『バニー・レークは行方不明』感想とイラスト 『トラウマ映画館』は読まないように!

映画『バニー・レークは行方不明』のイラスト
私のかわいいウサギさん。どこにいったのウサギさん。みんなどうしてそんな目で私を見るの?あの子はいるのよウサギさん。早く捜してウサギさん。ホントにいるよねウサギさん?ホントに……ホント?

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作品情報

『バニー・レークは行方不明』
Bunny Lake Is Missing

  • 1965年/イギリス/107分
  • 監督:オットー・プレミンジャー
  • 脚本:ジョン・モーティマー/ペネロープ・モーティマー
  • 撮影:デニス・クープ
  • 音楽:ポール・グラス
  • 出演:キャロル・リンレイ/キア・デュリア/ローレンス・オリヴィエ/ノエル・カワード/エイドリアン・コリ

参考 バニー・レークは行方不明 – Wikipedia

解説

透明人間は社会からいないも同然と見なされてしまうので必死のアピールが必要だというサスペンス映画です。

監督は『帰らざる河』のオットー・プレミンジャー。主演は『ガン・ファイター』のキャロル・リンレイと、『暗闇にベルが鳴る』のキア・デュリア。共演にイギリスが誇る名優ローレンス・オリヴィエがドシッと構えております。

あらすじ

アメリカからロンドンへ兄とともに引っ越してきたシングルマザーのアン(キャロル・リンレイ)。4歳になる娘のバニーを初めての保育園へと預けるのだが、そのままバニーは行方不明となってしまう。

兄のスティーヴン(キア・デュリア)、警察らとともにバニーを捜すものの、その行方はおろか、彼女が存在したという痕跡すら発見できない事態に、周囲はアンの精神状態を疑い始めるのだったが……。

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感想と評価/ネタバレ無

これまたTSUTAYA発掘良品によるお手柄ラインナップのひとつ。現在、大絶賛炎上中である『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』で脚本家デビューを飾った町山智浩氏の名著『トラウマ映画館』の巻頭で紹介されていた作品です。

日本ではDVDはおろかビデオすら出ていなかった幻の作品。本当にTSUTAYA発掘良品はいい仕事をしますね!これからもお世話になります!

実存的不安映画

古くはヒッチコックの『バルカン超特急』。1990年代にはジョナサン・モストウの『ブレーキ・ダウン』。そして近年ではジョディ・フォスター主演の『フライトプラン』。ちょっと毛色は違うがイーストウッドの『チェンジリング』など。

これらの系譜の作品だといえば理解は早いでしょうね。要するに、いたはずの人物の消失。その存在を認識しているのは主人公ただひとり。はたして真実は?という実存的不安を描いた映画なわけです。

しかしこの手の映画の難しさは、大切な人が忽然と消えてしまう恐怖。その存在を周囲から否定されていく不安。徐々に自分で自分がわからなくなってくる動揺という不条理な悪夢的迷宮に対して、どのようなオチをもってくるかという点なのです。

前述した作品のほとんどもこれをクリアできているとは言いがたいのですが、この『バニー・レークは行方不明』だけは軽々とそのハードルを飛び越えていたのです。秀逸なプロットを超える驚愕の結末によって!

ネタバレ絶対厳禁!

結局は凡庸な結末へと落ち着くのではなかろうか?そんなボクの浅はかな予想をはるかに上回る、あまりに戦慄なラストシークエンス!笑顔の裏の狂気と恐怖と真実には、全身の毛穴という毛穴が粟立つような快感と興奮に身悶えてしまいました!ボクがこの手の映画に求めていた結末はまさにこれなのですよ!

しかし!しかしですよ!この映画の詳細なレビューをしようと思ったら、どうしてもこの結末へと接近してしまう情報を提示せざるを得ない。となると何も書けないわけですよ。この映画は絶対にネタバレ厳禁ですからね!

