『チャイルド44 森に消えた子供たち』感想とイラスト 事実は原作より映画よりも奇なり

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映画『チャイルド44 森に消えた子供たち』トム・ハーディのイラスト(似顔絵)

本作の舞台となっているロシアでは「史実をゆがめている」として上映中止になったそうな。自分たちはいいけど他人がやるのは許せないのですな。

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作品情報

チャイルド44 森に消えた子供たち

  • 原題:Child 44
  • 製作:2015年/アメリカ/137分/PG12
  • 監督:ダニエル・エスピノーサ
  • 原作:トム・ロブ・スミス
  • 脚本:リチャード・プライス
  • 撮影:オリヴァー・ウッド
  • 音楽:ヨン・エクストランド
  • 出演:トム・ハーディ/ノオミ・ラパス/ジョエル・キナマン/ゲイリー・オールドマン/パティ・コンシダイン

参考 チャイルド44 森に消えた子供たち – Wikipedia

予告編動画

解説

連続児童殺人事件の裏側で夫婦間の嘘がバレるサスペンスミステリーです。原作はトム・ロブ・スミスの同名ベストセラーミステリー小説『チャイルド44』。

監督は『ライフ』のダニエル・エスピノーサ。主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ。共演には『パッション』のノオミ・ラパス、『ラン・オールナイト』のジョエル・キナマン。

ほかにも、『裏切りのサーカス』のゲイリー・オールドマン、『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』のジェイソン・クラーク、『イースタン・プロミス』のヴァンサン・カッセル、『イミテーション・ゲーム』のチャールズ・ダンスなど、何気に脇が豪華なのです。

あらすじ

1953年、スターリン体制下のソ連で発生した連続児童猟奇殺人事件。しかし、「楽園に犯罪は存在しない」として事件を事故として処理する当局。その姿勢にわずかな疑問を感じながらも従っていたMGB(ソ連情報委員会)の捜査官レオ(トム・ハーディ)。

しかし、妻ライーサ(ノオミ・ラパス)のスパイ疑惑をきっかけに地方へと左遷。そこでも遭遇した同様の手口による事件に憤りを覚え、危険を承知でついに独自の捜査を開始するレオであったが……。

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感想と評価/ネタバレ多少

2009年度の『このミステリーがすごい!』海外編で見事第1位に輝いた、トム・ロブ・スミスの同名小説を原作としておりますが、慢性的な活字睡眠症をわずらってしまった自分は眠くなるので例のごとく未読です。

しかし、その原作小説の高評価、予告編の雰囲気、新マッドマックスことトム・ハーディ主演などに魅かれ、観客わずか3人のレイトショーにて鑑賞してまいりましたが、う~んなんなんでしょうかねぇこれ?

ミステリー映画ではない

あらすじだけを見ると非常に面白そうなのですが、何ゆえこうなってしまったのか?あ、言い忘れておりましたが、ボクにとってはこの映画ぜ~んぜん面白くなかったのです。

材料はちゃんといいものが揃っているのに、調理法を間違って得も言われぬ臭気を発生させている新米ワイフの残念晩御飯といったところでしょうか。

だいたいてっきりミステリー映画だとばかり思っていたのに、ぜんぜんミステリーしていないのですよね。肝心の犯人にしても「あんた誰?」ってぐらいの唐突さで、いきなりの顔バレです。

どうやらこれは最初からミステリーにする気はなかったのかな?もしくはそんな技量は最初からなかったのか。ではこの映画の主題はなんなのかと申しましたら、それはスターリン体制下のソ連における生きづらさに尽きるのかと思います。

あの時代のソ連

「楽園」という建前を死守するために敷かれたディストピア的全体主義の閉塞感。そこで生きる普通の人間、異常な人間が直面するさまざまな危機。生きるためには仕方がない。生きるためには嘘をつく。

その裏側に押し込まれて蓋をされる真実。国家の嘘と個人の嘘。その嘘を暴き出し、真実を白日のもとにさらすことが正義かどうかはとりあえず置いといて、「こんな生きづらい社会は嫌だ!」っちゅうわけでありますな。

