『オーメン』(1976)感想とイラスト メインディッシュは殺しの美学

映画『オーメン』(1976)のイラスト
6月6日の午前6時に誕生した悪魔の子ダミアン。目を楽しませる多彩な殺しの美学と、耳を騒がす不吉な音楽によって底上げされた物語は、まあ、忘れてしまいましょう。

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作品情報

『オーメン』
The Omen

  • 1976年/アメリカ/111分
  • 監督:リチャード・ドナー
  • 脚本:デヴィッド・セルツァー
  • 撮影:ギルバート・テイラー
  • 音楽:ジェリー・ゴールドスミス
  • 出演:グレゴリー・ペック/リー・レミック/ハーヴェイ・スティーヴンス/デヴィッド・ワーナー/ビリー・ホワイトロー/パトリック・トラウトン

参考 オーメン – Wikipedia

予告編動画

解説

6月6日の午前6時に誕生した悪魔の申し子ダミアン。亡くした子供の代わりに彼を引き取った米国外交官夫婦の恐怖と葛藤を描いたオカルトホラーです。

監督は『グーニーズ』のリチャード・ドナーで、都合4作も作られたシリーズの記念すべき第1作。ちなみにタイトルの「Omen」とは「前兆」のことで、象徴的な数字「666」は新約聖書ヨハネの黙示録においては「獣の数字」とされているとかいないとか。

主演は『ブラジルから来た少年』のグレゴリー・ペック。共演には『テレフォン』のリー・レミック、『戦争のはらわた』のデヴィッド・ワーナー、『フレンジー』のビリー・ホワイトローなど。音楽を担当したジェリー・ゴールドスミスが生涯唯一のオスカーを獲得。

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感想と評価/ネタバレ有

久々に観た『グーニーズ』からの流れで、なんとな~くリチャード・ドナーつながりでこれまた久々に鑑賞した『オーメン』。実はあんまり好きな映画ではないのですけど、あらためて観てみたら何か違う印象をもつかも?と思っていたらな~んにも変わりゃしませんでした。

多種多様な悪趣味死亡シーンをサービスするのが目的なだけのこけおどし映画で、正直な~んにも怖くありゃしません。そこを拝むために退屈なストーリー部分を我慢する精神鍛錬、忍耐を養う修業の場であり、ド派手な死にざまは一服の清涼剤的役割とも言えるでしょう。

ハイブリッドダミアン

6月6日午前6時。ローマの産院でようやく授かった子供を死産によって失った外交官のロバート・ソーン。その事実を妻に伝えることができなかったソーンは、神父のすすめにより同時刻に誕生した男児を養子として引き取り、自分たちの子供として育てることに。

ダミアンと名づけられた男児はすくすくと成長し、ソーンも駐英大使に任命されて順風満帆な人生を送っているように見えた。しかし乳母の突然の自殺を契機とし、ダミアンの周りで奇怪な現象が立て続けに発生。やがてその恐るべき出生の秘密が明らかになるのだった……。

てなわけでさっそくのネタバレ。なんとダミアンは悪魔と山犬のあいだに誕生したハイブリッド男児なのでありました!ああ~なんという恐るべき出生の秘密!悪魔による獣姦!守備範囲広すぎ!物好き!変態!恐ろしや~恐ろしや~とはまあならんわけですな、はい。

キリスト教徒にとっては「Oh No!アンチクライスト!」となるのかもしれませんが、ボクのような無神論者にとってはあえて山犬を孕ます道理がわからず、その子宝が人の姿をしている理屈も通らず、詰まるところダミアンという存在になんらの恐怖もいだかないというわけ。

めった刺しへの道程

だいたいこの映画におけるダミアンはなんにもしとらんのですよね。周りが勝手に騒いでるだけ。だったらダミアンの正体をもっとグレイにしなければならないのに、ダミアン=悪魔の子が既定路線になってしまっており、もっと混沌としているほうが恐怖は増したはず。

