『新感染 ファイナル・エクスプレス』感想とイラスト 号泣必至のゾンビエンタメ快作

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』マ・ドンソクのイラスト(似顔絵)

一年越しに待ち望んだ、『釜山行き』あらため『新感染 ファイナル・エクスプレス』。邦題の是非はとりあえず置いといて、誰にでもおすすめできるゾンビ映画がまさかこんなかたちで現れるとは夢にも思わなかった!とりあえず観てくれ!ドンソク兄貴~~~!!!

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作品データ

『新感染 ファイナル・エクスプレス』
부산행/Train to Busan

  • 2016年/韓国/118分
  • 監督:ヨン・サンホ
  • 脚本:パク・ジュスク
  • 撮影:イ・ヒョンドク
  • 音楽:チャン・ヨンギュ
  • 出演:コン・ユ/キム・スアン/マ・ドンソク/チョン・ユミ/チェ・ウシク/アン・ソヒ/キム・ウィソン

予告編動画

感想と評価/ネタバレ多少

突如として韓国を襲ったゾンビパンデミック。時速300キロで走る高速列車のなかで繰り広げられる人間たちの決死の生き残り作戦を描いたゾンビ映画です。監督はアニメーションの世界で活躍していたヨン・サンホで、これが長編実写デビュー作となる模様。

とりあえず結論から

いわゆる韓流ブームとは縁遠いところで、我々映画ファンの懐に寒風吹きすさぶべく攻勢を仕掛けてきた今年の韓国映画。その一大勢力のなかでも真打ちと言えるのが今回ご紹介させていただくこの『新感染 ファイナル・エクスプレス』なのであります。

ほとんどの国では昨年中に公開され、熱狂と絶賛をもって迎えられた本作ですが、なぜか日本では1年遅れの公開。しかも原題『釜山行き』を『新感染 ファイナル・エクスプレス』という親父ギャグへと堕してしまう最悪の改題が我々の顰蹙を買っていたのは記憶に新しいところ。

『釜山行き』という原題の重要性を理解していないその脳髄を切り開いて吟味してみたいところではありますが、無事こうしてスクリーンで観られた喜びに免じて『ハンニバル』の刑は堪忍してあげましょう。問答無用の快作号泣エンタメ作でしたからね、これ!

ゾンビパンデミックという使い古されたジャンル映画のなかで、ベタでド直球なヒューマンドラマをぶちかましながら、その根底には社会派なテーマをも内包してノンストップで疾走し続ける渾身のエンタメ快作。ゾンビ映画で涙腺崩壊するなんていったい誰が想像した!

メガ盛りエンタメ映画

バイオ系企業の不始末によって不穏な空気が流れる韓国。仕事人間のファンドマネージャーであるソグは、それが原因で妻とは別居中。しかし、誕生日に母親と会いたいという娘の想いに押し切られるかたちで、ソウル発釜山行きのKTX(韓国高速鉄道)に乗り込むことに。

さまざまな人を乗せて釜山へと出発した列車だったが、乗客のなかに様子のおかしいひとりの少女が紛れ込んでいた。彼女は苦痛の末に突然狂暴化して人を襲い始め、襲われた人間も同様に狂暴化していくという地獄のパンデミックが疾走する列車内で蔓延するのだった……。

どちらかと言えば局所から全体へとパニックが蔓延していく黙示録を描くのが主流のゾンビ映画において、時速300キロで疾走する列車内に舞台を限定したのは逆転の大勝利で、使い古されたゾンビパニックも組み合わせ次第でまだまだ可能性が広がる好例だと言えるでしょう。

シカから始まり、日常を侵食し出す不穏な影を巧みに操り、一気呵成に日常をカオスへと叩き込み、逃げ場のない爆走密室空間で極限のサバイバルを描き出す。そして転がり出してからはけっして止まることのないノンストップ劇場で、観客を飽きさせない工夫がてんこ盛り。

単なるゾンビパンデミックというジャンル映画では終わらない、さまざまな要素を盛りにメガ盛りったサービス精神というかエンタメ精神は、やはり何事も過剰なまでに突き進むお国柄かもしれませんが、こういう姿勢は積極的に真似していくべきだと思いますね、ボクは。

