『クラウン』感想とイラスト ピエロはピエロらしく

映画『クラウン』のイラスト

ピエロはピエロであるからこそ恐ろしいのです。ゾンビ化したり、悪魔化したらその魅力と恐怖は半減してしまうのです。ピエロはただピエロでありさえすればよい。『IT/イット』の前後編を観てみなさい!

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作品データ

『クラウン』
Clown

  • 2014年/アメリカ、カナダ/90分/R15+
  • 監督:ジョン・ワッツ
  • 脚本:クリストファー・フォード/ジョン・ワッツ
  • 撮影:マシュー・サント
  • 音楽:マット・ヴェリグダン
  • 出演:アンディ・パワーズ/ローラ・アレン/ピーター・ストーメア/クリスチャン・ディステファーノ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

息子の誕生パーティのために偶然見つけたピエロの衣装を着た父親が、その衣装にかけられたとある呪いによって恐ろしいバケモノへと変わっていく恐怖を描いたホラー映画です。監督は『スパイダーマン:ホームカミング』のジョン・ワッツで、これが長編デビュー作。

ピエロ恐怖症

COP CAR/コップ・カー』が予想を上回る濃密な素晴らしさで、デビュー作も観よう観ようと思いながらすっかり忘れ、『スパイダーマン:ホームカミング』公開前になって急に思い出し、慌てて急いでようやく観ましたピエロ恐怖症にはたまらんかも?映画『クラウン』。

「ピエロ………怖い!」と言えばやはり、幼少期のボクに寝小便クラスのトラウマを植えつけた名作『IT/イット』(前編限定)ですが、こちらのリメイクも全米公開が2017年9月8日に決まり(日本公開は未定)、世界中のコルロフォビアどもをふたたび恐怖のずんどこへと叩き落としてくれることでしょう。

ピエロもドナルドも生理的に受けつけないコルロフォビア(ピエロ恐怖症)が絶対に避けては通れないいばらの道。それではあのトラウマをふたたび呼び覚ますかもしれない『クラウン』の感想です。

コルロフォビアのその先

息子の誕生日のために手配したピエロがドタキャンをかましたため、自分が管理する物件の地下でそれらしい代替品を探していた不動産屋のケントは、そこで古びたピエロの衣装を発見。自らそれを来て誕生パーティへと登場し、息子や友達をおおいに喜ばせたのだった。

疲れてピエロの扮装のままソファで寝てしまったケントだったが、翌朝それを脱ごうとしてもどうしても脱げない。しかもその衣装はやがて彼の肌の一部となり、常に空腹を覚え、子供をむさぼり喰らいたいという衝動にかられ出すのであった……。

我々コルロフォビアはピエロの風体自体に恐怖を覚えるのですが、この作品はどうやらその先を狙ったようですね。ピエロの格好をした殺人鬼などの恐怖を描くのではなく、ピエロそのものを悪魔化してしまおうと。つまりはケントが着たピエロの衣装は衣装などではなく、悪魔の皮膚と頭髪だったのです!

北欧の山奥に棲み、子供を洞窟に誘い込んでは喰い殺す伝説の悪魔クロイン。その皮膚と頭髪によって作られたのがこの呪いの衣装であり、一度着たら脱ぐことはできず、首を切り落とすしか方法はないとのこと。なんてこったい!こいつはとんだ道化だぜ!

普通すぎて拍子抜け

ってな感じの物語なのですが、残念ながらこれ以上のことは何も起こりません。「ピエロの衣装と思って悪魔の皮膚でコスプレイヤーしたら本当の悪魔になっちゃったよ俺!」以上の事は何も起こらない、とっても普通のホラー映画でなんかちょっとホントに拍子抜け。

子供を専門に食す悪魔なわけで、そこは臆することなく攻め込んで問答無用に喰い散らかした心意気は良かったのですが、どうにも細部が甘すぎるのですよね。子供を5人生贄に捧げて悪魔を復活させたら解放されるという突然の代替案が提案されるタイミングなんて、「先に言っとけよ!」って話。

悪魔が復活したらどうなるのかもよくわかりませんし、行方をくらましたケントを捜すため、「ピエロと言えばゲーセンだ」という短絡的すぎる発想がそのままドンピシャにハマる展開にもシラけましたし、唐突すぎる息子のイジメられキャラ化、伏線だけで忘れらてしまったような妻の妊娠ネタももったいないかぎり。

そしてこの映画最大の問題は、我々コルロフォビアはあのピエロの風体が怖いというのに、どんどんだだの怪物へと変わっていってしまったこと。これはまさに本末転倒で、普通の怪物見せられたって我々はなんにも怖くないのです。マクドナルドのほうがこの何倍かこえーよ。

片鱗チラ見せ

まあ次作の『COP CAR/コップ・カー』があまりに濃密すぎたので、同じような一筋縄ではいかない新手のホラー映画を期待しすぎたのかもしれません。普通に観られるホラー映画をぽっと出の新人が普通に完成させたという時点で、これはこれで凄いこと。

とりわけラストはけっこう斬新かも。もはやピエロではなくただの悪魔と化し、ついには我が子まで骨の髄までしゃぶり尽くしてやろうとよだれを撒き散らす夫ケントの醜い姿。しかし、そんな姿に成り果てようとも元は最愛の夫なわけであり、未練たらたらでどうしてもとどめを刺せない妻の逡巡。

そんな彼女の背中を押したのが、「あの人お父さんじゃありません。全然知らないキモい奴です!」という、『クリーピー 偽りの隣人』並みにサイコパスな息子の発言だったというのは、これはこれでけっこう新しかったかも。普通は逆ですよね、逆。

エンディング曲に有名ではないほうのニルヴァーナの『Everybody Loves a Clown』をもってくるセンスにもぶっ飛びました。こんな映画のラストにそれかけるぅ!?うん、けっしてうまい映画とは言えないが、才能の片鱗はきちんと見せてくれてますよねジョン・ワッツ。

『スパイーダマン』にさしたる興味はないが、彼が撮る『スパイダーマン』ならぜひとも観てみたい!ってなわけで、『スパイダーマン:ホームカミング』にはけっこう期待してるぞ!

個人的評価:5/10点

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