結局のところ『ローズマリーの赤ちゃん』と『エクソシスト』のつまみ喰いなのですが、先の2作が実子に対する疑念が恐怖と不安と葛藤を生み出していたのに対して、この『オーメン』は赤の他人というところがどうにも弱い。実の子供を殺すかどうかにしないと。

ですからグレゴリー・ペック演じるお父ちゃんの疑念、不安、恐怖、葛藤、殺意がどうにも盛り上がってこない。実の我が子を、もしくはどちらかとは血がつながっている悪魔の子を、大義のために全身めった刺しにするか否か?という究極の選択が盛り上がってこないのです。

見え透いた脅し

盛り上がりに欠けるストーリーを補っている、というか正味こっちがメインじゃろ?これがやりたかったんじゃろ?と言える悪趣味な殺しの美学こそが本作のメインディッシュであり、悪魔や信仰や親父の葛藤なんかは副菜の漬物にすぎません。それが好きな人もいるでしょうが。

乳母の「ダミアン見てて~」からの首縄ジャンプから始まり、転び神父の人体一本刺し、そして本作の白眉とも言える、スローでリプレイされまくるカメラマンの首チョンパなんぞはたいへんおいしゅうございました。欲を言えば妻の死にざまにもうちょい辛みが欲しかった。

オスカーを獲得したジェリー・ゴールドスミスによる厳かに不気味なメインテーマ曲もさすがですが、その実たいしたことない物語を底上げ、隠蔽、誤魔化しているのは明白で、いささかバランスが悪いのは考えもの。映画が怖いんじゃなくてあんたの音楽が怖いんだよ。

てなわけで、やはり世評ほど好きではない『オーメン』の個人的感想でありました。ところで「ダミアン、ダミアン」言うておりますけど、英語の発音では「デイミアン」のほうが近いのでは?ダミアンのほうが悪魔っぽいと考えたとしたら、これこそまさにこけおどしですな。

個人的評価:5/10点

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映画を観たからイラスト描いた

コメント

  1. (눈_눈) より:

    僕も幼少時代にSagaで、神など不要とチェーンソーでぶった切った人間なんでキリスト教的なあれこれはサッパリ。神様いなかろうが最低限真面目に生きられるし。
    しかも成人してからこれ見たのでむしろ笑いました。時代が変わり映画の表現力が上がった現在、古典ホラーはどこかコミカルに映って不利なのは可哀相ですが。
    差し引いても何だかなあ、です。
    おっしゃる通り肉親ならもっと変わったと思いました。葛藤が雲泥の差ですよ。キリスト教的に肉親だとアウトだったのかな?

    何より2000年頃に世界を揺るがした、5000人近い神父連中が強姦事件起こしてるのを暴露された事件をその時すでに知ってたので、神父さんまでが悪者に見えちゃって……映画に責任はないのに。

  2. (눈_눈) より:

    続き
    しかも神様なんて処女孕ませてるし倫理的には悪魔と同罪なのでは?とかそんな神の力頼るのどうなの?みたいなことが不敬な非キリスト教徒の僕は腑におちず、楽しめませんでした。
    どうも露骨に宗教からんだ映画とは相性がよくないです。

    • スパイクロッド より:

      (눈_눈)さん、コメントありがとうございます!

      キリスト教をクリスマスや結婚式でつまんでいるだけの我々日本人にはどうにもこういう恐怖はピンとこないのですよね。『エクソシスト』なんかはかなりドライに神や悪魔の存在を検証しているようなところがあり、そのうえでオカルトへと雪崩れ込むからこその恐怖があったわけですけど、この『オーメン』はまず神と悪魔ありきですから。その前提がないとちっとも怖くないのですよね。つまるところ映画とは国境、人種、宗教を越えないということですかね?万国、万人に通じる表現なんていうものは幻想にすぎないのかもしれません。