『クロノス』感想とイラスト ギレルモ・デル・トロ詰め合わせデビュー作

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映画『クロノス』ロン・パールマンのイラスト(似顔絵)
ボクらのデル・トロの記念すべき監督デビュー作。「デビュー作にはその作家のすべてが詰まっている」と言われるが、まさにそのとおり!デル・トロ信者は必見ですぞ!

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作品情報

『クロノス』
La invención de Cronos/Cronos

  • 1993年/メキシコ/92分
  • 監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
  • 撮影:ギレルモ・ナヴァロ
  • 音楽:ハビエル・アルバレス
  • 出演:フェデリコ・ルッピ/ロン・パールマン/タマラ・サナス/クラウディオ・ブルック/マルガリータ・イザベル

参考 クロノス (映画) – Wikipedia

解説

中世の錬金術師によって作られた不死をもたらす生きる機械“クロノス”。時は現代、そのクロノスを手にしたことにより不死となった男の悲しい闘いを描いたダークファンタジーです。

監督は『クリムゾン・ピーク』『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロで、これが記念すべき監督デビュー作。主演は『デビルズ・バックボーン』のフェデリコ・ルッピ。共演に『ヘルボーイ』シリーズのロン・パールマンなど。

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感想と評価/ネタバレ多少

劇中では一度も「吸血鬼(ヴァンパイア)」という単語は登場しておりませんが、血を欲し、日光を嫌い、心臓に金属の杭を打ち込めば絶命するという設定から見ても、これが吸血鬼映画であるという事実は明らかです。ただしかなり異質のね。

何が異質だって、まず主人公が老い先短い老人なのです。んでもって、彼が手にした不死の力を横取りしようとする相手もまた半分死んだような老人なの。そこに絡んでくるのも怪物ロン・パールマンと、主人公のかわいい孫娘アウロラ。ね、異質でしょう。

吸血鬼映画にありがちな派手なバトルシーンも存在しません。あるのは痛々しい描写と血の表現。残酷さと美しさ、そして思いがけない滑稽さ。徐々にヴァンパイア化していく主人公のヘススが、トイレの床に落ちた血を舌で舐めるシーンのなんと素晴らしいことか!

神は細部に宿る

低予算による監督デビュー作でありながら、デル・トロらしい細部まで作り込まれたプロダクションデザインの独特さも目をひきます。悪役グァルディアが暮らす無菌室に吊るされた無数の天使像、ホルマリン漬けにされた自身の内臓。なんと素晴らしいおぞましさ。

そして最も素晴らしいのはやはりクロノスの造形。1980年代を代表するアメリカンハードロックバンド、ジャーニーのアルバムジャケットを彷彿とさせるスカラベの外観、仕掛けが発動したときのギミックもよいのですが、特筆すべきはその内部構造描写です。

おっと、ジャーニーは関係ないので忘れてください。懐かしくなって思わず動画を貼りつけてしまった次第(っていうかスティーヴ・ペリー歌うますぎやろ!)。クロノスの内部構造描写の話でしたな。

巨大(実際は手のひらサイズなのだが)な歯車が奏でる音。その無骨さ。動き。そしてその隙間からチラチラ覗いているクロノスの本体である謎の有機生命体!有機物と機械との合体。なんとまあ美しい響きではありませんか。クローネンバーグみたい。

若い頃からボクらのデル・トロ

クローネンバーグほど振りきれてはおりませんが、物語のわかりづらさも異質かつ魅力的です。前述したとおり吸血鬼映画でありながらまったく吸血鬼に触れておらんのですけど、クロノスの真実を理解しているのは最後まで悪役ただひとりなのですよね。

彼の手足となって働いた甥のロン・パールマンも、思いがけず不死を手にしてしまった主人公のヘススも、最後までクロノスの意味、真実を知ることはなく静かに映画は幕を閉じるのです。ゆえにわかりづらいのですけど、好きだな~こういう感覚。

ロン・パールマンとヘスス。ともに真実を知らぬふたりの不毛な対決の決着。そして自身の名を取り戻し、ヘススとして、人としてあることを選択した主人公の姿。彼を最後に現実へとつなぎ止めた孫娘アウロラが唯一発した言葉がいいですよね。

ラストシーンの幸福感に包まれた静謐な美しさは必見ですよ。悲しいんだけど救われた。やっぱデル・トロは若い頃からボクらのデル・トロだったんだ!ギレルモ・デル・トロのファンで未見の方は絶対に観るべしです!この映画には彼のすべてが詰まっている!

個人的評価:7/10点

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コメント

  1. 「クロノス」、良いですよねえ。老人と幼い少女が主人公ってのがナイスだし、怪奇要素を上手にからめて、切ないけれど心安らぐエンディングまで、劇場で見たときはググッと来てしまいました。
    デル・トロ作品なら、「パンズ・ラビリンス」が一番好きですが、「クロノス」は2番目に好きかな。
    デル・トロって「デビルズ・バックボーン」もそうだけど、少年や少女を主人公にしたダーク・ファンタジーの佳作・秀作が多いですよね。
    ところで「ヘルボーイ」の3作目って、いつ作られるんでしょ?

    • スパイクロッドspikerod より:

      大今里シネマ通信ブログさん、コメントありがとうございます!

      ボクはこの映画、観たくてもなかなか観れなかったので、今回の再ソフト化には本当に歓喜いたしました。で、観てみたらやっぱり大好きな仕上がりではないですか!さすがはボクらのデル・トロです!サービス精神満載の『パシフィック・リム』は別格として、やはり最もデル・トロらしい映画は『パンズ・ラビリンス』ですよね。その系譜として『クロノス』、そして『デビルズ・バックボーン』があると思います。またこういう映画に帰ってきてほしいもんですね。

      『ヘルボーイ』の3作目はほぼお流れになったのではないでしょうか?おそらくは資金面の問題で。確かそんなニュースを以前に読んだ気がいたします。『ゴールデンアーミー』が傑作だっただけに残念ですね。