『メッセージ』感想とイラスト それでもあなたを愛したい

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映画『メッセージ』エイミー・アダムスのイラスト(似顔絵)

突如として地球に現れた謎の巨大飛行物体。彼らとの接触はすなわち我々自身を知ることであり、知ったうえで決断を迫られるわけであり、それによって試されているのはつまり、あなたへの愛なのであります。

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作品データ

『メッセージ』
Arrival

  • 2016年/アメリカ/116分
  • 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
  • 原作:テッド・チャン
  • 脚本:エリック・ハイセラー
  • 撮影:ブラッドフォード・ヤング
  • 音楽:ヨハン・ヨハンソン
  • 出演:エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

世界の12か所に突如として飛来した謎の巨大飛行物体。彼らの真意を探ろうと、なんとかコンタクトを図る女性言語学者たちの姿を描いたSFドラマです。監督は『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーヴで、秋には『ブレードランナー 2049』も控えております。

結末へと触れたネタバレがありますので、未見の方はどうぞご注意を。

新たなファーストコンタクト映画

静謐な映像のなかで過酷な現実と真実を描き続けてきた、当代随一の映像作家ドゥニ・ヴィルヌーヴが満を持して挑んだSF大作『メッセージ』。異星文明との初接触(ファーストコンタクト)を描いた作品としてはかなり異色で、そこいらの凡百と一緒にされては困る異才ぶり。

ファーストコンタクト系映画には主に2種類あり、敵対系と融和系に分けられると思うのですが、この映画はもっと本質的な異文明との最初の相互接触、つまりは対話、コミュニケーションの模索がメインとなっており、いわゆる一般的なSFとはかけ離れた地味さがたまりません。

未知の文明、知的生命体の出現に対して、まずは相手を知ることから始めようという知的なファーストコンタクトが、やがては己をより深く知ることになるという着地点もさすがです。壮大なSFから個の物語へと帰結する普遍性は、ヴィルヌーヴらしからぬ優しさと易しさ。

これを良しとするか悪しとするかは微妙なところですが、興業的にはプラスに働くかと思います。個人的には腰骨が折れそうになるぐらいのヘビー級な話を期待していたのですが、それは10月公開の『ブレードランナー 2049』まで待つこととしましょう。

SFとはハッタリなり

最愛の娘を若くして失った言語学者のルイーズ。娘と過ごした時間をあえて時系列を乱しながら、その幸福、不安、痛みを美しい映像の連なりで映し出したこのオープニングはヴィルヌーヴの真骨頂であり、実は巧妙な伏線にもなっているのですが、それはまた後述。

そして世界を駆け巡る衝撃のニュース。世界12か国に突如として現れた地球外飛行物体の電光石火の登場劇。彼らの正体、目的、恐怖にパニック状態となる地球。政府は事態解明のため、著名な言語学者であるルイーズに異星人とのコンタクトの協力要請をするのだったが……。

どこか頼りなげなルイーズに、こんな大仕事を任せてよいものかしら?とも思いますが、これまた巧妙な伏線、ミスリードであり、この時点ではまだルイーズは誕生間近、今回の経験を通して本当のルイーズとして生まれ変わる幼生段階にあったとでも言えるのでしょう。

そんなまだまだ不安定な彼女が目撃することとなる驚愕の光景。広大なモンタナの大地で霧海に囲まれながら、凛とした直立不動で浮かんでいる謎の巨大飛行物体。それをヘリからの視点でゆっくりと旋回しながら見せていくヴィルヌーヴの堂々たる演出はただただ素晴らしい。

「巨大な黒いばかうけ」と日本では表現されたそれの、無駄を削ぎ落したシンプルなデザインはまさにアートそのもの。そんな現代アートと神秘的な自然とのコラボレートはインパクト十分なハッタリであり、やはりSFとは壮大なハッタリなのだと再確認した次第。

それはヨハン・ヨハンソンによるスコア、オスカーを獲得したこだわりの音響編集にしてもしかりで、キューブリックやタルコフスキー、はたまたテレンス・マリックなどを想起させる映像の力とあわせて、我々観客を神秘的な体験へといざなう見事な装置となっておるのです。

まず最初に壮大なハッタリをかまし、観客の不安、興味、興奮を無節操に煽り立て、どこか不安定な主人公ルイーズとともにこの異常な事態、知的興奮を追体験させる。完璧なまでの導入部であり、前半に関しては満点だったと評価しても言いすぎではないでしょう。

「言語」と「時制」?

