エメゴジのトラウマ払拭のため16年ぶりにハリウッドで産み落とされたギャレゴジ。ああ~ついにあのトカゲの悲劇を忘れさせる日がやって来たのか。んん~なんか角ばってるね。羽生えてるよ。ギャオっと鳴くからギャオスだよ的なそのお姿は……ってあんただれぇぇえっ!?
作品情報
GODZILLA ゴジラ
- 原題:Godzilla
- 製作:2014年/アメリカ/123分
- 監督:ギャレス・エドワーズ
- 脚本:マックス・ボレンスタイン
- 撮影:シーマス・マッガーヴェイ
- 音楽:アレクサンドル・デスプラ
- 出演:アーロン・テイラー=ジョンソン/渡辺謙/エリザベス・オルセン/サリー・ホーキンス/ブライアン・クランストン/ジュリエット・ビノシュ
予告編動画
解説
日本の原子力発電所で成長した巨大生物“ムートー”と、ムートーを追って地上へと姿を現した破壊神“ゴジラ”との対決を描いた、1998年の呪われたエメゴジから16年の時を経てリブートを果たし、モンスターバースシリーズの記念すべき第1作を飾ったSF怪獣映画です。
監督は低予算SF映画『モンスターズ/地球外生命体』によって本作に大抜擢され、続いて『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』まで監督してしまったシンデレラボーイ、ギャレス・エドワーズ。
主演は『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン。共演にはゴジラを生んだ国代表として『追憶の森』の渡辺謙、『ウインド・リバー』のエリザベス・オルセン、『シェイプ・オブ・ウォーター』のサラ・ホーキンス、『ドライヴ』のブライアン・クランストン、『ハイ・ライフ』のジュリエット・ビノシュなど。
感想と評価/ネタバレ多少
昨今、跋扈バコバコしているヒーローユニバースの牙城を崩さんと、レジェンダリーが送り込んだ怪獣ユニバース「モンスターバース」の最新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。その予習も兼ねて記念すべき第1作『GODZILLA ゴジラ』を再見してみました。
劇場での鑑賞時にはものの見事に爆睡しちゃったのよね、これ。そんな睡眠と覚醒の狭間で覚えているのは、「ムートー…またムートー…んでもってムートー……」という家族ドラマ。ボクが観たのは本当に『GODZILLA ゴジラ』だったのか?それとも『M.U.T.O. ムートー』だったのか?それを確かめるための再鑑賞。
ムートー一家虐殺事件
1999年。フィリピンの炭鉱崩落現場の深部で発見された巨大生物の化石と、そこから何かが這い出たような痕跡。時を同じくして、日本の原子力発電所を襲った不可解な地震によりメルトダウンが発生、原発は倒壊。付近一帯は進入禁止区域として厳しい統制が敷かれることに。
15年後、禁止区域として隔離されていた原発跡地で極秘裏に研究されていた、巨大な繭状の物体。放射線をエネルギーとして吸い取るその物体がついに孵化したとき、それを追って深海から太古の神「King of Monsters」が浮上してくるのだった……ってのが簡単なあらすじ。
いや~あたくし、危うく今回も寝そうになるところでしたよ。だってつまんねーんだもん。「それを言っちゃあおしまいよ」って話なんですが、つまらんもんはつまらんのです。何がつまらんって人間のパートがとにかくつまらん。人間風情が怪獣様の邪魔をしておるのだ。
別に怪獣映画で人間風情のドラマを描いちゃイカンという話ではないですよ。むしろそこは非常に大事。人間世界に怪獣が、怪獣世界に人間が闖入するという構図でこの手の映画が成立している以上、怪獣様も人間風情もちゃんと描かんことにはイカンイカンのです。
しかしこの映画は怪獣出現という驚異を、怪獣同士の対決を、人間風情がちょこまかとぶつ切りに邪魔しておるのが始末に負えん。家族のドラマはほぼ機能してないし、特別研究機関モナークは無能の集団だし、その中心人物である芹沢博士はただの怪獣オタク。
怪獣という自然界の脅威に対してひたすら無力な人間という構図は圧倒的に正しいのですが、映画においても無意味であっては単なるお邪魔虫。しかもそのお邪魔がまあ長いの。「寝るな!」というほうが無理な話だ。んなもん「寝るわ!」と返すしかないでしょ、奥さん?
