『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』感想とイラスト 後編の悪夢ふたたび!?

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映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ペニーワイズのイラスト

あの夏の雪辱を晴らすべく、27年間も下水にこもって新ネタをシコシコとこさえていた腐れ芸人ペニーワイズ。しかし光陰矢の如し。芸は何より鮮度が大事。彼の渾身の新ネタは大人になったルーザーズ・クラブに、我々観客の心に恐怖をお届けできたのだろうか?

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作品情報

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。

  • 原題:IT:chapter two
  • 製作:2019年/アメリカ/169分/R15+
  • 監督:アンディ・ムスキエティ
  • 原作:スティーヴン・キング
  • 脚本:ゲイリー・ドーベルマン
  • 撮影:チェコ・バレス
  • 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
  • 出演:ビル・スカルスガルド/ジェームズ・マカヴォイ/ジェシカ・チャステイン/ジェイ・ライアン/ビル・ヘイダー/ジェームズ・ランソン/イザイア・ムスタファ/アンディ・ビーン

参考 映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』オフィシャルサイト

予告編動画

映画『IT/イット THE END』US版予告 2019年11月1日(金)公開

解説

前作から27年後を舞台に、ふたたび姿を現した子供喰らいピエロ“ペニーワイズ”を真に闇へと葬り去るため、故郷デリーへと舞い戻ってくる大人となったルーザーズ・クラブたちの葛藤と恐怖と団結を描いた、大ヒットファンタジーホラー『IT/イット』の続編にして完結編です。

監督は前作から引き続き『MAMA』のアンディ・ムスキエティで、踊り狂い子供喰らいピエロ、ペニーワイズ役のビル・スカルスガルド、少年時代のルーザーズ・クラブの面々も続投。

大人になったルーザーズ・クラブを演じるのは、『スプリット』のジェームズ・マカヴォイ、『クリムゾン・ピーク』のジェシカ・チャステイン、コメディアンや声優としても活躍する『パワーレンジャー』のビル・ヘイダー、『フッテージ』のジェームズ・ランソンなど。

あらすじ

27年周期で小さな田舎町デリーに現れ、町の子供たちをさらっては喰らうピエロの格好をした怪物ペニーワイズ。その恐怖に立ち向かって一度は勝利を収めたルーザーズ・クラブの面々だったが、27年後、ひとり町に残ったマイクからかつての仲間たちへ連絡が入る。

ペニーワイズが復活したのだ。なかば忘れかけていた記憶とトラウマを呼び起こされ、恐怖に打ち震える面々だったが、「ふたたび“それ”が現れたら自分たちも戻って戦おう」というあの時の誓いに従い、意を決して故郷デリーへと集うルーザーズ・クラブだったが……。

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感想と評価/ネタバレ多少

臭くて汚い下水道で寝食し、27年後の晴れ舞台に向けてシコシコと新ネタをこさえていたであろうペニーワイズさんの華麗なる復活劇。ホラー映画史上No.1大ヒットを飛ばした『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の待望の続編にして完結編がついにお目見えです。

しかし原作既読、旧テレビドラマ版を観たことがある方ならば、この続編にして完結編に対する想いはきっと複雑なものがあったはず。いろんな意味で「あの悪夢がふたたび繰り返されるのか?」と。そんな忌まわしき記憶に囚われた我々を解放してくれるのか否か?

それを確認するためにおよそ5か月ぶりに映画館へと赴き、4か月ぶりにブログを更新する、わたくしスパイクロッドの復活劇でもある今回の感想。いろんなところに媚びながら、日和ながら、皆さまの足の指を舐めて舐めて喰いちぎる想いですのでどうぞ愛して愛して♡

前作の感想はこちら

後編の悪夢ふたたび!?

まだるっこいことは嫌いなのでさっそく皆に媚びた結論から。「悪い意味でやっぱりあの悪夢は終わっていなかった!」っちゅうこってす。旧テレビドラマの悪夢を、呪いを、落胆を払拭してくれることを望んでおりましたが、やはりこの呪いは永遠に解けんのか……。

皆に愛されるべく日和ったオブラートに包んで優しく丁寧に波風立たず囁いてみますと、「あ~あ~クッソつまんねーなぁこりゃ!」っちゅうこってす。さらに30分引き延ばした長尺で前作の焼き直しを見せられたような感じです。予算が倍増したぶん画的には派手ですけどね。

しかしこの予算ゲットじゃチャリ~ン♪チャリ~ン♪が必ずしも良き効果を発揮していないのは明白で、成金趣味による大きなイチモツを欲しがったなんでもでっかくおっきく乳袋が、片方を喜ばせ、もう片方を怒らせるのは世の常であり、ボクはイチモツも乳も好きですが怒っております。

マーベル映画を評して、「あんなもんは映画じゃねぇ肥溜めだぁ(そこまでは言ってない)」なんて御大たちの発言が愉快な炎上をかましておりましたが、アレと同じで、こんなもんはホラー映画ではなく単なるアトラクションです。残念ながらここに恐怖は微塵もミジンコもありません。

ボクの個人的な所感を述べさせていただきますと、ピエロはただピエロとしてのあるがままの姿だけで恐ろしいのです。巨大化モンスター化クリーチャー化してどったんばったん暴れ回ったりしなくても、ただあるがままの姿それだけで恐ろしくも悲しい異形の怪物なのです。

前編の少年期にも確かにそういう傾向はありましたが、あれはまだ少年期の恐怖をボクら自身も追体験しているので問題なし。しかし大人を対象としてさらなるアトラクション化が行われてしまっては、同じくいい年こいたオッサンであるボクなんかは「へへへ」と笑うしかすべはありません。