そしていよいよ言語学者のルイーズ、物理学者のイアン主導のもとにエイリアンとのコンタクトが図られるのですが、頭の悪い自分にはやや難解な部分も多く、きちんと理解できているのかどうかはひたすら怪しい次第。キーとなるのは「言語」と「時制」。

表意文字と表音文字の違いはわかりますが、ヘプタポッド(七本脚)と名づけられた異星人たちが使う言語、原作では表義文字と表現されたそれを解読していく過程にやや置いてきぼりを喰らったのですね。「え~とこれは…」と思案しているうちに片言で対話していたというね。

ここでつまづいたのが大きく響き、そのあとに続く最大のキー「時制」にはもうなんのこっちゃ。時制がない言語、文明とはいったいどういうことなのか?これを感覚としてもまったく理解できていないので、物語の核心部分への得心がいかなかったというね。

このへんをちゃんと解説してくれている批評を読んだりもしたのですが、やはりいい感じにたるんだ自分の頭では処理できず、いまだにモヤモヤしておる次第。バカのくせにきちんと理解してからでないと前に進めない、中はユルユル外はコチコチ頭にも困ったもんですわ。

ボクのユルユルコチコチ頭も他者の言っていることを正確に理解することの難しさを表したひとつの例かもしれませんが、よくわからない相手との対話の過程で不安、恐怖、疑心暗鬼にかられて、まずは先手を打とうと暴走するのもまた世の常、人の常。

この映画のメッセージとは?

そんな理解し合えない人間たちの暴走を喰い止めようと立ち上がるのが、ヘプタポッドとの対話の過程で彼らの言語、文化を理解し、ついに覚醒し始めていたルイーズなのであります。彼女の変化、もしくは進化は、「サピア=ウォーフの仮説」に基づくものです。

これは話す言語によってその人の価値観や考えが決定づけられるという仮説であり、ヘプタポッドの言語を習得し始めていたルイーズは、彼ら同様に時制に縛られない物事のとらえ方、情報へのアプローチができるようになっていたということなのです。

ここで冒頭から意味ありげに挿入されていた、娘との記憶の断片が何を意味していたのかが判明します。映画を観慣れている勘のいい観客はおそらく途中で気づいたと思われますが、この一連の映像群は過去のフラッシュバックではなく、未来のヴィジョンだったということ。

ヘプタポッドとの濃密な対話により、彼らの思考体系に影響、感化された彼女も過去・現在・未来という時制の縛りから解き放たれ、世界を、人類を救う「武器」を与えられていたというわけなのです。新たな言語の獲得により人類にもたらされるかもしれない世界平和への礎。

これがこの映画における片面のメッセージだと思われますが、肝心の時制でつまづいた自分にはあまりピンときていないのが正直なところ。しかしもう片面のメッセージこそが真に重要であり、これが実は普遍的な「あなた」と「わたし」の物語だった事実には感動を覚えます。

あなたの人生の物語

今回の経験で未来を見通す力を得たルイーズは、自分の人生に起こる「結果」を事前に知ることとなります。それはイアンとの結婚、一人娘のハンナの出産、イアンとの離別、そして最愛の娘ハンナの死。結果を知っていたとしてもそれでもあなたはその未来を選択するのか?

答えは「YES」。たとえその先に不幸な結末が待っていようとも、そこで得られる幸福や喜びを、そして愛を手放すなどという選択はありえない。ここで得られる新たな、いや、あたりまえの思考体系こそがこの作品のメッセージであり、普遍的な人生の物語であった証明です。

大事なのは「今」という一瞬一瞬を大切なものとして生きる普遍的な人生の在り方。たとえ未来が予測できたとしても、その結末に不幸な未来が待っていたとしても、いや、だからこそ、「それでもあなたを愛したい」という大きく揺るぎない母の愛。

ヴィルヌーヴの名を世に知らしめた傑作『灼熱の魂』とつながるテーマですが、その真実と想いにこの身が引き裂かれるような動揺と感銘を受けた自分といたしましては、いささか今回のメッセージは普遍的すぎたような気もします。まあ比較論になっちゃうんであれですけど。

そのへんの腰骨砕かれるようなヘビー級の衝撃は『ブレードランナー 2049』に託すとして、不満はあるもののやっぱりヴィルヌーヴは凄かった!という評価で差し支えないかと。同じく今年公開の『静かなる叫び』を観逃したのは痛恨でしたが、いまだハズレなしの10割打者。

『メッセージ』『ブレードランナー 2049』に続く次回作として、なんとあの『デューン 砂の惑星』のリブート版を監督することも正式決定しており、いよいよ念願のSF畑へと重戦車で乗り込んできたヴィルヌーヴの人生の物語からは、一瞬たりとも目が離せませんぞ!

個人的評価:7/10点

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