『インビテーション』感想とイラスト バットの存在意義

映画『インビテーション』ローガン・マーシャル=グリーンのイラスト(似顔絵)

延々と続く不穏でおかしなパーティ。この裏にいったい何が?どんな驚愕の真相が?でもね、真に恐ろしいのは見えたものではなく、見えそうで見えないものにこそ潜んでおるのです。

スポンサーリンク

作品データ

『インビテーション』
The Invitation/不吉な招待状(Netflix)

  • 2015年/アメリカ/100分
  • 監督:カリン・クサマ
  • 脚本:フィル・ヘイ/マット・マンフレディ
  • 撮影:ボビー・ショア
  • 音楽:セオドア・シャピロ
  • 出演:ローガン・マーシャル=グリーン/タミー・ブランチャード/ミキール・ハースマン/エマヤツィ・コーリナルディ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

2年前に別れた元妻から届いたディナーの招待状。懐かしい顔と再会し、楽しいひとときを過ごすはずだったパーティに漂う不穏な空気と驚愕の真相を描いた、シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ受賞のスリラー映画です。監督は『ガールファイト』のカリン・クサマ。

さっさとせんかい!

Netflixで『不吉な招待状』というタイトルで先行配信されていた本作。今年に入って「未体験ゾーンの映画たち」でも公開されていたのですが、例のごとくタイミングが合わずにレンタルDVDでの鑑賞です。結局「未体験ゾーンの映画たち」はすべてDVD鑑賞になりそうです。

「27の映画祭が熱狂した傑作スリラー」という客引き誇大広告は、『イット・フォローズ』や『FOUND ファウンド』でも用いられた手法で、「そらいったいどこの映画祭やねん?」というのがほとんどなのですけど、この『インビテーション』だけはちょっと違います。

SFやホラー、ファンタジー系のジャンルに焦点を当てた世界三大ファンタスティック映画祭の代表格、シッチェス・カタロニア国際映画祭のグランプリ受賞作なのですから。その筋(どの筋?)の人間には非常に権威のある映画祭で、かくいうボクも注目しております。

ちなみに過去のグランプリ受賞作には、『狼の血族』『ZOMBIO/死霊のしたたり』『ブルーベルベット』『ヘンリー』『ありふれた事件』『オールドボーイ』『ホーリー・モーターズ』などのそうそうたる変態映画が名を連ねており、いやがうえにも期待が高まります。

いらん前置きが長くなってしまったので、さっさと感想のほうへと突入しちゃいましょうね。さっさとさっさと進行しないことには、この映画と同じことになってしまいますから。ええ、この『インビテーション』という映画はとにかくさっさとしていないのです。

怪しいホームパーティ

2年前に息子を事故で亡くし、それをきっかけに別れることとなったウィルとイーデン。音信不通だったイーデンから突然パーティの招待状が届き、現在の恋人キーラとともに懐かしい友人が集まるパーティへと参加したウィルだったが、このパーティはどこかおかしかった……。

というのがこの映画の簡単なあらすじです。2年間も行方不明だった元妻からのお誘いにのこのこ顔を出すという時点で、ボクから言わすともはや正気の沙汰とは思えませんが、のこのこ顔を出したパーティの様相はもっと正気の沙汰ではありませんでした。

懐かしい友人たちだけで開催されるディナーパーティのはずだったのに、いつの間にか座に鎮座している謎のLOVELOVE女とキモいハゲ親父。ハイテンションで幸せアッピールをしてくるイーデンと現在の恋人のデヴィッド。そしてやにわに上映される不気味な安楽死鑑賞映像。

「この素晴らしい教えのおかげで私たちは救済されたのです!」と言われたところで、まともな神経の持ち主なら危ない新興宗教への勧誘だとしか思えません。事実このパーティの参加者たちもそう思ったわけですが、そう思ったところで簡単には逃げ出せないのが世の常。

どっからどう見ても100パーセント脳みそ沸いてますが、その対象は元妻であり友人なのですよね。しかもそこは彼女のご自宅。「ちょっとまじキモいから帰るね」なんて言える豪傑はそうそういやしません。まじキモいけどみんなしょうがなくそこに座っているのです。

そしてみんな知っているのです。彼女は2年前に息子を事故で失って壊滅的なまでに心が傷ついたことを。それはウィルとて同じで、彼の心もあの日以来、不安定などんぶらこっこを続けており、その現場へと舞い戻ったことによってさらなる大波小波に揺られていることを。

1名を除くほかの友人たちは、「まじキモい」と内心では思いながらも仕方なくこの腐れ余興に付き合っておるのですが、精神状態どんぶらこっこなウィルだけは、「キモい、おかしい、怪しい」と彼らの一挙手一投足に自身の不安定な精神をピンッと張り詰めさせておるのです。

それは我々観客とて同じであり、このパーティの裏側でうごめく不穏な空気に疑いの目を向け続けるのですが、少々やっかいなのは主体的自己であるウィル自身もどんぶらこっこの真っ最中であるということ。こいつらマジキチだけどお前もけっこう半キチじゃね?

