『ヘレディタリー/継承』感想とイラスト 今でも聞こえるコッコッコッ!

映画『ヘレディタリー/継承』ミリー・シャピロのイラスト(似顔絵)
死んだ祖母が家族に遺した呪われた遺産。何者かによって隔離され、監視され、管理されたグラハム家のミニチュア人生。そんな彼らの呪われた運命の歯車がついに動き出したとき、聞こえてくるのはコッ……コッ……コッ………。

スポンサーリンク

作品情報

『ヘレディタリー/継承』
Hereditary

  • 2018年/アメリカ/127分/PG12
  • 監督・脚本:アリ・アスター
  • 撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
  • 音楽:コリン・ステットソン
  • 出演:トニ・コレット/ガブリエル・バーン/アレックス・ウルフ/ミリー・シャピロ/アン・ダウド

参考 ヘレディタリー/継承 – Wikipedia

予告編動画

【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

解説

祖母の死をきっかけとし、不可解な現象にさいなまれ出したグラハム一家の呪われた血脈と大いなる遺産を描いた超絶顔面ホラー映画です。

監督は本作が長編デビュー作となるアリ・アスターで、サンダンス映画祭でのプレミア上映を皮切りに、「直近50年のホラー映画のなかの最高傑作」「21世紀最高のホラー映画」という最高の賛辞を勝ち取った衝撃的デビュー作(この先が心配だ)。

主演は『シックス・センス』『アバウト・ア・ボーイ』『リトル・ミス・サンシャイン』でも大変なママさん役を演じていたトニ・コレット。共演には『ミラーズ・クロッシング』のガブリエル・バーン、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル』のアレックス・ウルフ、映画デビュー作にしてとてつもない怪音を発した子役ミリー・シャピロなど。

スポンサーリンク

感想と評価/ネタバレ多少

2018年、いやいや21世紀、おっとどっこい直近50年で最凶なホラー映画ですねん!と各方面から喧伝されまくっていた『ヘレディタリー/継承』。うむ、予告編動画を観るかぎりでは確かに怖そうじゃわい。ホラー映画好きとしてはこれを見逃すわけにはいくまい。

てなわけで、夜中にひとりで小便に行けず枕元に空のペットボトルを常備したくなるような恐怖を味わいに「お~いお茶」を喉へと流し込みながら出かけてまいりました。うむ、すでに膀胱がはち切れん勢いじゃわい。恐怖のあまり鑑賞中に失禁……いやいや、爆笑のあまり盛大なうれションをかます大迷惑をお許しください。

最凶ホラー?

祖母エレンが亡くなったグラハム家。娘のアニーは秘密主義で支配的だった母の死を素直に悲しむことができない複雑な心境を夫スティーヴンに吐露するが、祖母に溺愛されていた娘のチャーリーだけはその死に敏感に反応し、家族を覆う不穏な影を感知しているようだった。

そんなある日、高校のパーティへと行くために車を貸してくれと頼んできた息子のピーターに対し、妹のチャーリー同伴ならと条件をつけたアニーだったが、これが家族を最悪の状況へと引きずり込む罠だとはこの時点では知る由もなかったのだ……てのが簡単なあらすじ。

謎めいた存在だった祖母の死。それをきっかけとして家族の周りで頻発する不吉な現象。そして起こる最悪の事態。崩壊。圧倒的なまでの崩壊。その崩壊を引き起こしたのは祖母のせいなのか?彼女はいったい何者だったのか?彼女が家族に継承させたものとは果たして……。

という、「Hereditary(遺伝性の、親譲りの、世襲の)」呪われた血脈による怪異をミステリアスに、オカルティックに、そのくせ徹底的にロジカルに描いてみせたのが本作『ヘレディタリー/継承』で、その精緻に築き上げられた脚本、演出、音響、音楽には舌を巻きます。

しかしそれがイコール恐怖と結びつくとは限らない。ええ、あたくしこの映画を特に怖いとは感じませんでした。ちょいとロジカルすぎたかな?恐怖ってのはそのロジカルを超えた裂け目から漏れ出すものだと思っておりますので、キレイにストンと腑に落ちすぎだったかも。

