『クリーピー 偽りの隣人』感想とイラスト 香川照之劇場

映画『クリーピー 偽りの隣人』香川照之のイラスト(似顔絵)
黒沢清の違和感をメジャーに落とし込む作業。それは成功したのか失敗に終わったのか?ひとつだけ確かなのは、香川照之の隣にだけは住みたくねえ!

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作品情報

『クリーピー 偽りの隣人』

  • 2016年/日本/130分
  • 監督:黒沢清
  • 原作:前川裕
  • 脚本:黒沢清/池田千尋
  • 撮影:芦澤明子
  • 音楽:羽深由理
  • 出演:西島秀俊/竹内結子/香川照之/藤野涼子

参考 クリーピー (小説) – Wikipedia

予告編動画

『クリーピー 偽りの隣人』予告編

解説

何も起こっていない、いや、何かが起ころうとしている前触れこそが恐怖であると教えてくれるサイコスリラーです。原作は前川裕による第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

監督は『ダゲレオタイプの女』『散歩する侵略者』の黒沢清。主演は『女が眠る時』の西島秀俊。共演に『残穢 -住んではいけない部屋-』の竹内結子、『鍵泥棒のメソッド』の香川照之、『ソロモンの偽証』の藤野涼子など。

あらすじ

連続殺人犯の取り調べ中に起きた失態により刑事を辞職し、現在は大学で犯罪心理学を教える高倉幸一(西島秀俊)。郊外の一軒家へと引っ越し、妻の康子(竹内結子)とおだやかな新生活をスタートさせようとしていた。

そんな折、元同僚の野上(東出昌大)から6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、興味を覚えた高倉はひとりだけ残された長女の早紀(川口春奈)と面会を重ねるものの、彼女の記憶は曖昧でなかなか真相へとはたどり着けなかった。

それと並行し、不可解な言動を繰り返す隣人の西野(香川照之)の存在も高倉夫婦の頭痛の種となっていた。ある日、彼の娘である澪(藤野涼子)が高倉に信じられない言葉を漏らす。「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です…」。

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感想と評価/ネタバレ無

久々の鑑賞となる黒沢清の映画。もともと邦画はおろそかになる傾向のボクですが、調べてみたら『LOFT ロフト』以来なんと10年ぶりの鑑賞。ずいぶんとご無沙汰でしたね。ごめんなさい。『LOFT ロフト』がどうにも肌に合わなかったものでして。

というわけで、久方ぶりに観てみた黒沢清の映画。大好きな『CURE』を彷彿とさせる不穏な違和感バリバリの怪作ではありますが、観終わった所感としてはメジャーとインディーズの中間といったところかな。良い意味でも悪い意味でもね。

黒沢清流娯楽映画

タイトルである『クリーピー(creepy)』の意味は、「ぞくぞくする」「身の毛がよだつ」などで、要するに「キモい」ということ。確かにそういうなんともいえない気持ち悪さ、むず痒さを覚える映画ではあります。つまりはいつもどおりすべてが普通ではない。

2002年に世間を震撼させた「北九州監禁殺人事件」、記憶に新しい2012年の「尼崎連続変死事件」をベースにしたと思えるこの映画。不可解すぎる人間の行動と闇。それをいつもながらの不穏さを軸になんとかメジャーの領域に踏みとどまろうとする。

大衆性と黒沢節。メジャーの流通においても、あくまで自分の色を失わぬまぎれもない黒沢映画ではありますが、その狂気の振り幅はやはり自重されていたような気がします。ただ、エンタメに黒沢節を乗せるとはこういうことか!という面白さはありました。

何かがおかしい

冒頭からエンタメと黒沢節の不協和音が馴染んでなくて面白いんですよね。未読の原作から大幅に設定や展開を変更したという本作。元刑事という設定を新たに与えられた主人公の高倉は、ここで大きなトラウマとともにわずかな狂気をかいま見せます。