ゾンビ映画の最低限

まあその結果、ゾンビというジャンルに特化した映画としては若干の弱さ、甘さも露呈し、行き着く先としての黙示録感不在や、意外とソフトなグロゴア描写、状況によるゾンビの著しい能力低下など、目の肥えたゾンビフリークからは鼻で笑われる個所が散見していたのも事実。

しかし、ゾンビ映画の主役とはゾンビにあってゾンビにあらず、そういう極限的状況下に突然放り込まれた人間たちの清濁呑み込んだ右往左往にこそあるわけで、とりわけそちらへと大きく舵を切った本作においては、これぐらいでちょうどよかったのではないかと思います。

レイティングのギリギリを見極めながら、できうる最大限の効果を導き出す。その結果が『ワールド・ウォーZ』をより身近な脅威へと引き戻した軍隊(群体)ゾンビであり、速くも遅くもない塩梅であり、ガラスへのへばりつきであり、絶妙なカクカクなのだと思います。

分断の果ての希望

ゾンビ映画におけるゾンビとは結局のところ状況にしか過ぎない。それではゾンビ映画における真の主役はなんなのかと申しましたら、そういう状況下であらわになる人間性と、その状況をメタファーとしてあぶり出される社会性にあるかと思われます。

自らの命が危機にさらされた状況下で噴出するむき出しの人間性。清濁ぐちゃぐちゃなまま残酷な運命へと呑み込まれていく誠実さもまたこの映画の魅力のひとつですが、そんな非情な運命を通して描かれているのは、行きすぎた利己主義の蔓延に対する警鐘であります。

この根底にあるのは現在の韓国経済の行き詰まりや、日本でもたびたび報道される苛烈な受験戦争による競争、格差社会の広がり、その結果としての分断であり、この映画において何度もあちらとこちらが分断される描写が存在するのはけっして偶然ではないはずです。

加えて近年になって急速に緊張化しつつある北朝鮮情勢。同じ顔をした意思疎通不可能な怪物という驚異が、同胞でありながら敵対関係にもある北朝鮮を示しているのは明白でありましょう。そうなるとここでも分断という構図が切実に効いてくるわけですね。

韓国国内における分断、そして朝鮮半島全体における分断をも内包しながら、身近な存在が突然に敵へと変貌する恐怖のなかで、それでも人は愛する人のために、他人のために何をしてあげられるのか?その覚悟と希望を描き出したまさかの感動ゾンビ映画だったというわけです。

ドンソク兄貴!

この映画の主人公ソグは、常に他人よりも自分を優先する利己主義の権化のような人物で、それはイコール現代韓国社会における勝ち組の象徴でもあります。そんなゲス野郎が突然放り込まれた地獄のなかで自己を省み、人として覚醒していく過程を丁寧に追っていく胸熱展開。

彼がどんな人物で、何を考え、何を見、どこで変化し、最後に何を決断するのか、どうぞ皆さんその目にとくと焼きつけていただきたい。人間としてどうしようもないダメ親父の覚醒ネタに弱い方は絶対に号泣嗚咽失禁案件ですので、必ずハンカチとオムツをお忘れなく。

そして彼の覚醒をより際立たせているのが、登場人物における格差、分断の象徴としてソグと対比の構図に置かれているマ・ドンソク演じるサンファであり、彼のたくましい二の腕とコワモテの裏に隠したやさしさとかわいしらしさには、オッサンマニアはたまらず脱糞でしょう。

ソグとサンファ、そして野球部の兄ちゃんが決死の決意のもと、分断された離散家族のもとへとゾンビの群れをなぎ倒しながら馳せ参じる展開のアイデア、演出、熱さは本作屈指の名シーンです。ここにおけるサンファの、ドンソク兄貴の雄姿をその眼球に刻んでくだされ!

まあ後半はやや泣かせのエモ演出がインフレを起こしており、若干のいやらしさは感じるものの、ベタで臭くて過剰な演出もきちんとした段階、適切な処理を施しておけばその効果は絶大だという証明のようなもので、ボクのドライアイはこの映画によって見事に解消されました。

てなわけで、目薬いらずの号泣胸熱エンタメ快作『新感染 ファイナル・エクスプレス』。怖い映画は苦手だと公言しておられる方にこそ観てほしい、よく出来すぎているのが欠点だと言えるぐらいによく出来ている良作ですので、未見の方はどうぞお早くご覧あれ!

個人的評価:7/10点

2017席巻韓国映画の感想はこちら

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