『永遠のこどもたち』感想とイラスト ネバーランドへの逃避行

映画『永遠のこどもたち』ベレン・ルエダのイラスト(似顔絵)

突然いなくなった最愛の我が子。捜して捜して捜し尽くして、なんだかよくわからない迷宮へと迷い込んだ母親へと突きつけられるのは、彼女が無意識に犯した罪と罰……。

スポンサーリンク

作品データ

『永遠のこどもたち』
El Orfanato/The Orphanage

  • 2007年/スペイン、メキシコ/105分
  • 監督:J・A・バヨナ
  • 脚本:セルヒオ・G・サンチェス
  • 撮影:オスカル・ファウラ
  • 音楽:フェルナンド・ベラスケス
  • 出演:ベレン・ルエダ/フェルナンド・カヨ/ロジェール・プリンセプ/ジェラルディン・チャップリン

感想と評価/ネタバレ有

生まれ育った孤児院を再建するために30年ぶりに同地へと帰ってきた女性が、忽然と姿を消した愛する我が子の行方を追って過去と対峙する姿を描いたミステリアス・ホラーです。監督は期待のファンタジー・ホラー『怪物はささやく』が控えるJ・A・バヨナ。

やる気の掛け違え

敬愛するギレルモ・デル・トロがプロデュースを務めたものの、製作総指揮のみだったのでなんとなくスルーしていた『永遠の子供たち』。監督であるJ・A・バヨナの新作『怪物はささやく』がなんとも興味をそそる内容だったので、遅ればせながら手を出してみました。

宙を舞う羽毛と、温かい陽光がひたすらまぶしいオープニング。日本でいう「だるまさんがころんだ」的な遊びに興じている子供たちが、ひとりずつフレームインしてくる姿が無邪気な幸福感を演出し、その幸福が反転するであろう光景を想像するゲスの期待感をあおってきます。

舞台はとある孤児院で、そのなかのひとりラウラにはめでたく里親が見つかった模様。時は流れ、成長したラウラは夫と子供を伴って同地へと帰郷し、閉鎖された孤児院を買い取って障害を抱える子供たちのためのホームを開設すべく、すでにやる気満々なのであります。

このやる気満々こそがおそらくは問題の本質だったのではないかと思います。よその子の問題を気にする前に、まずはうちの子の問題を解決すべく決意を固めるべきだった。それをなおざりにしたばっかりに起こった悲劇が、この映画の本質だったような気がします。

消失による混沌

実はラウラの息子シモンは実の子ではなく、彼女自身と同じ養子だったのです。しかもシモンはHIVポジティブで、このふたつの重要な事実をいまだシモンに伝えることができていなかったラウラ。彼女がいま真摯に向き合うべき問題はあきらかに息子シモンのほうにあった。

ここの優先順位をラウラは見誤ったばっかりに、最悪の悲劇が起こってしまったのです。忽然と姿を消したシモン。彼の危険なシグナルは明確に発せられていたはずなのに、ラウラは孤児院再建に気を取られてそれを見逃してしまった。そして起こった取り返しのつかない事態。

シモンの失踪には昔この施設で働いていた女性が関与しているのか?非業の死を遂げた彼女の息子トマス。これに関係して起きた施設の子供たちの事件。広い屋敷で鳴り響く奇怪な音、不思議な現象。ゴーストの存在。謎が謎を呼ぶなかなかにミステリアスな展開です。

ときおりエモーショナルすぎる演出が鼻につきますが、ゴシックホラー的な不気味さと美しさの共存はデル・トロを彷彿とさせる見事なダークファンタジーで、いきなりぶちかまされるぶっ込んだグロ描写にもドキリとさせられます。トマスの顔は少々やりすぎですけどね。

しかしギレルモ・デル・トロをはじめ、さまざまな映画からの影響が色濃く感じられすぎてしまう演出は正直いかがなものでしょうか?

過剰なオマージュ

人の手によって破られた壁紙の隙間から覗くクレジットという、非常に印象的なこの映画のタイトルデザイン。これはソール・バスが手がけた『バニー・レークは行方不明』へのオマージュであり、最愛の子供の消失と、母親への共感と疑義というプロットも共通しています。

屋敷に取り憑いた子供の霊にブチギレるシーンなんかは、カナダ産傑作ホラー『チェンジリング』(イーストウッドの映画ではない)にそっくりですし、『ポルターガイスト』や『アザーズ』などからの影響も強く感じられて、どうにもオリジナリティが弱いのですよね。

まあどこからネタを引っ張ってくるかのセンスは感じられるのですけど、最も気になったのはデル・トロの傑作ダークファンタジー『パンズ・ラビリンス』との共通点。この『永遠のこどもたち』のオチはほぼ『パンズ・ラビリンス』と同じだと思われるのですよね。

リスペクトもほどほどに

霊能力者にすがり、子供の霊の存在を信じ、彼らとコンタクトすることによって最愛の息子シモンを見つけようとやる気満々になったラウラがたどり着いた、驚愕の終着点。物置の壁に隠された地下室への扉。そこはトマスの部屋。冷たい床で小さく固まったシモンの亡骸。

あの日ラウラが見たトマスはシモンであり、シモンが見つけたこの地下室を閉ざしてしまったのは自分であり、あの奇怪な物音はシモンが最後に発信したSOSだった。なんという救いのない現実でありましょうか。なんという無駄な時間をラウラは過ごしていたのでしょうか。

息子と真摯に向き合うことを回避してしまった母親が無意識に犯した罪と、その結果としてのあまりに残酷な罰。最後に映し出される“ネバーランド”の光景は、けっして幸福な救済などではなく、過酷な現実から逃避したラウラに対する罰のように思えます。

過酷な現実から逃避するための装置として展開される美しい夢。この構造はあきらかに『パンズ・ラビリンス』と同種のものであり、その重さ、痛み、哀れさは確かに迫るものがありますが、なんでよりにもよってデル・トロ先生から拝借しちゃったのかな?

尊敬しているし、影響を受けているのはそりゃわかるけど、その熱いリスペクトはあくまでオマージュにとどめるべきで、物語の骨子まで似通っちゃったらもう誰の監督作なのかわかりませんよ。ここが残念というか、なんとも惜しい作品だったんですよねぇ……。

個人的評価:6/10点

デル・トロ映画の感想はこちら

ホラー&衝撃の結末好きにおすすめ

コメント

  1. ダムダム人 より:

    この作品、と或る漫画家さんが紹介して
    面白そうだったので、今はもう無い秋葉原に有った
    輸入DVDショップに行ってソフトを買いました。
    –当然、日本語吹き替えでは無いのでですが
    英語字幕だったので、辞書片手にみました。–

    その後、劇場公開された時に見に行きました。
    その日、仕事の事で先輩から電話が有ったのですが、
    それについて前日、私の方から準備の事を聞いたのにも関わらず
    「気にしなくていい」といわれたので、安心していたのに…
    そんな訳で、この作品には内容より、それに関する出来事の方の
    記憶が残っているという印象です。

    • スパイクロッド より:

      ダムダム人さん、コメントありがとうございます!

      映画を観るという非日常も、結局のところは日常の力からは逃れられないのですよね。そのときに置かれている状況、精神状態、トラブルによって大きく左右されてしまうのが現実です。映画を観るにも心と体の健康が大事だということです。本当に楽しみにしている映画の場合はなるだけそういう状況下で観るようにボクは務めております。まあこの『永遠のこどもたち』の感想はそれでも変わらないと思いますけどね(笑)。

トップへ戻る