『ボディ・ダブル』感想とイラスト 愛ゆえの電気ドリル女体貫通

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映画『ボディ・ダブル』メラニー・グリフィスのイラスト(似顔絵)

人生負け続けた男が、覗き、ストーキング、下着泥棒の果てに揉みしだく勝利のビンカンビーチク。貴様ら良識派にはわかるまい!これが俺の!俺にとっての女の愛し方なのだ!

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作品情報

『ボディ・ダブル』

  • 原題:Body Double
  • 製作:1984年/アメリカ/114分
  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 脚本:ロバート・J・アヴレッチ/ブライアン・デ・パルマ
  • 撮影:スティーヴン・H・ブラム
  • 音楽:ピノ・ドナッジオ
  • 出演:クレイグ・ワッソン/グレッグ・ヘンリー/メラニー・グリフィス/デボラ・シェルトン

参考 ボディ・ダブル – Wikipedia

解説

B級映画専門の売れない俳優が、居候先の窓から覗き見たある殺人事件をきっかけに、自らをも巻き込んだ完全犯罪への真相へと迫っていくというエロティックサスペンスです。

監督は『ファントム・オブ・パラダイス』『愛のメモリー』のブライアン・デ・パルマ。当初は『バタリアン2』のケン・ウィーダーホンが監督する予定でしたが、配給元の意向でデ・パルマ自らがメガホンを握ることに。

主演は『戦場』のクレイグ・ワッソン。共演に『スリザー』のグレッグ・ヘンリー、『サムシング・ワイルド』のメラニー・グリフィスなど。グリフィスの役どころは最初は本物のポルノ女優を起用するつもりでしたが、さすがにコロンビアに却下されたようですね。

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感想と評価/ネタバレ多少

定期的に観返したくなるデ・パルマの珍作『ボディ・ダブル』。『殺しのドレス』を女性蔑視だと叩かれ、『ミッドナイトクロス』をヒッチコックの模倣だと笑われ、『スカーフェイス』をオリジナルへの冒涜だと無視されたデ・パルマが怒りに狂ったやりたい放題映画。

過度の怒りはいい意味での脱力を生むのだろうか?評論家に嫌われる原因だとも言える、彼のしつこさと過剰さをいつも以上に鬱陶しく炸裂させた内容は何やら肩の力が抜けた陽気な娯楽作へと仕上がっており、何事もやりすぎると逆のベクトルが働くのかもしれません。

映画で映画を遊び倒す

物語は売れないB級映画専門の俳優が、持病の閉所恐怖症により役を降ろされ、恋人には浮気され、住むところもなくし、知人の紹介によってある豪邸の留守番を頼まれたまでは良かったが、その家の窓から夜な夜な覗いていた女の殺害現場を目撃するというもの。

要するにヒッチコックの『裏窓』で、そこに三つ子の魂百までと言える『めまい』をぶち込んだもはや何度目かわからない勝手にヒッチコックリメイク作品。「ヒッチのやったことは全部過剰に真似してやるぜ!」と臆面もなく遊び倒している芸風がいっそ清々しいです。

しかも『ミッドナイトクロス』に続く映画舞台裏ものですので、その手の小ネタが頻出するのも映画オタクには楽しいかぎりで、『ボディ・ダブル』というタイトル自体も替え玉の映画用語であり、本作のミステリー部分における核となっております。

これは『殺しのドレス』におけるアンジー・ディキンソンのシャワーシーンで生まれたアイデアだとのこと。ってことはあの裸はディキンソンじゃないのね。アレに欲情された熟女マニアの方はどうも残念でした。

過剰な変態グルグル回る

『殺しのドレス』におけるディキンソンいじめによって、女性蔑視のサディストで変態と口汚く罵られた我らがデ・パルマ。しかし、「あ~あ、なんか真面目な人に怒られちゃったからしばらくは大人しくしてよ」と反省も後悔もしないのが愛すべきド変態デ・パルマの真骨頂。

本作『ボディ・ダブル』はそれに輪をかけて変態街道を驀進しておりますから。暗いの怖いよ狭いの怖いよ寝取られ宿無しヘタレ主人公ジェイクが、実は覗き魔のストーカーなうえに下着泥棒でもあったという事実には込み上げる共感と笑いが止まりませんな。

夜な夜な食い入るように隣人のオナニーショーを出歯亀り、ナイト気取りで「怪しい男が僕のグロリアをつけてる!」とストーキングし、挙句の果てに彼女の脱ぎたてほかほかパンティを辛抱たまらずゴミ箱から拾い上げる手際の良さなど、変態の心理を熟知したプロの仕事!

ジェイク、グロリア、尾行者、三者三様の動線をとらえたモールでのねちっこい演出にもその技が活きておりますし、グロリアのバッグを奪った尾行者を追ってトンネル内でクラクラするジェイクの「めまい」、そしてご都合主義全開のオプティカル合成キスシーン360度旋回!