散々引っ張ってこれかい!

どこかおかしいパーティの裏側でうごめく何か。この明確に起こらない「何か」を上映時間の7割ほどを使って不穏に描き続けるのがこの『インビテーション』という映画の醍醐味なのですが、このさっさとしていないのろのろ運行が評価を分けているのも確か。

ボクはこの何も起こらない不穏さがけっこう好きなのですが、これを退屈だ、長すぎると思う方も多数おられることでしょう。そしてこの長時間引っ張った不穏な空気にどう落とし前をつけるか?過剰な引っ張りに飽きもせず付き合ってくれた観客に何を提供してくれるのか?

ダラダラと続く何かが起こりそうな予感は評価するのですが、その結果到達したのが予想をビタイチ裏切らないまんまのオチというのはいかがなものでしょう?カルトに付け込まれた信者たちによる集団自殺テロリズム。取ってつけたような密室空間でのホラー風味な殺し合い。

実はこれがハリウッド・ヒルズ(もしかしたら世界規模?)を舞台とした、カルト教団による同時多発的集団自殺テロリズムだったというオチのオチは終末的で、セレブにはびこるカルトの影なども暗示させて締めは良かったのですが、いかんせんクライマックスが弱いのです。

これだけ散々引っ張ったのであれば、やはりそれに見合った想像の斜め上を行く阿呆みたいに素っ頓狂なわけのわからない地獄を現出させてくれないと、「な~んだ」というそしりは回避できません。ゆえに安易なカルトの使い方との批判も出てくることでしょう。

ぼんやりとした恐怖

人の心の弱さ、隙間、喪失につけ込むのがカルトであり、その失われた大きな何かと人はどう対峙すべきなのかをテーマとした作品であるならば、苦痛の末に他者をも巻き込んだ安楽死に救いを求めたイーデンに対する、ウィルが救済される道も明示すべきではなかったかと。

一生その喪失と向き合い、苦難のどんぶらこっこを続けるしかないとするのであれば、あまりに人生とは無常です。今回の経験を通してウィルに救いの道が開けるという活路を無理からでも提示するのが、喪失をテーマとした映画における最低限のマナーではないでしょうか?

というわけで、見せないあいだは気持ち悪い不気味さが心地よい佳作だったのですけど、見せてしまうとなんてことはない凡作でありました。はっきりと目に見えるものが恐怖を生み出すわけではなく、ぼんやりとしか見えないからこそ恐ろしいものもあるというわけです。

そういう意味では本作で最も恐ろしかったのは、フラッシュバックでぼんやりとしか見せない息子の死の真相ではないでしょうか?ホームパーティ、息子の友達、そしてバット。バットってあーた!バットの存在意義とは人の頭部をフルスイングでふんさ……(以下自主規制)。

個人的評価:5/10点

不穏な空気映画の感想はこちら

ホラー&衝撃の結末好きにおすすめ

スポンサーリンク
この記事をお届けした
映画を観たからイラスト描いたの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!
関連記事
関連コンテンツ

コメント

  1. polenta より:

    こんにちは^^ ネットフリックスの「不吉な招待状」という題名になっている方を観てみました。
    スパイクロッドさんのおっしゃるとおりクライマックスの部分が少しよわくて、主人公がそれほど苦労せずに難を逃れるのがものたりなかったかな…と感じました。主人公を襲う人たちも計画の詰めの甘い普通の人たちで、普通の人が狂信的になるこわさについての話かも、という気もしました。
    お金持ちの人たちがパーティをしてなぜか外へ出られなくなる…というのがちょっとルイス・ブニュエルの「皆殺しの天使」みたいだな、と思いました。

    • スパイクロッド より:

      polentaさん、コメントありがとうございます!

      おっしゃるとおり、あれだけ引っ張ったわりにはクライマックスがどうにも盛り上がらないのですよね。ひねりのないオチもそうですが、もうちょっとバトルのほうにも力を入れてほしかったと思います。気づいたら一瞬でほとんどの人間が死んでましたからね(笑)。

      『皆殺しの天使』は未見なのですが、確かメキシコ時代のブニュエルの作品でしたよね?プロットが面白そうで昔から頭の片隅には残っておるのですが、いまだに手つかずです。そろそろ手を出してみましょうかね?

トップへ戻る