『愛のメモリー』感想とイラスト 止まらないぐるぐる

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映画『愛のメモリー』ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドのイラスト(似顔絵)

死んだ女の幻影に取り憑かれた男の妄執のぐるぐる。言わずと知れた勝手に『めまい』リメイク作はぐるぐると回り続け、こっちの頭もぐ~るぐるぅ……。

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目次

『愛のメモリー』感想とイラスト 止まらないぐるぐる

  1. イラスト
  2. 作品データ
    1. 予告編動画
  3. 感想と評価/ネタバレ有
    1. とりあえず結論から
    2. 妄執(Obsession)
    3. 得体の知れない映像群
    4. 狂気のぐるぐる

作品データ

『愛のメモリー』
Obsession

  • 1976年/アメリカ/98分
  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 脚本:ポール・シュレイダー
  • 撮影:ヴィルモス・ジグモンド
  • 音楽:バーナード・ハーマン
  • 出演:クリフ・ロバートソン/ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド/ジョン・リスゴー

参考 愛のメモリー (映画) – Wikipedia

予告編動画

感想と評価/ネタバレ有

妻と娘を誘拐されたうえに警察の不手際で同時に失った男が、16年後、フィレンツェで妻と瓜ふたつの女性と出会って恋におちるものの、ふたたび彼女が誘拐されてしまうという事態を描いたロマンティックサスペンスです。監督は『キャリー』のブライアン・デ・パルマ

とりあえず結論から

製作40周年を記念したHDニューマスターBlu-ray盤が出たので、とにかく堅い財布の紐を力任せにちょん切って購入してみました。いや~画質が素晴らしい!ヴィルモス・ジグモンドの陰影を強調した映像美が映える映える。こりゃ力任せにちょん切った甲斐がありましたわ。

しかし映画の内容といたしましては、以前に観たときと同様、妙ちくりんでどう判断してよいものやら頭がぐるぐる回る奇怪な作品でありまして、大好きなデ・パルマの映画のなかでも依然として評価が定まっていない感じなのであります。う~んぐるぐる回って吐きそうじゃ。

妄執(Obsession)

1959年のニューオーリンズ。不動産業を営むマイケル・コートランドの結婚十周年を祝うパーティが開催されていた自宅で、妻のエリザベスと娘のエイミーが何者かに誘拐されてしまう。犯人の要求は身代金50万ドル。マイケルは悩んだ末に警察へと通報。

警察の支持どおり偽札と盗聴器をスーツケースに詰め込んだマイケルだったが、それを知った犯人側は激高。人質を連れて車で逃走を図るものの、警察との激しいカーチェイスの末にタンクローリーに激突。目の前で爆発、炎上する車を見つめてただ呆然とするマイケル……。

愛する妻と娘を自分の不甲斐なさ(マイケル自身はそう思っている)によって失った男の絶望と後悔。デ・パルマらしい負け犬節全開の幕開けであります。思いがけず失ったモノに対する妄執(Obsession)に取り憑かれた男のなんともいえないムッツリ顔がたまりません。

マイケルを演じるクリフ・ロバートソンの魅力に欠ける、感情の読めない、無駄にデコチンに汗をかいてる真面目腐った暑苦しいムッツリ顔が、正体のつかめない妄執へと取り憑かれた男の奇怪さを表しているようで、すでに居心地の悪いむず痒さがたまらんのであります。

得体の知れない映像群

16年後、そんな彼の目に前に現れた妻と瓜ふたつの女性サンドラ(ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの一人二役)。これによっていよいよ加速していくマイケルの妄執。自分の過失で死なせてしまった女がふたたび戻ってきてくれた!という勝手に『めまい』リメイク。

参考 めまい (映画) – Wikipedia

ヒッチコックの『めまい』は、死んだ女の幻影に取り憑かれた男の破滅を描いた頭のおかしい映画(褒め言葉)ですが、この映画はデ・パルマの人生を変えたのです。そんな『めまい』へと真正面からぶつかった頭のおかしい映画(褒め言葉)がこの『愛のメモリー』なのです。

ゆえに、いつものめくるめく映像マジックはやや控えめで、ヴィルモス・ジグモンドお得意のソフトフォーカスや、陰影を強調したノワール的な美しいけど落ち着いた映像が並ぶ、古風なロマンティックサスペンスと言えるのですが、そこで描かれている内実はそうとうに奇怪。

サンドラを見初め、闇夜で彼女を無言でストーキング、ピーピングするマイケルの変態ノワール世界。サンドラをエリザベス化しようと目論んでいるような嬉々とした笑顔。性急すぎる結婚への決断。そしてそのすべての根底に横たわるロバートソンのむさ苦しい顔。

彼の顔がロマンティックとはかけ離れた奇怪な不気味さを醸成しており、この映画をロマンティックでも、サスペンスでもない、何か得体の知れない呪われた映像群へと変換させているのはいったいなんなのでしょう?それに貢献しているのは脚本のお粗末さにも言えること。

狂気のぐるぐる

思いっきりのネタバレで恐縮ですが、すべては共同経営者であるロバート(デ・パルマ映画初登場となるジョン・リスゴー)が仕組んだ犯罪だったのです。16年前の妻子誘拐も、今回の妻と瓜ふたつの女性サンドラとの出会いも、すべては彼が裏で糸を引いていたのです。

そして再現される16年前の悲劇。誘拐されたサンドラと、50万ドルの身代金要求。実はサンドラは16年前に死んだと思われていた娘のエイミーであり、ロバートの口車に乗った彼女は自分を見捨てた父親の人生を破滅へと導くため、別人を装って彼へと接近していたのです!

過去の幻影に囚われた男の妄執と、復讐のために舞い戻った天使と、それを陰で操る悪魔の存在。いよいよまっとうなサスペンス映画じみてきましたが、これは『めまい』的設定を作り出すための都合のよい仕掛けにすぎず、脚本の細部はそうとうに杜撰な代物なのですよね。

とりわけ黒幕ロバートの動機が不可解です。金なのか?復讐なのか?最初の事件から16年間も何を考え、何をしていたのか?まったくもって理解不能です。それは騙されていたことを知ったマイケルと、彼への後悔と愛から舞い戻ってきたエイミーとのぐるぐるにも言えること。

エイミーを殺すために空港へとやって来たマイケル。その姿を見つけ、まるで幼児退行したかのように「ダディー!」と抱きつくエイミー。そんなふたりの姿を高速度撮影でとらえ、抱き合うふたりを中心にしつこいぐらいに回り続けるカメラ。そしてTHE END。

なんか物凄い感動的なハッピーエンドのように演出されておりますが、観ているこっちには不安と恐怖しか残りません。これは父と娘の感動の再会なのか?それとも恋人同士の抱擁?いやはや両方を含んだ危ない未来の予兆?すでに後戻り不可能な狂気の淵へと……。

などと、ぐるぐる回り続けるふたりを見つめながらこっちの頭もぐるぐる回り続ける地獄のメリーゴーランド。説得力のない脚本が逆に登場人物の不可解さを助長しており、正体のつかめない不穏さと、未来の見えない不安さが本当にどうかしている怪作だと思います。

『めまい』の再現を目論みながら、思いがけずオリジナル以上の不可解さで突き抜けてしまった感のある怪作『愛のメモリー』。ぐるぐるしたい夜にはうってつけの作品であるが、ぐるぐるしすぎてどうぞ狂気の淵へと落ち込まないように、ご注意あそばせ……。

個人的評価:6/10点

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