外部からの視線

要するにもの凄くちゃんとした非常に完成度の高い作品というわけです。そらもうオープニングから見事です。ミニチュア模型アーティストであるアニーのアトリエから始まる本作。アニーの創作物はすべてプライベートなものであり、彼女の人生の再現です。

そのひとつ、息子ピーターの部屋のミニチュアから実際の彼の部屋へと視点が変わるアクロバティックな断面切り取り導入部。グラハム家の撮影はすべてセットをこしらえたという非常に贅沢なもので、この視点、距離感、作り物感は意図されたものであり、ここで作品の本質をすべて語っていると言っても過言ではない。

断面図、シンメトリー、ドリー撮影ってウェス・アンダーソンかい!(もしくはキューブリック)という映像群の連なりとはすなわちコントロールであり、人を、家族を、運命をコントロールしているわけ。グラハム家の人生は一切合切、何者かの管理下にあるというわけ。

映画撮影という外部において監督のコントロール下にあるのは当然として、内部でも彼らの人生は何者かによって監視、管理されているということを暗示しているわけです。アニーがミニチュア模型アーティストなのも偶然ではない。すべては意図的に仕組まれた運命の歯車。

真面目か!

その監視者は何者で、どういう意図で、その視線、支配から逃れるすべはあるのか?というのを紐解いていくのが本作の肝ですが、先述した通りすべての伏線や謎がきれいに回収された地獄絵図のなかで悪魔的着地を見せるロジカルさで、金田一耕助の等々力警部よろしく「よし、わかった!」と景気のいい手刀を切ることでしょう(いやそりゃわかってねーだろ)。

しかし恐怖とは「明確」さよりも「曖昧」さにこそ宿るもの。そういう意味では本作は別に怖くなかった。「ああ、なるほどね」という納得感はあっても、我々を永遠に沈み続ける底なし沼へと叩き落すような悪意は感じられなかった。そう、言うなれば真面目すぎるのだ。

すべてをコントロールし、論理的に組み立てられた脚本・演出のなかで、地獄絵図的で悪魔的ではあるがちゃんと筋道の通った着地点へと到達してみせる生真面目さ。このかっちりとしたスタイルはホラーではないような気がする。サスペンスかな?ヒッチコックかな?

殺しにかかる顔面芸

まあそれが悪いって話ではない。事実、非常によく出来た、面白い作品だったわけですから。ただボク的には巷で騒がれているほど恐怖は感じなかった。むしろ非常に面白かった。なんだったら爆笑悶絶もんだった。特に後半はもう完全に笑かしにかかってるでしょ。

祖母の死をきっかけに家族へと降りかかる不可解な現象、やがて現実化する最悪の事態、それによって崩壊する家族の絆、その裂け目へと侵入してくるオカルティックな救済の魔の手。これへとすがる母親アニーの超絶顔面芸は我々を笑い死にさせようと企むトニ・コレット一世一代の表情筋トレーニング。

彼女を取り込んだオカルトババアの横で見事なリアクション芸を披露するトニ・コレットには、出川哲朗も上島竜平も真っ青のヤバいよヤバいよ聞いてないよ。そんなテンションえら上がりの彼女の横でひたすらリアクションうっす~い夫ガブリエル・バーンの棒切れ加減もそうとうツボ。しかも「お前かい!」芸まで披露。

そんな「お前かい!」の衝撃(笑劇?)によって渾身の表情筋大活躍からの弛緩なんて流れるようなスライディング。その後も「志村うしろ!」とか、高速天井頭突き100万回とか、空中ジーコジーコ切断祭りとか、ないのに土下座とか、もうホント我々を殺しにかかってくる笑劇テクニックの雨あられ!

これを死ぬほど怖い失禁地獄と見るか、それとも死ぬほど笑えるうれション天国と見るかは人それぞれですが、ボク的には「笑い死にさせる気かい!」と、盛大に左隣のポテチ喰いや右隣の鼻炎男に小便シャワーをかけたくなるパラダイス銀河であったことをご報告しておきます。

コッ!

