『ノー・エスケープ 自由への国境』感想とイラスト 犬と親父の大きな壁

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映画『ノー・エスケープ 自由への国境』のイラスト

自由を、夢を、安全を求めて国境を超えようとする不法移民者たち。晴れてアメリカの地を踏んだ彼らを歓迎する自由の国からの祝砲。貴様ら全員、俺とトラッカーの獲物じゃボケ!

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作品データ

『ノー・エスケープ 自由への国境』
Desierto

  • 2015年/メキシコ、フランス/88分
  • 監督:ホナス・キュアロン
  • 脚本:ホナス・キュアロン/マテオ・ガルシア
  • 撮影:ダミアン・ガルシア
  • 音楽:ウッドキッド
  • 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル/ジェフリー・ディーン・モーガン/アロンドラ・イダルゴ

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

メキシコとアメリカの国境に広がる砂漠を舞台に、アメリカへの密入国を図ったメキシコ人たちが謎の襲撃者から命を狙われる恐怖を描いたサバイバル・スリラーです。監督は『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンの息子ホナス・キュアロン。

シンプル・スリラー

『ゼロ・グラビティ』で父親とともに共同脚本を務めたホナス・キュアロンの本邦初公開作。実はこの『ノー・エスケープ 自由への国境』が監督第2作ということで、単なる親の七光りとは違うような同じのような、つまりは観てみないことにはなんとも言えません。

てなわけで観てみた感想をさっそく。メキシコとアメリカの国境で繰り広げられる、密入国者と謎のハンターとの地獄のサバゲー。トランプがぶち上げた物理的な壁はまだ存在していませんが、ここにはすでに狂気の壁がライフル背負って猛犬連れて待ち構えてたってわけ。

そういう意味ではタイムリーな内容ですが、実はそれほどトランプ政権が推し進める排外政策を批判、糾弾するような明確なメッセージが込められた映画ではなく、もっとシンプルな、追う者と追われる者が紡ぎ出す緊張感を中心に据えたシチュエーションスリラーなのです。

ですので『ボーダーライン』のような腰に来る重さも存在していません。この映画にあるのはシンプルな生きるか死ぬかの緊張感。そのシンプルさを絶妙な塩梅で調理できていれば『ドント・ブリーズ』のような傑作になっていたかもしれませんが、どうにもいけませんな。

国境砂漠は阿鼻叫喚

出だしは良いのですよ。特に父親譲りのやや長回し、フィックスによる引きの画はたいへん素晴らしかった。国境近くの砂漠で立ち往生したトラックと、その荷台からゾロゾロと降りてくる密入国者たちの群れ。地平線。国境へ向けてしぶしぶ歩いていく彼らのうしろ姿もいい。

車の故障により徒歩で国境を超えることとなった、『天国の口、終りの楽園。』のガエル・ガルシア・ベルナル扮するモイセスを含んだ密入国者たち。「砂漠越えは嫌じゃ~」と先導者に泣きつく下っ端の言葉からも、この道行きにはすでに嫌な予感しかいたしません。

そんな彼らを待ち構える嫌な予感の正体とは、「ここは俺の国じゃ!これが自由の国じゃ!」と密入国者たちを地獄に叩き落として悦に浸るキ○ガイ、『ウォッチメン』のコメディアン役が忘れられないジェフリー・ディーン・モーガン扮する地元の猟師(?)サム。

余暇を持て余してウサギ狩りへとやって来た彼が遭遇した、思いがけない大量の獲物たちとの遭遇。ここで繰り広げられる人間狩りの阿鼻叫喚はなかなかの眼福です。サムのライフルの餌食となっていく密入国者たち。正確に、冷静に、情け容赦なく標的を撃ち抜くサム。

地獄の第一段階としては見事なものがあったと思いますが、結局これ以上のものが出てこなかったという悲しい尻すぼみ。演出的にも、「獲物視点による地獄の臨場感をなぜ長回しで描かなかった?」と、どうしても父親アルフォンソとの比較をしてしまうのもまた事実。

偉大な父の残りカス

そんな地獄に幸か不幸か参加できなかった足の遅いモイセス以下5名ですが、サムの愛犬トラッカーにその存在を嗅ぎつけられ、次なるヒューマンハンティングの標的として荒れ地を逃げ回るお約束に突入するものの、第一の地獄以上の地獄は現出してこないのは前述したとおり。

愛犬猛犬トラッカーの大活躍は『ドント・ブリーズ』以上ですが、恐怖の対象が犬とおっさんだけなので、バリエーションに欠ける反復運動であった点は否めませんし、景観の変化のなさは致し方ないとして、物語の展開にロクなアイデアが盛り込まれていないのは残念。

特に「あいらぶゆ~♥」と喋るクマのぬいぐるみの使い方は、ヘタクソな伏線も含めて最悪でした。「息子との思い出の品を囮に使うなんて、お前やっぱり口だけ男じゃねーか!」って話ですし、こんな子供騙しに引っかかるサムとトラッカーにも幻滅です。

都合の良い信号弾の登場もまたしかりで、それを至近距離でぶち込まれて壊れたオモチャのようになるトラッカーの姿は愛らしいものの、これまたお約束すぎてテンションが下がります。肝心要の「いかにこの危機を脱するか?」にまったく頭が使われていないのですよね。

この映画の初稿は『ゼロ・グラビティ』の原点になったという話ですが、やはり父は偉大だったというか、息子のアイデアをかすめ取ってまんまと傑作をものにし、残された息子は最初のアイデア以上のものは何も生み出せなかったという、悲しい悲しい父子物語だったのですね。

見せない勇気も大事

ラストのモタモタした追いかけっこもコントみたいで面白かったのですが、ここでも「なんで引きの長回しで映さないかなぁ?」という不満が頭をもたげてきましたし、形勢逆転後のサムの情けない命乞いとその後の展開のなさにも、正直言って拍子抜けでした。

この映画はサムの動機を明確にしない、動機なき殺戮者の恐怖を描いていたわけで、そんな奴らが根拠もなく他者を差別し、排斥するのだという事実と真実の姿を暴き出していたとも取れますが、こと恐怖と絶望という観点からは大きくインパクトに欠けるのです。

だいたいサムを映しすぎなのですよね。正体不明の襲撃者として描くのであれば、なるべく彼の姿や思考は映さず、正体不明の存在、悪意の象徴として描くべきでした。その結果の命乞いや、もしくは正体が女性や子供だったというのなら、より恐怖と絶望は増したと思います。

社会的メッセージや、背景や、動機や、成長や、ドラマなどの要素を極力排除し、ワンシチュエーションによるスリルを模索したのであれば、もっと徹底的に見せるべきものを取捨選択すべきではなかったでしょうか?っていうか親父さんはちゃんとチェックしたのかこれ?

どんな世界でも親と同じ職業を選んだ子供は苦労するもの。この一作でホナスを親の七光りと断罪する気はありませんが、キラリと光る何かが見えなかったのはちょっとこの先心配。親父さんのアルフォンソは昔からキラリと光る光線を発していたからねぇ……。

個人的評価:4/10点

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