怪チラ、もとい怪獣チラリズムに徹した演出は官能性満点で、冒頭の記録映像にチラリと露出させているゴジラ氏の背ビレなんてギンギンの着エロDVDでしたが、そういう怪獣エロティシズムを無粋に邪魔する人間風情の安い昼ドラがホントに空気読めなくて最悪。
まあ怪獣パートにも問題がないわけではなく、何ゆえ第1作をゴジラ単体ではなくVSものにしてしまったのか?とか、「いや『ガメラ 大怪獣空中決戦』やん」とか、細かい不満点はあるものの、チラリズムに徹した怪獣演出は良かっただけに人間風情がホント残念。
怪獣をチラリズムで描くのであれば、必然的に人間風情が占める比重は大きくなってくるわけだから、そこ疎かにしたら共倒れよ、って話。で、結果共倒れなのよ奥さん。なんかもう配分というかバランスを間違えちった作品で、「そこいる?」って部分が多すぎますね。
でまあ冒頭の疑問へと返ってくるわけですわ奥さん。ボクが観たこの映画は『GODZILLA ゴジラ』だったのか、それとも『M.U.T.O. ムートー』だったのか?答えは明白『M.U.T.O. ムートー』ですよね。ムートーが一番目立ってたし、出演時間長かったし、おまけに家族ぐるみ。
ボクは『GODZILLA ゴジラ』を観たかったわけで、『M.U.T.O. ムートー』ではないのだが?という根本的問題がここで生じてしまうわけです。しかも見せられるのはムートー家の心温まる家族ドラマからの一家虐殺事件(世に言うムートー・ジェノサイド)。
結ばれる運命だった男女の感動の対面、人目もはばからない濃厚なラブシーン、感動の出産、そして僕らは、家族になった……からの集団リンチ、一家虐殺、ムートー殲滅ジェノサイド事件。いやだ、ほぼ主役なのにこんな非道な扱い残酷すぎると思いません、奥さん?
身勝手な人間、自然の摂理、バランス、いくらでも言い訳は成立しますが、それらを成立させるためには、ムートー一家と対を成す主人公一家のドラマをもっときちんとやらないと成立しない。ここが対比の構図になってないからただの虐殺。守るべき対象への想いが貧弱なのだ。
なんならムートー一家のほうが愛情豊かだし、とりあえず画面にいっぱい出てるし、なのに遅れてチラリとやって来たゴジさんにおいしいとこ持ってかれて、せっかく授かった子宝を爆殺されて、地球上から抹殺されるムートー一族の悲劇。むぅ~~ん気持ちのもってきようが!
スカッともしないし、納得もしないし、なんならムートーさん側に感情移入していた部分もあるので、ホント気持ちのもってきようが!って話。「ムートーに感情移入してるお前がキモい」とも言われそうですが、じゃあ誰に感情移入したらええねん!人間邪魔なだけやねん!
え?ゴジさん?あら、久々にお店にお見えになったゴジさんは素敵でしてよ。でもちょっと太りました?いやだわ、だから暗がりからなかなか出てらっしゃらなかったのね。チラリ、チラリと私を誘惑して。意地悪なお人。ゴジさんのタメてタメての咆哮、熱線、あいかわらず素敵でしたわよ♡
ってな感じです。ゴジさんとはその気高い存在を愛でるものなので、感情移入の対象ではございませんよね。だからこそゴジさんの気高さを際立たせるための死闘、視線、対比が肝心になってくるのですが、そもそもいきなりVSものから始めてしまったのが失敗かな?
初戦はゴジ単体でその気高い破壊神ぶりを描いて、次戦からVSものへと切り替えるのが正しい順序だったようにも思いますが、あんがい逆もアリかな?3部作構想の最後でゴジ対人類のガチンコ対決を描く。ってあれ?3作目が『ゴジラVSコング』なの?あ、へぇ~、そうなの。どうぞどうぞ。
個人的評価:4/10点
DVD&Blu-ray
VOD・動画配信
『GODZILLA ゴジラ』が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはU-NEXT、プライム・ビデオ(2019年5月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
コメント
ブログいつも楽しく拝見しております。
個人的にはそんなに嫌いな作品では無かったので辛口な批評で
ちょっとショボーンな気持ちにはなりましたが人それぞれの引っかかりの
違いはありますから、そこは仕方ないですよね。
(シン・ゴジラの会議シーンとか多くの方は面白いと感じると思うのですが
チョット退屈に感じてしまった自分とかいたりもしますので(;^_^A)
話は変わりますがいつかの日かマウス・オブ・マッドネスのレビューを
楽しみにお待ちしております。
sanさん、コメントありがとうございます!