それには全面的に賛同いたしますが、どうにも描写がステレオタイプなのですよね。鑑賞中そのことがずっと気にかかっていて、帰宅後にググってみたら案の定。

これは実話をもとにした話なのですけど、実際の事件は1970年代後半から1990年ぐらいまでに起こっており、小説化するにあたって時代設定の変更が行われていたのです。なんのためかって?告発したいテーマをより明確にするためですよ。

ノオミ・ラパス最強伝説

未読の小説ではこの改変が功を奏し、単なるミステリー小説では終わらない社会的メッセージが評価されたのかもしれませんけど、残念ながら映画版においては不発としか言いようがありません。

狙いはわかるのですけどやり方があざといのですよね。何かと便利なナチスの使い方しかり。とってつけたようなラストもしかり。

演出も大味です。ただストーリーを追いかけていくだけで精一杯って感じで。『デンジャラス・ラン』は未見ですけど、どうやらアクション系の監督のようなのでそちらにわずかな期待を託すものの、なんでしょうかあの失笑を誘うバカげた泥レスは?

ギャグで撮ったのだとしたらたいしたものですけど、本気だとしたこれは救いようがないかもしれません。まあノオミ・ラパスが最強だったというのは当然の話でありますけど。

アンドレイ・チカチーロ

最後のノオミ姉さん最強伝説にだけは素直にうなずくものの、基本的には配役ミスで、全体的なキャスティングにも疑問が残ります。ジョエル・キナマンはただの小僧っ子ですし、ゲイリー・オールドマンに至ってはほぼ友情出演扱い。

唯一、主役のトム・ハーディのただならぬ違和感だけはいつもながら凄かったものの、皆さまが指摘されているとおり、ロシア訛りの英語というのはいかがなものでしょうか?ってボクは英語がわからないんですけどね。

というわけで、映画自体の出来は残念な結果と相成ってしまいましたけど、この事件自体には興味がわきましたね。この映画のモデルとなった殺人鬼は、“ロストフの殺し屋”や“赤い切り裂き魔”などの別名で知られるアンドレイ・チカチーロ。

1978年から1990年のソ連において、52人もの女子供を惨殺したキチガイ野郎でして、その風貌もまた強烈すぎて夢に出ます。興味がある方はどうぞ下記をご参照ください。

参考 アンドレイ・チカチーロ – Wikipedia

個人的評価:3/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

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コメント

  1. ミス・マープル より:

    そうでしたか。
    原作本はすごくおもしろくて、映画のために読みました。
    ちぇ!
    どんな風に映画にしたのかと思っていましたが見にくのはやめます。

  2. スパイクロッド より:

    ミス・マープルさん、コメントありがとうございます!
    ボクは原作本は未読なんですけど、
    予告編がおもしろそうだったので観てみたらハズレでした。
    よく出来た原作、しかもそれがかなりの長編だと、
    2時間程度で映画化するのはやはり難しいですね。
    おそらくいろんなところをはしょって、
    肝心要のところまではしょっちゃった感じです。
    確かにこれはDVDで十分だと思いますよ。

  3. ダムダム人 より:

    初めまして。
    ネット散歩していて、こちらにたどり着きました。
    私もこの作品、劇場でみました。
    犯人探しがメインだと思っていたのですが
    色々な要素(主人公をめぐる密告や官僚体制など)を盛り込んだため
    なんかぱっとしない作品だったと思います。
    それと、この作品やたらタバコをすうシーンが多くて
    時代に逆行している気がしました。
    (タバコを吸わない私にとってむせ返りそうになりました。)

  4. スパイクロッド より:

    ダムダム人さん、初めまして!
    コメントありがとうございます!
    当初の予想と違う展開がいい面に働くこともありますけど、
    残念ながらこの作品は悪いほうへと働いてしまいましたね。
    ミステリーを超える何かを描ききれていなかったのが敗因だと思います。
    ボクは実は時代に逆行するヘビースモーカーでして、
    この映画での喫煙描写もあまり気にはならなかったのですけど、
    嫌煙家の方はやはりその手の描写があるだけで嫌な想いをしてしまうのですね。
    当時の描写としてはそれがあたりまえだとも言えますけど、
    現代的感覚にあわせた演出もこれからは必要になってくる。
    なかなか難しい問題だとは思いますね。