知ったのは、ボクの小学生時代の愛読書『宇宙家族カールビンソン』だったでしょうか。

やれ『ドラゴンボール』だ『聖闘士星矢』だと級友たちが騒ぐなか、マニアックな映画、特撮、アニメネタが飛び交う『カールビンソン』を熟読していた天真爛漫だったあの頃。今もあの頃の純粋さを失わず、天真爛漫な中年と成り果てたボクに皆さんどうか愛のX攻撃を。

人と車の愛の水中花

1978年、カリフォルニア州ロックブリッジ。気弱なイジメられっ子の高校生アーニーは、唯一の親友であるデニスとの帰宅途中に、売りに出された廃車同然の1958年型プリムス・フューリーを見つけ、まるで魅入られたかのようにそのボロ車を購入してしまう。

そのことによって厳格な両親と対立したアーニーは家を飛び出し、自動車工場で働きながらクリスティーン(プリムス・フューリー)を新車同様に修理し、惜しげのない愛情を注ぐのだったが、実はクリスティーンは邪悪な意思をもった呪われた車だったのだ……ってのが簡単なあらすじ。

邪悪な意思をもった呪われた車と、それに魅入られた気弱なイジメられっ子が、自分たちを攻撃する者、引き離そうとする者たちを容赦なく轢き殺していくという、ホラーと学園カーストものの融合は、同じくキング原作の映画『キャリー』の二番煎じで煮出しすぎ感あり。

家庭、学校、社会から圧倒的に阻害されている存在と周囲の無理解を、愉快さと残酷さをもって丁寧に描いていた『キャリー』に対し、本作『クリスティーン』ではそのへんがどうにも適当で、前回紹介した『スターマン』にも通じるカーペンターのやる気のなさが見て取れます。

ナードであるアーニーとジョックなデニスとの関係性、両親からの束縛と抑圧、恋人ゲットの馴れ初めなど、学園青春ものとしての肝心要にやる気がないので、そんなガリチビメガネが愛車クリスティーンとの出会いによって変化、発狂、殺人鬼化する轢き殺しがいまいち盛り上がらんのです。

ただやる気のなさと面白くなさが必ずしもイコールではないのは『スターマン』でも解説したとおり。本作もなんやかんやで意外と面白い。何が面白いってやっぱりクリスティーンですよね。カーペンターの興味は呪われた車をいかに撮るかだけに注がれているように思います。

George Thorogood – Bad To The Bone – 7/5/1984 – Capitol Theatre (Official)

冒頭の1957年、ジョージ・ソログッドの『Bad To The Bone』が流れるなか(時代が合わん!)、白のプリムス・フューリーの生産ラインに何食わぬ顔で紛れ込んでいるクリスティーン嬢の我が物顔が、すでにこの映画の主役は「私だ!」と赤裸々に自己主張しております。

生まれたときからその真っ赤なボディに呪われた血潮をたっぷりとため込んでいた愛しのクリスティーン嬢。彼女は自分を粗末に扱う者に容赦ないオールディーズと死をもたらします。選曲はカーペンター自身で、バディ・ホリーからタニヤ・タッカーへの流れなんてお見事。

Not Fade Away
Tanya Tucker – Not Fade Away

劇伴を担当しているのもカーペンター自身で、やはり彼の映画に彼による音楽はつきものなのだと再認識いたします。本作でカーペンターがやる気満々なのは、クリスティーン嬢と音楽のみだと断言してもよいでしょう。そこさえ抑えりゃなんとかなるとしてなんとかしてしまった見事な剛腕。

ホントに彼女(クリスティーンだよ、車だよ)を美しくも怪しい妖艶な魔女として描いただけで、本作は成功だったのだとボクは思います。ダメな男を虜にし、ふたりの恋路(人と車のだよ)を邪魔する障害物にことごとく死をもたらす魔女クリスティーン。

土砂降りのドライブインシアターで、私とあの人のあいだに図々しく割り込んできたブスに浴びせる死の光線。彼を傷つけ、私を破壊し、糞まで垂れた偽トラヴォルタやお肉たち不良グループに闇夜のなかで制裁を加える、ノワール的な血と臓物と炎の祭典。

自ら手を下す物言わぬ真っ赤な無機物ファムファタールの底知れぬ悪意と、実行力と、その怪しい美しさ。そんな運命の女(くどいようだけど車だよ)と出会ってしまったガリチビメガネ。そんな彼女に魅入られたアーニーの変化、発狂、そして底抜けの愛情。

不良グループによって破壊された彼女を優しく励まし、ともに闘う決意を表明した彼の愛によって、その秘められた力を完全覚醒させたクリスティーンの自己再生シーンは、愛の力は偉大だということを世界の中心で叫ぶ感動的かつ官能的な名シーンであります。

そう、本作『クリスティーン』とは人と車による愛を高らかに謳った、全米が泣いたと言っても過言ではある珠玉の恋愛映画だったのだ。悲劇だったのはそんな珠玉の恋愛へと走るアーニーの孤独を、最初から最後まで誰ひとりとして理解しようとしなかったこと。

彼女(クリスティーン)の子宮(運転席)でこの世を呪い、クリスティーンとの崇高な愛のパワーを絶叫するアーニーの病理に、誰も想いを馳せず、理解しようとはしなかった。親友のデニスも、恋人のリーも、そんなアーニーにマジキチのレッテルを貼ってドン引いただけ。

理不尽な体制のもとで虐げられ続けるオタクの愛と逆襲を描きながら、結局はスポーツマンとガリ勉の美男美女がなんかいい感じになって終わっている適当さに、世の残酷さ、無慈悲を見て我らオタクはまた泣くのであります。「救われんのはお前らだけかい!」と。

瀕死の状態でクリスティーンの性器(エンブレム)にそっと指を這わせ、ゆっくり愛撫しながら絶命していくアーニーの愛と孤独に、まるでバックからレイプされているかのようにも見える、ペシャンコに蹂躙されていくクリスティーンの最期に、どうぞ皆さま想いを馳せてやってください。

丁寧さのカケラもないから馳せづらいかもしれんけど、これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛なのだと思いますよ。

個人的評価:6/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

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コメント

  1. ダムダム人 より:

    この作品、テレビでみました。
    (かなりきわどいせりふがあったのですが、当時はあまり厳しくなかったので
    セーフだったようです)

    原作とはかなり違うようですが、私はそれなりに楽しめました。
    冒頭に掛かっていた曲の題名がわからなかったのですが
    今回ヨウヤクわかりうれしいです。
    -確かこの曲、ターミネーター2でも掛かっていました。-
    ちなみのこの作品のサントラ持っています。

    • ダムダム人さん、コメントありがとうございます!

      ボクも初見はテレビでしたね。当時はあまり面白いとは思いませんでしたが、いま観直してみるとカーペンターの映画ってやっぱどれもこれも面白いんですよね(笑)。

      ジョージ・ソログッドの『Bad To The Bone』はいろんな映画で使われてるんですよね。『ターミネーター2』はもちろんですが、『ハスラー2』とか『リーサル・ウェポン』とか。