みんな!戦争大好きだよな!……って、あ!痛い!痛い痛い!い、石を、岩を投げるなコラ!反戦主義者が暴力に訴えてどうする!言葉足らずだったのであらためて言い直すぞ。みんな!戦争映画大好きだよな!
戦争映画ベストテン
今年も毎年恒例の「映画ベストテン」の季節がやってまいりました。
「男の魂に火をつけろ!」の管理人ワッシュさん主催による年末恒例企画。今年は「戦争映画ベストテン」であります。それなりに好きなジャンルではあるものの、この手の映画は上映時間が長いうえにヘビー級揃いときて、鑑賞後の疲労感が尋常ではないのが玉に瑕。
それに戦争映画の名作といったらもう相場が決まっている感じで、普通にベストテンを選んでいったらそれこそ面白味のないベタなものになると思い、いったんは少々マニアックなランキングを選出してみたものの、「なんか違う」と逡巡しているあいだに気づいたらもう12月。
「ヤバい!このままでは12月10日の締め切りに間に合わない!」ということで、難しいことは考えずに、これまでの人生で脳裏に焼きついた衝撃的戦争映画の数々を素直にランキングしてみました。それではスパイクロッドが選ぶ「戦争映画ベストテン」の発表です!
1位 戦争のはらわた
Cross of Iron- 1977年/イギリス、西ドイツ/133分
- 監督:サム・ペキンパー
- 出演:ジェームズ・コバーン/マクシミリアン・シェル
ペキンパー・バイオレンス!
第二次世界大戦の東部戦線を背景に、ロシア軍と対峙するドイツ軍中隊のドロドロの人間模様、名誉欲、そして戦争の真実を、あらゆる汚物が飛び散り吹き飛ぶ超絶バイオレンス・スローモーションによって描き出した傑作中の傑作戦争映画です。この映画を撮るために闘い、この映画を撮ることによって力尽きたと言っても過言ではない、ペキンパー渾身の一作!
2位 U・ボート
Das Boot/The Boat- 1981年/西ドイツ/135分(劇場公開版)209分(ディレクターズ・カット版)
- 監督:ウォルフガング・ペーターゼン
- 出演:ユルゲン・プロホノフ/ヘルベルト・グレーネマイヤー
900万人のドイツ人が哭いた
第二次世界大戦下、連合国護送船団を殲滅すべく基地を出港したドイツ軍が誇るU・ボート“U-96”の過酷な戦いを描いた、傑作揃いの潜水艦もののなかでも屈指の傑作です。狭い潜水艦内部での生活、幾多のトラブル、戦いを縦横無尽なカメラワークで描き出した尋常ではない臨場感!非情な戦争の現実を描いたラストの絶望感にはドイツ人ではなくても号泣だ!
3位 未知への飛行
Fail Safe- 1964年/アメリカ/112分
- 監督:シドニー・ルメット
- 出演:ヘンリー・フォンダ/ダン・オハーリヒー
ニューヨーク消滅のカウント・ダウン
米ソ冷戦下、米国のコンピュータが誤作動によってソ連への核攻撃を開始。最悪の事態を回避すべく奔走する米国大統領が迫られる究極の選択を描いた、冷戦下で起こりうる最悪の未来を予測したポリティカル・サスペンスの傑作です。くしくも『博士の異常な愛情』と同年公開された本作。しかし、ラストのどうしようもない決断の衝撃はこちらのほうが数段上だ!
4位 僕の村は戦場だった
Иваново детство/Ivan’s Childhood
- 1962年/ソ連/94分
- 監督:アンドレイ・タルコフスキー
- 出演:コーリャ・ブルリャーエフ/V・ズブコフ
戦火に消えた汚れない瞳
第二次大戦中のソ連を舞台に、ドイツ軍によって両親と妹を殺された12歳の少年の復讐心と甘美な記憶を描いた、アンドレイ・タルコフスキーのデビュー作となる戦争ドラマです。過酷な現実と甘美な夢。タルコフスキーらしい記憶をテーマとした戦争映画は、衝撃的な美しさとやりきれなさに胸が締めつけられる傑作です。何より話が理解できるのが良い!
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5位 特攻大作戦
The Dirty Dozen- 1967年/アメリカ/150分
- 監督:ロバート・アルドリッチ
- 出演:リー・マーヴィン/チャールズ・ブロンソン
空前の迫力で描く戦争巨編
ノルマンディ上陸作戦直前を舞台に、ナチス士官皆殺しを命令された軍のはみ出し者たちの決死の戦いを描いた、反骨のB級巨人ロバート・アルドリッチ渾身の戦争アクション巨編です。元囚人たちの訓練をコメディタッチで描いた前半と、非情な戦争の現実を描き出した後半とのアンビバレンツ。大好きな奴らがナチス以下の外道へと堕ちる瞬間。これが戦争だ!
