『マネーモンスター』感想とイラスト 貧乏人だけバカを見る

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映画『マネーモンスター』ジョージ・クルーニーのイラスト(似顔絵)
たった6万ドルのためにバカなことをした男。彼の目的は達せられたのだろうか?これによってセルロイドの天井は破られたのだろうか?なんにせよ、貴様らに貧乏人の気持ちがわかってたまるか!

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作品情報

『マネーモンスター』
Money Monster

  • 2016年/アメリカ/98分
  • 監督:ジョディ・フォスター
  • 脚本:ジェイミー・リンデン/アラン・ディ・フィオーレ/ジム・カウフ
  • 撮影:マシュー・リバティーク
  • 音楽:ドミニク・ルイス
  • 出演:ジョージ・クルーニー/ジュリア・ロバーツ/ジャック・オコンネル/ドミニク・ウェスト/カトリーナ・バルフ

参考 マネーモンスター – Wikipedia

予告編動画

解説

なけなしの6万ドルを「たったそれだけ」呼ばわりされてカイルも筆者も思わずヘコんでしまうサスペンスドラマです。

監督は『告発の行方』『羊たちの沈黙』のオスカー女優ジョディ・フォスター。これが監督としては4作目となります。主演は『トゥモローランド』のジョージ・クルーニーと、『プレタポルテ』のジュリア・ロバーツ。『オーシャンズ12』以来の顔合わせです。

共演に『ベルファスト71』のジャック・オコンネル、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』のドミニク・ウェスト、『大脱出』のカトリーナ・バルフなど。脚本に『ヒドゥン』『張り込み』のジム・カウフの名前を見つけてうれしくなっちゃいました。

あらすじ

人気財テク番組『マネーモンスター』。軽妙なトークとパフォーマンスが売りの司会者リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)。彼の功績を認めながらも、生放送で好き勝手やらかすリーに手を焼くディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)。

いつもどおりリーが台本を無視して勝手なことを喋り出したそのとき、銃を持った若者が番組に突然乱入。リーに爆弾付きのジャケットを着させ、番組をジャックしてしまう。男の名はカイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)。

彼は番組で推薦した“アイビス”の株に全財産をつぎ込み、その株の大暴落によって一文無しになってしまったのだ。謝罪と説明を求めるカイルを必死になだめながら、なんとか事態の収拾を図るリーとパティだったが……。

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感想と評価/ネタバレ多少

オスカーを2度も獲得した名女優ジョディ・フォスター。若い頃はけっこう不遇でして、子役として一家の生活を支える稼ぎ頭であったし、『タクシードライバー』でとち狂ったジョン・ヒンクリーによるレーガン大統領暗殺未遂事件なんかもありました。

映画のなかでも12歳の娼婦役や、2度にわたるレイプ被害、シリアルキラーのお気に入り、女版『狼よさらば』など、暗く殺伐とした不幸な役回りを演じることが多く、どこか神経質なあのお顔もあわせて、勝手に堅物なのだと決めつけておりました。

そんな彼女の監督第4作目がこの『マネーモンスター』。前述したとおり勝手に堅物だと思い込んでおりましたので、金融問題や格差社会に切り込んだ社会派サスペンスなのだろうと思っていたら、あんれま、お気楽痛快サスペンスではありませんか!

セルロイドの天井をぶっ壊せ!

冒頭からちょっと腹の出たジョージ・クルーニーが軽薄に踊り狂うスチャラカ経済番組。かの国におそらくは普通に存在するであろうこの手のスチャラカに、大国アメリカの偉大なる懐の深さを思うような思わないような。

つまりはこの時点でこの映画の方向性はすでに示されているということ。勃起クリーム。生本番白黒ショー(音声のみだが)。って下ネタかいな!堅物だと思っていたのにジョディの奴とんだビッチじゃねーか!ってこりゃ失礼。思わず取り乱してしまいました。

え~と簡単に要約してしまいますと、勃起クリームが象徴するものは役立たずな男となるわけですな。そんな薬に頼らなければ自分を誇示できないバカな男どもによって支配されたこの愚かな世界。セルロイドの天井をぶっ壊すんだ!