それじゃお前はまったく怖くなかったのか?というのもちょいと違って、「怖い」というよりかは「なんかやな感じ」ですよね。前半はその「なんかやな感じ」でじわじわと真綿で首を絞めてきており、後半になって突如として顔面笑い殺し芸へと振りきれる印象です。

そういう意味ではボクは前半のほうが好きかもしれない。正体不明な状態で何かがおかしい違和感を不気味なスコアと緩慢なカメラワークで静かに丁寧に中途半端な距離から眺め続けている不可解な家族の肖像。だいたいこのグラハム家は家族構成としてまずおかしいですよね。

トニ・コレットとガブリエル・バーンの息子がアレックス・ウルフという違和感。祖母の葬式で虚空を見つめながら一心不乱に絵を描きチョコレートをほおばる娘チャーリーのふてぶてしさ。アニーが造る精巧なミニチュア模型。棒切れ加減が半端ない夫のガブリエル・バーン。

すでに幸せな家族などでは断じてない絶妙の違和感とアンバランスさ。開始早々から崩壊の予感がにじみ出ているグラハム家の呪われた運命。それがついに現出する前半のハイライトにおける、当事者の動揺と恐怖と不安の果てに選択した逃避を映し出した時間は最高最悪に「やな感じ」です。

あまりに気持ちが理解できて自分もそうなる可能性が高い、しかしそれはしちゃいかん、ああ~でもわかる!寝よう。寝て起きたらまた元の人生だ。きっとすべて元どおり。きっと、きっと………うぅおおおぉうがぁあごぉおうおおぉうぎぃよぉおおぉおぉぉおおうんがぁっ!

という逃避と慟哭から始まる崩壊、圧倒的なる崩壊。あんたそれを言っちゃあおしまいよ、とも思える言葉による殺人でもありますが、この裏には運命へと逆らおうとあがく無意識の格闘、つまりは家族の愛がちゃんと隠されておるのです。しかし家族とは愛以上に厄介なもの。

たぶん愛のない家族なんて存在しない。しかし、それを超えた因果として家族とは厄介なしがらみであり結びつきなのです。最凶ホラーという仮面を借りたそんな家族の逃れられない血脈を描いたのが本作『ヘレディタリー/継承』だったのかもしれません。

最後に、巷の評判に反して「怖くない、これは爆笑映画だ」と連呼してきた筆者ですが、実はひとつだけ心底恐ろしかったものがあります。それは「コッ」。「コッ」が最初に発せられたときから飛び上がるぐらい怖かった。あれがなんなのかいまだによくわかりません。

よくわからないがゆえに心底怖い「コッ」。この映画を観て以来きっとあなたにも聞こえ続けているあの「コッ」。車で、電車で、教室で、オフィスで、トイレで、お風呂で聞こえてくるでしょ?「コッ……コッ……コッ……コッ……コッ!」って?

個人的評価:7/10点

私的最凶ホラー映画の感想はこちら

『イレイザーヘッド』感想とイラスト ネタバレ全開徹底解説
映画『イレイザーヘッド』のイラスト付き感想。ネタバレ全開徹底解説。当ブログの管理人スパイクロッドを構成するうえで欠かすことのできない最重要映画、満を持しての登場!てなわけでネタバレです。徹底解説です。正解かどうかは知らんがな!

ホラー映画好きにおすすめ

失禁御免!心底怖いおすすめホラー映画ランキング
怖くないホラー映画なんぞに存在価値はない!恐怖こそ至上!恐怖こそ正義!恐怖こそ勝利!そんな夜中に小便ちびるぐらい恐ろしい超絶おすすめホラー映画ランキングの発表じゃい!
ホラー
スポンサーリンク
スパイクロッド

映画を観たらとりあえず感想とイラストを書く(描く)人畜無害な釘バット。ちなみにイラストはぺんてるの筆ペン一本によるアナログ描き。

スパイクロッドをフォローする
映画を観たからイラスト描いた

コメント