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6位 博士の異常な愛情
Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb- 1964年/イギリス、アメリカ/95分
- 監督:スタンリー・キューブリック
- 出演:ピーター・セラーズ/ジョージ・C・スコット
または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
米ソ冷戦を背景に、精神に異常をきたした司令官によって発令されたソ連への核攻撃を阻止しようと奔走するドタバタを描いた、あまりに、あまりにブラックな戦争コメディ映画です。当ランキングでは同年公開の『未知への飛行』の後塵を拝した本作ですが、この映画はひたすら面白い!そしてその面白さの裏側にある危険な毒がひたすら恐ろしい!
7位 アメリカン・スナイパー
American Sniper
- 2014年/アメリカ/132分
- 監督:クリント・イーストウッド
- 出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー
心は戦場においたまま
2003年から始まったイラク戦争を舞台に、160人を超えるイラク兵を射殺した伝説的スナイパー、クリス・カイルの半生を描いた戦争映画史上最大のヒット作です。『この世界の片隅に』と同じく反戦かそうでないかで激しい論戦が展開された本作。バカげた話だ。戦争の現実を描けばそれはおのずと反戦になる。この映画が描いているのは紛れもない戦争の現実です!
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8位 野火(2014)
- 2014年/日本/87分
- 監督:塚本晋也
- 出演:塚本晋也/リリー・フランキー
なぜ大地を血で汚すのか
太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、戦争も日本も仲間も消え失せたなか、極限状態で生きるために罪を犯す人間たちの地獄を描き出した、塚本晋也の執念がついに結実したトラウマ戦争映画です。死ぬも地獄、生きるも地獄を描き出したこれまた紛れもない戦争の現実。逆『プライベート・ライアン』は本家を超える戦慄の地獄絵図ですぞ!
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9位 M★A★S★H マッシュ
M*A*S*H
- 1970年/アメリカ/116分
- 監督:ロバート・アルトマン
- 出演:ドナルド・サザーランド/エリオット・グールド
スゴイ やったぞ!
朝鮮戦争下の野戦病院を舞台に、軍規を無視して戦場を遊び場へと変えてしまう3人の軍医のやりたい放題を描き出した、反骨の映画作家ロバート・アルトマンの名を一躍世界へととどろかせた傑作戦争ブラック・コメディです。かつてここまで戦争をコケにした映画があっただろうか?バカじゃなければこんな狂ったゲームはやってられねえ!これもまた戦争の現実よ。
10位 地獄の黙示録
Apocalypse Now
- 1979年/アメリカ/153分(劇場公開版)202分(特別完全版)
- 監督:フランシス・フォード・コッポラ
- 出演:マーティン・シーン/マーロン・ブランド
魂を揺さぶる2時間30分の旅
ベトナム戦争を背景に、ジャングルの奥地に自らの王国を築いたとされる元グリーンベレー隊長カーツ大佐の暗殺指令を受け、ひたすら川をさかのぼるウィラード大尉の道行きを追った狂気と混乱の一大戦争スペクタクルです。いまさら説明の必要はない、というかいまだに説明できない狂った戦争映画の集大成。朝のナパーム弾の匂いはとにかく格別なんだよ!
終わりに
結局はベタへと落ち着いた、スパイクロッドが選ぶ「脳裏に焼きついた衝撃的おすすめ戦争映画ベストテン」いかがでしたでしょうか?有名どころばかりですので、ほとんどの映画がほかの方のランキングとカブっちゃったかな?まあ奇をてらっても仕方がないですからね。
現在の邦画界を席巻している『この世界の片隅に』。ボクの予想ではこの映画が総合ランキングで1位を取るのは間違いないでしょう。うちの選から漏れた作品では、『プライベート・ライアン』『フルメタル・ジャケット』『ブラックホーク・ダウン』なんかが上位候補かな?
未見の作品としては、『炎628』をいまだに観ていないことが悔やまれます。伝え聞く噂によれば、ボクの趣味を考えるとベストテン入りは確実でしたでしょうに。まあこれは来年のお楽しみとして、大事に取っておきましょう。レンタルにないから買うしかねえか!
おまけ/裏・戦争映画ベストテン
いったんはランキングを作成しながらも、「やっぱりもっと自分に素直になろう!」と思いとどまってボツにしてしまった裏・戦争映画ベストテン。それがこちらです。
- アンダーグラウンド(1995年/エミール・クストリッツァ)
- パーフェクトサークル(1997年/アデミル・ケノヴィッチ)
- コンフィデンス 信頼(1980年/イシュトヴァーン・サボー)
- ソハの地下水道(2011年/アグニェシュカ・ホラント)
- 戦場の小さな天使たち(1987年/ジョン・ブアマン)
- 太平洋の地獄(1968年/ジョン・ブアマン)
- 影の軍隊(1969年/ジャン=ピエール・メルヴィル)
- 悪童日記(2013年/ヤーノシュ・サース)
- さよなら子供たち(1987年/ルイ・マル)
- エーゲ海の天使(1991年/ガブリエレ・サルヴァトレス)
ラインナップを見ていただいたらわかるとおり、このランキングの裏テーマは「戦争映画だけど戦闘が主役ではない映画」となっております。あらためてこの裏ベストテンを眺めてみたら、別にこれでも問題なかったような気もいたします。すべて傑作揃いですしね。
あまり知られてはいないけどぜひおすすめしたい作品としては、2位の『パーフェクトサークル』、5位の『戦場の小さな天使たち』、そして10位の『エーゲ海の天使』。特に『戦場の小さな天使たち』は、『この世界の片隅に』にも通じる戦時下ほのぼのドラマなのですよ。
戦争という非日常は、無邪気な子供にとっては最高のエンターテインメントでもあるというまた違った戦争の現実を描き出した、ジョン・ブアマン入魂の私的戦争映画です。機会があったらぜひ鑑賞してみてください!