まったく忖度せずに好きなこと書いちゃう性分でして、お気を悪くさせてしまったかもしれませんが、ホントこれが芸風なので申し訳ありません。でも映画の好き嫌いなんてホントに個人差ですので、こればっかりは仕方ありませんよね(ちなみにボクは『シン・ゴジラ』の会議シーンが大好きです!)。
あと『マウス・オブ・マッドネス』のレビューのご依頼ですが、実はちょうどBlu-rayを購入して近いうちにでもレビューしようかと思っていた次第であります。まさにシンクロニシティ!今しばらくお待ちください!満を持して臨みますので!
更新お疲れ様です。
まさかギャレゴジの感想を上げられるとは思っておりませんでした。
ちなみに、私は公開当時「ちゃんとゴジラだ!!」というだけで許せてしまったので、今見返すとかなり甘い視点だったかもしれないですね(だって、仕方ないじゃない!!前回があの巨大トカゲN.Yに現るだったんだもの!!)
色々な所で言われている通り、歴代のどのゴジラより平成ガメラに最も近い作風の今作ですが、ドラマの出来という点に置いては大きく劣ると言わざるを得ないのは事実です
ただねえ、ハワイでの満を持しての咆哮シーンとか、満を持しての放射能熱線とか、焦らされまくった後のカタルシスが半端なくて、それだけで許せちゃったんですよねえ
まあ、これゴジラじゃなくてムートーの映画じゃねえか!というツッコミは全くもってごもっともなんですけどねw
ほら、ヒーロー映画なんかでもヴィランの方が目立ってしまったりとかあるじゃないですか(苦しい擁護)
starさん、コメントありがとうございます!
やはり『エメゴジ』という前科がハリウッドにはありますので、ちゃんとゴジラになっていた『ギャレゴジ』はそれだけでポイントは高いですよね。ボクもそこは認めます。認めるんだけど、ハリウッド的な余計な家族ドラマがホントに退屈で、しかもこれがまたドラマとしてほとんど機能しておらず、怪獣様の邪魔しかしておらんのがとにかくダメだったんですよね。「人間ドラマなんかいらない!」とは言いませんけど、やるならやるでちゃんとやってほしいのです。ムートーの家族ドラマはちゃんとやったんだからそこもやれよって話です(笑)。
お久しぶりにコメントさせていただきます。
僕は正直ギャレスエドワーズの技量には懐疑的なほうでして、ゴジラでんん?となり
ローグワンで確信に変わりました。
出し惜しみをして最後の最後にドーンと派手な見せ場をもってくるのはわからなくはないのですが、いかんせん2度3度と同じ手法を繰り返されると辟易させられます。
人間パートは本当に退屈でしたね。
いや、あのブレイキングバッドのブライアン・クランストン演じる主人公の父親は作中唯一話の原動力になる人物だったし、彼を主役に話を展開すればまだましなものになっていたかもしれません。
彼だけちゃんと怪獣と関わる動機がありましたからね。
だから彼のシーンだけは人間パートでもまだなんとか見れたシーンなのですが途中退場してしまい、なんだか主体性のないアーロンポール演じる主人公が物語に深く関わっていくのですが
これが全く面白くありません。
彼は徹頭徹尾たまたまそこにいたか、あるいは家族そっちのけで参加しなくても問題ない作戦に積極的に志願するだけの非常に中身の薄いキャラクターでしかありませんでした。
我らがケン・ワタナベも存在意義が全く見いだせない、というかぶっちゃけ要らない。
日本人枠の穴埋めのためだけに存在しているかのような無意味さ。
核の扱いも相変わらず、核についての議論シーンも結局カット。
外側だけシリアスぶって中身がない。
曲もかっこつけてないで素直に伊福部昭さんの曲使え!とぶっちゃけ不満だらけな映画でした。
えるぼーロケッティアさん、コメントありがとうございます!