鑑賞後に『トラウマ映画館』を再読して驚愕したのは、「おもいっきりネタバレしとる!」という事実です。自分の難儀な健忘症がこのときばかりは愛おしくなりましたね。よくぞ忘れてくれていたものです。

ですので、この映画を未見でなおかつ興味があるという方は、絶対に『トラウマ映画館』は読まないでください。結末に触れていそうなレビューのたぐいも同様です。なるべくまっさらな気持ちで鑑賞することをおすすめします。

まあ「オチが凄い!」と書いてしまっているこの感想自体がある意味ではネタバレなのですけどね。その点はどうぞご容赦いただきたい。何せ著しく興奮しておる次第でありまして。

凄まじい映像テクニック!

というわけで、ネタバレをしない範囲で書けることを書いていこうかと思います。実存的不安を描いた物語のインパクトもさることながら、それを映し出した映像の凄まじさも忘れてはいけません。

けっこうな長回しで撮影された縦横無尽なカメラワークの数々。この時代にどうやって撮ったのかわからないテクニックが満載でして、その超絶技巧が映し出す緊張と不安は尋常ではありません!

その観る者を不安のどん底へと叩き落とす秀逸なカメラワークと同様に、ヒッチコック作品で有名なあのソール・バスが手がけたシンプルだけどとてつもなく不気味なタイトルデザインも必見。本当にソール・バスのアイデアとセンスには毎回驚かされてばかり!

しかし何気にこのTSUTAYA発掘良品はソール・バス率が高いのですよね。唯一の監督作である『フェイズIV/戦慄!昆虫パニック』に『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』。どれもこれも傑作揃いのおすすめですよ!

出演陣とゾンビーズ

出演陣の好演も忘れてはいけません。主役の兄妹を演じたキャロル・リンレイとキア・デュリアの、ともにどこか危なげな印象を終始チラつかせている演技もよいのですが、やはり強烈なのはノエル・カワードとエイドリアン・コリの怪しさ!

そしてクレジットにもちゃんと登場しているゾンビーズの存在。単なる抱き合わせのようにも思えますが、彼らのモニター越しの登場と音楽がなんともいえない奇妙なマッチングを見せていたのもまた事実であります。

彼らがこの映画に提供したのは『Nothing’s Changed』『Remember You』『Just Out Of Reach』の3曲。特に『Just Out Of Reach』のショートバージョン『Come on Time!』は、物語の性質上、途中入場を禁止していた本作の宣伝に一役買ったとのこと。

この曲をラジオ宣伝用に流しまくり、「時間どおりに来てね!」と観客に訴えたらしいです。通して観てこそ驚きもひとしお。途中入場なんてもってのほかです!

満点映画!

実存的不安を描いた物語。緊張感みなぎるカメラワーク。ソール・バスの秀逸なタイトルデザイン。不気味で危なげな登場人物。ゾンビーズの存在。ネタバレを禁じたなかでなんとかアピールポイントを書いてみましたが、やはりこれは四の五の言わずに観てもらうしかない!

ほかにもノエル・カワードの怪しいコレクション、空間描写、物語の転換点となる人形病院、ブランコなど、ホントにこんな完璧な映画は久々に観ましたよ!というわけで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』以来の満点。問答無用におすすめです!

個人的評価:10/10点

DVD&Blu-ray

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コメント

  1. ハリー より:

    こんばんわ。
    本当に不安になってしまう映画でした。
    現代の匿名大衆社会で、自分の存在を保証してくれるのは、周囲の僅かな人間と紙切れ(公文書)しかなく、前者があてにならない異国の地で、後者も見つからないとき、その人間の存在は無かったも同然…。
    本作では、警察に見捨てられそうになるあたりで、絶望が濃くなりますが、これは公権力の保障(保護)が無いとき、どれだけ無名の個人は無力か?という暗喩に捉えられました。
    まあ、あれです。あの警部が担当で幸いだったという感じです。

  2. スパイクロッド より:

    ハリーさんこちらにもコメントありがとうございます!
    ホントに底なしの不安にとらわれる映画でしたね。どうにもこうなってくると、自分でもはたして何が本当だったのかわからなくなってくる。人の存在証明なんて本当に危ういものですよね。「我思う故に我あり」なんて強者の論理でしかありません。だいたいボクのような人間にとっては自分ほどあてにならない存在はありませんから(笑)。他者の好意によってようやく存在を許されているようなもんです。

  3. U・M より:

    初めてU・Mと申します!
    たった今観終わりました「バニー・レーク」!
    いや凄かったです!
    面白かったと言うか怖すぎたと言うか・・・
    クライマックスは殆ど金縛り状態で、
    尚且つ目は一時も画面から離せませんでした!
    これはネタバレ書けませんよねぇ・・・
    因みにこの作品、ジャケット裏に「本作は
    一部不適切な表現が・・・」との注意書きが
    有りましたが、これも洋画のDVDでは異例
    の事と思います。(邦画のDVDでは良く見
    かけますが)

  4. スパイクロッド より:

    U・Mさん初めまして。コメントありがとうございます!
    凄かったでしょう!『バニー・レークは行方不明』!本当にあのクライマックスの興奮と恐怖はいまだにボクも頭から離れません。その興奮と恐怖はやはりオチを知らなかったがゆえの興奮と恐怖でありまして、やはりこの映画のネタバレに関しては極力回避しなければなりません。
    この映画の「一部不適切な表現」ってなんなんでしょうね?いくつか思い当たる節はありますけど、こういうのって逆にちゃんと明記してほしいですよね。それもあって長いことDVD化されなかったのかな?

  5. わるいノリス より:

    亀レスですが、今月の映画秘宝にこの映画の記事があって
    「そういやイラスト描いたでも取り上げられてたなぁ」とやっとこさ鑑賞。

    もー本気でダマされたので終盤の怒涛の展開には口アングリでずっと見入ってました。
    犯人は誰なのか、候補が少ないので当てずっぽうで当たりそうなものですがコイツが無意識に選択肢にならないように見事に誘導されたもんです。
    ホラー演出としても一流で終盤の小屋から出たら中に・・・(言えない)のシーンはマジ夢に出そうな程悪寒が走りました。ボリュームが急激に上がるのもとっても不安になってイイ。
    けど一番怖かったのは真相を知った後の二度目の鑑賞。
    この映画でも現実でも、世間は紙切れや写真で個人を証明しようとしますが、一見普通な人が一枚皮を剥いだらどんな姿になるのか分かったもんじゃないと言う恐怖は近年ですとゴーンガールを彷彿させるものがありました。

    高校生の頃に友人に連れられて見たジョディフォスター主演のフライトプラン、
    クソつまんなかったけどこの映画と同じ事をやりたかったのですね!
    しかし行方不明モノでこのレベルの作品ってどれだけあるんだろう・・・

    • スパイクロッド スパイクロッド より:

      わるいノリスさん、コメントありがとうございます!

      この映画はなるべくならオチを知らずに観てほしい傑作だと思いますので、ボクのこの記事もネタバレをなんとか回避しながら苦労して書いた覚えがあります。わるいノリスさんもネタバレを踏まずに初鑑賞されたということで、たいへん喜ばしい!それだけ衝撃的で、完璧なラストだとボクは思います。

      そしてこのラストへと到達するまでのとにかく不安で薄気味悪い演出。自己の記憶を、その存在を、信憑性を証明することが実はいかに難しく不安であるかを見事に描き出しており、自分という存在の不確かさに足元がぐらついてくるのですよね。この手の実存不安、記憶の証明映画はけっこう数多く作られているのですが、ボクの知るかぎりこの『バニー・レークは行方不明』に匹敵するものはありません。衝撃的でありながら納得できるオチの難しさですよね。『フライトプラン』なんかは見事にダダすべりで見苦しいものでありました。本文でも書きましたが、やや毛色は違うもののイーストウッドの『チェンジリング』ぐらいですかね?カート・ラッセルの『ブレーキダウン』はアクションスリラーとしては面白いですよ。