戦争映画ベストテン結果
リンク 戦争映画ベストテン:結果発表 – 男の魂に火をつけろ!
1位はボクの予想どおり、今年公開の『この世界の片隅に』がかっさらたようです。ボクが選出したベストテン作品のなかでは、1位の『戦争のはらわた』が5位、10位の『地獄の黙示録』が6位にランキングインしておりました。
ベストテンの顔ぶれはまあほぼ予想どおりといったところなのですけど、意外や意外、大健闘していたのは8位に入った『炎628』。まさかこの映画の知名度と評価がここまで高いとは思っておりませんでした。
ボクもこの結果を受けてますます観たくなりましたので、思いきってBlu-rayを買っちゃいましたよ!近いうちに感想を書くつもりですので気になる方はお楽しみに~。
コメント
こんばんは!
傑作ばかりですね!
「戦場の小さな天使たち」はとても良かったです。子供にとってはどこも遊び場。市井の人々にとっては、まずは生活というリアリティーがあります。「サンキュー、アドルフ!」
しかし、無邪気な子供と対比される戦争を考えざるを得ないのもまたこの作品の見方だと思います。「アウシュヴィッツでも子供は笑顔だった」…。
ハリーさん、コメントありがとうございます!
おっしゃるとおりですね。『この世界の片隅に』と同じく、戦時下でも楽しく、微笑ましく、たくましく生きる市井の人々の日常が光り輝いているからこそ、その裏側でうごめく戦争という闇が強調される。戦争をエンタメとしてある意味では満喫していたブアマン少年ですが、それは同時になぜこんな狂った状況を娯楽としてやり過ごさなければらならないのか?というしごくまっとうな疑問も突きつけてくる。この映画を初めて観たときは、「こういう反戦映画のかたちもあったのか!」と驚愕したものです。なんせラストはぶっ壊された学校を見て大はしゃぎですからね(笑)もの凄いアイロニーです。
戦争映画苦手なので半分しか観てませんでした。あ、ちょっとお聞きしたいんですがホロコースト映画と戦争映画は別物になりますか?サウルの息子とか凄え良かったので。
あのまりーさん、コメントありがとうございます!
記事本文にも書きましたが、戦争映画は上映時間が長いうえにヘビー級ばかりですからね。苦手な方もそらおられます。かくいうボクもそれほど好んで観るジャンルではありません。3時間超えなんてあたりまえの世界ですからね。ホントに疲れきっちゃうんですよ(笑)。
ホロコースト映画を戦争映画というジャンルに加えるかどうかですが、これはもういろいろな考え方があって「こうだ!」と結論づけるのは難しいですね。あのまりーさんも「戦争映画ベストテン」に参加する予定ですか?でしたら、ベストテン参加の「対象作品の基準」に書かれているとおり、「迷ったら入れる!」で問題ないと思われます。ホロコーストも戦争が生み出した国家的犯罪なわけですし。あ、そうそう。『サウルの息子』は確かにいい映画でしたね。地獄を体感する映画としてなんとも強烈な体験でした。
返信有難うございます!いえ僕は参加出来るほどこのジャンルは観てないのでもう少しスキルを上げてからにしますwジャンルの明確な分け方って難しいですよね。レオンはアクションに分類されてますけど個人的には恋愛映画だし、ホロコーストはヒューマンか戦争か微妙ですもんね。参考になりました。有難うございます!
あのまりーさん、再度のコメントありがとうございます!
そうですか。残念ですね。あのまりーさんの「戦争映画ベストテン」も見てみたかったのですけど。いつの日か「アノ映画日和」であのまりーさんの「隠れた戦争映画ランキング」を拝める日を楽しみしておりますよ!
ジャンル分けの難しさは当ブログでも悩みの種でもあったりします。おっしゃるとおり『レオン』なんかはアクションのジャンルに振り分けられてしまうことがしばしばありますが、ボクもあのまりーさんと同じくあれは恋愛映画だという認識です。ボクが尊敬してやまないデヴィッド・クローネンバーグの傑作『ザ・フライ』も、世間一般ではSFホラーというくくりでしょうがボク的には恋愛ものなのです。これはもうその映画を観て自分が最も何を感じたか?これに尽きるのかもしれませんね。他人のことは知らん!自分を信じろ!ってなわけです。