おっしゃるとおり、ブライアン・クランストンのあの扱いはいったいなんだったんでしょうね?ええ!?こんなとこで中途半端に退場すんのぉ!?って感じです。彼の死がなんのドラマにもなっていないし、主人公の動機にもならない。まさに無駄死に。ここで殺すんなら、もうちょっとこうムートー一家VSブロディ一家の復讐合戦的な恨みつらみがあってもよかったとは思うんですけどね。その実、家族VS家族の殺し合いなのにそこがスポイルされてるからなんの盛り上がりも葛藤もないのですよね。
ただケン・ワタナベの存在意義はあったと思いますよ。頑なに「ガッズィイラ」ではなく「ゴジラ」と発音する公式広報担当として。まあみんなから無視されてキモがられる完全な怪獣オタクでしたけどね(笑)。
久々にちゃんとした(?)ゴジラが見れたので当時自分は満足でした。
まぁ、けど、嫌いな作品じゃないけど批判は多くてもしょうがねぇなぁと思う出来の映画ではあります。スパイクさん仰られる通り人間パートつまらんすぎる。シンゴジラ見習え!ただ、結構遠慮なしに原発事故とか津波描写入れてきて、当時の3.11自粛ムードをぶった切ったような気が個人的にはしてるのでそこは結構意味あったかなぁと。
そして対ゴジラでのスカイダイビングシーン。
ぼかぁこの映画どころかこの年の映画のベストシーンに挙げたいくらい好きなシーンなんです、あれ劇場じゃないと絶対味わえないでしょう。禍々しい真っ赤なスモークの照明弾に緊張を煽るキリキリしたBGMに、怪獣の争いのSEは一切消し去ってアーロン君の呼吸音だけ残したゴーグル越しの映像。
あの数十秒がこの映画の価値の9割くらいだと今でも本気で思っています。
残りの1割は熱戦放射を「見ろ!凄ェ!」とヤジウマのテンションで盛り上がる兵士達。お前らさっきまでの緊張感はどこいった。
そして記事にあるムートー家族惨殺事件ですね。
前作の「モンスターズ」では確かに怪獣(タコ)同士の愛の表現は美しく、しかもそれを人間にかぶせるように哲学的ともいえる描写でしっかり描いていたというのに!!
でも次の新作も見ちゃう。モスラがかっこいいんだもん・・・
わるいノリスさん、コメントありがとうございます!
>そして対ゴジラでのスカイダイビングシーン。
わかります!ここだけはまるで違う映画を観るかのような異世界感が漂っていて、正直映画のなかではかなり浮いているシーンだとは思うのですけど、その浮き加減も含めて何をしているのかいまいちつかめない異様さがあってボクも好きです!なんというか地獄へと落ちていくような感覚ですよね。そこからもっとこう地獄巡りをするような阿鼻叫喚の展開があってもよかったと思うのですが、そっからまた元に戻ってしまったのが残念。
あ、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』観ましたよ!モスラはカッコいいというかめちゃキレイ!超美人でしたよ!
はじめまして。
ギャレゴジの予告編は素晴らしかったですね。
世界の終わりのような映像とリゲティの音楽共々、期待MAXに達していました。
それだけに実際に作品を観た時の落胆も半端じゃありませんでした。
何よりゴジラが全然怖くないのが致命的でした。
人類が手を焼いていたのはMUTOの方で、ゴジラはでっかいから時々困る位の扱いでしたね。
MUTOのデザインも中途半端だし、ストーリー共々なんかギャオスにも似てるし。
絶望的なゴジラの強さが人類存亡の脅威として立ち現れるようなものを想像していたのがいけなかったのでしょうか。
途中軍艦がゴジラと並走するところで糸が切れました。
それに怪獣シーンは出し惜しみの連続、まるで低予算映画のようです。
折角の放射熱線がとろ火だったのも残念でした。
人間ドラマもめんどくさい以外のものが感じられず、奥さんが美形だったのがせめてもの救いです。
監督が怪獣が好きなのは分かりますし、酷いとまでは言いませんが、期待に対する失望度では相当なものでしたね。
そして絶望的なまでの人類に対する脅威がまさか全然期待していなかった「シン・ゴジラ」で観られるとは!
不思議と言うか、面白いですね。
あのまりさん、コメントありがとうございます!
ゴジラに何を求めるのかってことの違いなのでしょうかね?ボクもギャレゴジに期待したのは人類VSゴジラだったわけですけど、蓋を開けてみたらあのまりさんがおっしゃるとおりの「落胆」としか言いようのない内容で、「コレジャナイ、コレジャナイ」と思い続けておりました。そんな落胆を見事に払拭してくれたのが『シン・ゴジラ』であり、ギャレゴジ路線を見事に昇華させてくれたのが『ゴジラ KOM』。この2作における歓喜はギャレゴジの失敗があったからこそかもしれません。あの落胆があったからこその有頂天なのかもしれませんよ(笑)。