『ダークレイン』感想とイラスト これがホントの斜め上

映画『ダークレイン』のイラスト

不気味な雨に行く手を阻まれ、辺境のバスステーションに閉じ込められた8人の男女。彼らを次々に襲う驚愕の、あまりに驚愕のメタモルフォーゼ。むさ苦しく画一化された無個性世界の誕生だ!

スポンサーリンク

作品データ

『ダークレイン』
Los Parecidos/The Similars

  • 2015年/メキシコ/90分
  • 監督・脚本:イサーク・エスバン
  • 撮影:イシ・サルファティ
  • 音楽:エディ・ラン
  • 出演:グスタフォ・サンチェス・パッラ/カサンドラ・シアンゲロッティ/ウンベルト・ブスト/フェルナンド・ベセリル/カルメン・ベアト

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

不気味な雨とともにやって来た「何か」によって、人里離れたバスステーションに閉じ込められた8人の男女を襲う驚愕の事態を描いた、メキシコ発の感染パニック・スリラーです。監督は『パラドクス』のイサーク・エスバンで、「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。

予想の斜め上映画

例のごとくDVD鑑賞となった「未体験ゾーンの映画たち」上映作品の『ダークレイン』。予想の斜め上を行く映画というのはこういうのを言うのでしょう。まったく予想だにしなかった驚愕の展開は爆笑に次ぐ爆笑で、「ネタバレ踏む前にとりあえず観なされ!」って話です。

これで今回の感想が終わったとしても別に不都合はないのですが、せっかく観たのだし、ホント抜群に面白かったので、もう少し書かせてください。未見の方にはぜひとも観てほしい怪作ですので、極力ネタバレなしで書いていきますので読み終わったら絶対観てね♥

新たなる感染パニック

往年の怪奇映画を彷彿とさせる音楽、タイトルデザインで幕を開ける本作。このレトロ感がオールドファンにはすでにたまりません。舞台は1968年のメキシコ。記録的な豪雨によって外界から隔離されたバスステーションに閉じ込められ、身動きできない8人の男女。

意図的に加工された色調はほとんどモノクロで、時代性とともに一種の異空間を演出する狙いがあったのでしょう。外の状況を伝えるのは電波の悪いラジオのみで、雑音交じりの放送のなか「これは普通の雨ではない…」などという不吉な情報がときおり流れてきます。

この辺境のバスステーションに閉じ込められた8人は、切符売りのマルティン、妻の出産が差し迫っているウリセス、夫から逃げてきた妊婦のイレーヌ、医学生のアルバロ、シャーマンらしき老婆、ここに住み込みで働くローザ、精神病をわずらう少年イグナシオと母ロベルタ。

何か見えない大きな力によってバスステーションに足止めを喰らっている8人。やがてマルティンが、そしてローザが謎の感染病らしき突然変異に見舞われ、そのあまりの異常性、現実感の喪失に恐慌をきたした8人は、とめどない疑心暗鬼にかられていき……。

とまあ低予算らしいよくある密室系感染パニック、疑心暗鬼スリラーなのですが、この映画がひたすら偉いところは、いったい何に感染し、どう変わってしまうのかという部分で明確な他作品との差別化を模索し、それを狂気のウルトラCによって見事に成し遂げた点にあります。

むさくるパンデミック

ある対象に対する全体の画一化。ゾンビなんかも無個性化、画一化、思想の統一のメタファーでもあるのですが、この『ダークレイン』はそれをさらに明確なかたちで推し進め、より視覚的、直接的にアイデンティティの喪失をひたすらむさ苦しく現出してみせたのです。

ただその個体だけを見ればただのむさ苦しい奴なのですが、感染が拡大してさらなる画一化が進むとありえないほどのむさ苦しさが皆の顔面を覆い、その規格外のむさ苦しさに思わず爆笑してしまうものの、笑い疲れたあとにはじんわりとした恐怖が襲ってくるあまりの不条理。

なるだけネタバレを避けながら観た人にだけはわかるように書いてみましたが、この狂気のむさくる感染アイデアを思いついた時点でこの作品はすでに勝利しているのです。ひたすら滑稽でありながら、その裏側でうごめく個の喪失には現実的恐怖を覚える狂気の笑い死に。

もうこのワンシチュエーション、ワンアイデアのみで大勝利を収めておりますので、その後の展開や大オチはお釣りみたいなもんです。こんなバカバカしくも恐ろしいむさくるパンデミックが拝めただけで、ボクはたいへん満足です。なんの不満もありゃしません。

イサーク・エスバン、グッジョブ!

抑えたモノクロのような色調、限定的な空間を巧みに活かした構図とカメラワーク、並んだ椅子と床のタイル、過剰に不安をあおる怪奇スコア、不条理へと放り込まれた人間たちの困惑混乱取っ組み合い、グラビアビフォーアフター、無垢で邪悪な魂、ウ~リセ~ス♪

特に括目していただきたいのはシャーマン婆さん。本当はスペイン語を話せるくせに韜晦して意味不明な言葉をわめき続け、不必要に観客を不安で不快に困惑させていたこのシャーマン婆さんが、中盤以降どのような姿で我々の目を楽しませてくれていたか。婆さんグッジョブ!

っていうかイサーク・エスバン監督、あんたグッジョブ!現代のジャンル映画はあんたのような頭のおかしい(褒め言葉です)アイデアマンにかかっておるのですぞ。未見だった過去作の『パラドクス』も観る予定だから、これからも予想の斜め上で張り切ってちょうだいな。

てなわけでネタバレ厳禁を課しながらなんとかしたためてきた今回の感想、これにて終了。ちょいちょい筆が滑っている部分はまあご愛敬ということで、これを読んで少しでもこの映画に興味をもち、観てみようと思ってくれる方がいることを切に願っております。

G指定ですのでグロ耐性のない方でも大丈夫だと思いますよ。各映画サイトのあらすじやポスターのイメージも無視してください。あんな映画ではありません。爆笑に次ぐ爆笑の果てに言い知れぬ恐怖を植えつけてくる、予想の斜め上行き映画なのですからこれは!

個人的評価:8/10点

予想の斜め上映画の感想はこちら

ホラー&衝撃の結末好きにおすすめ

トップへ戻る