『ダーク・スター』感想とイラスト マニア必見ゆるゆるカルトSF

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映画『ダーク・スター』のイラスト

「伝説の爆笑カルトSF、ついに発つ!」。伝説、爆笑、カルトSF。なんという的確なキャッチコピーであろうか。そう、ついに発つのである。あの伝説の、爆笑の、カルトSFが!

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作品情報

ダーク・スター

  • 原題:Dark Star
  • 製作:1974年/アメリカ/83分
  • 監督・音楽:ジョン・カーペンター
  • 脚本:ジョン・カーペンター/ダン・オバノン
  • 撮影:ダグラス・ナップ
  • 出演:ブライアン・ナレル/カル・カニホルム/ダン・オバノン/ドレ・パヒッチ

参考 ダーク・スター – Wikipedia

解説

モジャモジャヘアのお兄さんが宇宙サーフィンに興じる伝説のカルトSF映画です。

監督はこれが長編デビュー作となる『遊星からの物体X』のジョン・カーペンター。共同脚本を大学時代からの友人である『バタリアン』のダン・オバノンが務め、ついでにご出演もなさっておられますよ。

カーペンターとダン・オバノンが学生時代に撮影した作品を一般公開用にバージョンアップさせた、偉大なる自主製作映画というわけですな。

あらすじ

時は21世紀の半ば。新天地開拓のため宇宙を高速航行中の探査船“ダーク・スター号”。4人の乗組員の任務は植民地化の邪魔になる不安定惑星の爆破にあった。

しかし、地球を遠く離れ、長い長い任務の果てに彼らの精神は疲弊しきっていた。そんなときに起こった小惑星群の嵐との遭遇。なんとか通過できたものの、船体は見えないダメージを負っており、やがてそれは惑星破壊用の思考爆弾へと影響を及ぼすのだった……。

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感想と評価/ネタバレ多少

伝説の爆笑カルトSF、ついに発つ!」というリバイバル時のキャッチコピーが示しておるとおり、若きジョン・カーペンターとダン・オバノンがタッグを組んだ、ゆるゆるの爆笑カルトSF映画であります。

普通の映画を嗜好している人にはおすすめしかねますが、ボクと同じゆるゆる好きにはちょっとたまらんものがある怪作だと思われますので、未見で気になる方は必ず観るべし!

ゆるゆるの登場人物

先に書きましたとおりとにかくゆるゆるな映画なのですけど、実はテーマ自体が弛緩なのではなかろうか?と邪推してしまうぐらいにゆるゆるのだるだるに伸びきっております。

植民地化の邪魔になる不安定惑星の爆破というなんだかよくわからない任務のため、退屈きわまりない宇宙生活をそれこそ気が遠くなるほど続けた結果、乗組員たちはボケボケのゆるゆるに弛緩しまくっておるのですね。

そらもう引きこもったり、変なペットを飼ったり、自分の名前すら忘れてしまうほどに。そんな情けなくも愛らしい男だらけの閉所的学生寮生活のような侘しさが、なんともいえない哀愁と慈愛と皮肉を浮かび上がらせ、この作品を忘れがたい愛すべきカルト映画へと昇華させておるわけです。若き日の自分、もしくは現在の自分を見るような愛おしさと情けなさ。

またそこにセクシーな女性の声をあてたマザーコンピューターが、何やらからかい半分、挑発半分のような対話を彼らに仕掛けてきており、男だらけの宇宙遊泳大会にシュールで歯噛みするような一石を投じてくれておるのですよね。モテない男の悶々です、悶々。

ゆるゆるな演出

ゆるゆるなのは登場人物だけではなく、演出に関しても見事なゆるゆるです。でもこれはあくまで狙ったゆるゆるですので、天然のゆるゆる監督とは区別して考えてくださいね。

ほぼ自主製作ということですので、低予算ゆえのチープな特撮もゆるゆるの一端を担っておるのですが、ゆるゆるかつチープでありながら、いや、ゆるゆるかつチープであるからこそ、お金をかけずにいかにSFを撮るかというセンスが感じられて、若きカーペンターのあふれる才気を感じずにはおれません。

とりわけこの映画で忘れられないポイントがふたつあります。ひとつは、ビーチボールのお化けとの延々と続く追いかけっこ。エレベーターでのくだりなんて、のちの『ゼイリブ』を彷彿とさせる無駄なまでの長さです。あまりに長すぎて、途中からめちゃくちゃ楽しくなってくるのもそっくりですよね。

そしてもうひとつが、思考する爆弾と人間との禅問答のごとき対話。 爆弾と現象論をめぐって議論をするなんて、この映画でしか観ることのできないたいへん貴重な一瞬でありますよ。

またこの対決がシュールなゆるゆる感に満ち満ちておりまして、強引な説得の結果、自我に目覚めてしまった爆弾君が至った結論には「あんれま~」ってなもんです。問答無用の必見であります。

ゆるゆるの末の奇跡

そんなボケボケゆるゆるの末に訪れる奇跡的なまでに美しく清々しい幕切れには、一旦はあっけにとられるものの、次の瞬間には盛大な拍手を送ってしまうことは必至でしょう。

ゆるゆるで笑わせ、妙に哲学的で、最後に美しくオトす。監督デビュー作にしてさすがはカーペンターですよね。結果だけを見てしまうとブラックなバッドエンドそのものですけど、それをそうとは微塵も感じさせない、鮮やかなまでのハッピーエンド。

そう、これは誰が何と言おうとハッピーエンドなのだ!陽気なカントリー曲『ベンソン・アリゾナ』がまた格別で、バカな男が退屈と弛緩と混乱の果てに手に入れた浄化を、まるで祝福しているかのようではないですか!

個人的評価:8/10点

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コメント

  1. ダムダム人 より:

    この作品、かなり前にみました。
    なんか凄く笑えるシーンが多かった気がします。
    例えば、何か不満が有ってコンピューターと会話するとき
    あまりにも過激な発言が勝手にミュートされたり
    エレベーターに閉じ込められたら、救出の時にクラッシックが
    流れた後に爆発したりと凄くシュールな感じを受けました。
    自主制作とは言え日本の特撮よりは設備がカッコいいと思います。
    (いつも思うのですがあちらにはこういうセットを
    専門で作る「業者」がいるのかしら??)
    漢局あたりで放送して欲しいです。

  2. スパイクロッド より:

    ダムダム人さん、コメントありがとうございます!
    ハマる人間にはたまらない爆笑映画だと思います。
    笑えるという意味ではカーペンター史上最高でしょうね。
    おっしゃるとおりほぼ自主制作なので予算はないのですけど、
    それでもSFとしてきっちり見せてしまうセンスはさすがです。
    深夜枠あたりでやってほしいですね♪