参考 セルロイドの天井(セルロイドノテンジョウ)とは – コトバンク

そんな意気込みでこの映画を監督したと勝手に決めつけてみたジョディ・フォスター。愛らしくも愚かな男どもを見事にイジメ倒してくれております。とりわけ主役の男ふたりの落とし方が最高!なんだよかなりねじれたギャグセンスの持ち主じゃんかあんた!

女たちよもっと闘え!

愚かな男たちによって支配された腐った社会を白日のもとに晒す。それでは肝心な女たちはどうなのでしょう?ダメ亭主に「Fucking!」と三下り半を突きつけるパワフル妊婦には拍手喝采だったとして、主役級のふたりが中途半端なのはどゆこと?

ジュリア・ロバーツ演じるパティ。影の存在としてリーを操り、励まし、真相解明に奔走する役割だが、彼女の立ち位置はどうにもはっきりと定まっていないような気が。アイビス社の美人広報ダイアン・レスターにしてもしかり。

特に彼女の役回りはかなりもったいなかった。演じるカトリーナ・バルフの美貌が印象的だっただけに、余計に残念でなりません。会社の社長であり恋人でもあるクソ男にもっと明確な反旗を翻してほしかった。パティとともに。

ダメでかわいそうな男ふたりに花を持たせてやったとも取れますが、このふたりの共闘関係をもっと明確に打ち出すべきだったと思いますね。そういう突っ込みの甘さが最後の最後まで響いてしまった。苦さを打ち消してしまう甘さが残念でなりません。

いつかあたりまえになる日

まあセルロイドの天井も、ウォールストリートも、格差社会も、結局のところ刺身のツマでしかなく、この映画の眼目はハラハラドキドキのリアルタイムサスペンスにあったわけですから、これでいいといえばいいのかもしれない。

その点に関しては十二分に合格点の娯楽映画と言えるでしょうね。オチはしょぼいですが、そこへと到達するまでの緊張と笑いをテンポよく畳みかける演出はなかなかです。しかし映画としての意味は、ツマとして棚上げしてしまった部分にこそあるのだと思います。

それゆえ、『エクス・マキナ』や『クリーピー 偽りの隣人』より先に観ていたというのに、今頃になって惰性でこんな感想を書いている。確かに観ているあいだは面白い映画でしたが、ただそれだけで特に何も残らないという話。

ジョディ・フォスターはこの映画によってセルロイドの天井をぶち破ることができたのだろうか?もしかしたらこれで正解だったのかな?女性があたりまえのように映画界に進出するということは、あたりまえの娯楽作品を撮るということなわけだから……。

個人的評価:6/10点

DVD&Blu-ray

VOD・動画配信

『マネーモンスター』が観られる動画配信サービスはNetflixU-NEXTTSUTAYA TV。おすすめは定額見放題のNetflix(2018年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。

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コメント

  1. 匿名 より:

    今更コメントすみませんー

    ジョディ・フォスターの演出はワザとだと思いますー
    イェール大学を次席卒業した才媛&レズビアンなので、
    「男への意趣返しで、男の登場人物をみんなマヌケに描いたんだ!!」って感想も折り込み済みなんじゃないかとー
    「杓子定規でしか物事を計れない頭でっかちな男共」ってからかってるのかとー

    既に女優として大成功を収めてますし、「女性の地位向上」なんて興味ないと思いますよー
    抜きん出た才能、素晴らしい実力があれば、差別も関係ないってわかっているでしょうし
    そういうのを声高に叫ぶと余計反感を買うのも見越して、パティもダイアンも控え目な性格に描写したのかもしれませんー

    諸々含めて「みんなこういう展開が好きなんでしょ?」とエンタメ業界自体を強烈に皮肉っているんだと思いましたー
    だから、ジャーナリズムを勉強していたジョージ・クルーニーも出演したのカナーと勝手に思ってますwww

    • 匿名さん、コメントありがとうございます!

      わざとかどうかはわかりませんが、たぶん普通に面白い映画を撮ろうとしたんだろうなぁとは思います。本文でもチョロッと書きましたが、女性監督があたりまえの娯楽映画を撮ること自体がセルロイドの天井をぶち破るという意味だと思いますので。そういう意味では女性の地位向上に興味がないのはちょっと違うかなぁとも思います。ただ戦い方がほかの方とは違うのでしょう。それが面白くもあり、物足らない部分でもあるのですけど。