これこそド変態の極みだ!いま会ったばかりの男女が行きずりで交わす濃厚な接吻を、笑えるぐらいのオプティカル合成モロ出しで、「どんだけ回すねん!」と親のかたきのようにグルグルグルグル旋回し倒す「見たか!」と言わんばかりの暑苦しい360度旋回。

もうここまでやられたら「過剰だ!」と批判するのも野暮ってもんでしょ。んなもん百も承知で過剰に暑苦しくしつこいぐらいにあえてやってんだから。ここまでやられたらその過剰性をグルグル吹き飛ばす美しさとロマンティシズムに腹抱えて笑うしかないってもんでしょ!

負け犬の逆襲

しかし過剰なまでに美しい変態グルグルなんざぁまだまだ序の口、このあとにはこれまで散々良識派に怒られてきた鬱憤を晴らすかのように繰り出された巨大電気ドリルによる女体貫通が待っておりますからね。火に油とはまさにこのことで、バカな良識派に対する宣戦布告です。

「これが俺の女の愛し方!女体貫通儀式だ!」と、愛する女を床に釘付けにするデ・パルマ。完全に喧嘩売っておりますが、そんなデ・パルマのくじけない変態ソウルに我々ファンは涙するのです。しかも覗きに必死すぎて通報を忘れるという愛らしい大失態までついている始末。

映画冒頭から主人公ジェイクはデ・パルマの映画らしく負け犬感全開でしたが、その負けっぷりもここに極まれりって感じです。彼はこのまま負けに負け倒していくのだろうか?いつものデ・パルマ映画ではそれが既定路線ですが、本作のジェイクはここから逆襲に出るのです。

自分を殺人の目撃者に仕立て上げることによって完全犯罪を目論み、図らずも恋してしまった女を残忍に串刺しにした殺人犯に対して!ポルノ映画に飛び入り参加して!フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『Relax』で!ここでもフラッシュバック360度旋回しながら!

完全勝利!

人生負け続けのジェイクがいかに戦い、いかに勝利するか?彼の反撃の材料にヒッチコックの『鳥』や『マーニー』で主演を張ったティッピ・ヘドレンの娘、メラニー・グリフィスを起用したというのも見上げたオタク根性です。しかも問答無用に脱がせまくり。

彼女もこの潔い脱ぎっぷりと貧乳、地なのか演技なのかわからないアホっぽさによって低迷からのカムバックを果たしたことを考えると、いろんな意味での勝利を描いていた映画とも言えますな。デ・パルマにしては珍しいですが、負け犬が見事な勝利を収める映画。

それは最初に書いたとおり、作る映画のことごとくをクソ真面目な評論家からボコボコに殴られ続けた反動なのでしょうね。「だったらとことん悪趣味に疾走してやる!」と駆け抜けた先にあるゴールはやはり勝利でなくては。負け犬だってたまには勝つこともあるのだ。

個人的評価:7/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『ボディ・ダブル』が定額見放題なおすすめ動画配信サービスはU-NEXTTSUTAYA TV(2019年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

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コメント

  1. おーい生茶 より:

    この映画を酷評する人の言い分は納得できます。ひどい内容ですから。
    しかし、ただのエログロ駄作ではないでしょう。
    デパルマ監督のアイディアとテクニックがメガ盛りですから。
    僕はショッピングモール内の氏の変態映像に恐れおののきました。
    題名にちなんだキャラ設定や演出に気づいた人はどれだけいるのでしょうか?
    主人公と犯人は一人二役、謎の美女は二人一役。
    そして観客の建前と本音。女を見たい男と男を誘いたい女。

    洋画「さよなら僕のマンハッタン(監督は500日のサマーのマーク・ウェブ)」では
    当作と殺しのドレスを混ぜたような映像がありました。
    邦画「カメラを止めるな」もいくつか類似点が挙げられます。
    後進の非モテなクリエイターに刺さる映画だったのかもしれません。

    • おーい生茶さん、コメントありがとうございます!

      デ・パルマは生粋の映画オタクだけあって、こういう映画内映画的ネタをよくやりますよね。本作はまさにその典型ですべてのネタがそれに基づいていると言っても過言ではない。しかしそれはある種の身内ネタ、楽屋ネタみたいになっちゃうので、詳しくない人には届かないんですよね。本作発想の起点となった『殺しのドレス』のBlu-rayも先日手に入れましたので、また近いうちにレビューを書く予定です。

      『さよなら僕のマンハッタン』も『カメラを止めるな』もまだ観ておりませんが、そう言われると気になっちゃうなぁ~(笑)。まあドリルで女体貫通してるわけではないうでしょうけどね(笑)。

  2. おーい生茶 より:

    「さよなら僕のマンハッタン」はイマイチだからスルーした方がいいです。
    ケイト・ベッキンセイルを久々に見られるだけですね。

    おお、「殺しのドレス」のレビュー書いてくれますか!
    僕はあの映画がデパルマ監督作で一番好きですね。
    スパイクロッドさんがどのショットのイラストを描くのかも楽しみです。
    エレベーターのドアで腕ガツンガツンかな?

    • おーい生茶さん、コメントありがとうございます!

      そうですか。マーク・ウェブはデビュー作の『(500)日のサマー』以降はいまいちパッとしませんな。

      『殺しのドレス』ですがすでに久々の鑑賞は済ませておりますので、しばしのお待ちを。