そして不穏な、普通ではない、違和感バリバリの演出。エンタメ的な署内における犯人逃走事件という盛大なつかみで幕を開けながら、その手触りはやはり尋常ではない。とりわけモブの動きがなんともいえず気持ち悪い。走り回るモブがなんか気持ち悪いの。

そういう違和感、不穏さがマックスへと達したのが、6年前の一家失踪事件で唯一残された長女、早紀の聴取シーンでありましょう。舞台的なやたらと動き回る演出。明らかにおかしい照明。そしてガラスの向こうにいるモブの配置、動き、視線。

物語の本筋とは関係ないと思われる彼らモブの存在や動向が、意味がなさそうでありそうで怖いのです。この気持ち悪さは『イット・フォローズ』に通じるものがあるか。特に大学構内におけるモブには注目です。意味はわからんけどなんか怪しいの。

親切は時としてあだとなる

突如として消失する竹内結子や、柱越しの西島と香川の会話、横移動、ドローン撮影、ジャンプカットなど、モブの奇怪さを含めた前半部分における「何かがおかしい」感はやはり秀逸で、メジャーでこの気持ち悪い演出をやっちゃう黒沢清はやっぱり偉い!

転じて物語が核心部分へと迫った後半はどうでしょうか?SF的な解釈における『悪魔のいけにえ』、真空パック、最後の「叫び」は強烈なものの、ちょっと物語としては破綻しすぎていたかな?あえての突っ込みどころかとも思いますが、む~ん微妙ですね。

何が微妙って、あえて描かない、説明しない、見せない、辻褄の合わない不親切さこそが不気味なのは周知の事実として、結局のところその塩梅がメジャー配給ゆえに中途半端なのですよね。黒沢清にしては親切すぎるの。もっと振り切れていないと。

それは特にラストの甘さに感じましたね。最後の「バンバン」は、てっきりほかの対象にまで及ぶ「バンバン」だと思っていただけに(多少あるような気もするが…)、ちょっと拍子抜け。前述した「叫び」が地獄の終わりと始まりを暗示はさせますが。

正体がつかめない、何が起きているかわからないゆえの不穏さが、メジャー配給におけるわかりやすいネタの開示によって、不穏が不穏として機能しなくなったって感じかな。大本となる事件がやや現実的すぎたやもしれません。

香川照之劇場

最後となりましたが、絶対に触れずにはおられない香川照之。灯台もと暗しのモンスター。隣人にしたくない芸能人No.1。狂気とユーモアとカリスマを有したサイコパスの見本市。いや~怖いというよりかは心底笑わせていただきましたね。

あたりまえなんだけど何考えてんだかさっぱりわからない。予測不能な言動で相手を翻弄し、つけ入り、ある種のマインドコントロールやガジェットによって対象を支配し、自分の手は汚さない。冒頭で紹介した事件の首謀者と同様のサイコパスなのですよね。

この常人には理解しがたい狂人の姿を、ある意味わかりやすく見せつけてくれた香川の怪演。わかりやすいんだけどわからないこの尋常ではない不気味さ。もはや香川照之劇場と言ってもいいほどに、場を、映画を支配してました。

対して西島演じる高倉の「趣味と研究」を兼ねたチラリズムの狂気。竹内演じる康子の動揺、鬱憤、諦念、絶叫。藤野演じる澪の後戻り不可能。その他の登場人物たちもどこか微妙におかしい奇人変人の集まりで、やっぱりこりゃ普通じゃないわ。結局みなサイコパスなのかも?

そんな実はサイコパスだらけの登場人物のなかで特に良かったのは妻の康子を演じた竹内結子かな。ある意味いちばんの被害者。でもね、でもね、ほかの方々の賛同はもしかしたら得られないかもしれないけど、なんかね、物凄くね、思いがけずね、エロかったの♡

個人的評価:6/10点

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スパイクロッド

映画を観たらとりあえず感想とイラストを書く(描く)人畜無害な釘バット。ちなみにイラストはぺんてるの筆ペン一本によるアナログ描き。

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