遊星からの物体X』や『シャイニング』ごっこなどというオッサンホイホイにも捕まりやしません。「あたしそんな安いオッサンじゃないわよ!」って話です。いや、どんな話か言ってる自分でよくわかりませんが、要約すると「汗かきババアだけは怖い」という真理です。

そう、本作『IT THE END』で唯一恐ろしかったのは、突如フリーズし、背後でもそもそ、おそらくは全裸で動き回る汗かきババアの停滞と暗躍、そして満を持して漫☆画太郎化する躍動のみであったと断言してもよいかと。ホラーとはババアでありババアとはホラーであるという真理です。

だんだん慣れてくるのよ

青春時代における恐怖と戦いと成長をノスタルジックにアトラクション化した前作の大成功を、大人になってもそのまま適用してしまったがゆえの大失敗、それが本作『IT THE END』の正体ではないでしょうか。子供には子供の、大人には大人の恐怖があるんだから。

しかも前作の焼き直しだけではなく、本作内においても似たようなシーンの繰り返しが続き、はからずも劇中でビル自身が語っていたとおり「だんだん慣れてきた」現象によって飽きちゃうんですよね。大人になるための喪失と大人になってからの獲得にしてもまたしかり。

『IT/イット』という物語はおそらく子供の虐待をテーマにしていると思うのですが、そういう過酷な環境下に置かれた少年期の喪失と、そのトラウマを抱えたいわゆるサバイバーとしての中年期の獲得は、突き詰めれば同じことだと思うのですよね。

要するにここでも同じことの繰り返しによる既視感が発生しており、とりわけ中年期は成功しているとは言いがたい。やはりそれを描くにはそれなりのエグみと、凄みと、アダルトな大人のオモチャがヴィ~ンヴィ~ンと必要だと思うのですよね。アトラクションやってる場合ではねーのです。

現代的な多様性の描写と、それに対するあえての攻撃性なども意図としては悪くないですが、これもあんまり機能してなかったかな?ペニーワイズが標的とした青年と少女、リッチーの秘密なんかがソレですが、こういう社会の分断の暗示も効果があるようでなかったような気が。

デリーという町を通して、因習に縛られて分断された社会の縮図に囚われた人々(もちろんペニーワイズも含む)を描く意図は薄ぼんやりと感じるものの、すべては際限なく繰り返されるイチモツ乳袋アトラクションによって「へへへ」と窓外の彼方。

ちゃんとした終わり方

皆に愛され、好かれるように、当たり障りのない「いかがでしたかブログ」のような栄光を目指して久々に描き進めた今回の感想ですが、何事においても「終わらせる」のが一番難しい。その難しさは本作が、旧テレビシリーズが、そしてスティーヴン・キングが証明済み。

本作の主人公ビルとは原作者キング本人の投影なのですが、小説家として成功して映画の脚本家も務めながら、劇中でことあるごとに「お前の小説は結末が最悪」と言われるディスり具合が笑えましたが、最後には御大自ら言っちゃうわけだから自覚してたのね。

実はビルが少年時代の愛車“シルバー”を発見したリサイクルショップの店主はスティーヴン・キング本人で、この店主もビルに対して「お前の小説の結末が嫌いだ」って言ってるんですよね。要するに自分で自分をディスってるわけ。御大も自虐ギャグするほど丸くなったのね。

ボクはキングの原作をほとんど読んだことがないのですが、彼の作品は後半からラストにかけての評判が芳しくないのは有名なようです。これがバッドやビターに対する評価なのだとしたら断固として異を唱えますが、彼の原作映画で尻すぼみなものが多いのは確固たる事実。

つまりは「ちゃんと終わらせる」ことはそれだけ難しいのだ。映画でも、小説でも、恋愛でも、人生でも、「ちゃんと終わらせる」ことは本当に難しい至難の業なのだ。だからボクは思う。「別にちゃんと終わってなくてもよくない?」と。ちゃんと終わらせようと思うからおかしくなるのだ。

本作におけるスタンのとってつけたような手紙なんてまさにしかりで、「嘘つけバ~カ!ビビッて泣いて小便ちびってたくせにこのウンコ垂れ!」ってなもんです。こんな余計なちゃんとした理由を付け足そうなんてするから逆に面白くない結末になるんですよ。

最後がちゃんとしていることに越したことはないが、そこに囚われると墓穴を掘るのがオチなので、別に中途半端でも、意味不明でも、放り投げてても、ひたすら鬱でも、やりたいようにやれ!と思うボクにとっての『IT/イット』のラストは少年時代の誓いの原っぱです。

実はひたすらメンタルが弱かったペニーワイズ罵倒ショー?そんなものは知りません。ボクにとっての『IT/イット』とはあの原っぱで終わっているのです。彼らの夏も、ボクの夏も、あの原っぱで行われた血とキスによって結末を迎えずに終わっていたのです。

子供の頃は本当に楽しくて、面白くて、怖かったことも、大人になったら意外とたいしたことないってあるでしょう?それを体現してしまったのがペニーワイズの、本作『IT THE END』の敗因なんじゃないかな。27年越しのリベンジマッチでちゃんと終わらせようなんてするから縮むんです。

いかがでしたか?

何に対して「いかがでしたか?」と問われているのか頭を抱えていることでしょうが、「いかがでしたか?」というパワーワードが出現した時点ですべては終局を迎える魔法の言葉ですので、ちゃんと終わっていようがいまいがこれで終わりなのです。

それでは皆さままた半年後(おいおい)。

個人的評価:3/10点

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